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辻っ子のお豆さん:
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:02/03/18 13:51 ID:ugDsZEeT
( ´D`)ノ<2
【第1章 集いし娘達】
日本格闘技界において最大勢力を誇るTAP会館。その門下生は実に数万にも及びその
頂点に立つのが館長の飯田圭織である。その日圭織は日課となっているトレーニングを終
え、自室のデスクに腰を下ろし、夕刊を広げてお茶をすすっていた。師範代の石川が館長
室の扉をノックするまでは普段と何も変わらない日常であった。
「館長、いいですか。」
「どうした?」
端正な顔立ちの美しい娘が入室してきた。その細身の体からはおよそ格闘技と関わってい
る者とは想像し難い。ところが数万に及ぶTAP全門下生でも、この細身の娘と対等に渡
り合える者は館長の飯田を含めて数える程しかいないというのが現状である。彼女は俗に
呼ばれる天才というやつであった。TAPに入門してきて数年であっという間に、師範代に
まで上り詰めてきたのだ。今ではTAPの最終兵器という異名まで持つようになっている。
しかし普段はいつもニコニコと笑顔な人なつっこいタイプで、多くの門下生が彼女を慕っ
ている。それが今日はその笑顔が消えていた。
「小さなお客さんが来てまして、館長に会いたいと。」
「誰だ?今日はそんな約束ないはずだぞ。」
「アポイントはなしです。まあ要するに道場破りって奴です。」
「そんなもん俺が出るまでもねえだろ。適当に相手して追い返せ。」
「そのつもりだったのですが・・」
勝者、辻希美!
「お!」
石川に連れられて下の道場に足を踏み入れると、飯田はその予想外の光景に少し驚きの
声をあげてしまった。この日、本部の道場であるこの場所には百人を越す門下生がいたの
だが、そのほとんどが床にうずくまっていたのだ。そして中央に小さなお客様が悠々と立
ち尽くしている。圭織は思わず笑みをこぼしてしまった。
「なるほど、お前が言った通り、確かにおもしろそうな奴だ。」
「笑い事じゃないですよ、館長。」
「すまんすまん、そういえば矢口はどうした?」
「矢口さんなら加護を連れて、予選大会の下見に出てます。」
「加護も一緒か、あの問題児がこの場にいなかったのは幸いかもしれんな。」
よく見るとこの道場破りも加護と雰囲気が似ているなと圭織は思い、また笑みがこぼれた。
だがあの小さな体で百人もの猛者を倒してのけたのだ、ただ者ではないだろう。等と考え
込んでいると、待ちきれなくなったのか小さな道場破りの方から動き出した。
「あんたらかんちょうさんれすね?」
「お、おお。」
まさかこんな舌足らずな声が来るとは思っていなかったので、圭織は吹き出しそうになり
変な返しをしてしまった。
「ののとたたかってくらはい。」
小さな道場破りは飯田に向かって構えをとった。
「私がやりましょうか?」
「いや、いい。せっかくだから直々に相手してあげよう。」
石川の申し出を断り、圭織は前に歩み寄った。
「始める前に名前を聞いておこうか。」
「辻希美。」
「フム、どうしてここへ?」
「つよいやつにあいたいかられす、あんたをたおしたら次はプッチれす。」
−プッチ−その言葉に圭織の眉がピクリと反応した。総合格闘団体プッチはTAP会館と
並び、格闘技界の二大勢力と言われている。現役チャンプ後藤真希や柔術の達人保田圭等
の猛者を何人も輩出している。歴史はTAP会館の方が長いのだが、ここ数年はプッチの
勢いにやや押され気味とマスコミにも評されている。それだけに圭織が、プッチという言
葉に少なからず反応するのも致し方ないことではあった。
「辻といったか、残念だが君がプッチを訪ねることはなさそうだ。」
「ろうしてれすか?」
「ここで私に倒されるからだ。」
言葉が言い終るやいなや飯田は瞬時に間合いを詰めた。辻が油断していた訳ではない、会
話をしている間中もいつでも飛び出せる様に全身に気を巡らせていた。ただ、飯田の詰め
方があまりにも洗練されていたのだ。予備動作もほとんどない突然のことに辻は虚を突か
れてしまったのだ。気が付いた時には飯田の拳が目の前にあった。
辻も並の者ではない。その正拳突きに咄嗟に反応し両手で飯田の右腕を掴み込み、見事
止めてみせた。と思ったのも束の間、圭織の左足から放たれた前蹴りが辻の水月を打ち抜
き、勝負は一瞬で着いた。気を失った辻はそのまま床に崩れ落ちた。
「さすが館長、お見事です。」
壁に寄りかかって二人の攻防を眺めていた石川が拍手で、圭織を向かえる。ところが圭織
の様子がおかしい事に気付いた。
「どうしました?」
「こいつ、やっぱただ者じゃなかったわ。」
見ると、辻に捕まれた圭織の右手首が赤い痣となっている。
「手ぇもってかれるかと思った。チビのくせに半端なパワーじゃないよ。」
「へぇ〜」
「このまま成長したら、とんでもない化け物になるかもしれんな。」
「で、どうしましょうか?」
飯田と石川は気絶して倒れ込む辻を見下ろして考え込む。百人もの門下生が傷を負わされ
たのだ、ただで帰す訳にもいかない。どうしたものかと思い悩んでいると、正面玄関が開
く音が聞こえた。そこに一人の娘がたっていた。
「あなた誰ですか?」
「その子を引き取りに来たの。」
「はい、そうですかと渡すと思います?」
「やめろ石川!」
「どうしてですか館長。」
「そいつはなっちだ。」
なっち、その名前は石川にも聞き覚えがあった。いや、この世界に身を置く物にとってそ
の名を知らない物はいないであろう。無敵の王者として日本格闘技界に君臨し続けていた
伝説の人物だ。だが3年前のあの闘い以来、消息が不明となっていた。
「生きていたのか、なっち。」
「久しぶりね圭織。腕は衰えてないみたいで安心したべ。」
「このチビはお前の弟子か?」
「う〜ん、まあそんなとこかな。ほら、のの立て、行くぞ。あー駄目だ。完全に伸びてる。」
「今更何をする気だ。」
「今度の大会、なっちも出場するべ。」
「狙いは後藤か?」
「当然だべさ。」
そう言うと、なっちは辻を背負ってTAP会館を後にした。その後ろ姿を不満気に見詰め
る石川とは対照的に、飯田は喜びを隠しきれずにいた。
「おもしろくなってきた。」
バケツ一杯の水を顔にかけられ、希美は目を覚ました。
「はれ、ここはろこれすか?」
意識が戻るとそこが川原の土手であることがわかった。そして飯田に完敗した記憶も蘇っ
てくる。目の前には、バケツを抱え笑みを浮かべる安倍の姿があった。
「どうだった?実際に武神と対戦した感想は?」
「…つよかったのれす。」
「だろうね、今のあんたじゃまだちょっと相手になんないっしょ。」
「安倍さんならかてるんれすか?」
「どうだろう?やってみないとわかんないな。」
「のの、もっとつよくなりたいのれす。」
「あんた素質はあるからさ、後は経験だよ。強い奴とたくさん戦うこと。」
「そうれすね、いっぱいたたかっていっぱいつよくなるのれす!」
目標が決まり辻は跳ね起きた。しかし飯田にやられたお腹がズキンと痛み、すぐにまた崩
れ落ちた。それを見た安倍が声を出して笑う。
「アハハハ、今日はもう無理だよ。おとなしく安静にしてな。」
「へい。」
辻はお腹を抱えながら、いずれ飯田にリベンジしようと心に誓った。
手を床に付け体を激しく回転させながら足技を繰り出す。カポエラと呼ばれる異国の武
術を用いて、試合を勝ち進む娘がいた。
「あいつがカポエラのアヤカ、この大会こいつが本命かな。」
「ほんまか矢口さん、要チャックやで!」
今夏開催されるモームス最大トーナメント出場を賭けた予選大会が、全国各地で繰り広げ
られている。ここ北陸会場でも先ほどから娘達の熱い闘いが行われている。すでに予選を
勝ち上がり本選出場を決めている矢口は、加護を連れてわざわざ北陸の地まで下見にやっ
て来たのだ。
「次が決勝やね、矢口さんの言うてたアヤカってのも勝ってるみたいやで。」
「そうね、今の内にじっくり見てカポエラ対策しといた方がいいわ。」
ところが、その決勝戦は予想外の結末を迎えることになる。
「勝負あり!勝者高橋!!」
本選へのキップを手にしたのは無名の新人、高橋愛という少女だったのだ。アヤカのカポ
エラを嘲笑うかのごとく上空からの華麗な舞、その空中殺法にアヤカは全く成すすべなく
倒されたのだ。
「高橋愛か、こりゃ来て正解だったかもね。相当できるよあいつ。」
「いーなーいーなー、うちも大会に出たいねん。」
「あんたの実力じゃまだ無理よ。ほら帰るぞ。」
会場を去る矢口の背中に向けて、加護はほっぺたを膨らませた。
格闘技雑誌編集の職に就く平家みちよは、この夏開催されるモームス最大トーナメント
の担当という大きな仕事を手にする事ができた。今日は昨年の覇者後藤真希を取材する為
に、総合格闘団体プッチのビルにやってきた。今もっとも勢いに乗っているだけあって、
中は活気に満ち溢れていた。ベンチで一休みしている後藤を見つけた平家は早速取材を始
めることにした。
「おはようございます後藤さん、少しお話聞かせてまらっていいですか?」
「んあ〜いいよ。」
「昨年は圧倒的な強さで優勝しましたが、やはり今年の目標は連覇ですか?」
「う〜ん、まあ適当にがんばるよ。」
「今年はあのTAP会館の選手も出場するそうですが、それについてはどう思います?」
「そうなんだ、今初めて知ったよ。フーン。」
「・・やる気あります?」
「あるよ〜。」
「ごっちーん!スパーの相手してー!」
「あ、よっすぃー、うん。それじゃあお話はこれで。」
「は、はい。」
スパーリングパートナーの吉澤ひとみに呼ばれて、後藤真希はようやく重い腰を上げた。
所在をなくした平家は、二人の練習風景をカメラに収めることにした。
後藤真希と吉澤ひとみ、この組み合わせはそのまま昨年のトーナメント決勝の組み合わ
せである。優勝後藤、準優勝吉澤。この様に現在の格闘技界はプッチの独壇場であったの
だ。その現状にしびれを切らしたTAP会館がいよいよ今年の大会から参戦するとの事で、
例年以上の盛り上がりを見せている。
「武神飯田圭織、グラップラー真里、それと最終兵器石川梨華。」
TAPにもプッチに負けず劣らぬ程の猛者が揃っている。いかに王者後藤真希と言えど、今
年はそう簡単に勝ち進めるとは思えない。こんなやる気の無さで大丈夫なのだろうかと平
家は密かに案じていた。現にスパーの内容を見ていても、吉澤に押されっぱなしで後藤は
ほとんど手が出ていない。3年前の、あの伝説の名勝負を繰り広げた頃の後藤真希の面影
はもうどこにも見られない。
「今年は駄目かもしれない・・」
肩を落としてため息を吐く。平家はあの名勝負に心打たれてこの世界へと足を踏み入れた
のだ。今や伝説として語り継がれる安倍なつみ対後藤真希の闘い。その勝負に敗北して以
来安倍なつみは消息を絶っている。
「安倍なつみ、一体どこへいったんだろう?」
三日後、その安倍が格闘技界に電撃復活を果たす事になろうとは、このときの平家には想
像すらできなかった。
吉澤ひとみとのスパーを終えた真希はそのままシャワー室へと姿を消した。その瞳は虚
ろなまま。事実、真希は勝負に対するやる気を失いかけていた。3年前、安倍を破ってチ
ャンプとなって以来、一度の敗北もないまま現在に至る。傍目には輝かしい栄光の道に見
えたが真希の心は満たされぬままであった。
(もう一度、あのときの様な闘いがしたい・・)
安倍なつみとの死闘は真希にとっても忘れられぬものであった。延長に次ぐ延長、互い
に全ての力を出し合い、まさに紙一重の勝利だった。闘いに楽しさを感じれたのもあの時
が最初で最後、その後はもう誰とやってもあの時の興奮は戻らずにいる。降り注ぐシャワ
ーの感触を全身に浴びながら真希はため息をついた。
そんな後藤の姿を複雑な表情で睨み付ける娘がいた。たった今拳を交えたばかりの吉澤
ひとみである。
(ため息、いい御身分ね)
“プッチのNo2”“昨年の準優勝者”“後藤真希のスパーリングパートナー”吉澤ひとみ
を形容する言葉には全て、後藤真希の引き立て役的意味合いが含まれていた。二人は普段
からも仲良く一番の親友同士である、それだけに余計に辛いのだ。
(私じゃ満足できないってこと?)
(だったら思い知らせてあげるよ、今度の大会でね)
マスコミや世間の目ではない、誰よりも後藤真希に認めてもらう為に。それには彼女を越
えるしかないのだ。吉澤もまた苦悩する一人だった。
「どうゆうことやー!!」
TAP会館道場で大騒ぎするのは、先ほど帰ってきたばかりの加護亜依であった。
「だから、道場破りが来たって言ってるでしょ。」
説明する石川も、そのあまりのしつこさにいい加減ウンザリしかけている。加護程騒ぎ立
てはしないが、師範の矢口も明らかに不満気な面持ちである。
「こんだけやられて、なんであっさり帰したって聞いとんねん!」
「館長がそうしろってゆうんだから、しょうがないでしょー!」
「しょーがなくないわボケ!」
「何よその口の利き方、私の方が年上なのよ!」
「関係あらへん!やるか、おお!」
「フン、あんたなんかに相手にならないわ!」
取っ組み合いになるかならないかの所で、二人の頭上に飯田の鉄拳が振り下ろされその場
はとりあえず収まった。
「くだらんことでケンカすんな。」
「いったーい!」
「お前のせいで殴られたやないか!」
やっぱり問題児だ、と飯田は心の中でため息をついた。まあ加護の性格からいってこうな
ることは予想できてはいたが。やはり口で言い聞かせても納得はしないだろう。
「もうええ!うちくらいのタッパで辻希美っちゅう奴やったな。」
「ちょっとあんた、どこ行く気よ!」
「探し出してボコボコにしたる!」
「はぁ!?」
そう言うと加護は一目散に道場を飛び出していった。すると、今まで黙っていた矢口も後
に続く様に歩き出す。
「ちょ、ちょっとぉ、矢口さんまで行く気ですか?」
「私は道場破りなんかどうでもいいよ、やられた奴が弱いから悪いんだし。」
「それじゃあ何で・・」
「なっちか?」
どうやら飯田は矢口の思惑を察していた様だ。矢口の口端が軽く上がる。
「そんな名前を聞かされちゃ、じっとしてなんかいられないんだよねぇ。」
なっちという言葉が、矢口真里の小さな体に秘められた闘争本能に火を点けたのだ。溢れ
出んばかりの闘気を剥き出しにして、矢口も道場を後にした。
「まずったな、注意すべきだったのは加護よりあいつの方だった。」
「大会前なのにやる気なんですかねぇ?」
「あいつが本気になったら、俺でも止められるかどうか・・」
加護と矢口が消えた出口を見つめ、飯田は再びため息をこぼした。
ホテルの一室で目を覚ました辻希美は、目をこすりながら部屋に備え付けられた時計を
見やった。時計の針はもう正午を指している。どうやら丸半日も寝てしまったみたいだ。
慌てて起き上がると腹部がズキンと痛んだ。
「うぐぅ〜いたい。」
昨日飯田にやられた場所だ、どうやら当分苦しめられそうである。しばらくの間ベットで
悶えていたが、ご飯を食べたら治るだろうと考えすぐに気をとりなおした。常人が飯田の
蹴りをまともに受ければ1週間は飯もまともに食えないと言われているが、彼女にはそん
なことお構いなしであった。事実、この後ペロリと3人分のランチを平らげデザートまで
食していた。
「きょうはろこへいこうかな?」
満腹になる頃には、もう怪我の事はすっかり頭の中から消え失せていた。
「お前が辻希美か?」
そう声を掛けられたのは、ホテルをチェックアウトして、すぐ傍の川原沿いを歩いていた
時だった。辻が振り返ると、同じくらいの年頃の娘がすごい形相でこちらを睨んでいる。
「へい、そうれす。」
見覚えのない顔だったので不信に思ったが、満腹で機嫌の良かった辻は素直に返事をした。
すると突然の回し蹴りが辻を襲った。間一髪でなんとかそれを避ける。
「いきなりなにするんれすか!」
「TAPの加護亜依や、昨日はうちのもんが世話になったらしいの。」
TAPと聞いて辻も事を理解した。
「やるきれふか?」
「なんや、変なしゃべり方しよって!」
「そっちも変なのれす。」
「うっさい!ぶっ殺したる!覚悟せい!」
加護の息も切らせぬ様な連続攻撃が辻を襲う。切れ味の良い無駄の少ない動き、幼いなが
らに相当鍛練を重ねた物である。どうやらスピードでは負けている様で、辻は何発かの突
きをもらっていた。だが体重が軽い分、一撃の重みが少ない。パワーなら自分に利が有る
とこのわずかな攻防で辻は悟り、行動に移した。大鎌の様な辻の右フックが空を切る。加
護は紙一重でそれをかわした。はずだったのだが、そのまま後ろに尻餅を付く事になる。
(なんや、こいつ!?)
風圧だけで吹き飛ばされたのだ,それ程圧倒的な破壊力をもった一撃だった。チャンスと
睨んだ辻は一気に勝負を付けるべく、腰を下ろす加護に向けてもう一度大きく振りかぶる。
しかしすぐにそれが短絡だったことに気付かされる。加護は同じミスを2度犯すような娘
ではない、腕を振り下ろした辻は一瞬何が起きたのかわからず戸惑った。放った腕に加護
が絡み付いていたのだ、そしてそのままの勢いで反対に投げ飛ばされる。
「うわぁーーー!!」
投げが終ってもまだ加護の攻撃は止まらない、腕を掴まれたまま寝業で攻めてくる。これ
は柔術?それとも柔道?経験した事のない攻撃の応酬に辻は翻弄されていた。
器用貧乏な加護はありとあらゆる格闘技をかじっていた。空手、ボクシング、柔道、柔
術、アマレス、中国拳法、etc。その結果、従来には見られない様な格闘スタイルを持つ様
になったのだ。
(技れはまける・・)
いつまで経っても振りほどく事のできないので、辻は考えを改めた。相手のスタイルに合
わせていては分が悪い、こっちのペースに持ち込むのだと。
「いやああああああ!!!」
「ほえ〜!」
辻は腕の力だけで強引に加護を持ち上げた。身の危険を察した加護は咄嗟に腕を離して難
を逃れる。
「信じられへん、化け物かお前は!?」
「そっちこそ変な動きらっかりれ、ずるいのれす!」
「アホ!ケンカにずるいも糞もあるか!」
二言三言言葉を交わすと二人はまた組み合う。辻も加護も今までこの様な相手と出遭う
事はなかった。格闘スタイルは全く違うが実力はほぼ互角、そして両者とも一歩も引こう
としない強い信念の持ち主である。一つ拳を交わらせるごとに、二人は徐々に互いに引か
れていった。もう最初の理由など二人ともすっかり忘れてしまっている。ただ純粋にこい
つに勝ちたい、そんな単純な気持ちだけが二人を動かしていた。
その同時刻、少し離れた場所ではもう一つの闘いが始まろうとしていた。人気のない廃
工場跡になっちと、その女はいた。
「グラップラー真里。」
「光栄ね、あなたにその名を知っててもらえたなんて。」
「知らないわけねえべさ。」
なっちが表の世界で王者として君臨していた頃、もう一つの世界、裏の舞台、地下闘技場
で王者として君臨していたのがこの矢口真里である。
「あんたとは一度ケリをつけたいと思っていたのよ。」
「あら、そう。」
「それなのに、お前が後藤なんかに負けちまうから!」
「…」
「でも戻って来てくれて嬉しいよ、さてどっちが本物の王者かはっきりさせよう。」
「…」
「構えな。」
しかし安倍は、複雑な表情を浮かべたまま棒立ちで、一向に構えをとろうとしない。痺れ
を切らした様に矢口が声を張り上げて叫ぶ。
「どうゆうつもり!?」
「悪いけど、今は闘えない。」
「後藤真希か!」
「うん、それもある。」
「…」
「なっちも次の大会に出る。どうせならそこで闘ろう。」
「!」
「なっちは後藤真希とも闘いたいけど、矢口真里とも闘いたいべさ。」
「…」
「…」
「・・へっ。」
構えを解いた矢口は、後ろに振りかえり歩き始めた。
「俺と当たるまで負けるんじゃねえぞ。」
「そっちこそ。」
二日後、モームス最大トーナメント予選、中部会場に安倍なつみの姿があった。出場選
手の中になっちの名前をみつけた選手や報道関係者は一時パニックに陥る程であった。無
理もない、3年前に消息を絶った伝説のチャンピオンが予告も無しに戻って来たのだから。
「ウーン、この空気、ひさしぶりだべ。」
会場中の注目がなっちの復活劇に注がれていた。
やっつけ仕事のつもりでこの場を訪れていた平家みちよは、喜びと興奮でカメラをうま
く持てない程であった。
(本当に、本当に、あのなっちなの・・)
「ちょっとあんた、何泣いてるの!」
「え、え?」
先輩記者の稲葉貴子に言われ、平家は始めて自分が涙を流している事に気付いた。
(恥ずかしい、涙もろいなあ・・歳かも)
「ほら、あそこ見てみ。」
涙を拭いて稲葉の指差す方向を、慌てて見る。
「あ、あれって!」
「そう、TAP会館の飯田、矢口、石川だよ。」
「わざわざこんな所にまで来ているという事は・・」
「ああ、なっちの復活を知っていたみたいだな。」
その通り、飯田達は安倍なつみを見る為に来たのだ。
「さてと、見せてもらうぞ。3年越しのお前の実力を。」
「くぅ〜ヤグチ見てるだけなんて我慢できないかも。」
「まあまあ堪えて矢口さん、それより加護の奴どうしたんでしょうね?」
加護亜依は辻を追って道場を飛び出してから一向に戻ってこない。普段ケンカばかりして
いる石川も流石に心配になっていた。
「ほっとけ、あいつのことだからそのうちひょっこり戻ってくるだろ。」
飯田にそう言われては、石川に返す言葉はない。
ところが、姿が見えないのは加護だけではなかった。
「…ったく、ののの奴どうしたんだろ。絶対応援に来るってゆってたくせにさ。」
辻希美もまたあの日以来消息を絶っていた。元々どこからやってきたのか、安倍にとって
も色々謎の多い娘ではあった。ひょっこり現れて「強くなりたい」と言うので格闘技の真
似事を少々教えた程度の間柄でしかない。
(圭織に負けたのがそんなにショックだったのかな?)
