「すんげえ弱い。」
2秒だった。
松浦の手刀が新垣の首筋に打ち込まれるまでの時間である。
予選大会を勝ち抜き、決勝トーナメントへ進む最初の一人が決まった。
松浦亜弥。
遊び気分で参加していた昨年とは何かが違っていた。
彼女の視界に、すでに出場を決めている紺野後藤、
そしてこれから決まるであろう12人が写っていた。
(一番強い奴とやりたい!)
決勝トーナメントへの道、まず一人。松浦亜弥。
昨年のリベンジマッチ。
プッチ入りをし、プロレスの技にさらに我流を加えた小川は強くなっていた。
一度倒した相手に負ける要素は一つもなかった。
だが違った。
それはなっちではなかった。
少なくとも、小川の知っているなっちではなかった。
一つの攻撃も繰り出す事なく小川は地面にひれ伏した。
立っていたのは修羅であった。
伝説再び、安倍なつみ、決勝トーナメント進出。
加護亜依は遊んでいた。
加護亜依は楽しんでいた。
久しぶりの闘い、久しぶりの実践。
小さな天才がリハビリを乗り越え蘇った。
「いっぽぉんぜうぉぉぉい!!」
柔道金メダリストあさみを投げ飛ばす。
加護亜依はまたひとつ強くなっていた。
加護亜依、決勝トーナメントへ
自分はすでに一線から引いた身、出場する気なんてなかった。
だが、後藤保田の引退のニュースを聞いたとき全身に震えが起きた。
この機会を逃せば、もう二度とあの二人と闘り合えなくなる。
そう思うと体がうずいて仕方なかった。
自分の力を試してみたい。
王者になるべくして生まれ落ちた娘。
あらゆる武を越えた存在、達人。
この二人と単純にぶつかりたい。一人の武人として。
決断した。つんくの傍を離れた。
年齢的にもこれが最後の挑戦となるであろう。
今、中澤裕子が娘。の舞台に舞い戻る。鬼が舞い戻る。
その前に立ちはだかる娘。石川梨華。
今や現役最強との呼び声も高い、TAPのトップ。
決勝トーナメントへの切符を手にするのはどちらか一人だけである。