モームス最大トーナメント

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871トップ3
「安倍なつみ。矢口真里。そして後藤真希か」
会場のメインボードに残された三人の名前を読み上げる飯田。
その横には保田、そして吉澤と石川が並び座っていた。
「悔しいが、残るべくして残った名実共にモームス格闘界のトップ3だな」
飯田の言葉に誰も反論を述べることができずにいた。
すでに引退を宣言していた保田はともかく、吉澤も石川も自分こそが最強と信じていた。
だがこの三試合を目にし、その自信は脆くも崩れ落とされた。
王者紺野を相手に圧倒的実力差を見せ付けた安倍なつみ。
浜崎退治という奇跡の偉業を成し遂げた矢口真里。
地上最強に傷を付けた女、後藤真希。
もしそれが自分だったら…できたか、いやとてもできる気がしない。
(今の私じゃ…まだ及ばない。もっともっと強くならないと…)
吉澤も石川も想いは同じであった。次は隣にいる娘にも勝つという気持ちも含め。
「トップ3かえ。果たしてそいつを崩す者は現れるのかのぉ」
達人の言葉が残り三人の表情に緊張を走らせる。皆の頭に二つの顔が浮かぶ。
「その答えはこれから出る」
もはや想像の域を越えた世界、誰も予測はつかない。
「さぁ…どっちがくる?」
872平家のインタビュー:02/11/28 19:08 ID:F/OmAjpi
二回戦第四試合を前に、格闘雑誌記者の平家みちよは勝者三人の控え室を訪ねていた。
辻加護戦の勝敗予想を三人に聞く為である。返答は三者三様であった。
「ノーコメント」
普段は温厚にインタビューを受けてくれるなっちは、その一言で扉を閉めた。
平家は背筋に汗が浮かんでいることに気付く。今までのなっちではないことを悟る。
「去年は辻ちゃんとやったから、今年は加護ちゃんかな?」
後藤真希の答えはいい加減だった。そのまま疲れたと言って寝てしまった。
一番まともに答えてくれたのは(やっぱり)矢口真里であった。
「辻と加護かーどっちも化け物だけどね」
「矢口さんはどっちがくると思います?」
「うーーん、強いのは辻かな」
「じゃあ辻選手の勝利と…」
「でもおいらが闘りたくないのは加護の方だ」
「もう結局、どっちですか?」
「わかんないからおもしれんだ。ま、どうせ優勝はおいらだからどっちでも一緒一緒♪」
そう言って矢口選手は行ってしまった。彼女の冗談は冗談に聞こえないから怖い。
あの145cmが本当に歓喜に包まれるのではという錯覚に陥ってしまう。
このグラップラーを止めるのは果たして安倍か?後藤か?それとも…?
873辻希美−加護亜依 @:02/11/28 19:09 ID:F/OmAjpi
『夢のカードがここに実現致しましたっ!!』
『格闘技界の常識を覆す程の娘が!同じ時代に生を受け!そして出遭ってしまった!!』
『二人は最高の相棒であり!最高の仲間であり!最高のライバルである!!』
『だが!勝利の二文字は!どちらか一方にしか与えられません!!』
『残酷にも!運命は二人を!!勝者と敗者に分けるのです!!』
『しかし!それがこの世界の掟!!二人が同じ夢を持つ限り避けては通れない道!!』
『さあ決断の刻は来た!!出でよ!!小さな戦士達!!』
『青竜の門!!!辻希美!!』
『白虎の門!!!加護亜依!!』
『ぶりんこ対決だああああああああああああああっっ!!!!!』
874辻希美−加護亜依 A:02/11/28 19:10 ID:F/OmAjpi
二人に言葉はなかった。いつもの笑顔もない。ちらりと一度眼を合わせただけであった。
死闘の始まりを告げるゴングが鳴り響く。辻が動く。加護が動く。二人がぶつかる!
ぶつかると思われた一瞬に身を翻したのは加護、グンッと辻の腕を抜け懐へ入る。
目標を見失った辻の豪腕は物凄い音と衝撃を上げて空を切る。
加護が辻の右足と腰を掴んだ。得意の寝技に持ち込む気である。思い切り重心を変えた。
ところが、辻はビクともしなかった。まるで足が床に根を生やした様に。
逆に辻は肘打ちで、自分の腰元に掴み掛かる加護を狙い撃つ。
しかしその肘も空を切ることになる。瞬時に作戦を変えた加護が今度は背中に回り込む。
思い切り腕を振り回して辻は加護を払いのけようとする。
しかし全ての動きを読んでいるかの如く、加護はさらに行動を先へと移している。
加護の眼が辻のうなじを捕らえた。そこからの動きは実に速かった。
イキナリズムでの脇腹打ち。対ソニン戦で得た物真似の一つ。
脇腹に辻の視線を集中させて素早く身を翻し、反対の腕で辻のうなじを掴んだ。
辻はすぐに反応するがもう遅い、首に加護の腕と腕が絡み付く。首締めが完全に決まる。
加護は一気に勝負を決めにかかる。全力で落とす。辻の首を締め付ける!
何とか解こうと辻は体を反った。そのまま勢いを付け加護を背負ったまま正面に飛んだ。
首を絞められたままの背負い投げ。有り得ないパワーだと加護は思った。
と同時に考える。腕を外して逃れるか、倒されてもこのまま腕は離さないか。