なつみはそう解釈してあまり気にしないことにした。今は試合に集中することが大切であ
る。こんな所で負ける訳にはいかないのだから、あいつの前に立つまでは。
(真希・・)
『1回戦第6試合、村田めぐみ対安倍なつみ』
マイクアナウンスの声がそう響き渡ると、会場中が一斉にどよめいた。伝説となり語り継
がれる後藤真希との対決以来、実に3年ぶりに公の舞台に姿を現わす王者の帰還を会場中
の全ての人間が歓喜と期待の声で受け入れた。
(やっぱり緊張するべさ)
入場中は照れ笑いを浮かべていたなつみも、対戦場に足を踏み入れ対戦相手と向かい合う
頃には顔つきも変わっていた。無敗のチャンピオンとして君臨していたあの頃の顔に。
「フォッフォッフォッ、どうやら間に合ったようじゃの。」
「間に合ってねーっつうの!もう決勝じゃん。」
「ひとみ君、長い人生、そう慌てる事もんじゃないですぞ。」
「うっせぇババア!遅れたのはあんたのせいだろうが!」
「誰がババアじゃ!わしゃまだまだ現役じゃわい!」
「はいはい、わかりました。」
プッチの総帥保田圭と吉澤ひとみが口論しながら会場に入ると、中部予選はもう決勝が始
まる所まで終っていた。二人の後ろから入場した後藤真希の目が試合舞台に立つ娘にくぎ
付けになる。
(なっち・・)
『決勝戦、安倍なつみ対柴田あゆみ』
保田達の方からでは安倍は背を向けていて、その表情を窺い知る事はできない。吉澤ひと
みは背中越しに見えるもう一人の娘を見て小さく声をあげた。
「柴ちゃん・・」
吉澤の頭の中に昨年の決勝トーナメント準決勝の光景が思い浮かんできた。その時の対戦
相手が今そこに立つ柴田あゆみだったのだ。キックボクシングを主とする彼女の格闘スタ
イルは吉澤とも似た部分があり、かなり苦戦した記憶がある。
(柴田あゆみと安倍なつみ、どっちが勝つのか、正直わかんないよ)
(この子、強い)
安倍なつみは苦戦していた。出会い頭に柴田のハイキックをもらい、それでペースを相
手にもっていかれてしまっていた。ここまで問題なく勝ち進んで来たのだが、決勝の相手
はどうやら別格だったと気付くのが少し遅かったみたいだ。
「3年のブランクを持つ過去の王者と昨年のベスト4選手じゃ、やっぱこうかな。」
稲葉貴子はあくまでも記者の目で、試合状況から力関係を判断していた。そんな態度の先
輩記者に平家は気を震わせて反論する。
「そんなことないです!なっちは別格です!」
だがそんな平家の思いもむなしく、柴田必殺のハイキックが再び安倍の頭部にヒットした。
そのまま安倍は成す術もなく崩れ落ちダウンする。
(負ける・・)
会場中にいる全ての人間がなっちの敗北を悟った。伝説は所詮伝説、もはや過去の産物な
んだと誰もが諦めた。ただ、一人を除いて。
「立て・・」
本当に小さく、耳を澄ましていても聞き取れない様な、そんな声だったがなつみには確か
に聞こえた。大音量の声援の中でそのか細い声だけがなぜかなつみの胸に届いたのだ。
後藤真希。
安倍なつみの中で、繋ぎ止めていた何かが千切れる様な感触が起こった。
伝説が再び蘇る。
その場に居合わせた誰もがその光景に目を奪われていた。
『勝者!安倍なつみ!!』
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
会場中の観客の歓声がうなりとなってコダマする。
「なっちが帰ってきた!」
平家はまた涙を流した。常に冷静だったはずの稲葉すらも驚きを隠せないでいる。
立ち上がったなっちの動きはそれまでもの物とは比べ物にならなかった。全てにおいて
柴田を圧倒したその姿は修羅に等しい。結果、普段見せる温厚ななっちからは想像もつか
ないほどの残忍さで柴田あゆみを打ち倒していた。決着が着き、我を取り戻したなっちの
視線の先には一人の娘がいた。震えを押さえ切れない後藤真希。それは恐れから来る震え
ではない、喜びだ。闘う事に退屈していた自分に終わりを告げる刻が来た事への。
(やっぱりあんたしかいないよ、私を満足させてくれるのは・・)
そんな後藤と安倍の両方を見据える娘、吉澤ひとみ。
(ごっちん、やっぱりあんたの目にはあいつしか写っていないんだね。)
(いいさ、思い知らせてあげるよ。あんたもあいつも私が倒して!)
吉澤の中で標的がもう一人増えた。後藤を振り向かせるには安倍なつみ、あいつを倒す必
要がある。吉澤は煮えたぎる心を押さえつける為、拳を強く握った。
もう一人、拳を熱く握り締める娘がいた。グラップラー真里こと矢口真里である。あんな
ものを見せ付けられては、自分の内に眠る闘争本能を押さえつけるのに大変であった。
「すごかったですねえ。」
対して石川梨華はまるで他人事みたいに素直に感想を述べていた。
「あのなあ、本番でお前も対戦することになるかもしんねえんだぞ。」
「でも、対戦しないかもしれないじゃないですか。」
石川は変な考えのポジティブ思考だ。その為、何でもまっすぐに考える矢口とは食い違う
ことが多い。それがわかっているので矢口もそれ以上突っ込むのを辞めた。同じまっすぐ
でも加護はここで辞めないのですぐにケンカとなるのだ。
「よおし、帰るぞ。」
飯田の合図に二人は応じる。矢口にとっては館長の飯田も何を考えているのかよくわから
ない。これだけの闘いを見ても、少しも動じていない。いや動じているのかどうかわから
ないといった方が正しい。
「あと3ヶ月か・・」
帰りの車の中で、矢口は流れる窓の外の景色を眺めながら一人呟いた。モームス最大トー
ナメント本選の日までもう3ヶ月を切っていた。今日の安倍で出場選手16人中半分の8人
が決定したことになる。残りの8人もこれから全国各地で行われる予選大会の結果によっ
て決まっていく。きっとまだ見ぬ強豪もいることだろう。だがどんな奴が現れても優勝す
るのは自分だ。それだけの自信があり、矢口はもう待ちきれずにいた。
時間かけてでも絶対完結させたいんで
よろしくお願いします.
新スレおめれす!!
かおりんが活躍しそうに無いのが残念だけどガンガレ!
30 :
某名無し:02/03/18 17:22 ID:z7HWGqJ0
新スレオメ!!
加護っこさんのところに行ったらリンク貼ってあって
ついうれしくてまだ読んでもいないのにレスしてしまいました。スマソ
修羅の門か…
この前はスラムダンクだったな。
辻っ子はマンガを元ネタにするのがお好きなようで。
32 :
むすむす:02/03/18 21:32 ID:IKn15jMy
楽しみんしてますよぉ〜
安倍なつみの復活はその日のニュースですぐに全国に広まった。そして、そのニュース
は各地で眠る猛者を呼び起こす原動力となった。なっちが本選へのキップを手にしたあの
日から一月程経ったある日の事、プッチの総帥保田圭は朝刊にその名前を見つけ、飲んで
いたお茶を思わず吹き出しそうになった。
「福田明日香・・」
老眼鏡を架け直し、あらためてその記事を読み直す。
「九州予選優勝、やっぱりあの福田明日香か。」
「誰すか、そいつ?」
一人で目を丸くしている保田を見て、吉澤は思わず声を掛けた。すると保田は嬉しそうに
笑みを浮かべ朝刊を折りたたむ。
「お前が知らないのも無理はない、なっちが王者となるさらに以前の話じゃからのう。」
「フーン。」
「その時代、日本格闘技界には天才がいた。まあ今でいう所の後藤の様な・・」
後藤の名前が出て吉澤の眉がピクリと動く。
「なっちが頂点に立つ頃に、人知れず引退をしたと聞いておったが、まさかのぅ。」
「そんな奴、ごっちんの敵じゃねえよ!」
吉澤は急に機嫌を悪くし部屋を後にした。
(もちろん、私の敵でもね!)
セミの泣き声が鳴り響く、熱い夏がもうそこまで迫って来ていた。ピンク色のカーディ
ガンに身を包んだ娘が喫茶店の扉を開ける。娘は待ち合わせ相手の姿を見つけ、笑顔で手
を振って駆け寄った。
「ハーイ、よっすぃー。」
声を掛けられた娘は、彼女を見てやれやれといった感じで肩を竦めた。
「梨華ちゃん、あんまりでかい声出すなよ。誰かに見られたらまずいだろ。」
「どうして?」
「わかるだろ。プッチの私が対立関係にあるTAPのあんたとお食事なんて。」
「ああーそっか、矢口さん辺りに知られたら大目玉だ。」
「うちも婆さんが結構口うるせーんだよ。」
「お互い大変だね。」
二人は声を潜めて笑った。
立場の違う吉澤と石川がこうして友人関係を持つ様になったのは昨年の夏頃である。吉
澤が一人で繁華街を歩いていると、可愛らしい少女が数人のチンピラに絡まれている所を
目撃した。正義感の強い吉澤は当然それをほうっておくはずもなく、止めに入ろうと近づ
いたのだが、そこで驚くべき光景を見る事になる。流れる様な足技であっという間にチン
ピラ共を打ちのめしてゆく少女の姿である。そのあまりの美しさに吉澤は近づいた目的も
忘れ、しばしその少女に見とれてしまっっていた。それが二人の出会い。
「また本選出場選手が決まったらしいよ。」
吉澤は持っていた格闘技雑誌を開いて、対面に腰を下ろした石川に見せる。
「プロレスラーの小川、天才空手家福田、ムエタイの新垣、極真の紺野・・」
雑誌に書かれた名前を、石川はそのまま暗唱して首を傾ける。
「一人も知らないや。」
「そう、今年は結構無名の選手が勝ち上がってるんだって。平家さんが言ってた。」
「あーあの、記者さん。」
「うん、言い換えればそれは逆に怖いことだってもね。どんな隠れた強い奴が出てくるか
もわからない。まあ私に言わせりゃそれが楽しみであったりもするんだけどさ。」
「私は別にどうでもいいけど、あの人さえいれば。」
「ごっちん?」
「うん。」
「駄目!ごっちんを倒すのは私なんだから、それだけはいくら梨華ちゃんでも譲れない。」
「フフ・・よっすぃーは後藤さんのことになるとすぐムキになるんだから。」
「ム、ムキになんかなってないよ。」
「まあどっちが倒すかは、トーナメントの組み合わせ次第だしね。」
「うん、もしかしたら梨華ちゃんと闘ることになるかもしんないんだよね。」
「そうなっても手加減すんなよ。」
「するか馬鹿。」
二人はまた微笑みながら、グラスを重ねあった。
吉澤と分かれた石川は、人気のない夜道を家路へと一人歩いていた。
(気配、まだ着いてくる?)
先ほどから自分の後を付けてくる妙な気配を背後に感じていた。普段からその様なことが
多い石川はそんな時の対処も慣れっこだったのだが、今回のはどうもいつものそれとは勝
手が違う様だ。
(ほとんど気配を感じさせない、相当できる人だ)
「何か用あるなら、姿を見せてくれませんか?」
石川は意を決して振り返り、見えない相手に声を掛けた。すると右ななめの電柱から大
きな人影が姿を見せた。電柱に備え付けられたライトが逆光となって、相手の顔はまだよ
く見えない。
「TAPの石川梨華さんだね。」
聞き覚えのない女性の声、しかし自分の事を知っている。石川にはそれが誰なのか判断す
ることはできなかった。とはいえ恐怖を感じている訳ではない。相手がどれほどの実力者
でも、たとえどんな凶器を持っていたとしても、それを退けるだけの自信はあった。そし
て事実石川にはそれだけの力があった。ただ、せっかくの休日に面倒くさいと思っただけ
である。石川は矢口と違って元々争いが好きな性格ではない。
「そうですけど、何の御用ですか?」
ぶうっきらぼうにそう答えると、見えない影は口元を緩めた様に見えた。
リアル更新キターーーーーーー!!
38 :
:02/03/20 07:55 ID:3dZtPmjL
福田明日香って聞くとハッピーエンドの福田を思い出す。
オー怖。クワバラクワバラ。
新スレおめです。
「石黒彩、そいつは確かにそう名乗ったんだな。」
「はい、お二人によろしく伝えてくれって。」
「…」
翌日のTAP館長室、石川が昨夜の出来事を話すと飯田と矢口の表情が一変した。
「誰なんですか、その石黒って?」
「数年前まで、まだお前が入門する以前だね、TAPの師範だった女だ。」
「ほんと厄介な奴が戻ってきたよねー。」
「厄介?」
「とにかく狂暴で一旦暴れ出したら止まんねえの。」
「矢口さんも似たようなもんじゃないですか?」
「あんたねー、殴るよマジで。」
「キャーほら狂暴〜!」
石黒は暴力事件を起こしてTAP会館破門となった。その時、暴れて警察も手の付け様が
なかった石黒を取り押さえたのが飯田と矢口の二人だったのだ。
「まさか、まだあん時の事根に持ってやがんのかアイツ!」
「何にしろ、気を付けた方が良さそうだな。」
飯田はまた悩みの種が一つ増えて大きくため息をつく。もう一つの悩みの種、加護亜依の
消息は依然として掴めずにいた。これでもう2ヶ月近くになる。
「何してんだあいつは・・」
モームス最大トーナメント出場選手はすでに、全国各地で開催された予選大会を勝ち上
がってきた10名の猛者に、予選免除である昨年の優勝者後藤と準優勝者吉澤の2名を加
えた12名が決定している。そして今日、13人目の出場選手を決める為の予選がここ四国
会場で始まろうとしている。
「後藤、吉澤、矢口、保田、石川、飯田、高橋、安倍、小川、福田、新垣、紺野。」
「そこにあと4人が加わる訳ですね。」
「ああ。ってあんた誰?」
出場選手一覧を読み上げていた平家は突然声を掛けられ、慌てて顔を横に向けた。見た事
ある様な顔がそこにあった。だがどうにも思い出せない。
「その4人の内の1人になるものです。」
「え、それじゃあ今日予選に出場する方?」
「オーイエース、かっこよく決めるんでイイ写真とってね。」
そう言うとその明るい娘は、勢い良く試合場へ飛び出して行った。
『市井紗耶香対ダニエル 始め!』
市井紗耶香?どこかで聞いた様な名前だ。一体どこで聞いたのだろう。平家は記憶を辿っ
てみたがまだ思い出せずにいた。
(やけに自信タップリみたいだったし、相当強い人なのかなぁ)
しかしあの娘の相手は巨漢の外国招待選手である。とても勝ち目が有る様には思えない。
ところがその娘の構えを見て、平家はすぐに考えを改める。
独特の右腕だけ少し倒したボクシングスタイルの構え、それを見た平家は記憶の糸が繋
がった。かつてその構えで幾多の猛者を一撃の下に葬り去ってきた選手がいた。
(プッチの元エース、鉄拳市井紗耶香!)
激しい衝撃音が場内に響き渡る。右ストレートのたった一発でダニエルの大きな体が宙
を舞った。場外まで吹き飛ばされたダニエルにはすでに意識はなかった。
『それまで!勝者市井紗耶香!』
結局、市井はこの後右ストレート一本で予選を全て勝ち抜く事になる。
「ね、言った通りでしょ。平家さん。」
大会終了後、圧倒的強さで優勝した市井は再び平家の所へやってきた。
「はい、思い出しました。貴方とはまだ私が駆け出しの頃プッチでお会いしてました。」
「なーんだ。やっぱり忘れてたのぉ?」
「でもどうして貴方まで出場しようと?」
「TVでなっちのニュース見てたら、体がうずいてきちゃって。」
ここにもいた。あのなっちの復活に心を揺さ振られた者が。確実に何かが起ころうとして
いる。あのなっちの復活を皮切りに。
「それで目標は、当然優勝狙いですか。」
「まあやれるだけやってみるよ。」
市井は自慢の拳に唇を重ね、ウインクしてみせた。
本選出場選手13人目、市井紗耶香。残り枠3人。
鳥肌たった・・・(;゚д゚)
いつもイイ小説書いてくれて産休
潮風を受けて小さな漁船が港へと海を駆ける。
「見えたでぇ〜のの。」
「ひさしぶりの日本れす。てへてへ。」
薄汚れた格好の少女が二人、船頭から陸地を眺めはしゃぎあう。この二人こそ2ヶ月前
姿を消した辻希美と加護亜依であった。
「たっだいむぁ〜!あいぼんやでぇ〜!」
「加護!」
ずっと行方不明だった加護亜依が突然現れたので、矢口石川を含めたTAPの門下生達は
驚き慌てふためいた。
「あんた今までどこにいってたのよ、心配したのよ!」
「へへへ〜。」
「そんなことより石川、圭織を呼んでこい!」
「あ、そうですね。はい。」
数分後、石川の報告を受けた飯田はすごい形相で道場へ降りてきた。
「加護か。」
「館長、まだ間に合いますか?」
「何がだ?」
「予選。そのために修行してきたんや。」
「フン、どうせそんなこったろうと思った。安心しろ、出場手続きは済ませてある。」
「さすが館長、話がはやいで。」
「何だよオイ、加護。お前も出る気かよ!」
「当然、矢口さんにももう負けへんで。」
「おもしれえ、見せてもらおうじゃないの修行の成果ってやつ。」
「おっと、それは本番までのお楽しみっちゅうやつや。」
同じ頃、安倍なつみの元には辻希美が姿を見せていた。
「ウーッス、久しぶり。何してた。」
「強くなってきたのれす。」
「そういえば、前より一回り体が大きくなったみたい。」
「デブって言わないでくらはい!」
「いや言ってないでしょーが。」
内心安倍なつみは驚きを隠せずにいた。辻の体型が明らかに以前とは異なっていたからだ。
かなりウエイトがアップしていることが傍目にもわかる。以前の細身であった辻でも驚く
べきパワーを秘めていたというのに、さらに体重増加を重ねたこの状態では一体どれくら
いの力を秘めることになるのか見当もつかない。
「まら間に合いまふか?」
「もしかして、あんたも出場する気?」
「へい!」
「来週の大阪大会はもう間に合わないかもしれないけど、その次の東京大会なら・・」
「それれいいれす。」
もしかして自分はとんでもない化け物を育て上げてしまったのではないだろうか、そう
いう複雑な思いが安倍の心の中に住み着いてきた。そしてその思いは翌々週に行われる予
選大会で確信へと変わるのである。
テコンドーのチャンピオン、ソニンは退屈していた。この大阪予選に出場し決勝まで勝
ち上がってきたのだが、ここまで自分の退屈を埋めてくれる様な相手に出会えずにいた。
どいつもこいつも秒殺できる様な雑魚ばかりだったのだ。さすがに決勝くらいはマトモな
相手と闘れるだろうと期待したのだが、どうやらその期待も無駄に終りそうなのだ。決勝
の相手は身長150cmくらいの子供に決まった。
(やれやれ、あんな子供が勝ち残る様なレベルの低い大会だったのか・・)
すっかりやる気を損ねたソニンはもう棄権して帰ろうかとさえ思っていた。この程度の
レベルで優勝した所で何の自慢にもならない。
『決勝戦!加護亜依対ソニン!』
自分の名を呼ぶ場内アナウンスを聞き、ソニンはため息を付いて立ち上がった。
(とっとと終らせるか)
リングの上に立つ相手はやはり、どこからどうみても子供にしか見えない。
「お手柔らかに頼むでぇ〜。」
笑顔で対戦相手の自分に握手を求めてきやがった。ふざけるな。いらついていたソニンは
差し出された加護の手をきつく叩き返した。
「子供だろうと容赦しないよ!」
ソニンは最初からまともに相手する気などサラサラなかった。
(秒殺してやる)
48 :
:02/03/21 21:19 ID:oI5F/rA/
ののの一回り大きくなった体・・・。オェ
たとえ辻豆さんの小説でもあんまり想像したくないですね。(W
>>48 いや、こういう意味です。
元の辻・・2000年の辻
一回り大きくなった辻・・2002年の辻
今よりでかくなった訳じゃないですよ。
50 :
50:02/03/21 23:33 ID:O9GRGK+b
50
51 :
48:02/03/22 01:49 ID:UbVB5ghs
なんだそういうことか。
想像して損した(W
なら一回り大きくなってほしくなかったなぁ。(NW
「イキナリズム!!」
予備動作のない瞬速の前蹴りが加護を打ち抜く。これがソニンの自慢とする最強の必殺技
である。開始の合図と同時のイキナリの攻撃は回避不可能といって良い。その例に漏れず
加護もまた大きなダメージを受けた。
「ゲホッゲホッ、すごいなぁあんた。」
「立ち上がれるのか、その根性だけは認めてやる。だがもう辞めておけ。」
しかし加護は立ち上がり再び構えをとる。
「せっかくやから、試してみたいやん。」
次の瞬間、ソニンは腹部に熱い衝撃を感じた。加護の前足がそこにあった。
(バカな、今のは・・)
「へへ〜できたでぇ。今みたいなのでええんやろ。」
イキナリズム!ソニンの必殺技を加護は一目見ただけでやってのけたのだ。
(そんなウソよ。私がこれを修得するのに何年かかったと思ってるの!)
