モームス最大トーナメント

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748市井−矢口 @
保田圭が見守る中、その闘いは幕を開けた。
リーチは市井に分がある。模範の様なきれいなワンツーを打ち込む。
だが矢口にとって、自分よりリーチのある相手との闘いなど、日常茶飯事のこと。
彼女にはその差を補って余りある程の武器があった。
格闘センス。
矢口は器用に市井のコンビネーションを捌いてみせた。
(甘いぜ紗耶香、そんなんじゃおいらに通用しねえよ)
クイクイッと指を動かして、矢口は誘っている。最高の市井紗耶香を。
(まったく真里には敵わないね)
スウッと大きく息を吐く、と同時に刺すようなするどい闘気が発する。
一部では、安倍後藤をも凌駕すると言われた全盛期の市井紗耶香が目の前に。
(たまんないねえ)
手に汗が握る。こういう相手とガチでやりたかったんだ。
昨年は不完全燃焼で終った。矢口の闘争本能はもう抑え切れない所にまできている。
市井紗耶香が前へ。
矢口真里が前へ。
一歩も引かない者同士、真っ向勝負だ。
749市井−矢口 A:02/09/20 00:20 ID:YKp1vCqh
市井が打てば矢口が打つ。矢口が打てば市井が打つ。本当に単純な拳と拳の殴り合い。
「やっぱりあいつは馬鹿じゃ。紗耶香相手に殴り合いを挑むとは…」
保田は呆れてそのぶつかり合いを見上げた。
鉄拳と称される市井のパンチ、その破壊力は半端ではない。
さらにその連打は打てば打つほど速度を増し、やがて音速を超す倍音マシーン。
そんな相手にあえて殴り合いを挑むのが、この矢口真里という娘。
だが徐々に、矢口の手数が市井の手数に追いつかなくなる。
つぼに入った市井紗耶香を止めることは至極困難、矢口が押されて行く。
一方的になってきた。矢口は防御に精一杯で攻撃にまで手が回らなくなった。
それでも市井の連打は速度を増してゆく。すでに防御すら追いつかない。
矢口の顔が血に染まってきた。おびただしい出血。これまでかと思われた。
だがそれは違う、ここからがグラップラー真里の本領であった。
「え!?」
矢口が飛んだ。
(頭付き!)
矢口の額が顎にヒット、思わず市井の動きが止まる。
その一瞬、矢口の掌が市井の胸に移動した。
750市井−矢口 B:02/09/20 00:21 ID:YKp1vCqh
SEXYビーム!!
中国武術に伝わる軽気孔発徑、それを彼女オリジナルに改良し名付けた技がこれだ。
マトモに受けた市井が大きく弾き飛ばされる。
「ゲホッゲホッ」
(忘れてた、闘れば闘る程強くなる。それがグラップラー真里だったね)
受けた部分が熱くなって、今にも意識がなくなりそうだ。
でもまだ終われない。見せるんだ。圭ちゃんに最高の試合を見せるんだ。
そんな必死で立ち上がろうとする市井を、矢口は一切の手加減抜きで叩き据える。
蹴り上げる。殴る。また蹴り込む。殴る。その速度が徐々に増してゆく。
崩れ落ちる市井の胸に、本日二度目の気孔が込められる。
(あと、任せたぞ)
パァァァァンという音を立てて、市井紗耶香は弾き飛ばされた。もう動かない。
『勝者!!矢口真里ぃぃぃぃぃ!!!!』
グラップラー真里の完全勝利だ。
任された。もう保田も、市井も消えた。たった一人残された矢口。
第二世代最強を知らしめる為の、彼女一人の闘いは今始まったのだ。
751あやや出陣:02/09/20 00:22 ID:YKp1vCqh
闘技場を後にした矢口が廊下の角を曲がったとき、待っていた娘がいた。
「おめでとうございますぅ〜」
松浦亜弥。闘いを終えたばかりの矢口の血が再燃する。
「松浦ぁ!てめえ何しにきた?」
「勝利のお祝いですよ〜。怖いなぁ〜ヤグチさんはぁ」
矢口がこれほど怒りを露わにするのも無理はない。
昨年はこの松浦のせいで、まともな闘いも、何もできずに終ったのだから。
「今度はおいらがお前をぶっ殺す番だかんな。覚えとけよ!」
「クスクス、でっきるかな〜?」
それでも松浦は余裕の笑みを浮かべている。
これから対戦する相手のことを知っているのか?あの怪物を…
「まあ待っていて下さい。今年はちゃんと普通に殺してあげますから。」
そう言うと松浦は歩き出した。
前には闘技場へと続く門、それは地獄への入り口。
こいつをくぐったらもう後へは引き返せない。死出の旅時。
「望む所」
松浦亜弥は迷うことなくその門を抜けた。
史上最悪のバトルが始まる。