ごっちんの様子がおかしい?そう最初に気付いたのは吉澤ひとみ。なっちが敗れ大会自
体へのやる気を失いかけていた様に見えた。だが今の彼女から溢れん出んばかりの闘志は
何だろう。誰が?誰が彼女に火を付けた?小川か?それとも…?
『二回戦第二試合!!』
拳を振りかざし姿を見せたのは小川真琴。プロレス最強を証明する為に参戦した燃える
闘魂。負けられない、格闘家にだけは負ける訳にいかないのだ!
「来いや!チャンピオン!」
後藤真希入場!こちらは対照的にクールに、どれだけの大歓声が起きようと眉一つ動か
そうとしない。静かにその瞬間を待つ。
「はじめぇぇぇ!!!」
小川の視線が王者の体を泳ぐ。
うまそうだ、どうやって料理してやろうか。
投げて欲しいか?決めて欲しいか?ぶっ叩いて欲しいか?
抵抗しても無駄だぜ、私にゃどんな攻撃も効かねえよ。
ほーらタックル行くぜ!なんだその程度のへなちょこハイで対抗する気か?
効かねえって言ってん…
小川の堅い顎が後藤の右ハイキックを無力化してみせた。だが次の瞬間放たれた左のハ
イに反応を示すことはなかった。堕ちる。
【双龍脚】
左右同時に迫り来る龍の牙。言葉にするのは容易いがそれは不可能レベルの遺産。
一本のおみ足が左右から飛んでくるという矛盾。
王者が、ついにその力のベールを覗かせた。
ハッハー!とった、とったぜ!捕まえりゃこっちのもんよ!
たかがキック一つでやられると思うなコノヤロー!プロレスの醍醐味とくと拝みやがれ!
さぁ皆さん御一緒にっ!!
バァーーーーーーックドローーーーッ…
棒立ちの後藤。
その腰に掴み掛かる小川。意識等とうの昔になくなっている。
「その意志だけは認めたげる。」
『勝負ありぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!』
つんくが手元の時計に目をやる。13秒ノックアウト。桁外れ。
「小川が弱いんやない、あいつが強すぎるんや。」
「これが本物のチャンピオン!」
悔しかった、歯がゆかった、抑え切れない気持ちが吉澤を悩ませる。
自分では呼び覚ますことのできなかった本物がここに。
(誰がごっちんを本気にさせた!?)
もう一人、常に笑みを浮かべていた達人の眼差しから優しさが消える。
(誰が真希を本気にさせた!?)
もう同門でも仲間でもない、一人の強大な敵。
足元に転がる小川に目もくれる事なくその場を後にする後藤真希。
その瞳に写るモノは・・?
「お前の責任だぜ、なんとかしてみろ。」
石川梨華が苦笑いを浮かべる先に、よだれを垂らし眠る少女。
地上最強のベスト4、その片方が埋まった。
To be continued