その後も怒りを露わにしたソニンの猛攻が続いたが、加護はそれら全てを学習している様
にさえみえた。
「マジかよ、アイツ!」
観客席で観戦していた矢口もこれには開いた口が塞がらない。石川はあくまで冷静に観察
を続けている。飯田はむしろ嬉しそうでもあった。
試合は長期戦となった、あらゆる技を駆使してソニンが攻め立てるが、加護は一目見た
だけでそれら全てを真似するのだ。攻防は互角でも精神的に追い込まれるのはソニンの方
であった。
「おおきに、テコンドーだいぶ学ばしてもろたで。」
ソニンにはもはや勝機は残されていなかった。持っている技の全てを真似られているのだ。
これ以上どれだけ続けてもむしろ相手を成長させるだけである。
「あいつは本物の天才かもしれん。」
飯田の言葉に、矢口そして石川の瞳が冷たく光る。それは同じ門下の仲間を見る眼ではな
く、一人の強大な敵を見る様な眼であった。
結局ソニンは自ら敗北を宣言し、加護は本選への出場を決めた。試合の後、加護は再び
笑顔でソニンに握手を求める。そのあどけない笑顔を見ていたらソニンは、心の中でモヤ
モヤ渦巻いていた悔しさや怒りが全て吹き飛んでしまった。
「この先もがんばれ。」
ソニンも笑って加護の手を握り返した。
「にひひ〜。」
加護は歯を見せてさらに大きく笑った。
天才物真似士加護亜依本選出場。残り枠2人。
ニュースで加護の予選通過を知った辻は一人で大盛り上がりだった。
「ののも負けてられないのれす。」
東京大会はこれまでの予選の中でも最も出場者も多く、過酷な戦いになるだろうと言わ
れていた。中でも一番注目された選手は力自慢のりんねと呼ばれる選手である。りんねは
大方の予想通り、驚異的なパワーで立ち塞がる者達をなぎ飛ばし見事決勝へとコマを進め
た。そしてもう一人誰も予想していなかった娘がこれまた圧倒的なパワーで勝ち上がって
きていた。辻希美である。
「つぃののみれす。よろしくおねらいしまーす。」
「りんねだ。よろしくな。」
決勝戦の舞台、二人は丁寧に挨拶を交わし対峙した。
『はじめー!!』
試合開始の合図と共に辻は頭からりんねに向かって突撃した。
(技もクソもない、この子素人か?)
あまりに単調な攻撃、避けるのは容易いこと、しかしりんねはあえて真っ正面からそれを
受け止めようと構えた。力では誰にも負けないという自負がそうさせたのだろう。
ドーン!
(T ー T)いたい・・・。
牧場で働いているりんねはいつも北海道の大きな青空を眺めて考えることがある。いつ
かこんな大きな青空を、羽を伸ばして飛んで見たい。
夢が叶った。
りんねは飛んでいた。
(ああ・・いい気持ち)
そのまま観客席に墜落した。
『勝者!辻希美!!』
「わーい、かったのれす。」
また一人とんでもない新人が現れたと誰もが驚いていた。これで本選出場枠はあと一つ、
いよいよその時が近づいてきた。最後の予選は名古屋で開催される。しかし、その予選は
予想外の結末を迎えることになる。
「石黒彩・・!」
その名前を聞いた矢口真里は自分の耳を疑った。あの危険人物がまさかモームス最大ト
ーナメントへの出場を考えていたなんて思いもよらなかったからだ。
(あの女がまともに試合をするなんて考えられない)
矢口はすぐさま、石川を連れて道場を飛び出した。向かう先は当然名古屋。
(今から飛ばせば、決勝には間に合う)
矢口と石川が名古屋会場前に到着した時、大きなどよめきと救急車のサイレンの音で、
辺りは騒然としていた。
「一体何があったんでしょうか?」
「石黒の奴、やっぱりやりやがったか。」
矢口は石黒の凶暴さを知っていた。それ故に急いで会場まで足を運んだのだ。
(あいつを止めれるのは私しかいない。)
すぐに戦闘態勢に入れるくらいの気構えで、矢口は会場内へと足を踏み入れた。
「!」
だが、そこで目に映った光景は予想を遥かに凌駕する物であった。担架に乗せられて全
身血だるまの女性が運ばれてくる。その負傷者の顔を見て矢口の背筋に冷たいものが走っ
た。
「石黒・・!」
「え!」
「ウソだろ、どうしてあいつが?」
担架に乗って運ばれていた女性が石黒彩だったのだ。頭が混乱してきた。あの石黒が加害
者ではなく被害者?これは一体どういうことなのだろうか。矢口は担架が救急車に乗せら
れたのを確認し、試合場へと向き直った。
リングの中央に真赤な鮮血が浮かび、その中央に一人の娘が立ち尽くしていた。
その手は血に塗れ、その足も血に濡れている。
少女は笑っていた。
どこまでも美しく、どこまでも冷酷に、どこまでも無邪気に。
「ピーチ♪」
本選出場 最後の一人 松浦亜弥
こうして16人の娘達が集った。
本当の闘いはここから始まる。
【第1章 終】
やっぱりあややだぁ!!キターーーーーーー!!
60 :
..:02/03/23 03:13 ID:kiudlzn7
サイコウ!!
やっぱ辻豆さんの作品はどれもおもろい!
それにしてもあややはやっぱり冷徹サイボーグなんすね(W
62 :
:02/03/23 16:56 ID:gpWE39xA
あややコワ━━━━(゚∀゚)━━━━イ!!!!!!
【第2章 モームス最大トーナメント】
大会主催者であるつんくが闘技場に姿を見せると、観客達の熱気は一気に沸点に達しよ
うとしていた。マイクを取り出したつんくは一呼吸置いて声を張り上げる。
「地上最強の娘が見たいかーっ!」
「オ――――――――――――!!!!」
呼応するかのごとく観客は総立ちで絶叫する。
(俺もや、俺もやみんな!)
つんくは感極まるあまり涙を流しそうになった。
『全選手入場です!!』
マイクアナウンスの声が会場全体に響き渡り、最初の娘が姿を見せる。
『なっちは生きていた!3年の沈黙を破り人間凶器が蘇った!生きた伝説!
安部なつみだぁー!』
『まさかこの人がきてくれるとは!日本格闘技界の双璧TAP会館館長!
武神!飯田圭織だー!』
『武術空手はこの娘が完成させた!TAP会館のリーサルウェポン!石川梨華!!』
『最強の拳が再び!プッチの元エース!鉄拳!市井紗耶香だー!!』
『プロレスラーは本当に強いんです!燃える闘魂!小川真琴!!』
『天才物真似士見参!こいつは何かやってくれる!加護亜依だぁー!!』
『果たしてこの娘を倒す娘は現れるのか!連覇に一点の死角なし!
現役モームスチャンピオン後藤真希の入場だーーー!!』
『極真空手から最強の刺客!でもなぜか茶帯だ!極真世界王者!紺野あさ美!!』
『その空中殺法は華麗かつ正確無比!新世代のエース!高橋愛だぁー!!』
『格闘技は素人!しかしその腕力は驚異的!雪だるまになりたい!辻希美だー!』
『実力でここまで来た!今日も当然実力で優勝する!ムエタイチャンプ!新垣里沙!』
『過去、日本格闘技界には天才がいた!格闘サイボーグ福田明日香が帰ってきたー!』
『闘いたいからここまで来た!キャリア一切不明!桃色の死神!松浦亜弥!!』
『裏世界、地下闘技場王者がついに陽の当る場所に!中国拳法!矢口真里だぁー!』
『達人の奥義が今実戦でバクハツする!保田流柔術!保田圭先生だー!』
『抜群の身体能力と格闘センス!プッチの荒獅子の狙いは頂点のみ!吉澤ひとみだー!』
以上、16名によって最高の闘いが今始まる。
選手入場の後16名の娘達は組み合わせ抽選のため、抽選会場へと移動する。そこでは
つんくの秘書、中澤裕子が首を長くして待っていた。傍らには四角い箱の置かれた台座が
ある。中澤は全員いる事を確認すると唐突に説明を始めた。
「この中に@からOまで番号の書かれたカードが入ってる。おいっそこのチビ共聞け!」
おしゃべりをしていた辻加護が慌てて前を向く。
「その番号でトーナメントの組み合わせを決めるからね!引く順番は本選出場が決まった
順。まず予選シードの後藤と吉澤、あとは予選通過の早い者から順にいくよ!」
中澤の眼で促され、最初に後藤真希が一歩前に出る。昨年の優勝者。その場にいる誰もが
彼女の動向に注目を向ける。後藤は四角い箱の上部にある小さな丸穴に手を入れ、中から
一枚カードを取り出した。
「5」
後藤真希の引いたカードにはそう書かれていた。つまり第3試合、6番を引いた娘と対戦
する訳である。続いて吉澤ひとみが入れ替わり前に出る。
「11」
吉澤ひとみは11番。後藤真希とは反対側のブロックだ。
(今年もごっちんとは決勝まで当らないのか・・)
だが、組み合わせなど吉澤にはたいして重要な事でもなかった。どこにいこうと自分は勝
ち上がるだけである。同様にごっちんも勝ち上がるだろう。そうすれば自ずと決戦の舞台
は整う。それが遅いか早いかの違いだけである。
「次、矢口真里。」
「はーい。」
予選を一番最初に通過した娘はこの矢口であった。それから半年近くも待たされ矢口の闘争本能はもう押さえ切れない所にまできていた。
(早く闘りたい)
ところがクジは、そんな矢口の思いを裏切る。
「15」
「なんだよー!一番最後かよー!」
矢口は口をとんがらせて元の位置へ戻った。
「フォッフォッフォッ、次はワシじゃのう。」
保田のおばあちゃんがクジを引く。
「10」
そこで同門の吉澤ひとみ軽く顔を上げる。同じCブロックになったからだ。
(ババアかよ、厄介なのが近くにきやがったな)
5番手は石川梨華。彼女は中澤に一度お辞儀をしてからクジを引いた。
「3」
(よし、よっすぃーより先に後藤さんとやれる)
石川は心の中で小さくガッツポーズをした。
続くはTAP会館館長の飯田圭織である。彼女はいかにも彼女らしい番号を引き当てた。
「1」
高橋愛が番号の数字を口に出すと、辺りに小さなざわめきが起こった。
「9」
ようやく一組目の対戦カードが決定したのだ。
高橋愛vs保田圭
しかし両者ともことさら意識せず、冷静を保ったままである。そして8人目、出場選手の
多くが注目を向けるあの娘の番がやってきた。
安倍なつみである。
彼女の結果次第で、この大会の大勢が変わるといっても言い過ぎではないだろう。
「8」
その瞬間、選手内に一気に緊張が走る。安倍なつみが後藤真希と同じBブロック。順当に
いけば2回戦で早くもあの伝説の名勝負が蘇ることになる。しかし、言い換えればそれは、
まだ抽選を行なっていない他の選手からすれば恐ろしいことでもあった。
(Bブロックは鬼門)
嫌が応でも安倍、後藤という2強とぶつかることになる、Bブロックだけは避けたいとい
う空気が残る選手群から流れ始めた。しかし、その空気は次の娘によって一変することに
なる。小川真琴が前に進み出る。
「7」
恐れていたそれがいきなり出た。しかし彼女はむしろ喜ぶかのごとく腕を振り上げた。
「だっしゃー!」
福田明日香。「13」
新垣里沙。「4」
紺野あさ美。「12」
抽選は進み、一つまた一つと対戦カードは決まってゆく。そんな中ついに昨年の王者後藤
真希の対戦相手が決定する。それは後藤にとって、最も避けたい相手となった。
市井紗耶香。「6」
(あーやっちゃった)
市井、後藤、共に顔をしかめる。運命とは薄情なものである。
加護亜依。「14」
(福田明日香?誰やろ?まあええか。)
加護は自分のことより、次に控える相棒の抽選の方が気になった。
辻希美。「2」
(あ!)
振り向いた辻は飯田と目が合う。
最後の一人、松浦亜弥のカードは引く事なく決定した。
「16」
こうして全ての組み合わせが決まった。
飯田┓ ┏高橋
┣┓ ┏┫
辻 ┛┃ ┃┗保田
┣┓ ┏┫
石川┓┃┃ ┃┃┏吉澤
┣┛┃ ┃┗┫
新垣┛ ┃ ┃ ┗紺野
┣━━┫
後藤┓ ┃ ┃ ┏福田
┣┓┃ ┃┏┫
市井┛┃┃ ┃┃┗加護
┣┛ ┗┫
小川┓┃ ┃┏矢口
┣┛ ┗┫
安倍┛ ┗松浦
ずれまくっとる・・鬱死
飯田┓ ┏高橋
┣┓ ┏┫
辻 ┛┃ ┃┗保田
┣┓ ┏┫
石川┓┃┃ ┃┃┏吉澤
┣┛┃ ┃┗┫
新垣┛ ┃ ┃ ┗紺野
┣━━┫
後藤┓ ┃ ┃ ┏福田
┣┓┃ ┃┏┫
市井┛┃┃ ┃┃┗加護
┣┛ ┗┫
小川┓┃ ┃┏矢口
┣┛ ┗┫
安倍┛ ┗松浦
余計悪くなった!
駄目だー!
飯田┓ ┏高橋
┣┓ ┏┫
のの┛┃ ┃┗保田
┣┓ ┏┫
石川┓┃┃ ┃┃┏吉澤
┣┛┃ ┃┗┫
新垣┛ ┃ ┃ ┗紺野
┣━━┫
後藤┓ ┃ ┃ ┏福田
┣┓┃ ┃┏┫
市井┛┃┃ ┃┃┗加護
┣┛ ┗┫
小川┓┃ ┃┏矢口
┣┛ ┗┫
安倍┛ ┗松浦
だいぶよくなってきたか
75 :
辻っ子のお豆さん:02/03/23 20:58 ID:7b7ZMsXN
飯田┓ ┏高橋
┣┓ ┏┫
辻 ┛┃ ┃┗保田
┣┓ ┏┫
石川┓┃┃ ┃┃┏吉澤
┣┛┃ ┃┗┫
新垣┛ ┃ ┃ ┗紺野
┣━━┫
後藤┓ ┃ ┃ ┏福田
┣┓┃ ┃┏┫
市井┛┃┃ ┃┃┗加護
┣┛ ┗┫
小川┓┃ ┃┏矢口
┣┛ ┗┫
安倍┛ ┗松浦
76 :
これでどうだ:02/03/23 20:59 ID:7b7ZMsXN
飯田┓ ┏高橋
┣┓ ┏┫
辻 ┛┃ ┃┗保田
┣┓ ┏┫
石川┓┃┃ ┃┃┏吉澤
┣┛┃ ┃┗┫
新垣┛ ┃ ┃ ┗紺野
┣━━┫
後藤┓ ┃ ┃ ┏福田
┣┓┃ ┃┏┫
市井┛┃┃ ┃┃┗加護
┣┛ ┗┫
小川┓┃ ┃┏矢口
┣┛ ┗┫
安倍┛ ┗松浦
77 :
まる2:02/03/23 21:08 ID:1xANz/Rz
78 :
:02/03/23 22:01 ID:x6O47RQL
トーナメント表の辻豆さんの奮闘振りにワラタ
79 :
:02/03/23 22:24 ID:DA4DESgT
これ初めて見たけど面白すぎ。パクリまくってるところが最高!
次も期待してまっせ。
中澤の扱いが残念だったな。リザーバーだと思ってたが…。ま、仕方ないか。
80 :
:02/03/23 22:25 ID:k1IOdo3P
保田と新垣と紺野は負けそうだな
@ @
●゛ポーン! (・e・)σ<すいませんもう一回言って下さい!
>>80 飯田┓ ┏高橋
┣┓ ┏┫
辻 ┛┃ ┃┗保田
┣┓ ┏┫
石川┓┃┃ ┃┃┏吉澤
┣┛┃ ┃┗┫
新垣┛ ┃ ┃ ┗紺野
┣━━━┫
後藤┓ ┃ ┃ ┏福田
┣┓┃ ┃┏┫
市井┛┃┃ ┃┃┗加護
┣┛ ┗┫
小川┓┃ ┃┏矢口
┣┛ ┗┫
安倍┛ ┗松浦
82 :
辻っ子のお豆さん:02/03/24 01:59 ID:lLTUwKO/
>>81 おおっ!うまいこといってる!
どこのどなたか知りませんが非常に感謝!
83 :
:02/03/24 02:47 ID:qxVYcnrk
>80
俺は古いメンバーが勝ち残っていきそうな気がする。
新メンバーの4人は全員1回戦負けの気が・・・
読めないのは松浦だな。多分矢口が勝つんだろうけど、激闘の予感。
どうするつもりなんだろ、辻豆サン・・・
84 :
新垣ヲタ:02/03/24 06:35 ID:bekYxt1u
>81
いや、新垣は負けるだろ。てか負けろ。
85 :
@:02/03/24 06:53 ID:+SfQ8xwH
飯田┓ ┏
┣┓ ┏┫
辻 ┛┃ ┃┗保田
┣┓ ┏┫
石川┓┃┃ ┃┃┏吉澤
┣┛┃ ┃┗┫
新垣┛ ┃ ┃ ┗
┣━━━┫
後藤┓ ┃ ┃ ┏
┣┓┃ ┃┏┫
市井┛┃┃ ┃┃┗加護
┣┛ ┗┫
小川┓┃ ┃┏
┣┛ ┗┫
安倍┛ ┗松浦
86 :
@:02/03/24 06:58 ID:+SfQ8xwH
まけ┓ ┏まけ
┣┓ ┏┫
辻 ┛┃ ┃┗保田
┣┓ ┏┫
石川┓┃┃ ┃┃┏吉澤
┣┛┃ ┃┗┫
まけ┛ ┃ ┃ ┗まけ
┣━━━┫
後藤┓ ┃ ┃ ┏まけ
┣┓┃ ┃┏┫
まけ┛┃┃ ┃┃┗加護
┣┛ ┗┫
まけ┓┃ ┃┏まけ
┣┛ ┗┫
安倍┛ ┗松浦
87 :
@:02/03/24 07:03 ID:+SfQ8xwH
┓ ┏
┣┓ ┏┫
辻 ┛┃ ┃┗
┣┓ ┏┫
┓┃┃ ┃┃┏吉澤
┣┛┃ ┃┗┫
┛ ┃ ┃ ┗
┣━━━┫
後藤┓ ┃ ┃ ┏
┣┓┃ ┃┏┫
┛┃┃ ┃┃┗加護
┣┛ ┗┫
┓┃ ┃┏
┣┛ ┗┫
┛ ┗
88 :
@:02/03/24 07:05 ID:+SfQ8xwH
後藤vs加護
89 :
@:02/03/24 07:07 ID:+SfQ8xwH
優勝は、あいぼんに決定!!
