今や伝説として語り継がれるあの激闘、なっち対後藤を知っている者ならば誰でも、こ
の修羅二匹の真っ向勝負を見て、胸を高鳴らせたはずだ。もう二度と再現する事はないと
思われた、あの奇跡の名勝負が形を変えて蘇ったのだから。
「これを…これを待っていたんです。」
平家みちよが泣いた。
「歴史が変わるかもしれぬ。」
「あの時のようにか。」
闘いに目を奪われた格闘技界の二大巨頭がたまらず立ち上がった。かつて王者なっちが
突如現れた後藤真希に敗れた様に、古き王は新しき王に打ち滅ぼされるもの。そして今ま
た時代は動こうとしている。
(どれだけ殴っても、どれだけぶっ飛ばしても、また立ち向かってくる。)
(本当に鬱陶しい奴で、本当におもしろい奴だったよ、なっちは。)
「そして、お前もなー。」
後藤が撃つ。辻は引かない。辻が撃つ。後藤も引かない。譲らない、どっちも。
決着が着かない、まるで神がその一人を選ぶ事を拒んでいるかの様に。
たった一人、たった一人なのだ、その先にある道を歩める娘は。
だがついにその時は訪れた。
559 :
:02/06/30 01:11 ID:a+izdfqX
ののはなっちさんに勇気をもらったのれす。
ほんもろのつよさというものをおしえてもらったのれす。
いっぱい、いーっぱいおしえてもらったのれす。
こんどはののが、誰かに勇気をわけれあれたいなぁ。
忘れないよ、辻希美という目茶苦茶強い化け物がいたってこと。
パワーはあんたが上だった。体力もあんたが上だった。根性もあんたが上だった。
ただ私の方がほんの少しリーチがあった、それだけ、それだけの差だった。
もしあんたがあと3cmでも大きければ、負けていたのは…
『けっちゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーく!!!』
激闘終結、最後の一撃はほんの数センチ、いや数ミリの差でしかなかった。同時に放ち
交差した腕と腕、相手に触れたのは後藤の拳の方だったというだけ。ついに力尽き果てた
辻は成す術なく崩れ落ちた。紙一重の勝利と言えどその差は天と地程もでかい。
『勝者!後藤真希!!』
神が選びし娘の名は後藤真希。歴史は変わらず!
決勝の椅子が一つ埋まった。残す椅子はあと一つ。
560 :
:02/06/30 01:13 ID:a+izdfqX
「良かった、後藤さんだ。」
透き通った声がザワメキ収まらぬ会場に、いやにしっかりと聞こえた。その声の主は全
身傷だらけで、しかも肩に娘を一人担いでいた。
「こっちもちょうど終った所です。」
担ぎ下ろされた娘を見て誰もがアッと声を上げた。松浦亜弥!
あの死神が意識を失った状態で運び込まれてきた!?しかもそれを行なった娘が紺野あ
さ美だったのだ。それが意味するもの、神が選びしもう一人のファイナリストがすでに決
定しているということ。
「コラー!紺野!どうゆうことやそれは!」
当然、大会主催者つんくの激が飛ぶ。まさか彼女が自分の命を救う為に闘ったなど知る
由もない。それどころか自分の命が狙われていることすら知らない。自分の目の届かない
場所で勝手に勝負を終えてしまったことが許せないのだ。だが、今の紺野の耳にその警告
は届いてはいなかった。いや、観客の大音声すら聞こえていなかった。今の彼女に耳に響
く声はひとつしかない。
「やるか?」
「いいのですか?もうボロボロでしょう。」
「それはお前も同じだろ。来い。」
その言葉しか届かない。
紺野は松浦を倒した。
闇の波動により全身が火傷する様な地獄を受けた、でもその拳だけは止めなかった。
神の拳が闇を切裂き、死神を貫いたのだ。
ずっと自分を縛りつけていた使命から、ようやく解放された瞬間。
でもそれはもう一つの使命の始まりでしかない。
他の誰でもない、自分が自分へとかした何より重い使命。
(後藤さん、あなたは覚えていないだろうけど、私はあの時のこと忘れたことはない)
(この拳も、すべて、あなたに勝つ為に磨いてきました。)
強い、この子は強いね。
よっすぃーに勝った。圭ちゃんに勝った。松浦に勝った。
本当に強い。怖いくらいだよ。
でもゴトーは負けないよ、まだ待ってる奴がいるんだから。
確信してる、なっちはもう一度ゴトーの前に帰って来るってね。
その時まで誰にも負けちゃいけないんだ、頂点のままなっちを待ってるんだ。
残った娘はこの二人。いざ決勝戦!!
To be continued