モームス最大トーナメント

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410辻っ子のお豆さん
さぁ御見せしよう、145cmの奇跡。
今、扉は開かれた。

「ピーチ♪」

 眼前に松浦亜弥。思考する暇はなかった。胸倉に衝撃が落ちる。どうやって自分が弾き飛ばされたのかもわからない。室内中央のテーブルに背中を強打した。
(なんで?)(ここに?)(不意打ち?)(上等)(やったろうじゃん!)
(次に仕掛けてきたらそこで腕をとって反撃する。)
(戦闘準備は万全。だまし討ちする相手を間違えたなバーカ。)(さぁ来いよ。)
矢口の体内に反撃の態勢が整う。
だがテーブル上で仰向けになっていた矢口の視界に写ったのは松浦ではなかった。
ロッカー!?
 空を飛んで襲い掛かってきたのは室内に配置されていた巨大なロッカー。テーブルごと矢口を押しつぶす。さらにソファ、鉢植え等部屋中にあるあらゆる物が投げ込まれた。
「まつうらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
矢口の絶叫はロッカーが潰れる音によって掻き消された。
試合開始5分前の出来事。
411辻っ子のお豆さん:02/05/31 15:19 ID:LkcLX+e4
「まつうらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
先ほどと同じ叫びが意識を取り戻した矢口の口から発された。
飛び起きようとしたが、全身の痛みを感じそのままうずくまる。
「真里!!」
「矢口さん!!」
 そして目の前にいるのが松浦ではなく、見知った飯田と加護である事に気付き、矢口はようやく我に返った。
「試合は…?」

一触即発状態の石川と松浦を止めたのは意外な人物だった。
「いい加減にせいや、お前等。」
本場物のドスを利かした睨みで二人の間に割って入ったのは中澤裕子。
「10分も待たれんのか、気ぃ短い子等やわほんま。」
流石と言うべき威圧感であったが、残念ながら安々と引く二人ではない。
「どいて下さい!矢口さんの敵討ちなんです!」
「アホォ、まだ矢口が負けたて決まった訳やないやろ!」
中澤の恫喝に石川の勢いが徐々に薄れてゆく。確かに彼女の言う通りだ。
「それに矢口の代わりはあんたやない、こんな時の為のリザーバーでしょ。」
中澤の眼が松浦を捕らえた。
412辻っ子のお豆さん:02/05/31 15:20 ID:LkcLX+e4
時計の針は無情にも10分の経過を示した。
矢口真里は結局姿を見せなかった。肩を落とすつんく。不本意なアナウンスが流れる。
『矢口真里不戦敗!!!代わりましてリザーバーのなかざ…』
「ちょおーっとまったぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
その声に反応し顔を上げるつんく。
振り返る石川梨華。
思わず口端をあげる保田圭。
目を見開く松浦亜弥。
飯田と加護を従えて颯爽と登場した火の玉娘、グラップラー真里こと矢口真里。
最大級の歓声が彼女を歓迎した。

誰にも気付かれることなく中澤裕子は静かに身を引く。
彼女は初めから戦う気等なかった。ただ自分の後輩を信じていただけだ。
(それでこそチャンピオン、やったり!)

松浦の表情から笑みが消えていた。目を細めて火の玉娘を見詰め続ける。
(へぇ、あれだけのダメージでまだ刃向かうの。)
(なんだかイライラしてくるなぁ、あの人を見てると。)
(おとなしく寝ていれば良かったのに…)
「ほんとうに息の根を止めようかな。」
413辻っ子のお豆さん:02/05/31 15:21 ID:LkcLX+e4
「すいませ〜ん、寝坊してました!」
全身打撲の重体をまるで感じさせない矢口の口調と表情。
(馬鹿、本当は戦闘どころか歩くのさえやっとのくせに…)
事情を知る飯田と加護だけが、苦い思いで火の玉娘の背中を見つめる。
「やっぱ無理やて、なんで止めへんのや飯田さん!」
加護の気持ちも分かる。だが飯田には矢口の気持ちも痛いほど理解るのだ。
「この大会を誰より楽しみにしていたのは真里だ、そんなあいつを止められるか。」
加護は気付いた。握り締められた飯田の拳から血が零れ落ちている事を。
(ああ、闘っとるんや、この人も…)
「加護、よく見ておけ。矢口真里という娘の雄志を。」
そう告げた飯田の言葉は微かに震えていた。
自分より小さい、145cmの背中が、その時の加護にはどんなに大きく見えたことか。

「強いだけじゃないんだよ、見る者みんなを熱くさせるんだよあの子は。」

(まだ何も始まってへん。闘技場に踏み込んだだけや。)
(だけど、それだけでうちの胸はこんなにドキドキしてる。)
いつしか、加護の眼から水の玉粒が湧き出ていた。
414辻っ子のお豆さん:02/05/31 15:21 ID:LkcLX+e4
「さっきはどうも。」
不敵な笑みで松浦の前に現れた矢口。対する松浦は一転して無表情。
「イイワケしないの。うまくすれば私を反則負けにできるかもよ。」
「黙れガキ、お前程度にゃこんくらいちょうどいいハンデなんだよ。」
明らかに強がり。傍目からも無理をしているのが分かる。闘える体ではないと。
「分かりました。二度と強がりを叩けない体にしてあげましょう。」
長かった一回戦、ラストバトルが始まる。

To be continued
415予告:02/05/31 15:25 ID:LkcLX+e4
次回、いよいよベスト8が決定する!
果たして145cmに奇跡は起こるのか?
その時松浦のとった驚愕の行動とは?
すんげぇ すんげぇ すんげぇ すんげぇ あつい
すんげぇ すんげぇ すんげぇ すんげぇ バトル
乞うご期待!