90 :
加護ヲタ:02/03/24 07:12 ID:bekYxt1u
いや、加護は負けるだろ。てか闇討ちされろ。
91 :
:02/03/24 08:29 ID:DfB7vCl0
優勝は辻か?
(・e・)にいにいだって生きている
つんくは円形の闘技場を一望できる最高級の席に座り、満足げに気持ちを押え込んでい
た。そこへトーナメントの抽選を終えた中澤裕子が現れる。
「組み合わせが決まりました。」
その知らせを受けたつんくが合図すると、会場の上部に設置された巨大スクリーンに大き
くトーナメントが映し出される。と同時に会場中の観客が再び大声で歓声を上げた。
「なんやワクワクしてきたで。」
つんくもまるで子供みたいにはしゃぎだした。そして何かを思い出したかの様に急に、隣
に腰を下ろした中澤の方へ向き直った。
「せやせや中澤。お前もリザーバーに登録しておいたで。」
突然の話に中澤は一瞬言葉を失った。
「っえ!私聞いてないですけど・・」
リザーバーとは、負傷してどちらももう闘えない状況になった場合、代わりに出場して闘
う選手のことである。
「用意するのをすっかり忘れとってな。そしたら実力的にお前くらいしかえんやろ。」
「…」
中澤は一応つんくの秘書という肩書きだが、実際にはボディーガード的役割も果たしてい
る。事実強かった。だが彼女は歳のせいもあり、もうこんな派手な舞台には立ちたくはな
いと思っていたのだ。彼女は密かに願った。
(勝敗はどうでもいいから、みんな怪我だけはせんといてや。)
1回戦 第1試合 飯田圭織vs辻希美
「えらい人とぶつかってもうたな。」
辻の控え室を訪れた加護は開口一番そうもちかけた。
「ムシャムシャ…モグモグ…ゴックン!」
辻は加護の話に耳を傾けながらも、ひたすら食べ続けている。
「うちの館長、あの人はほんまに強いで。」
「モグモグ…しってるのれす。」
アイスの容器、バナナの皮、アロエヨーグルトのカップ、コーンスープの空箱、その他色々
な食べ物の残骸が部屋中に散らばりかえっている。ようやく最後のケーキを口に入れると、
辻希美は大きく膨れ上がったお腹をポンと響かせた。
「れもれったいリベンジするのれす!」
控え室の扉を開け、辻は闘技場へと続く廊下に足を踏み入れる。その背中を見送る加護が
拳を突き上げるポーズで声を掛けた。
「のの!約束忘れてへんやろな!」
振り返る辻も、加護と同じ様に拳を突き上げ微笑み返す。
「とーぜん!決勝で会おうね!あいぼん!」
二つの拳が交わり離れ、辻希美は意気揚々と闘技場へ駆け出した。
「相手の辻って、圭織がこないだ倒した子なんでしょ。」
「…」
「じゃあ楽勝じゃん。」
「…」
飯田の控え室にはセコンドについた矢口の言葉だけが聞こえていた。飯田は部屋の中央
にあぐらをかき、瞑想を続けている。いや瞑想ではないのかもしれない、時折ぶつぶつと
小声で聞き取れない単語を発している。矢口はそれを交信と呼んでいた。飯田圭織が交信
するのは、ある条件下の時においてのみである。
(圭織が本気になるとき…)
矢口には理解できずにいた。数ヶ月前、完全に勝利を収めた相手にどうして交信まです
るのかと。
(ほんと何考えてるか、イマイチわかんないんだよなー)
「圭織、そろそろ時間だよ。」
時計を確認していた矢口が声を掛けると、飯田の眼が静かに開かれた。すると飯田の体
から凄まじい闘気がほとばしる。矢口だから耐えられたのだ。一般人がその場にいたら腰
を抜かして小便を垂れていただろう。それ程のとてつもない気であった。
(おいおい、マジで本気だよ)
彼女の後ろ姿を眺めながら、矢口は対戦相手の娘を気の毒に思った。
闘技場に姿を現わした飯田圭織と辻希美は、共に互いを見据え向かい合う。こうして近
くで並ぶとその差が歴然であることがよくわかる。身長差は約20cm、リーチの差も10cm
程ある。実戦格闘技においてこの差は数字以上に大きいものがある。辻が不利。誰の目に
もそう映って見えた。
「いいらさん。ひさしぶりれすね。」
「…」
声を掛けても返事がない事で、飯田がいつもの飯田ではないと辻は感じていた。さらに
自分の足が震えていることも。
(なんれすかこれは…?)
恐怖という感情をこれまで辻は意識したことがなかった。だが無意識に体が脅えている
のだ。震えを起こすほど強大な相手を前にして。
(こわい…?)
(そんなことないれす。ののはリベンジするのれす!)
辻は足を大地に打ちつけるように大きく踏み込んだ。その振動が少なからず震えを押え
込む。恐怖の感情を強引に取り払った。
「負けない…れすよ。」
精一杯の強がりを返して、そのまま戦闘の構えに入る。
飯田はそんな様子の辻をただ見下ろすのみであった。
そして長き闘いの、その最初のゴングが会場中に鳴り響いた。
師匠なっちの激励が
ナ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━イ!!!!!
97 :
名無し:02/03/24 16:03 ID:sythW8fm
なんか、修羅の門みたいでおもしろい〜。
自分的には、なっちが九十九、後藤が海棠、石川が片山といった
イメージでみているんだけど、多分話しが進んでいくと変わって
くるね。
更新楽しみにしてます。 ワクワク。
98 :
○:02/03/24 16:04 ID:FspXk/+k
子供には割れるけど、大人には割れない。
女にはキレイなのに、男には汚い。
犬には見えるのに、猫には見えにくい。
車では出来るけど、家では無理がある。
天気のいい日は表れるけど、雨の日は見れない。
どちらかというと、理科室より職員室のほうが住みやすい。
共通する一つのものです。それは何?
99 :
おち:02/03/24 16:06 ID:PjQM1EYJ
いや、これはどうみてもグラップラ・・・・
うっぷ!!
↑闇討ち
100 :
地上最強の娘は誰だ!?:02/03/24 17:52 ID:VIZsB8tg
飯田┓ ┏高橋
┣┓ ┏┫
辻 ┛┃ ┃┗保田
┣┓ ┏┫
石川┓┃┃ ┃┃┏吉澤
┣┛┃ ┃┗┫
新垣┛ ┃ ┃ ┗紺野
┣━━━┫
後藤┓ ┃ ┃ ┏福田
┣┓┃ ┃┏┫
市井┛┃┃ ┃┃┗加護
┣┛ ┗┫
小川┓┃ ┃┏矢口
┣┛ ┗┫
安倍┛ ┗松浦
ゴングと同時に飯田は瞬時に間合いを詰めた。予備動作もほとんどない突然の攻撃に辻
はあの時と同じ感覚を持った。3ヶ月前、初めて飯田圭織と拳を交えたときの事。飯田の
拳が目の前にある、これはあの時と同じ、同じ攻撃だ。辻の顔面目掛けて正拳突きが放た
れる。
(これはフェイク、ほんろうは・・)
読んでいた辻は、正拳突きを躱してその後に来た左前蹴りを右足を浮かしガードした。
そのまま体重を前のめりにし右腕に力を込める。
(おかえしれす!)
「遅い・・」
だが、飯田の瞳には辻の動作がまるでスローモーションを見るかのように把握できてい
た。飯田は無表情のまま防御と反撃の態勢を整える。そして辻の右フックを左腕でガードした。
「ほえ?」
がら空きとなった辻の腹部に拳を1発。
さらに連蹴りを1発、2発。
フィニッシュ、肩口に踵落とし。
それでおしまい。
『ダウーーン!!辻希美ダウーン!!』
少しの無駄もない飯田の連続攻撃に辻は成す術もなく崩れ落ちた。
「これが武神。」
決して大袈裟な呼称ではないとつんくは思い知った。つんくだけではない、会場にいる
ほとんどの者が、その実力に息を飲んだ。そして大歓声が飯田に贈られる。彼女の圧勝で、
このままこの試合は終る。誰もがそう確信していた。この広い会場で約3人程除いて。
(なんだろう・・胸騒ぎがするべさ)
短い期間であったとはいえ、辻の師匠を経験していた安倍なつみはその何かを感じ取っ
ていた。そしてそれをもっと強く感じ取っている娘は、スタンド最後部の立ち見席で倒れ
込む辻を見下ろしていた。
「見せてみろ、あのときの力。」
予選決勝で辻に敗れたりんねは、そう小さく呟いた。
辻を相棒と呼ぶ少女、加護の顔にはまだ余裕が残されている。約束を信じているのだ。
(のの…)
あらためてその圧倒的強さを見せ付けられた矢口は、軽く身震いを起こした。いや身震
いではなく武者震いだ。
(そんなもんみせんなよな、ウズくだろー。)
そしてセコンドにて飯田を向かい入れる準備を始めた。ところが飯田の様子が少しおか
しい。
「圭織…?」
(左腕が動かない!?)
試合場の中央で飯田圭織は自分の体の異変に気付いた。
(あの時の?ガードのせい?)
先ほどの攻防で辻の右フックを左腕でガードした事を思い出した。
(そんな馬鹿な…)
信じたくはない出来事だ。飯田がそれまで信じてきた格闘技の理論を覆す程の規格外の破
壊力。それを目の前にいる少女が持っているというのか?飯田が左腕を抱えながら辻を凝
視していると、ダウンしていた辻はゆっくりと立ち上がり始めた。
「えへへ、やっぱりつよいれすね。いいらさん。」
全然平気だと言わんばかりにテレ笑いを浮かべる辻に、飯田の理性がさらに暴走を始めた。
再び飯田が間合いを詰める。武神の全力の攻撃。
「うわっ!ちょ、ちょっろ!まっれ、まっれくらは…」
辻は慌てて態勢を整え直そうとするが、間に合うはずもなく飯田の技をまともにもらう
ことになる。やはり、マトモな技の応酬では飯田に分がある。辻は2度目のダウンを喫す
ることになる。
(いける、左腕なしでも負ける相手じゃない。)
飯田は深呼吸をし落ち着きを取り戻す。
(いや、油断は禁物よ。全力をもって叩き伏せる!)
「まらまら!」
ダウンした辻だが、まるでダメージがないかのようにすぐに跳ね起きた。
「タフだな。いいよ、何度でも倒す!」
「こんろはののらたおす!」
二人は再びまっ正面から激突した。互いの手足が何度も交差する。手数は圧倒的に飯田
が辻を上回っていた。しかし一撃の重みは辻のそれが飯田を上回っている。辻の打撃を受
けるたび、全身に振動が伝わる。
(重過ぎるって!)
だが、痛いのは自分だけではないはず。向こうは自分の何倍もの攻撃をまともに受けて
るんだと思うと、落ち着きを取り戻したはずの飯田の感情が再び沸騰してゆく。
(負けてられねえっつうの!)
距離を置いて技での闘いに持ち込めば、おそらくこの勝負、飯田が難なく勝利したであろ
う。だが飯田はそれをしなかった。
(これだけ正面からぶつかってくる相手に逃げ腰じゃ武神の名が泣くよ)
細かい駆け引きなしの、どつきあいに付き合うことにした。いや、そうしたいと欲求す
る体を止める事ができなかったのだ。この辻希美というとんでもない力を秘めた娘に、TAP
会館館長という肩書きではなく、飯田圭織個人としての自分の全てをぶつけてみたい。そ
して勝ちたい。その想いはもう止められなかった。
辻希美は意識が朦朧としてきた。平気な振りをしていただけである。武神のあれだけの
攻撃を受けて五体満足で済むはずがない。本当は今すぐにでも泣き出したいくらいだった。
だけどそうしないのは負けたくないから、絶対に勝ちたいから、約束があるからである。
(いいらさんはやっぱりつよいよ。)
体に残る全ての力を振り絞って、辻希美はさらに前へと突進をした。
(れも負けない、ののはいいらさんにかちたいんれす!)
どちらも一歩も引こうとしない。もはや意地と意地のぶつかり合いだ。会場中が息を飲ん
で、その激闘を見守っていた。
「組み手になってるよ。」
安倍は思わず笑みがこぼれそうになった。数ヶ月前まで格闘技は素人同然だった少女が
今、目の前で格闘技界の頂点に立つ武神と互角に殴り合っているのだ。それが滑稽でなく
てなんだろう。
「いけ!のの!倒せ!」
いつしか安倍は純粋な気持ちで辻を応援していた。そしてこの前からモヤモヤしていた
自分の気持ちに気付き始めていた。
(辻希美と闘いたい)
弟子と師としてではなく、一人の格闘士として。彼女の無限に広がる可能性に惹かれ始
めていたのだった。
自分の体に相手の一撃が入るたびに激しい激痛が伴う。
いや、今やその感覚すらも麻痺してわからなくなっている。
苦しい。つらい。逃げ出したい。
だけど、どうしてだろう?こんなに楽しいのは?
(楽しい?)
そんな感覚はもう何年も前に失ったはずだ。闘いが楽しいなんて思ったことはない。
でもわからなくなって来ている。自分が。体が燃え上がる。
辻希美。
お前はすごいよ。
私にこんな感情を思い出させてくれたのはお前だ。
感謝する。
だからお前を倒す。
私は今どんな顔をしているんだろう?
きっと笑ってるのかな。
辻、お前泣きそうな顔してるよ。
笑えよ、お前も。
楽しいだろ、こんな最高の気分なんてないよ。
泣いてる場合じゃないぜ。
「ねえ、笑って。」
『飯田圭織ダウーーーーーン!!!』
会場中の興奮がピークに達する。満身創痍の状態で最後まで立っていたのは辻希美の方
であった。崩れ落ちピクリとも動かない飯田圭織を見て、駆け寄った審判員の一人が腕を
大きく横に振る。
『勝負ありーーーー!!勝者辻希美!!』
武神敗れる!この予想外の逆転劇を観客達は大きな拍手と歓声で賛辞した。
(のの、かったのれすか?)
肩で息をする辻も意識が朦朧としていて、しばらく状況をつかめずにいた。気が付くと
飯田が横になっていたのだ。自分がどうやって彼女を倒したのかすら思い出せずにいた。
ただ、最後に飯田の声が聞こえた気がした。それだけはなんとなく覚えている。
(ねえ、笑って)
うつ伏せに倒れ込んだ飯田の表情を覗き込むと、そこには笑みが浮かんでいた。彼女は
意識を失う最後の瞬間まで楽しんでいたのだ。それを見た辻は、ようやく心からの笑みを
浮かべた。
「勝っらーーーー!!」
1回戦第1試合 勝者 辻希美
108 :
:02/03/24 22:18 ID:DfB7vCl0
やはり優勝は辻か?(もしくは準優勝)
辻豆氏の文章、どんどん上手くなってるような気がする
110 :
:02/03/24 22:51 ID:N+myAnX1
優勝者予想の書き込みはほどほどにしてほしい・・・
やっぱり「ねえ、笑って」は名言だー。
112 :
名無し:02/03/24 23:32 ID:nB7PHtuw
113 :
83:02/03/25 01:10 ID:96qv5FyK
>>110 俺が最初にあおってしまったようだ。
この小説への先への興味と興奮からくるものだったんだけど…
ごめんなさいm(_ _)m反省。
114 :
:02/03/25 01:31 ID:noKM9QSy
静かに更新待ち
(あーあ、かっこ悪い泥試合)
(私だったらもっとスマートに決めるのに)
(でも館長が負けるなんて、ちょっと意外だったな。)
(まあ、どっちでもいいや)
控え室モニターでこの試合を観戦していた石川梨華は、まるで他人事の様にあっけらか
んと心の中で感想を述べた。彼女は基本的に優勝とか地上最強なんてのにはあまり興味を
持っていない。TAP会館に入門したのもほんの些細なきっかけが原因である。ネガティブ
で何の取り得もない自分を変えたいと思っただけである。たまたま通りかかった場所に
TAP会館入門者募集の紙が貼ってあったのだ。だから自分の中に眠る格闘技の才能に気付
いたのは本当に偶然であった。そして、同じく天才と呼ばれ輝いている娘の存在を知る事
になるのも。それが後藤真希であった。いつしか石川は後藤との対戦を望む様になった。
彼女に勝つ事で、本当に自分が変われた証になる、そんな気がしていたのだ。
(1,2・・2回勝てば後藤さんと当るのか)
だからそれ以外の娘は眼中になかった。よって今の飯田と辻の勝敗など、石川にとって
はどうでもいいことだったのだ。それどころか、これから自分が対戦する相手の事すら石
川は気にしていなかった。
コンコン。
ノックの音がしたので、どうぞと声を掛けると見覚えのない少女が現れた。
「どちらさまですか?」
「新垣里沙です。石川さん、今日はよろしくお願いします。」
「えーと、あ!ああ、新垣さん。」
全然記憶にない名前だったが、どうやら彼女の話し振りから対戦相手なのかなと石川は
悟り、とりあえず話を合わせようと相づちをうった。すると新垣はもっていたリュックか
らスポーツドリンクらしき物を取り出した。
「これお近付きの印です、飲んで下さい。」
「ああどうも、ありがとうございます。」
怪しさ100%だったが、ヒトの良い石川は疑うことなくそれを受け取った。
「試合前に飲むと効果抜群ですよ。」
勧められると断れない性格で、石川は言われるがままそのドリンクを飲み干した。
「プハー。」
(なんか変な味。)
「あれ、いない…」
飲み終えて、気が付くといつの間にか新垣の姿はなくなっていた。
廊下の角で新垣は笑いをこらえるのに必死だった。
(飲みやがったよ、あの馬鹿!ウヒャヒャヒャヒャ!)
(ニイニイ特製下剤満点ジュース!)
「これであいつはもう試合どころじゃねえな。」
勝利を確信した新垣は、鼻歌まじりで闘技場へと足を運んだ。
闘技場内はまだ先ほどの闘いの余韻に揺れていた。一番最初からとんでもない名勝負が
繰り広げられたのだからしょうがない。敗北した飯田は意識も戻らず結局担架によって医
務室へ運ばれていった。勝者である辻にしても駆け寄ってきた安倍の肩を借りて歩くのが
やっとという状態であった。それほどまでに過酷な戦いであったのだ。観客は未だその熱
戦に付いて口々に感想を述べている。主催者のつんくも興奮気味に中澤に対しておしゃべ
りを続けていた。
「辻希美かぁ〜えらい奴がでてきたもんやなぁ〜!」
「そうですね。」
「まさかあの武神をやぶるとは思わなんだで。」
「そうですね。」
「なあなあ中澤、次の試合はどっちが勝つと思う?」
「そうですね。」
「…」
「…」
「お前、聞いてへんやろ。」
「はい?」
闘技場整備が終り、すぐさま次の闘いが始まる。
1回戦第2試合 石川梨華vs新垣里沙
おっ、辻豆さん新しいの書いてたんですね。
ということは「卒業旅行」は放置ですか・・・
気が向いたらあっちも再開してくれると嬉しいです。
俺、格闘技だいすっきだからこの小説すんごい楽しみ。
とりあえずプロレス好きだから小川に期待。
桜庭みたいな娘。が居たらもっと期待したんだけど小川じゃーねー。
>>31が言ってるスラムダンクが元ネタの小説って何のことですか?
