さあ4つの対戦が一斉に始まる!と思ったその時、誰かさんの声がそれを止めた。
「盛り上ってるとこ、ごめん。ひとつ提案があるんだけどさー」
お面だ。それまで黙っていたお面の女が急に残りの七人に声を掛けてきた。
不信がる七人、そしてどこかで聞き覚えのある声。
「七対一でいいよあたし、その方がはやいでしょ。」
誰も意味がわからずにいた。この女は何を言っているのか。自分でわかっているのか?
「なんなのあんた、邪魔すんなよ」
当然、気分を害されたさきっちょが、お面の女につっかかる。
バタン。次の瞬間、さきっちょは地面にうつぶせていた。すでに意識もない。
「はいはい、あと六人。ちゃっちゃと行こう。(うーん、私って作者思い)」
誰も理解する間もないまま、舞台裏に戦慄が走る。
5分後、お面の女が舞台裏から出てきた。その体には傷一つない。
話を聞きつけたつんくがその場へ訪れて見たもの。
あの上戸彩が!ZONEが!AKINAが!BOAまでもが!床に倒れ気絶していた。
「たった数分で、この七人を!そんなことができる奴…」
お面の女はケラケラと微笑んでいた。氏名の欄に書かれた一文字の漢字。
光。
833 :
二回戦:02/11/08 23:09 ID:4W7eLylf
第一試合 紺野あさ美−安倍なつみ
第二試合 矢口真里−浜崎あゆみ
第三試合 後藤真希−光
第四試合 辻希美−加護亜依
紺野も安倍も矢口も辻加護も、実際に対戦する後藤ですら、気付いていなかった。
とんでもない奴が参戦してきた事実に。
光。その文字に反応したのは一人の怪物のみ。
「きやがった、あのヤロウ!」
あの浜崎あゆみが、驚きと焦りを露わにしている。
やがて自分を落ち着かせる様に息を吐き、ソファに腰を下ろす。
(決勝の相手は決まった。いいわどっちが地上最強か、決着をつけよう)
嵐巻き起こるモームス最大トーナメント、二回戦いよいよ始まる!
(少なくとも私と闘ったときのお前は…もっと強かった。)
紺野の頭には、まだあのとき吉澤に言われた台詞がこびりついていた。
(今の私に足りないもの…あのときの私と違うこと…駄目、わかんない)
ぎゅっと拳を握り締める。もう迷っている時間はないのだ。
『只今より二回戦第一試合を始めます!』
アナウンスが聞こえてきた。出番がきた、相手はあのなっちだ。
「誰が相手でも変わらない、私は私の闘いをするだけ」
右の掌に神を秘め、紺野あさ美は闘技場へと続く薄暗い廊下を歩み出した。
「相手は現役チャンピオンだぜ、どんな気分だ。」
そう言いながら、安倍なつみの控え室に姿を見せたのは意外な人物だった。
「矢口真里…どうゆう風の吹き回し?」
問いには答えず、矢口はベンチに腰掛けて安倍を睨んだ。
「なっちさんよぉ。去年の大会前の約束、覚えてっか?」
安倍は小さく頷いた。人気のない廃工場跡にて矢口と交わした会話がある。
(なっちは後藤真希とも闘いたいけど、矢口真里とも闘いたいべさ。)
「当然だべさ」
安倍の瞳が修羅に変わる。それを見た矢口は満足そうに微笑んだ。
新旧チャンピオン対決ここに実現!
共に一回戦は圧倒的な力で勝利し、当然今大会も優勝候補の一角に名を連ねている。
『青竜の方角!ディフェンディングチャンピオン紺野あさ美だあああ!!』
『白虎の方角!初代モームス王者安倍なつみの入場!!!』
時代は違えど、同じ栄光を掴みし二人。だが現れたその表情は対照的であった。
安倍なつみはすでに戦闘モード。あの人懐っこい笑顔の欠片も見られない。
対して紺野あさ美の方はどことなく不安気な面持ち、僅かに迷いが見て取れる。
紺野と安倍。二人が闘技場中央に並び立つ。
「なっちはあんたをチャンピオンとは認めていない」
「――――!」
突然の安倍の言葉に驚き、紺野は顔を上げる。目の前に修羅がいた。
「あんたが頂点を名乗るには十年早い。それをこの闘いで証明してあげる。」
あからさまな挑発にくすぶっていた心がざわめき立つ。
たとえ紺野自身が許しても、紺野の拳がそれを許さない。
「私は負けません。いつも完璧です!」
紺野がなっちを睨み返す。王者が王者を睨み返す!
やがてゴングが鳴る。
歴史的一戦、チャンピオン対決が幕を開けた。