モームス最大トーナメント

このエントリーをはてなブックマークに追加
402辻っ子のお豆さん
「おいおい、どーなっとんのや!?」
大会主催者つんくの激が飛ぶ。会場中が混乱に渦巻いている。
出場選手が登場しない、前代未聞の出来事である。
「急に怖くなって逃げ出したのか?」
「まさか、あの矢口に限ってそれはありえない。」
「じゃあ何か事故にでも巻き込まれてるとか…」
そこで観客席にいる男二人はハッとして顔を見合わせた。
やがて視線をゆっくりと舞台場に立ち尽くす少女に向ける。
松浦亜弥。
同様の考えが、飯田達の頭に浮かぶ。
「控え室、行くぞ!!」
飯田の合図と共に、横にいた加護も付き従い駆け出す。
だが、石川だけは何を思ったか反対の方向へと歩み始めた。
その頃、つんくを含めた審判団達はこの緊急事態の対処に頭を悩ませていた。
「ルール上、松浦の不戦勝ということになりますが…」
「しかし、俺は二人のファイトがみたいんや。」
「ですがつんくさん、いつまでも皆を待たせる訳にもいきません。」
「しゃーないなぁ。10分、10分や。」
403辻っ子のお豆さん:02/05/28 12:44 ID:YH7WYQz3
『10分立っても矢口選手が現れなければ、松浦選手の不戦勝と致します!!』
その場内アナウンスに観客達の間に不満と不安の声があがった。
選手達にも不満を持つ者はいた。
「なんだよー、怪我を押してわざわざ観戦に来たってのにさ。」
包帯姿の吉澤が口をとんがらせる。
「矢口って人、逃げちゃったのかなぁ、それとも…」
後藤は特に動じた様子もなく成り行きを見守っている。
そんな二人を諭す様に達人保田が口を開いた。
「安心せい、奴はそんな女ではない。」
保田は知っている。本当の矢口という娘を。
「奴は必ず来る!」

(ザワッ…)
突如、場内にざわめきが走る。
「あれれ、怖い顔して何か様ですか〜?」
矢口と同じTAP会館、石川梨華がゆっくりと闘技場へと足を踏み入れていた。
その表情は普段の愛くるしい石川のものではない。
404辻っ子のお豆さん:02/05/28 12:44 ID:YH7WYQz3
松浦亜弥と石川梨華、合い並ぶ事のないと思われた組み合わせが今ここに。
「あんた、矢口さんに何かした?」
「え〜、あややわかんな〜いなぁ〜。」
相変わらずとぼけた口調の松浦に、石川の静かな警告がさらに強みを増した。
「10分経っても矢口さんが来ない様なことがあれば、私があんたの相手をする。」
衝撃の発言に会場中が驚きの声をあげる。
だが松浦は驚くどころかむしろ笑みさえ浮かべている。
「10分後と言わず、今すぐでもいいわよ♪」
プツン。
その科白に反応するように、石川の気が戦闘モードへと移行する。
「やめぇーい!!!」
つんくの制止の声も空しく、二人の凄いスピードで激突した。
吹き飛んだのは石川梨華、だがガードしていたのでそれほどダメージはない。
パラパラ…
松浦の袖口が落ちた。あの一瞬でこの芸当。これがTAPのリーサルウェポン。
(へぇ、意外とおいしそう…)
予定外の獲物を前に、松浦は舌なめずりをした。
「殺しちゃってよいのかな〜♪」
405辻っ子のお豆さん:02/05/28 12:45 ID:YH7WYQz3
「なんや、これぇー!」
矢口の控え室を前に加護は大声を上げた。扉をいくら押しても一向に開かないのだ。
「どけ、加護。」
武神飯田圭織の気が拳に集中している。加護はあわてて扉から離れた。
稲妻の様な飯田の正拳が控え室の扉を破壊する。
(ひょえー!ののの奴、ようこんなもんくらって立ちよったわ。)
凄まじい破壊力を目の当たりにし、加護はポカーンと口を開けた。
だが矢口の事を思い出しすぐに控え室内部へと、意識を戻す。
そこで飯田と加護は信じられない事態を目にする。
荒れ果てた控え室。
山積みにされたロッカー、ソファ、テーブル。そのせいで扉が開かなかったのだ。
「矢口!矢口!いるかー!」
「あいぼんやでぇ〜、矢口さ〜ん!!」
だが返事はない。飯田と加護の声が空しく響き渡る。
(これは!これはあいつの!松浦の仕業だっていうのか!)
どうしようもない怒りが飯田の胸に渦巻く。
そして、時計の針は無情にも10分の経過を示した。

To be continued