121 :
:02/03/25 04:23 ID:FFYZo+3o
123 :
辻っ子のお豆さん:02/03/25 15:30 ID:uat9GcqM
(おかしいな)
そう思い、新垣は首をちょこんと傾けた。あの下剤は即効性で、本当なら今頃トイレに
篭もりっきりで立つことすら困難なはずである。ところが石川は普通の顔してその場に入
場してきた。
(やせがまんしているのかしら)
(可哀想に、大勢の前で醜い姿を晒すことになるわよ。フフフ)
『両者、前へ!』
マイクアナウンスの合図と共に、円形の闘技場中央に二人は歩み寄る。ニヤニヤと笑み
を浮かべながら新垣は石川に声を掛けた。
「御気分はいかが?」
「やっぱり何か変な物入ってたのね。卑怯者!」
「うるせえよ。汚い物をぶちまける前にとっとと降参しな。」
新垣は先ほど見せていた作り笑顔から、卑屈な笑みへと表情を変えていた。言葉使いも
同様である。もはや演技する必要もないのだ。
「…ぃよ。」
「アン、何だって?聞こえねえな。」
「私、しないよ。」
そして石川の表情にもある変化が起きていた。
飯田圭織は医務室のベットの上で目を覚ました。最初はそこがどこなのか、どうして自
分がこんな所にいるのか思い出せずにいた。だが隣のベットで眠りこけている少女の顔を
見て、飯田の脳にあのときの映像がフラッシュバックしてきた。
(そうだ、圭織負けちゃったんだ)
当然くやしい気持ちはあった。だがそれ以上になぜか満足している。
「矢口さ〜ん、館長眼ぇ覚ましたみたいやでぇ。」
「加護!怪我人のいる所であんまりでかい声出すなよ!」
そう言う矢口の声の方が騒がしく聞こえた。飯田がゆっくり体を起こすとそこに矢口と
加護の姿があった。二人ともなんだか気まずそうにしている。
「館長、ええ試合やったで。うち感動したわ。」
「負けちゃったけど、圭織の分もおいらががんばるからさ。元気だしなよ。」
二人の精一杯の励ましがなんだかほんとに胸に染みた。
「うん、圭織は大丈夫。むしろいつもより気分がいいくらいよ。」
「え?」
「だって楽しかったもん。」
飯田は心からの笑みを浮かべて、隣で眠る少女を見やった。
「そういえば石川は?」
彼女の姿が見えないことに気付いた飯田は、その場にいた矢口に声を掛けた。
「ああ、石川なら今頃試合だよ。たしか相手は・・え〜と。」
「そっかそっか、まああいつなら心配ないだろ。」
「そう?」
「私より賢い。」
「だね、圭織みたいに馬鹿などつきあいに応じたりしないし。」
「言ったな!あんたはどうなのさ!」
「おいらはむしろそっちが専門だからよー。」
相手が、どつきあいのメッカ、地下闘技場王者グラップラー真里であることを忘れてい
た。飯田はこの矢口と数年前に一度拳を交えたことがある。その時は共に傷つき引き分け
という結果に終った。だが今ではもう及ばないかもしれないと、飯田は感じていた。館長
という地位につき実戦から遠のいていた自分に対して、彼女は今も現役で幾多の闘いに身
を置いている。その差はやはり大きいであろう。そしてその矢口の他にもう一人、飯田が
勝てないかもしれないと思う娘がいた。それが石川梨華である。
(今ごろ、会場中が度肝を抜かれてるだろうな)
一体今何があった!?
開始のゴングが鳴り終わるやいなや、新垣の小さな体が闘技場の端まで吹き飛んでいた
のだ。そのあまりの速さに新垣はおろか観客、審判員、その他誰にも何が起こったのか理
解できる者はいなかった。
「ふざけんじゃねえぞ、私はムエタイチャンプの新垣だ。この程度でやられる訳…」
だが起き上がった新垣の視界に石川の姿はない。
「後ろ。」
再び新垣の体を閃光が走る。そのあまりのスピードに新垣は手も足も出ずにいた。
(そんな馬鹿な!こんなはずは!どうして!)
「とどめ。」
石川は胸の前に置いた両手を、敵に目掛けて凄い勢いで前方へ広げ伸ばした。
「ハッピー!!」
これがチャーミー流拳法、第一奥義「ハッピー」である。俗に言う通背拳だ。
まともに受けた新垣は闘技場を越え、観客席まで吹き飛ばされていた。
「どうして・・下剤は・・?」
それが最後の言葉。そこで新垣は意識を失った。
「最初に言ったでしょ、私はしないの。」
『勝負ありーーー!!勝者!石川梨華!!!』
試合終了の合図と共に、般若の様な表情を浮かべていた石川の顔に可愛らしい笑みが戻る。
「以上、チャーミー石川でしたー♪」
127 :
:02/03/25 16:20 ID:neTg7qvD
やっぱり辻豆さんの手にかかればにぃにぃは卑怯者になってしまうのね・・・。
128 :
:02/03/25 22:01 ID:oJd29lRd
にいにいだってがんがっている
129 :
:02/03/25 23:29 ID:FRaHcIw0
>119
やっぱり小川はSTO使うのかな・・・
辻豆さん最高っす
個人的にはよすぃこに期待
131 :
119:02/03/25 23:47 ID:OBn3rwwS
>>129 いや、ヘタレだから逃げるんじゃねーの。
かわいそうな豆っち。君の書くのはすべて
「読者が展開を予想しカキコする」ものになってしまってんのね。
そんなつもりないのにね(多分)。まあ、今度はくじけんなや。
133 :
:02/03/26 00:34 ID:aTUt69ho
静かに更新待ち
134 :
激戦のBブロックへ:02/03/26 01:20 ID:5ZlasE7O
飯田┓ ┏高橋
┣┓ ┏┫
辻 ┛┃ ┃┗保田
┣┓ ┏┫
石川┓┃┃ ┃┃┏吉澤
┣┛┃ ┃┗┫
新垣┛ ┃ ┃ ┗紺野
┣━━━┫
後藤┓ ┃ ┃ ┏福田
┣┓┃ ┃┏┫
市井┛┃┃ ┃┃┗加護
┣┛ ┗┫
小川┓┃ ┃┏矢口
┣┛ ┗┫
安倍┛ ┗松浦
1回戦第2試合 勝者 石川梨華
花道を抜け退場した石川は、人気のない廊下にて会いたかった人物の姿を見つけ、笑顔
で小さく手を振った。
「よっすぃー!」
「かっけかったよ。梨華ちゃん。」
「ピースピース。」
大好きな友人に誉められて石川はとてもハッピーだった。しかしその幸せも束の間、吉
澤はもうその場を去ろうとしている。
「じゃあ、また後でね。」
「え、もう行っちゃうの?」
「誰かに見られたらまずいだろ。それに次は・・」
「あ、そっか、後藤さんの…」
同じプッチの所属でパートナーでもある吉澤が、後藤の激励に行かない訳にはいかない。
それは石川も理解していた。だから無理に引き止めるのは辞めた。
(ごっちん、大丈夫かな?)
トーナメントの組み合わせが決まってから、どうも後藤の様子がおかしいのだ。自分の
控え室に篭もりっきりで出ようとしない。だから吉澤は余計に心配になっていた。
「ごっちん、出番だよー!」
吉澤はわざと大声で呼びかけながら控え室の扉を開けた。しかしそこで意外な光景を目
にし、思わず息を飲んでしまった。後藤が毛布にうずくまってふさぎ込んでいるのだ。
「何やってんの?もう試合の時間だって!」
だが後藤はこちらを振り向こうともしない、ただ時折ため息をのぞかせるばかりである。
その後ろ姿には王者としての貫禄も誇りも感じ取れない。訳も分からず苛立ってきた吉澤
は強引に後藤の肩に掴み掛かった。
「ごっちんってば!ほら行くぞ!」
「…行かない。」
吉澤は一瞬自分の耳を疑った。
「今、何て言った?」
「辞退する、私。」
「ハァ?こんな時に冗談言わないでよ。」
「冗談なんかじゃないよ!」
後藤の眼にうっすら涙が溜まっていた。悔しそうに下唇を噛み締めている。
「どうして?理由は?」
「…勝てないから。」
「え?」
「いちーちゃんには勝てないんだもん!」
「久しぶりじゃのう、紗耶香。」
「オーッス!圭婆!元気してた?」
その頃、市井紗耶香の元にはプッチ総帥の保田圭が訪れていた。二人は古くからの馴染み
で共にプッチを盛り上げていった過去を持つ。
「しかし1回戦からお前等が闘り合う事になるとはのぅ。」
「なんかねー、くじ運悪いんだよねー。」
さらに市井は、後藤の師という過去も持ち合わせていた。彼女をあそこまでに育て上げ
たのは、ほとんどが市井の手腕のおかげといっても過言ではない。
「私もやりたくないけど、後藤はもっと嫌かもしんないな。」
「フム。」
「でもいいの圭ちゃん?私より後藤についててあげなくって。」
「真希にはもう吉澤っちゅうパートーナーがおる。あやつに任せておけば良い。」
「そっか、後藤にも同年代の友達ができたんだ。良かった。」
市井はまるで自分の事の様に喜んだ。
「昔の後藤はどこか、人を寄せ付けない様な所あったからさ。いやー良かった良かった。」
「フォッフォッフォッ、お前らしいよ。紗耶香。」
「うん、これで心おきなく思いっきり闘れる!おーし出陣!」
拳を叩き合わせ、市井紗耶香は激闘の地へと足を踏み出した。
>> 辻っ子のお豆さん
夜遅くまでご苦労様です。
140 :
129:02/03/26 03:09 ID:HODBHWVa
>>138 ありがとー♪
市井と後藤の対決面白そう!
これからも皆を楽しませてくだされ。
作者の気持ちの代弁をしたつもりになって一人悦に入ってた
>>132 あいたたた
142 :
:02/03/26 12:20 ID:gQ5THtEM
なんだ。てっきり俺は後藤が師匠を打ち破るもんだと思ってた。
バキでいうと渋川が保田ね。
飯田は独歩っていうよりは「餓狼伝」の松尾象山っぽいとオモタ。
144 :
:02/03/26 14:19 ID:cLNwhi0Z
辻=花山、飯田=独歩、石川=克巳、新垣=シットパイカー、
後藤=紅葉、市井=マイク、小川=猪狩、安倍=刃牙、
高橋=天内、保田=渋川、吉澤=昂昇、紺野=加藤、
福田=本部、加護=ズール、矢口=烈海王、松浦=ジャック、
石黒=夜叉猿、中沢=斗場
うーん、ちと苦しいか
145 :
132:02/03/26 15:13 ID:yQ0pyv61
>>141残念、はずれ。
スレ立ててまで始めた前作をあの程度の煽りと自分のミスのせいで
途中で投げ出した豆っちに対する軽い皮肉だったんだけどね。
伝わりづらかったみたいだ。反省しよう。
146 :
:02/03/26 15:15 ID:S1XKmouo
トーナメント終わったら最凶死刑囚出て来ちゃったり?
147 :
:02/03/26 18:44 ID:a6IvPnDc
つーかトリップつけなよ、いい加減に!>辻豆
148 :
:02/03/26 23:55 ID:t71FBub1
>>144 最初の3人と小川のモデルはバレバレでしょ。
あとはその予想はやっぱり苦しいかな。バキを誰に置くかで違ってくるし。
中澤が天内になるんじゃないのか?
どこで出すかはかなり難しいけどね。
意外と辻
149 :
名無し募集中。。。:02/03/26 23:57 ID:zlm+d8lY
地上最強の生物もいるのかな?
150 :
辻っ子のお豆さん:02/03/27 00:14 ID:NadcQE1i
報告があります。
この春から社会人になるため、今までの様な連日の更新はできなくなりそうです。
また、引越しや研修で当分PCはできません。
多分早くても4月中旬頃まで。
でも絶対に続きは書きたいと思っているので、
よろしければそれまで保全(感想)よろしくお願いします。
いつのまにか新作が!!
それも格闘物、バキ好きに取ってはたまらん!
是非保田入場アナウンスで「達人は保護されている!」ってやってくれ〜
>>150 ほぉ、辻豆サン社会人デビューですか・・・仕事の方がむばって!
この小説読んでそういえば、昔赤板に餓狼伝と刃牙を合わせたような
小説があったのを思い出しました。
154 :
名無し:02/03/27 08:41 ID:pVgNmgfR
初めて辻豆さんをみた時(娘切草あたり)
学生さんかなと思っていたがどうやら的中か?
155 :
名無し募集中。。。:02/03/27 09:44 ID:uwnnTV52
厨房を小1時間問い詰めたい。
12時間保全。
15時間保全。
>>149 それが気になるんだよなあ。
矢口がグラップラーだから、中澤が、かなあとか思ったけど。
159 :
:02/03/28 21:22 ID:tKHiSaB+
>158
そうそう。
俺も最初は149の求めてる奴が中澤だと思ってたけどね。
リザーバー(つんくの秘書)として出ちゃったから、それはなくなったと思う。
160 :
:02/03/29 11:11 ID:2rDFdNqi
保全
1回戦第3試合 後藤真希vs市井紗耶香
「まだかー!」
「何やってるんだー!」
「後藤出てこーい!」
痺れを切らした観客達のざわめきが場内を包む.すでに市井が闘技場に姿を現してから
10分近く経っている.だが対戦相手の後藤真希が一向に姿を見せないのだ.これでは試合
どころではない.この予想外の事態に主催者であるつんくも頭を悩ませていた.後藤が試
合放棄で市井の不戦勝としても、観客も誰も納得はしないだろう.当然つんく自信もそん
な結果は望んではいない.なんといっても後藤真希は現モームス王者なのだ、彼女抜きで
はこの大会の意味すらなくなると言っても過言ではない.だが、事実現れないのではどう
しようもない.つんくは不本意ながら隣に座る中澤祐子に指示を出した.
「中澤、一応準備しといてくれ.後藤の代わり、頼むことになるかもしれへん.」
「・・わかりました.」
中澤にも不満はあったが、文句一つもらさず静かに立ち上がった.
一方、市井は黙々と準備運動を続け体を温めている.彼女は信じているのだ、あいつは
絶対に来ると.
(真希、お前は逃げたりする様な奴じゃないよな.)
吉澤はもう2年近くも後藤真希と共にいる.プッチでもプライベートでもよく遊ぶ程中
が良い.だけどこんな後藤を見るのは初めてだった.目の前で人目も憚らず、悔し涙を流
している.弱音を吐いている.あの後藤真希が・・
「ごっちん.」
「いちーちゃんには一回も勝ったことないから.」
後藤の師と呼ばれる市井は、吉澤がプッチに入団してすぐに退団してしまったので、吉
澤はその実力をあまり知る機会がなかった.市井と後藤にどんな関係があったのかも別に
興味はなかったし、あえて聞こうともしなかった.
「だから、勝てないから棄権する.」
ただ、その後藤の言葉が吉澤の魂に火を付けた.気が付いたら右コブシが後藤の頬を思
いっきり打ち抜いていたのだ.もう高ぶる感情を抑えきることができなかった.突然に不
意打ちに後藤は無防備のまま部屋の隅に転げ落ちた.
「ふざけるな!勝てないから闘わないだって!何だよそれ!」
「・・・」
「いつからそんな弱くなったんだよ!勝てない奴を倒す為に毎日がんばってんじゃん!」
(あんたを・・)
「みんなそうだ!TAPの奴らも!安倍なつみも!みんなごっちんを倒すために・・!」
(誰より・・私が)
吉澤の痛烈な言葉の一つ一つが後藤の胸を揺さぶる.
「なのに、そんなこと、ごっちんの口から聞きたくなかったよ.」
吉澤は口調を弱め、軽く項垂れた.
「でも私、どうすればいいのかわかんないの!」
いてもたってもいられなくなった後藤は、叫びながらその場を飛び出した.だが吉澤に
はもうそれを追いかけることはできなかった.自分の言いたいことは全部伝えた、あとは
ごっちん本人次第だ.そう思い、吉澤は闘技場にて彼女を待つことにした.
後藤は自分がどこへ向かっているのか、自分がどうしたいのかわからなかった.
「いちーちゃん、よっすぃー、私どうすればいいの?」
誰もいない廊下で、壁に額をついて自分自身に問いかける.
「そんなことで悩んでたの?」
突然、すぐそばで声がした.後藤はあわてて顔をあげる.そこにいたのは
「なっち・・」
「勝てばいいべさ.」
前進に亀裂が入った様な感じだ.安倍の一言が後藤の中にうずまいてたモヤモヤを取り
払った.そして思い出した.自分が決着を付けなければならない相手がいること.その為
には、こんな所で止まっている暇はないってこと.
「ほら、急がないと不戦敗になるぞ.」
「ありがと、先に行って待ってる.」
後藤は軽く頭を下げて走り出した.その眼にはもう迷いはない.
「遅れてごめんなさい!」
そうやって後藤が勢いよく闘技場へ駆け込んでくると、それまで文句を垂れていた観客
達は手のひら返した様に一斉に喜びの声をあげた.
『現役モームスチャンピオン後藤真希の入場だーーー!!』
主催者つんくが後藤に問う.
「なにしてた?」
「んあ〜寝てました.」
恥ずかしそうに口を開けると、みな一斉に笑い出した.
「後藤らしい.」
待たされたことに怒る気配もなく市井も笑う.
(よくいうよ)
唯一人、真実を知る吉澤もやれやれと笑い飛ばした.そんあ吉澤の姿を見つけた後藤は
笑顔でピースマークを作った.
(よっすぃーありがと、あのパンチ効いたよ)
そして後藤は向き直る.越えるべきあの人の方へ.
「ごめんね、いちーちゃん.はじめよっか.」
それに市井もコブシを突きだし応じる.
「こっちはいつでもOKだ.」
予定より遅れること20分、いよいよ二人の闘いが始まる.
禁断症状が出て我慢できず知人のPCより更新
この調子で4月からやっていけるか心配だ.
166 :
:02/03/29 21:48 ID:PgCDrLCA
>165
いえいえ、俺らは読めて嬉しいですよ。
やっぱりこの小説はマジでいいすね。
仕事に差し障りない程度に、ヒマがあったら続きを書いて下さ〜いm(_ _)m
タイプミスそのままってとこに勢いを感じる(w
わーい。更新されてる!!
すっごいうれしいです。。。
でも無理しないで下さいねー
辻豆新社会人記念 保全
170 :
名無し募集中。。。:02/04/02 00:28 ID:vA49w6fG
age
保全
172 :
:02/04/02 23:22 ID:rWkMdghD
<font color="hotpink" face="symbol">ゥ</font>
保全
hozen
175 :
:02/04/05 01:31 ID:SBn3AQJr
hozen
保全
177 :
無題:02/04/05 17:10 ID:f6Ml2UNv
age
178 :
:02/04/05 17:11 ID:Hieez1Kl
179 :
:02/04/06 20:04 ID:KwjB6ySA
保全中。。。
180 :
名無し:02/04/07 11:58 ID:4WFp220m
ageときますね
181 :
:02/04/07 17:56 ID:Bm+G9cNX
>>180 なんであげるの?みんなsage進行でやってんじゃんよ。
保全
保全sage
保全
保全
sage
保全とsageとageんなだけで1000を目指すスレ
保全
みんな保全しすぎだと思う。
今の羊なら2日に1回保全すれば十分では?
190 :
名無し募集中。。。:02/04/11 01:56 ID:Wz1C9+SF
191 :
名無し募集中。。。:02/04/11 04:49 ID:XqQvBHBn
保全
192 :
名無し募集中。。。:02/04/11 10:35 ID:feXToMp7
保全
193 :
名無し:02/04/11 21:26 ID:3k4RGV5i
hozen
194 :
名無し募集中。。。:02/04/12 01:43 ID:IZ1SI5BJ
保全
保全
保全
12時間以上経過したので保全、次回は午後8時以降にお願いします。
198 :
名無し募集中。。。:02/04/13 12:43 ID:/ElGnXCr
200 :
記念カキコ:02/04/13 16:31 ID:PztIpIog
@ノノヽヽヽ@ ミ _ ドスッ
( 0^〜^)─┴┴─┐
/ つ. 2 0 0 │
/_____|└─┬┬─┘
∪ ∪ ││ _ε3
201 :
:02/04/13 19:55 ID:ea0mLaF5
| | a
| | g
| | ワ ッ e る
+ + /■\ シ ョ よ +
+ ( ´∀`∩ ./■\ ッ イ
(( (つ ノ(´∀`∩)./■\ !!.//
+ ヽ ( ノ(つ 丿(. ´∀`) // +
(_)し' ( ヽノ (つ つ )) +
| | ワ ッ し(_) + ) ) )
| | ワ ッ シ ョ (_)_) +
+ (( /■\ シ ョ ッ イ
. (( /■\ ∩/■\ ッ イ !!
+ (( /■\ ∩/■\ .)/■\!!//
.+ (( /■\ ∩/■\ .)/■\ .)つ )) +
(( /■\ ∩/■\ .)/■\ .)つ ))
+ (( ( ∩/■\ .)/■\ .)つ )) +
. (( ( ノ( .)/■\ .)つ )) +
ヽ . )( 丿( )つ )) +
. し'(_) ( .ノ_)( つ )) +
. し(_) .) ) )_)
. (_(_) +
203 :
辻っ子のお豆さん:02/04/14 15:17 ID:cPA3ST2x
おひさしぶり、辻っ子のお豆さんです。
保全していてくれた皆さん、どうもありがとう。
保全してなくても待っていてくれた皆さん、お待たせしました。
忙しくって更新ペースは遅くなりそうですが、再開します。
204 :
:02/04/14 15:18 ID:cPA3ST2x
アイツがやってきた日の事は今でも覚えているよ。まだ子供のくせに髪なんか金に染め
て目立ってた。いや目立っていたのは外見だけのせいじゃないよね。同じ時期にプッチへ
入門してきた新入りの中でも群を抜いて実力があった。そしてあっという間にプッチの、
いや格闘技界全体のスターに上り詰めた。素直に嬉しかったよ、自分が指導したあんたが
どんどん勝ち上がっていくのはさ。でもそれ以上に怖かった。怖かったんだ、真希。
『市井紗耶香ぁーー!!ダウーーーン!!!』
脳が震えて眩暈がする。呼吸も乱れている。足に力が入らない。
でも立ちあがらなくちゃ、まだ始まったばかりだ。
市井は全身に力を込めてすぐにまた構え直した。だが、すでに後藤の打撃技を幾度も受
けている為、息も切れ体中アザだらけである。対する後藤はというと、かすり傷一つない
どころか呼吸すら乱れていない、平然と立ち尽くしている。
(これが二年間の差)
市井は痛感していた。二年前、真希がなっちを倒して王者となる前までは確かに自分の
方が上だったのだ。真希に後れを取ることは一度もなかった。ところが今のこの有り様は
どうだ、自分はもはや彼女の相手にすらならないのだ。この二年間、常にチャンピオンと
して勝ち続けてきた者と、表舞台から姿を消していた者、その差は想像以上に大きなもの
となっていた。
(何やってたんだろう、私)
205 :
:02/04/14 15:18 ID:cPA3ST2x
後藤真希は困惑していた。今対戦しているのは、自分が知っている市井紗耶香ではない
様な感じに襲われていた。迫り来る相手を一撃の下に葬り去ってきた、あの鬼神のごとき
強さを秘めた市井ではない様な。
(いちーちゃんはもっと速くて、技にもキレがあった。)
ところが、目の前にいる市井の動きはまるでスローモーションの様に見える。難なくさ
ばく事ができるのだ。後藤は気が付いていなかった。決して市井が弱くなった訳ではない、
自分が強くなり過ぎてしまったのだという事実を。
(もういいよ、立たないで、いちーちゃん。)
しかし彼女に意に反して市井はふら付きながらも起き上がる。後藤はこれ以上市井に拳
を向けたくなかった。ずっと尊敬してずっと大好きだった相手を、自らの手で傷つける事
は耐え難い事だ。拳を一度師の体に打ち込むたび、それ以上の痛みが真希の胸を貫く。
「もうギブアップして・・」
耐え切れず漏らした言葉がそれだった。
弱々しく崩れ落ちる師の姿など、もう見てはいられない。
その言葉に彼女がどんな反応をするのか、真希は恐る恐る顔をあげた。
怒っている様な、笑っている様な、嘆いている様な表情だった。
つまりよくわからないという事だ。
206 :
:02/04/14 15:19 ID:cPA3ST2x
「ギブアップはしない。」
それでも市井の眼は輝いていた。
「だけど、もう・・」
後藤の声はもう涙交じりであった。
「いつまでも甘えるなよ。きっちり私を越えてみせろ!」
「…!」
伝説とにまで詠われた市井紗耶香の最後の拳が後藤真希目掛けて繰り出される。
(市井紗耶香を越える!)
迷いや甘えといった後藤の中の弱さが、その想いによって全て吹き飛んだ。師の拳速を凌
駕する速さで後藤はカウンターを決めた。市井は崩れ落ち、闘いは終った。
『そこまでー!!勝負あり!勝者後藤真希!!!』
3分にも満たない短い闘いだった。端から見ている観客には一方的な完全試合に見えた
だろう。チャンプがチャンプらしい圧倒的な強さを見せ付けた、それだけのことだ。だが、
後藤にとっては何よりつらく苦しい試合だった。
退場の間際、担架で運び出される市井が顔を向けずに声を掛けてきた。
「強くなった、真希。」
そっけない、たったそれだけだったけれど、真希は単純に嬉しかった。
(いちーちゃんに誉められた)
1回戦第3試合 勝者 後藤真希
207 :
:02/04/14 15:20 ID:cPA3ST2x
「また一回り成長したみたいじゃな。」
後藤と市井の試合が終り、二人の仲を最も良く知る保田圭はそう洩らした。隣にいた吉
澤は訳も分からず首を捻った。
「どういう意味だよ、ばあさん。」
「お前さんにはまだわからんじゃろうて。フォッフォッフォッ。」
「馬鹿にしてんの!」
少し怒気を含んで保田に詰め寄ると、保田は急に真面目な顔をして答えた。
「この闘いで最後の弱みが消えた。もう真希に隙はないぞ。」
「・・な!」
「もう誰にも真希は倒せんかもしれぬ。」
「このままごっちんが優勝だって言いたいのか?」
「いや、そうとも限らん。思い当った、真希を倒す可能性のある娘が。」
「誰だ?」
保田は一呼吸おいて口を開いた。
「安倍なつみ。」
それは吉澤にもある程度想像できた名だった。
「…と保田圭」
「んだよそりゃ!」
「カッカッカ…」
208 :
:02/04/14 15:20 ID:cPA3ST2x
安倍なつみ。
闘技場を出た後藤を廊下で出迎えたのは、その娘だった。壁に寄りかかり腕を組んで、
表情には僅かに笑みがこぼれている。
「さすが…」
(ドクン・・)
なっちの声に反応して真希の鼓動が一つ動きを増す。ついにここまできた。彼女との再
戦はもう目の前まで来ている。あのときの興奮が再び蘇ってくる。
「私は勝った。次はあんたの番だ。」
真希はなっちを睨み返し、そう囁く。
「待ってろ。」
言葉少なに会話を終え、二人はすれ違う。
真希は控え室へ、なっちは闘技場へとそれぞれ歩み出す。
(次に会う時はあの舞台の上だ)
『1回戦第4試合!安倍なつみの入場だぁーーー!!!』
背中で、入場アナウンスと観客の歓声が聞こえた。真希はそれに気をとられることなく
歩き続ける。自分の中に会った市井紗耶香という壁を今完全に乗り越えた。最高の状態に
いる。今なら、あの時以上にドキドキする闘いをすることができるだろう。真希は自分の
体が喜びに打ち震えているのを感じていた。
209 :
:02/04/14 15:21 ID:cPA3ST2x
「ごっちんおつかれ。かっけかったよ。」
控え室の前では、親友が勝利の祝いの為に待っていてくれた。
「よっすぃー。ありがと。」
そこでようやく真希に笑顔が戻った。
「見に行かないの?なっちの試合。」
「うん、疲れたから控え室でちょっと寝てる。どうせ結果はわかってるし。」
「そっか。じゃあ代わりに私が見とくよ。」
ポンと肩を叩いて吉澤は試合会場へ走り出した。真希はそれを見送り控え室へと扉を開
けた。入るやいなや真希は、あらかじめ用意しておいたシートの上に倒れ込み横になる。
そしてあっとうまに寝息を立てていた。
Zzzz…
どれくらい眠っていたのだろう・・?
すごく長かった様な、ほんの一瞬だった様な気もする。
試合会場から響き渡る大歓声に、真希は眼を開けた。
(今、どの辺りだろ?)
(なっちの試合、終ったのかな?)
遠くから聞こえる歓声が未だ鳴り止まない、よっぽどすごい事が起こったのだろうか。
すると今度は走り来る足音と、激しいノックの音が耳に聞こえてきた。真希が返事をする
前に控え室の扉は勢いよく開け放たれた。吉澤ひとみだった。
(どしたのヨッスィー。顔色悪いよ。)
「なっ…けた」
息を切らせた吉澤が何かを言おうとしたみたいだが、声がつまっていてよく聞こえなか
った。
(もう、ホントにどうしちゃったんだよ、ヨッスィーらしくない。)
(悪いけど、まだ寝たりないから、話ならまた後で・・)
「ねえ、ヨッス…」
「なっちが…負けた。」
まだ、よく聞こえなかった。
To be continued
更新お疲れ様です。
辻っ子のお豆さんへ
お忙しい中の更新、ありがとうございます
そしてお疲れさまです
健康を損なわない程度のペースでがんばって下さい
期待しております
まさか小川が勝ったのか!?意外だ・・・
保全
大番狂わせと思わせといて
刃牙 vs ズール のパクリなオチだったら萎える
オレは特攻隊長柴千春と喧嘩師花山薫が好きなんだアスリートだけじゃ
つまらんアウトローもだせ!登場人物のキャラを変えろ!
花山さん 決着をつけよう
花山 薫という本物を相手に戦力を隠す愚を思い知った
地道に訓練を重ねることこそがき強者への道と確信していた
世の中は広い貴方のような男もいる
強くなるための努力自体を女々しい行為と断ずる強烈な雄度!
一切の訓練を拒否した誇りから生まれる闘争への自信
本当に強かった・・・
218 :
:02/04/16 23:50 ID:TIkvTzY1
>>215 パクリでもいい。小川対後藤じゃ盛り上がらない。
格からいって。
小川=猪狩でしょ。
うーむ。
続きを待て、続きを。
220 :
:02/04/17 00:13 ID:n4sm9btJ
KUSO
お前らバカだな
小川を謎の乱入者が倒し、その乱入者がなっちを倒したしたに7ペリカ
222 :
やぐふぁん:02/04/17 19:56 ID:GbMW5RjF
この小説の展開イイっす♪
格闘漫画のパロにもなっててナイスコラボレだョ
223 :
テンプレ:02/04/18 20:52 ID:2FNhZoxE
【スレ保全中】 : 次回は12時間後以降にお願いします。
hozen
225 :
:02/04/21 00:36 ID:3XExMx8n
保全
【スレ保全中】 : 次回は12時間後以降にお願いします。
1ROMです。応援しとりますよ。
228 :
やぐふぁん:02/04/22 14:10 ID:UFh5Jh4P
定期保全age
229 :
辻っ子のお豆さん:02/04/22 17:27 ID:ZqhesbI2
闘技場へと伸びる廊下を一歩一歩前進する度に、真希の耳に幾つも重なり合う人々の声
が入ってくる。光に満ちたその現場に足を踏み入れたとき、その音量は頂点に達した。
「いくぞーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
マイク片手に雄叫びをあげる娘が、闘技場のど真ん中に悠然と構えていた。人差し指を
ピンと立たせた反対の腕は天井に向かって伸びている。見渡すと、会場中の人間が彼女を
真似て同じポーズをとっている。
「いーーーち!!」
彼女の声に合わせて観客の全員が声を張り上げた。大音量が再び真希の耳を劈く。
「にぃーーー!!」
「さぁーーん!!」
会場中がひとつになっていた。誰もが彼女に眼を奪われている。彼女が皆をひとつにま
とめているのだ。その熱きハートとカリスマ性によって。
「ダァーーーーーーーーーー!!!!!!!」
その興奮は今まさに頂点に達しようとしていた。
これが闘魂小川麻琴。
なっちを破った娘。
230 :
:02/04/22 17:27 ID:ZqhesbI2
試合前、安倍なつみはプロレスラー小川麻琴に対し挑発を行なった。人差し指を立たせ
腕を伸ばし、真っ直ぐ天井を指す。そのポーズの意味するもの。
【真剣勝負】
それはプロレスを侮辱しているともとれる行為。その挑発に対する小川麻琴の反応は…
無表情。あまりに冷たきその瞳には恐れさえ感じさせる。そして小川はその申し出を受け
た。真剣勝負である。
序盤、試合を有利に進めていたのはなっちの方だった。得意の打撃技を何発も小川に対
してクリーンヒットさせた。だが小川にとってそれは避けられなかった訳ではない、むし
ろわざと相手に殴らせていた様でもある。それがプロレスラーなのだ。
(いいわね格闘技は。ガードや避けることができて。)
(私達は違う。相手の攻撃は全て受けきる!)
打っても打っても後退しない小川に、なっちは次第に間合いを詰められていた。一瞬の
隙を突いての小川のタックルになっちは意外にもあっさりと倒されてしまった。なっちに
とっては盲点だった。後藤真希に気を取られ過ぎて立ち技にばかりこだわり、寝技対策を
怠っていた。よってグラウンドは小川の独壇場であった。そのままあっという間になっち
の首を絞め落とした。ショー的要素を含む派手なプロレス技等一切ない。的確に効率に、
純粋に勝ちを求めた結果である。結局、なっちは自分の力の半分も出す事で出来ぬまま意
識を失った。突然のダークホースの出現は観客達を大いに湧かせた。
231 :
:02/04/22 17:28 ID:ZqhesbI2
医務室で意識を取り戻したなっちは、すぐにベット飛び起きた。
(なんで私はこんな所にいるの?)
(試合は・・?試合はどうなったの?)
「負けた…?」
信じたくない事実がなっちの意識を支配してゆく。誰もいない廊下でひとり静かに崩れ
落ちると、後ろから今もっとも聞きたくない人物の声が聞こえてきた。
「なっち!」
後藤真希だ。
当然振り返る事もできない。
「…どうして!どうして負けた!!」
後藤の声も悲しみに満ちていた。返答する言葉なんて見当たらない。
弱いからだ。
わかっている。
ここに理由なんてない。
強い奴が勝つ。
それが全てなんだ。
安倍なつみは何も語らず、その場を後にした。
1回戦第4試合 勝者 小川麻琴
232 :
:02/04/22 17:28 ID:ZqhesbI2
1回戦第5試合 高橋愛VS保田圭
「本当はジャンプしてからの技を見せたかったんやけど、思ったより床が弱くて・・」
高橋愛の控え室を訪れたつんくは驚きの余り目を丸くした。足の踏み込みだけでコンク
リートの床を粉砕する高橋の姿がそこにあった。
「なんちゅう技や、これは。」
「ホッピーってゆうんやって。」
クスクスと微笑む高橋の顔はとても闘う前の表情には見えない。
「つんくさん、格闘技の本質っていうの知ってますか?」
「さあ、なんやろなぁ?」
「愛なんやって、相手が何したいか事前に察して満たす。これは愛なくして出来んやろ。」
「ふむ。」
「闘うべき相手には逆に何をしてほしくないか察して満たすんやって。これも愛やよ。」
その微笑みに、つんくは今度は寒気すら感じた。
「喜ばす事と倒す事は表裏一体だから。」
話を終えると高橋はゆっくりと構えを解いた。
「さ・・魅せますか。」
233 :
:02/04/22 17:31 ID:ZqhesbI2
選手が入場する花道の脇に、飯田が石川と加護を連れて現れた。
「二人とも、あの保田圭という女をよーく見ておけ。」
いつになく真剣な表情の飯田に、石川と加護は怪訝な表情をする。
「そんなすごい人なんですかぁ?」
「ただのおばあちゃんやないか。」
「結果がどうなるにしろ、見て絶対損はない。」
飯田の視線の先にヨボヨボと闘技場へ足を踏み入れる保田のおばあちゃんの姿があった。
「すんませんなののさん、セコンドなんかやらせちまって。」
「いいれすよ、ろうせ暇れすから。ところれセコンロっれおいしいんれすか?」
たまたま居合わせた辻が保田のセコンドに付いていた。よく意味はわかっていないみた
いだが。
「カッカッカ、まあそうかしこまらんで…」
「へい。」
「そのうちののさんとも闘り合うかもしれんのだから、カッカッカ。」
辻とこの保田は反対のブロックである。対戦するということはすなわち決勝。
「行きますかそれじゃ。」
ニコニコと笑みを浮かべたまま、保田は闘技場の中央へと足を向けた。
『達人。
私達日本人はこの言葉に飽くなき憧憬を禁じ得ません!
そして私達は今日、その達人の業を目にする事も出来ます。
しかし!しかしです!その達人の闘う姿を見た物がいるでしょうか!
その枯れた奥義が実戦の場で発揮されるのを見た者がいるでしょうか!!
達人の勝利はいつも伝説の中です。
世間は達人を気遣うあまり、実戦の場へ立たせようとはしなかったのです!!
うたばんファンはもうそろそろハッキリと言うべきなのです!!
達人は保護されている!!!』
観客、そして選手達の間にざわめきが起こる。保田は保護されている。
「なんだよ、カオリ達人じゃなかったのかよぉ。」
飯田のぼやきに石川が返答する。
「ん〜難しい所ですね。ジョンソンは達人と放置の半々というところですか。」
そして今ここに、達人を脅かす新時代のエースが立ちはだかる。
高橋愛が静かに笑みを浮かべたまま入場してきた。
『キャラ対決と言っても過言ではありません!ホッピー対こなき!!』
まったく方向性の異なる二つのキャラが今激突する。
『はじめっ!!』
To be continued
更新お疲れ様です。おもろ〜
小川 vs 安倍
いやにあっさり終わったような・・・
予想のどれかが当たってて急遽変更したのかな?w
小川=猪狩、高橋=天内、保田=渋川
今回はちょっと刃牙のまんますぎたかな。
でも面白けりゃいいか。今後も期待してます。
本物か?あまりにバキからそのまま持ってきてるからな。
ちょっと疑ってみた。
まあ、達人は保護されているが見れたからいいか
239 :
:02/04/22 23:49 ID:ktOq57ER
>>237 同意。でもこれだけパクっても面白いからいーね。
天内のパクリは逆にそのまんま過ぎて笑えた。
今回は天内対渋川の夢の対決でもあるよね。
辻豆サン頑張れ!
240 :
やぐふぁん:02/04/23 03:30 ID:vGTVUc/a
なっち敗者復活きぼん
保全
242 :
:02/04/25 02:14 ID:Et40BbiA
保全
保全
244 :
MMM:02/04/25 13:22 ID:JhkaiyK5
続き心待ちにしております
頑張って下さい
忙しいであろうなか、毎回の更新サンクス。
246 :
:02/04/26 22:21 ID:8X/xcyid
そろそろあげてもいいころだ
247 :
:02/04/26 22:57 ID:8kveQyeB
保全
保全
250 :
名無し:02/04/29 01:07 ID:B6EzR1/s
連休も忙しいの?
続きが早く読みたいです。
【スレ保全中】 : 次回は12時間後以降にお願いします。
書き込みはsageにて!
252 :
辻っ子のお豆さん:02/04/30 13:40 ID:jf17Tk9j
「御老体といえど、手加減はしませんよ。」
「ご託はいい、来いや若いの。」
高橋の口端が静かに上がる、と同時に音もなく空中に浮かび上がった。これがホッピー
と呼ばれるノーモーションジャンプ、コンクリートを踏み抜く脚力を持ってして初めて可
能となる高橋の専売特許である。予備動作のないその動きは予測がしにくい。
(ほう、こいつが噂の空中殺法ですか…)
ところが対する保田は構えすらとらず立ち呆けている。
(まだ青いのぉ)
宙空からの高橋の蹴り技が保田の前頭部を襲う。次の瞬間、誰もが目を疑う出来事がそ
こに起こった。高橋の蹴りは確かに保田を捕らえていた。ところが吹き飛んでいたのは蹴
られた方ではなく蹴った本人なのだ。
「…!」
高橋は一瞬地面を見失った。天地が逆転する様な感触に襲われていたのだ。
(まぐれだ、そうに決まってる)
すぐに起き上がった高橋は再び宙に舞う。
「やれやれ、何度来ても同じじゃよ。」
保田は放たれた足を掴み取り、そのまま回転させながら高橋の頭を地面に叩き付けた。
「これだけ打ったら景色がドロドロじゃろう。」
253 :
:02/04/30 13:41 ID:jf17Tk9j
(地面が、観客が、周りが全部グニャグニャ)
(私がやられているってゆうんか)
(まぐれじゃない!)
(このお婆ちゃん本物やって!!)
二度投げ飛ばされて、ようやく高橋は相手の力量に気付き始めた。
(それじゃあ、これならどう?)
今度は上空ではなく横に飛んだ。壁を蹴ってさらに横へ。三角飛びで高橋は保田の後ろ
へと回った。そのあまりの速さに保田は身動きすらとれない。
(とった!)
がら空きの背中が目の前にある。
このタイミングではもう間に合わない。
そう、間に合わないはずだった。ところが…
(感触がない・・!)
それは感じたことのない恐怖であった。まるで幽霊を相手にしている様な。
次の瞬間まるで無重力空間にいるかのごとき体験をするのだ。
闘技場を囲む鉄のフェンスが目の前から迫ってきた。
(いや、違う。自分が飛んでいるんや。)
気付いた時にはもう遅い。
嫌な音が会場中に響き渡った。
254 :
:02/04/30 13:42 ID:jf17Tk9j
高橋の綺麗な顔が鮮血により紅く染まった。
『秘密兵器高橋なす術がなぁーい!!』
これが達人。全ての攻撃がそっくりそのまま自分へと返って来る。
あまりに合理的かつ隙がない。対処のしようがないのだ。
「えらい婆さんやであれは。」
中澤にそうもちかけたのは大会主催者のつんくだ。
「お前のお墨付きゆう高橋もなかなかやけど、こりゃちっと相手が悪かったなー。」
しかし中澤は動じることなく静かに返答する。
「つんくさん、おもしろいのはこれからですよ。」
「なんやて!?」
「高橋がホッピーだけの娘だと思ったら間違いです。」
その言葉に、つんくは再び闘技場に眼をやった。
「もういいじゃろ若ぇの。その辺にしておけ。」
達人は壁にもたれ血を流す娘に降伏を勧めた。
「…ツッ」
奇妙な光景が保田の目に映った。顔を紅く濡らし瞳孔を開いたままの高橋が、小さくよ
く聞き取れない発音で何かを呟いているのだ。まるでモールス信号の様に。
「ツーツツーーツーーツツーツ」
255 :
:02/04/30 13:42 ID:jf17Tk9j
何事もなかったかの様に起き上がる高橋愛。
そんなはずはない、ダメージは深刻な筈である。
「もうやめとけ高橋、そこまでやる試合じゃなかろう。」
そんな保田の説得もまるで聞こえていないかの様に、高橋は一点を見詰めたまま、あの
聞き取りづらい発声を繰り返している。その姿は無気味と言うに他ならない。
「ツーーツツーーツーーツツーツー」
やる気みたいだ。
(死ぬぞホントに)
まるで意識がない様に無表情のままの高橋が無造作に間合いを詰め始める。
達人はそれをいつもの構え、合気の構えで迎え撃つ。
この構えを取った時の達人には如何なる攻撃も意味を無くす。
ピュン。
(えっ?)
高橋が放ったのはただの中段前蹴りだ。フェイントも何もないただの蹴り。
達人はそれを紙一重で避けた。
続いて高橋は反対の足より回し蹴りを放つ。
達人はこれも紙一重で避けた。
「ツツーーツーツツーーツーーツツー」
256 :
:02/04/30 13:51 ID:jf17Tk9j
「おかしいな。」
そう呟いたのは飯田圭織。
「なにがおかしいんや?ちゃんと躱しとるやないか。」
加護が眉をしかめて応じる。
「それがだ。いつまでも躱しているだけだぜ、あの保田圭が。」
それでようやく石川と加護にも事情が掴めてきた。
「合気ができない!?」
(なんじゃこやつ、気が読めぬ)
普段の達人ならば相手の力を反動にしてすぐにでも反撃しているところである。
ところが、それができない。気が読めないのだ。
合気はその名の通り相手の気に合わせて動く戦術である。
気が読めないのでは反撃の仕様がない。
「ツーツツーーツーーツツーツー」
まるでモールス信号の様に何を言っているのか聞き取れない。
同様に動きが読めない、気を感じ取る事ができないのだ。
これが高橋愛のもう一つの恐るべき能力であった。
257 :
:02/04/30 13:52 ID:jf17Tk9j
紙一重で避けている訳ではなかった。
紙一重で躱す事が精一杯だったのだ。
保田は背中に壁の感触を感じた。
追いつめられたのだ、壁の際まで。
「なめんなや若造ぉー!!」
ここでついに達人が自ら動き出した。先の先を取りにいったのだ。
保田は高橋の腕を掴み取り投げに入った。
(この時を待っていた)
高橋が飛んだ。
投げの回転からさらにホッピーを発動させる。
回転しながら高橋は保田の後方へと舞い下りる。
(全部読んでたんやって、貴方がとどめを躊躇したときから…)
その反動で保田の腕がありえない方向へと折れ曲がることになる。
グゥワィン!!!
金属音の様な、なんとも耳に残る不快音が鳴り渡った。
(こうなることを…)
To be continued
258 :
予告:02/04/30 13:52 ID:jf17Tk9j
究極のキャラ対決 ホッピー対こなき 次回ついに決着!
果たして勝つのは高橋か!?保田か!?
さらに二匹の虎が動き出す!
1回戦最大の激闘となる闘いがいよいよ幕を開ける!
ツマンネ!
本物か?
260 :
名無し:02/04/30 14:15 ID:8G7oac3g
辻っ子のお豆さん
いつも楽しく読ませていただいております
お忙しいでしょうが、がんばって下さい
261 :
:02/04/30 16:54 ID:Mw1eHGyC
面白い小説っすね。本とか出せるんじゃないですか。
忙しいらしいですが、また地道に小説書いて下さい。
262 :
テンプレ:02/05/01 01:16 ID:KGOP1wJO
【スレ保全中】 : 次回は12時間後以降にお願いします。
. 書き込みはsageにて!
263 :
:02/05/01 21:02 ID:we0kltKX
ホゼム
264 :
nono:02/05/02 17:43 ID:j8YJoijJ
hozenn
265 :
__:02/05/03 12:48 ID:fX/mH7et
保全
266 :
ppp:02/05/03 22:56 ID:3e++8BrQ
ほぜ〜ん
267 :
名無し:02/05/04 18:42 ID:eq6bApoE
お仕事忙しいでしょうが、ガンバってください。
楽しみに待ってます。
保全
269 :
:02/05/05 21:38 ID:bFxf9EFQ
hahihuhehozenn
270 :
名無し:02/05/06 21:27 ID:P+qTOtpu
( ^▽^)<優勝めざしてがんばります
保全
272 :
辻っ子のお豆さん:02/05/07 13:10 ID:xhDPyS2Y
飯田┓ ┏高橋
┣┓ ┏┫
辻 ┛┃ ┃┗保田
┣┓ ┏┫
石川┓┃┃ ┃┃┏吉澤
┣┛┃ ┃┗┫
新垣┛ ┃ ┃ ┗紺野
┣━━━┫
後藤┓ ┃ ┃ ┏福田
┣┓┃ ┃┏┫
市井┛┃┃ ┃┃┗加護
┣┛ ┗┫
小川┓┃ ┃┏矢口
┣┛ ┗┫
安倍┛ ┗松浦
273 :
:02/05/07 13:12 ID:xhDPyS2Y
折った!
両腕を失った相手に敗北する程消耗している訳ではない。高橋は勝利を確信した。
そのせいで自分がまだ空中を回転している事に気がつかなかった。
(あれっ?)
「どうかしたかの?高橋さん。」
折ったはずの腕で保田がまだ自分を回している。
(なんで?)
「この程度で勝った気になる様ではまだまだ甘いわぁ!」
さらに回転の速度を速め、そのまま脳天から高橋を地面に投げ落とした。
起き上がった高橋の頭は衝撃で朦朧としている。
(ドロドロ・・)
(なぜ折れてないの?)
保田は何事もなかったかの様に両腕をブラブラさせている。
「フォッフォッフォッ、なんで平気かわからん顔しとるのぉ。」
その正体は達人の秘奥義「こなき」
一瞬だが、己の体を石のごとく硬質化できる究極の防御技である。
先ほどの金属がぶつかる様な音の正体はそれであった。
合気とこなきにより達人は真の護身を完成させたのだ。
274 :
:02/05/07 13:13 ID:xhDPyS2Y
「人間じゃない…」
達人のあまりの怪物ぶりを受け、高橋の頬に大粒の汗が流れ落ちる。
この化け物を倒せる要素が見当たらないのだ。
「そろそろ幕の引き時じゃな。」
意識が朦朧として無防備な高橋の喉元に保田が人差し指を打ち込む。
「〜〜!!!」
いかに高橋といえどこれは耐えられない。
声にならない悲鳴を発し高橋は意識を失いダウンした。
『勝負ありぃーーーーー!!!勝ったのは保田先生だぁーー!!』
結局、達人はかすり傷ひとつ負うことなく勝利を収めてしまった。
「ののさん!手ぇ〜!!」
「へ、へい。」
達人の技に驚きを隠せずポーっとしていたセコンドの辻に向かって、保田は大声で手を上げて近づいてきた。パシィと音を立てて達人は悠々と花道を後にする。
『強すぎるぞーー達人!!』
1回戦第5試合 勝者 保田圭
275 :
:02/05/07 13:13 ID:xhDPyS2Y
激闘の続く闘技場の外、何処かへと走る娘がいた。
その顔には怒りの表情が浮かび上がっている。
(コロス、石川梨華!)
無様な敗北を受けた恨みを晴らさんと立ち上がった新垣里沙である。
その手には鋭利な刃物が握られている。
(もう大会なんざ関係ねえ、めちゃくちゃにしてやる!!)
彼女の目指す先は石川の控え室。
復讐に頭がいっぱいで、新垣の視界は狭まっていた。
そのせいで柱の影から人が出てくる事に気付かなかった。
勢いあまり新垣はその人影と衝突する。
「イッテー、どこ見てやがんだコラ!!」
「…」
衝撃で自分は地面に腰を付いたのに、相手は平然と立ち尽くしている。
それにどこかで見た顔である。
「てめえは確か…」
新垣は開会式で見た人物だと思い出した。
「…福田明日香。」
276 :
:02/05/07 13:28 ID:xhDPyS2Y
1回戦第6試合 吉澤ひとみVS紺野あさ美
その一室には隙間なく畳が敷き詰められている。
壮年の男とまだ幼さの残る少女が正座で向かい合っていた。
男が数枚の書類を少女に手渡す。
書類にはとある娘についてのデータが事細かに記されていた。
「最初の相手、吉澤ひとみだ。」
低い声で壮年の男が少女にそう告げる。少女は書類に目をむけたまま頷く。
「確かに身体能力は驚異的だが、技や動きは雑、冷静に対処すれば問題ない相手だ。」
少女はまた無言で静かに頷く。
その脳はまるでコンピュータの様に与えられたデータを記憶していた。
「お前に与えられた使命、まさか忘れた訳ではなかろうな、紺野。」
紺野と呼ばれた少女は、ようやく書類から眼を離し顔を上げた。
「忘れていません。」
「よろしい。いいな、間違ってもこの程度の相手に遅れをとるなよ。」
「わかっています。」
決意に満ちた瞳、断固たる意志を秘めた口調。
紺野あさ美は茶色の帯をきつく締め直し、控え室の扉を開けた。
277 :
:02/05/07 13:28 ID:xhDPyS2Y
「じゃあ行くね。」
息抜きに石川梨華の控え室を訪れていた吉澤ひとみは、自分の出番が来た事を悟り立ち上がった。その顔には不安や緊張はまるで見られない。石川はそんな親友にガッツポーズでエールを贈る。
「負けちゃ駄目だよ。ファイ!」
「当たり前。決勝まで負ける訳にはいかないからね…そんで決勝も勝つ。」
吉澤が微笑む。
「決勝で当るのが、後藤真希でも石川梨華でもね。」
花道では、同門の後藤と保田が吉澤の激励に駆けつけていた。
「なんだよ、ごっちんに婆さんまで。」
「んあ〜応援だよ〜。がんばれ〜!」
「カッカッカ、敵情視察というやつじゃ。」
すでに1回戦突破を決めている二人にはどこか余裕すら感じられる。
「まぁかっけー所見せてやるから、楽しみにしてな。」
軽口を叩きながら二人とハイタッチを交わし、吉澤は闘技場へと舞い下りた。
満員の観客が一斉に沸き立つ。
『吉澤ひとみの入場だぁーーー!!!』
278 :
:02/05/07 13:29 ID:xhDPyS2Y
「3分です。」
吉澤は耳を疑った。向かい合った対戦相手が最初に発した言葉がそれだったのだ。
「データを元にシミュレートした結果、あなたを倒すのに必要な時間は3分です。」
うぬぼれでも挑発でもない、至って真面目な面持ちでそんな戯言を述べている。それがあまりに可笑しくて吉澤は思わず吹き出しそうになった。
「私はカップラーメンかよ。」
「ええ、安物の。」
「おもしれえ、できなかったら私の言う事ひとつだけ聞いてもらうぜ。」
「結構です。」
紺野あさ美に臆する様子は少しもない。
吉澤ひとみは軽く腕を回し準備運動しながら開始線へと戻っていった。
その時、吉澤はまるで獲物を狙う野獣のごとき殺気を背中に感じた。
慌てて振り向く。しかし後ろにいるのはあのボケーっとした娘だけである。
(この殺気を放ったのはあいつか!?)
(なんだよ、達者なのは口だけじゃねえみてえじゃん。)
どうやら武者震いが止まりそうにない。強ければ強い相手ほど自分の望むべき相手である。
「おもしろい。」
ぺロッと舌なめずりをする。その瞳もまた野獣の如きものがあった。
To be continued
279 :
予告:02/05/07 13:30 ID:xhDPyS2Y
吉澤ひとみ、紺野あさ美、二人の激突はもう誰にも止められない!
3分後、そこに驚くべき光景が待ち受ける!
さらに闘技場の外でも不穏な空気が…。
280 :
読者:02/05/07 14:03 ID:YlE6AU1r
相変わらず読んでてハラハラします。
お忙しいでしょうが、これからも私達を楽しませて下さい。
お体に気をつけて・・・
面白い!歴代辻豆作品の中で一番かも。
辻豆さん、ご苦労様です。
次回も楽しみに待ってます。
お忙しいでしょうが、ガムバレ。
更新サンクス
保全
286 :
:02/05/11 01:36 ID:vS9uIK3t
hozen
開始の合図と共に飛び出したのは吉澤ひとみ。
彼女の辞書に様子見などと言う言葉はない、最初からフルパワーである。
右フック
左ストレート
さらに膝蹴り
この怒涛の連打を紺野は冷静に受け流して行く。
(すべてデータ通りです)
観客席にまで音が聞こえそうな程ものすごい吉澤のアッパーカットが空を切る。
(ここで隙ができる)
紺野反撃の中段突きが吉澤の水月にヒット。一撃必殺の異名を持つくらい強力な紺野の
正拳をまともにもらい呼吸が一瞬止まる。それでも吉澤の攻撃は留まることを知らない。
(無駄です。最初に言いましたよ。あなたのデータは全て把握していると…)
数え切れない攻撃を放つが、そのひとつも紺野の体には届く事がない。
(思ったよりあっけなかったですね)
とどめ。
遠心力を加えた必殺の回し蹴りが吉澤を闘技場フェンスまで吹き飛ばす。
「3分も必要なかったですか。」
これが極真空手。これが紺野あさ美。
288 :
:02/05/11 21:45 ID:8Pes4kv0
前大会準優勝者、あの吉澤ひとみがまったく相手にもならない。
その事実に会場中の観客・選手達に衝撃が走る。
「ほんまかいな。」
つんくが。
「何者だ、あの娘!?」
飯田が。
「ちょっと何してんのよ、よっすぃー!」
石川が。
「おなかすいたのれす。」
辻が?
とにかく皆の注目は立ち構える一人の少女に集まった。紺野あさ美。
また一人、ここに強き修羅が出現したのだ。
「フア〜ア。」
そんな緊迫した空気の中、大きなあくびをかみ殺す娘がいた。
後藤真希だ。
「やれやれ、いつまで遊んどる気じゃ、あやつは。」
同じくプッチの保田圭も呆れ顔で、ため息すらついている。
この二人だけが見抜いていた。吉澤ひとみという娘を。
289 :
:02/05/11 21:46 ID:8Pes4kv0
ドスン!
何か重い物体が地面に落ちる音が聞こえた。
目を凝らしてみると、ダウンしたはずの吉澤が何かを外している。
リストバンド?
吉澤が腕と足に付けていたリストバンドを外す度、地面に重量音が響く。
「まったくあきれた奴じゃ。本番でも付けておったのか。」
保田圭が語る。そのリストバンドはプッチ特注、一つ10kgの代物である。
(それを両手足に、計40kg!!)
初めて、紺野の表情に変化が現れる。
自分を押さえつけていた鎖を完全に解き放った吉澤は軽やかに飛び起きた。
「本気、行くぜ。」
試合開始3分、紺野は本物の吉澤ひとみを知る事になる。
再度、吉澤の猛攻が始まった。
しかしそれはさっきのそれとは明らかに異なる。動きのレベルが異なっている。
(捌ききれない)
「こんなの、こんなのデータになかった!」
「バーカ、勝負は紙の上で起きてんじゃねえ。今ここでだ。データなんかに頼んなよ!」
吉澤の重い一発が紺野の頬を打ち抜いた。
290 :
:02/05/11 21:47 ID:8Pes4kv0
もんどりうって紺野は倒れた。それは紺野にとって初めてのダウン。
「へへ〜3分、もう過ぎちゃってるぜ。」
白い歯を見せて笑みを浮かべる吉澤に対し、自分の信じていた理念を打ち砕かれた紺野
はそのショックによる動揺を隠しきれずにいた。
「さ〜て、私の命令を一つ聞くっていう約束だったよな。」
「・・何がお望みですか。まさか勝ちを譲れとでも?」
「そんなもったいない事できっかよ、せっかくお前みたいな強え奴と闘りあえれんのに。」
「え?」
また紺野の頭に混乱が走る。目の前にいる人物の考えが読めない。
「小細工抜き、真っ正面からお前の本気を私に味わわせてくれよ。」
馬鹿だ。この人は本物の馬鹿だ。紺野は心からそう思った。
しかし心の何処かでそんな馬鹿も悪くないと思う気持ちが湧き上がっていた。
(私にはやるべき使命がある・・だけど)
「お付き合いしましょう。」
「へへっ、そうこなきゃ!」
この先の闘いの事など考えていない。今目の前にいる相手に全力を尽くすのみ。
(こんな気分は初めて。不思議な人だ…吉澤ひとみ。)
紺野の表情に少しずつ笑みが見える様になってきていた。
291 :
:02/05/11 21:48 ID:8Pes4kv0
吉澤と紺野の激闘の最中、人気のない闘技場外周にてひとつの確執が起きていた。
「私にぶつかって謝罪のことばもなしか、おい!」
ナイフを構えた新垣里沙が福田明日香に因縁を付けていたのだ。
福田は眉一つ動かさず、静かに新垣の持つ刃物に指を向ける。
「君がそれを使うということは、私も武器を用いて良いという事だね。」
「ケッ、どこに武器なんざ持ってんだよタコ!」
新垣がナイフを振りかざしたその時、福田の手刀が新垣の首筋近くを通った。
プチン
何かが切れた。次の瞬間、新垣の視界が突然暗闇に襲われた。
「なんだこりゃー!何も見えねえー!!」
福田の手には何も握られていない。素手である。
視力を奪われた新垣はそのまま叫びながら走り回り、壁にぶつかって勝手に自滅した。
「愚かな…」
その場を立ち去ろうと福田が振り返ろうとした時、後方から拍手の音がした。
同時に物凄い殺気を感じ取る事になる。
「トロピカ〜ル♪」
To be continued
読者の皆様、いつも応援ありがとうございます。
激励はマジ励みになります。
生活のペースがようやく落ち着いてきましたので
もうちょっと更新のペースあげていこうかと思います。
それではまた。
293 :
名無し募集中。。。:02/05/11 21:49 ID:FPbA6Bxa
____
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/ / ̄⌒ ̄\
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/⌒ (6 つ | | こんな糞スレageるなんて、かあさん許しませんよ!
( | / ___ | <
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/ ヽ ri/ 彡
/ i ト、 __,,,丿)/ ζ
| ! )`Y'''" ヽ,,/ / ̄ ̄ ̄ ̄\
! l | く,, ,,,ィ'" /. \
ヽヽ ゝ ! ̄!~〜、 / |
ヽ / ̄""'''⌒ ̄"^'''''ー--、 :::||||||||||||||||||||||||||||||||| / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
Y'´ / """''''〜--、|||||||||||||||||) < スマン!許してよ、母さん。
( 丿 ,,;;'' ....::::::::::: ::::r''''"" ̄""ヽ | \___________________
ゝ ー--、,,,,,___ ::: ::,,,,,ー`''''''⌒''ーイ ./
ヽ \  ̄""'''"" ̄ \____/-、
ヽ ヽ :::::::::::::::::::: / `ヽ
ヽ 丿 ) / ノ ゝ ヽ ,〉
ゝ ! / ∀
! | / 人 ヽ ヽ
| ,;;} !ー-、/ ヽ _,,,-ー'''''--ヘ
|ノ | | / Y ヽ
{ | | j ) 作者 ヽ
〈 j ト-.| / )
294 :
:02/05/11 22:18 ID:WzYjUpbq
明日香は鎬かw
楽しく読ませてもらってます。
卒業旅行はどうなるんですか?>辻豆さん
296 :
:02/05/12 00:43 ID:vaUxs1Bp
更新のペースあげていただけるなんて嬉しいっす。
福田=こうしょう
更新感謝。
納得のいくモノを書いて下さい、気長に待ちます。
…と、更新頻度が上がらなかった場合に備えてのフォロー(w
たまにはレスしてみよう
>>294 どうも、紐きりはやっぱ外せなかったです。
>>295 あれはもう終ったもので、今はこの作品しか考えてません。
>>296 次の更新は明日か明後日にでもと考えてます。
>>297 フォローサンクス。
299 :
:02/05/12 19:10 ID:4eXDOxH+
>「おなかすいたのれす。」
>辻が?
ワロタ
卒業旅行の方はもうやる気が無いってのならしょうがないけど、
それならせめてオチだけでも知りたいな。
あややをどう描くのかとても期待しております
がんばってください
辻 花山 薫、飯田 愚地独歩、後藤 範馬刃牙、
石川 愚地克巳、小川 猪狩寛二、保田 渋川剛気、
高橋 天内 悠、福田 鎬 昂昇、加護 丹波文七。
あややはジャック・ハンマーかオーガか
あやや、怖いのれす(藁
304 :
:02/05/13 03:43 ID:NdFK7SXQ
おおっ、加護っ子のお豆さん
なんかスゲー久しぶりだ・・・
>>299 たまにネタに走りたくなる悪い癖がまだ抜けきってないので。
>>300 犯人は川o・-・)
>>301 松浦は書いてて楽しいお気に入りキャラ。今回もやはり…
>>302 後藤と加護は違う。多少ネタばれになるが実は松浦も違う。
そのたとえでいくと辻石川戦はあの名勝負の再現になるなぁ。
>>303 加護豆さん、ひさしぶり。忙しくて連絡とれなくて申し訳なかったです。
「ハッピーエンド旅立ちの章体験版」クリアしたよ。
ラストのダーク差がいい味出てて良かった。その後どうなってるのでしょうか?
>>304 ひさぶりの名を見ると、なんか嬉しい。
308 :
:02/05/14 04:36 ID:sNqpFgB4
age
松浦亜弥!
新垣を瞬殺した福田の前に姿を現わしたのは彼女だった。
「パチパチパチ、お見事な業ですね〜。」
無邪気な口調とは裏腹に彼女は凄まじい殺気を放ち続けている。
「止まれっ!!」
福田はいっぱいに広げた左手を松浦の方へ向けながら吠えた。
「それ以上近づくならば…切るっ!!」
松浦の動きが止まる。同時に口元から笑みが消えた。
「なかなか出番が来ないから退屈してたの、遊んじゃってよいのかな〜♪」
「忠告してやろう。相手は選んだ方がいい!」
まるで閃光の様な福田の手刀が松浦の首筋に走った。瞬時に松浦は右腕を前に出しなが
ら後方に飛び難を逃れる。だが福田の指先がかすめた右腕の一部がまるでカミソリに斬ら
れた様に紅い線となっていた。そこから血が滲み出る。
「なるほど、たいした腕みたいね。」
「次は確実に刈る。」
だが松浦はまるで臆する事なく自分の腕から滴る血をなめ微笑む。
「クスクス、おいしい。」
その表情は福田に死神を連想させた。
310 :
:02/05/14 12:44 ID:PCW7XxeS
「奇麗事ばっかりの甘っちょろい格闘家ばかりであややがっかりしてたの。
嬉しいわ、あなたみたいな危ない人もいて。」
「死にたいのか?」
「あなたの技はどちらかというと私の方に近い。」
松浦の指が軽く音を鳴らす。
「人を殺す為の技に。」
空気が変わった。福田と松浦。危険な二人の間に殺気交じりのピリピリした稲妻が走る。
衝突する!
そう思えたその時二人の間に一筋の矢が落ちる。
「明日香ぁ、そいつはおいらの獲物だぜ。」
怪物二人の動きが止まる。現れた娘がそれだけの闘気を放っていたのだ。
―――グラップラー真里―――
人は彼女の事をそう呼ぶ。永きに渡り地下闘技場王者び君臨する本物のファイター。
福田とも面識がある。身を置く場所は違えど、共に本物同士としてその存在に一目置い
ていたのだ。
「矢口か、貴様どうしてここに…」
「獲物?誰の事ですかぁ?あややわかんな〜い。」
福田、松浦、矢口、ここに出場選手中もっとも危険な三人が揃い踏んだ。
311 :
:02/05/14 12:44 ID:PCW7XxeS
矢口の出現により均衡状態となり、三人は互いに出足を失う。
「どうせ二人ともおいらが倒す予定だったし、なんならまとめて相手してやろうか。」
「貴様は引っ込んでいろ矢口、このガキは私が始末する!」
「キャー喧嘩はだめですよ御二人共。あやや怖〜い。」
もはや収まりの付かない状況となっていた。
そんな中、最初に身を引いたのは意外にもあの娘だった。
「しょうがないなぁ〜、楽しみはとっておくとしますか。」
松浦がぴょんと後ろに飛び下がる。
「トーナメントで御二人と遊ぶ事にします。楽しみに待っててね。」
そう言い残し松浦はあっという間に姿を消した。
残された二人も互いに睨み合い、ぷいっとその場を後にした。
冷酷な戦闘マシーン・福田明日香。
未だベールに包まれた死神・松浦亜弥。
本物中の本物、地下闘技場王者・矢口真里。
地獄のDブロックの役者は揃った。
そしてその頃残されたDブロック最後の娘は…
「あいぼ〜ん!もうする試合れすよ。いつまれ寝てるんれすか!」
「ムニャムニャ、もう食べられへんてZzzz…」
312 :
:02/05/14 12:45 ID:PCW7XxeS
矢口が闘技場へと戻って来たとき、闘技場は静まり返っていた。
聞こえるのは只、拳と拳がぶつかり合う音のみ。
立ちすくみ観戦していた飯田に声を掛けようとしたが、その表情を見て矢口は止めた。
(カオリが私に気付かない程魅入っている。それほどの・・!?)
矢口が目を向けた時、その二人がうっすら輝いて見えた。
その激闘に皆言葉を失っていたのだ。
「こいつら・・」
本物の喧嘩って奴をやったことあるかい?
セコイ駆け引きなんざねえ、単純な力と力のぶつけ合いだよ。
ホントに戦う事が好きな馬鹿二人が並び立たねえと始まらねえ。
単純だけどどんな闘いより見る者の心を奪う。
それは何より美しい。
目の前で起きてるこいつがそうさ。
吉澤ひとみと紺野あさ美。
出会っちまったんだよ、天然記念物ものの馬鹿が二人。
(ちっくしょう、いいなぁ〜)
そんな物を見せられては矢口にとって堪らない。闘志を沈めるのに必死だ。
彼女もまた同族。闘いに魅せられた者なのだ。
指取り。
拳の打ち合いに突如変化が訪れた。
変えたのは吉澤ひとみ、紺野の左手の人差し指を握りとったのだ。
(初めて…)
吉澤ひとみにここまで本気を出させる相手はかつていなかった。後藤や保田等、プッチ
の同門相手ではどこかに遠慮が生まれていて、それ以外では彼女を満足し得るほどの対戦
相手に巡り合う事はなかった。
(初めて心から本気を出せる)
指からの投げ、さらに落としてから間接寝技。一転してファイトスタイルを変える。
ボキンッ!!
折った、何の躊躇もなく紺野の指を逆に折り曲げた。
それでも吉澤の猛追は止まらない、今度は反対の腕を掴み取る。
誰も見た事ない吉澤ひとみがそこにいた。
(…殺される!)
全身に冷たい汗が流れる。紺野は恐怖を知った。
(殺らなきゃ殺される!)
次の瞬間、真っ赤な鮮血が宙に飛んだ。
To be continued
314 :
:02/05/14 19:43 ID:KAy5xMzl
どっちの血だ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
315 :
1:02/05/15 06:32 ID:9vDqm704
どっちでもいい━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
316 :
名無し募集中。。。:02/05/15 07:10 ID:tc5qTd5i
糞スレageンナ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
317 :
@太郎:02/05/15 07:17 ID:ZjAq7ODv
318 :
名無し:02/05/15 07:54 ID:CGl7FfOa
318
コネ━━━━━━(゚A゚)━━━━━━ !!!!!
保全
吉澤の左目のまぶたが血で腫れ上がっている。
同じく紺野の左手がグチャグチャに潰れている。
(これしかなかった…)
反対の腕を決められる寸前、紺野は指が折れた方の拳で起死回生のカウンターを放った。
(逃れるには片手を捨てるしかなかった。)
「正気じゃねえ、折れた手で殴るか普通。」
あまりの暴挙にあの飯田すら驚きの声をあげる。
「普通でこんな闘いできないよ。」
そう答える矢口の武者震いは一向に収まりそうにない。
吉澤は床に零れ落ちた自分の血を見て、視覚の異変に気付いた。
(ぼやける、片目じゃ距離感が掴めない)
「距離感がないでしょう、まだ続けますか?」
左手を抑えながら対戦相手がそう聞いてくる。
「ターコ、お前なんか片目で十分、まだまだこれからだ!」
それでも吉澤は嬉しそうに構え直す。紺野もそれに応じる。
「ええ、貴方など片手で十分、まだまだこれからです。」
これだけの深手を負ってもまだ自分につきあってくれる娘に、吉澤は打ち震えた。
(こいつ、最っ高おぉぉぉぉーーーー!!)
ハンデはない、損傷は互いに五分五分。
(さっきから感じてるんだ、もうちょっとで…)
吉澤は自分の中に潜む繋ぎ止められたナニカの存在に少しずつ気付き始めていた。
紺野が間合いを詰める。ローとミドルのコンビネーションで攻め立てる。
打撃がヒットする度、鎖が緩む。
牙を濡らし飢えた獣の如きナニカを抑え付けた鎖が解かれようとしている。
(こいつが出てきたらどうなるかわからない)
それでも紺野の猛攻は留まる事を知らない。
片手とは思えない程の連打、反撃をする間もない圧倒的乱舞。
(もうやめろ、やめろ紺野、これ以上続くと私はおまえを…)
文句無しの空手家の闘い、極真の神髄を余す所なく繰り出す紺野。
もう限界が近づいているのか、吉澤の動きは鈍くなって来ている。
ガクン、吉澤の片膝が落ちる。その隙を逃す紺野ではない。
ある程度格闘技に詳しい者ならば、その一撃は絶対に立ち上がる事の出来ない一撃だと
判断できる事がある。その瞬間、紺野が放ったハイキックはまさにそれに当った。
――――――――決まった――――――――――
誰の胸にも決着の二文字が浮かび上がった。
紺野あさ美の勝ちだと。
意識半ば、崩れ落ちる吉澤の視界にあいつの姿が入った。
(ごっちん。)
ずっとずっと、追い続けてきた娘。後藤真希。
(どんな顔して私を見てる。)
(ぼやけてよく見えない。)
(いや、私のことなんか見てもいないんだろ…)
(ごっちんはいつも上を向いてる。私の事なんか振り返りもせずに)
(負けられない)
(あいつを振り向かせるまで、私は負けられないんだ!)
ブチン。
鎖が切れた。
吉澤の中に眠るナニカが産声を上げた。
「勝負あ…っ!」
決着の合図を掛けようと声を張り上げていた審判が、その異常事態に喉を詰まらせた。
吉澤ひとみが立っていた。
いやそれはさっきまでの吉澤ひとみではない。
誰も、後藤すら知らない吉澤ひとみがそこにいた。
闘いはまだ終っていない。
肩で息する紺野にとってそれは悪夢に他ならない。
どれだけ拳を打ち込んでも、どれだけ蹴り込んでも、彼女は起き上がってくる。
まるで悪魔の様な強さを携えて。
そして今、再び立ち上がってきた吉澤ひとみは違っていた。
対峙するだけで寿命が縮まりそうなほどの圧迫感を発している。
(冗談でしょう…)
獣が牙を剥く。
破壊力、技のキレ、スピード、全てが規格外。人間の領域の限界に達しようとしている。
紺野は知っていた。もう自分には抵抗する力も残されていない事を。
吉澤の拳が頬を突き刺す度、紺野の顔が変形してゆく。
(もう無理…)
ここで紺野がギブアップしても誰も責める事はできない。
それくらいこの吉澤ひとみは強かった。
しかし紺野は踏みとどまった。彼女にもまた引けない理由があるのだ。
(ギブアップするくらいなら向き合って死んだ方がマシだ!)
引けない者同士の最後の激突。その空間に神が舞い下りた。
To be continued
今度は餓狼伝ね
結局ほとんどパク・・ゴホゴホッ・・・パロディなわけか
堤対丹波やんけ…
や っ ち ゃ っ た
餓狼伝とバキと修羅の門のリスペクトでできています
パクリには、晒し age しましょうか?
面白きゃ良いんじゃないの?
ネタ知ってるとガッカリするよ
特に辻っ子のファンだと、今まで面白かった分だけ今回のオリジナリティのなさはショック
コオウはマダですか?
パクリを楽しめよ
レベルの低いパクリは笑えん
内容よりパクリポイントを探すのは楽しいけど
(ここで引いたらまたあの頃の、落ちこぼれの私に逆戻りだ!)
(引けない、絶対に引けない!)
(負けたくない、勝ちたい、この人に勝ちたい!)
武を極めし者だけが辿り着ける極地。
絶対的危機的状況に立たされた時、彼女の右腕に奇跡が起きた。
その一撃は何より速く、何よりも強い。
その一撃はあらゆる奥義を凌駕する。
―――――――神の拳―――――――
音すらなかった。
顔を上げた時、吉澤ひとみが一瞬見当たらなかった。地べたに崩れ落ちていたからだ。
自分がどうやって相手を沈めたのかさえわからずにいた。
紺野あさ美は虚ろな瞳で自らの拳を眺めた。
『けっちゃ〜〜〜〜〜く!!!!』
その声を聞いても紺野はまだどっちが勝ったのかもわからずにいた。
『息を飲む激闘の勝者は!!紺野あさ美だぁーーー!!!』
(勝った?私が?吉澤さんに?ウソ?)
プッチの仲間に囲まれて医務室へ運ばれて行く吉澤ひとみ。
大歓声の中、紺野には勝利の喜びよりもっと別の感情が芽生えていた。
試合の後、紺野は吉澤の眠る医務室を訪ねた。吉澤のベットの脇には同門の後藤と保田
が付き添っていた。後藤真希は明らかに敵意剥き出しの顔で睨み付けてくる。顔には出さ
ないが保田圭からもビシビシ嫌な感じを受ける。流石に紺野も訪れた事を後悔した。五体
満足では返れないかもしれない。(もう充分満足ではないが…)
「二人共ちょっと外してくれない?サシで話したい。」
吉澤がそう申し出てくれたのが救いであった。
後藤と保田は渋々医務室を後にする。後藤には終始睨まれっぱなしであった。
さっきまで死闘を繰り広げた相手と密室で二人きり、しばし沈黙が訪れる。
やがて吉澤が口を開いた。左目の眼帯が痛々しい。
「今日の私は今までで一番、最高に強かった。」
憎まれても仕方ないと思えることをした。それでも彼女は笑っている。
「それで負けてるんじゃ、もうどうしようもないよなぁ。」
傷だらけの右腕を差し出された。さっきはあんなに恐れた手が今は暖かく写る。
「約束だ。私の代わりに優勝しろ。」
私は彼女の手を強く握り返した。なぜか涙が出そうになった。
(ありがとう吉澤さん、私は優勝します)
1回戦第6試合 勝者 紺野あさ美
1回戦第7試合 加護亜依vs福田明日香
「おまたせ〜あいぼんの出番やで〜♪」
「カガミにむかって、なにひとりろといってるんれすか?」
「アホかのの、スマイルの練習や、可愛く登場せなあかんやろ。」
「なんれれすか?」
「お前は分かってへんなぁ。格闘家っちゅうのは実力だけやのうて人気も重要なんやで。」
「人気れすか。」
「そや、あいぼんスマイルで観客のハートも独占やで。」
「なるほろ〜、ののも次はおもしろい顔れとうじょうするのれす。」
「…え?」
「フヒ…」
「…」
「ろうれすか?」
「まあ、遊びやないし、真面目にやろか。」
「…?」
闘技場に姿を見せた加護亜依の表情は真剣そのものであったと言う。
過去の話。武術の天才と呼ばれ、脚光を浴びた一人の若き娘がいた。
彼女は本当の闘争を知りたいと望み、栄光への道を自ら断ち切った。
数ヶ月後、彼女が立っていた場所は本物の戦場。
銃弾が舞い、爆撃が飛び、無数の死体が転がる場所。
そこで知る事になる。本物の闘いと言うもの。
そして月日が流れた今この地に、彼女は再び戻って来た。
本物の闘争術というものを身に付けて。
『福田明日香の入場だぁーーー!!!』
これまでの選手達とは一線を画す危なさが滲み出ているのがわかる。
「武器の使用は一切禁止、それがここの唯一のルールだったな。」
確かめる様に静かに、つんくの方を見た福田が口を開く。
「おお、そうや。」
「悪いが私がいた戦場に、ルールなど存在しなかった。」
「ん、なんやて?」
つんくは背筋に寒気が走るのを感じた。
「武器を使うということだ。」
福田の十指が獲物を待つ蛇蝎のごとくうねりをあげた。
To be continued
339 :
:02/05/19 07:56 ID:f217p4wB
「フヒ…」って・・・。(W
340 :
:02/05/19 09:56 ID:gswN1SO7
紺野の伏線はお預けか。次の保田戦で明らかになるのかな。
341 :
名無し募集中。。。:02/05/19 15:22 ID:Grz0Srr0
なんかさ、キャラクターがきっちり描かれている人間(安倍とか吉澤)が、
キャラの薄い人物に負けるのはどうかと思うよ。
安倍が何故負けたのか、描かないのは不自然だし、
紺野の勝負に対する執念が吉澤のそれよりも勝るのが、なぜなのかが、
伝わってこない。
意外性だけを狙って、勝ち負けを決めていると、あとの物語魅力なくなるよ。
もう一つ気になるのは、一回戦にもかかわらず、戦いのインフレを起こしつつあること。
「人間の限界」の戦いばかり一回戦から連続させると、あとの展開にメリハリがなくなるよ。
決勝戦では、カメハメ波でも放つのかな?
>>341 ゴチャゴチャ言うな、黙って見てろ。
>>341 返答したいけどネタばれになるので辞めておきます。
大丈夫とだけ言っておこう。
刃牙のトーナメントでは愚地克巳は花山薫に勝った。
しかし、対最強死刑囚では花山大活躍に対し克巳はやられ役に転落。
こんな展開になるのかな?
それでも、ヨッスィーと保田の掛け合いに期待してただけにヨッスィー
敗退は残念だなー。
346 :
:02/05/20 02:18 ID:mYIycMeZ
『辻っ子のお豆さん』さん
私は元ネタ知らないので、新鮮な気持ちで楽しく
読ませて頂いております。
これからも頑張って下さい。
347 :
:02/05/20 15:13 ID:zhb60uTj
ほぜほぜほぜん
348 :
:02/05/20 16:13 ID:PLIHNmKU
よっすぃーのコオウは無しですか?
福田vs加護。天才対天才か・・・。期待sage
ほぜんちゃん
加護亜依と福田明日香、面識すらない二人が今並び立つ。
「姉さん、あんた昔天才や言われてたて?」
おどけてしゃべりかけてくる加護に対し、福田は歯にも欠けない。
「さあな。」
「悪いけどそれはウチがおらへん時代での話や。」
14歳、対戦相手の年齢を聞いた時福田は昔の自分を思い出していた。
(私にもこんな頃があったな…)
「棄権するなら今の内だ。」
突然の福田の言葉に加護は一瞬固まった。
「ハァ?なんかゆうたか自分?」
「今の私は手加減を知らぬ。お前を殺してしまうこともありうる。」
それは福田に残された最後の優しさだった。
しかし、加護にとってそれは逆効果にしかならない。
「やってみいや、このボケナス!」
開始の合図が鳴る。
天才と呼ばれ栄光の道を捨てた娘。
天才と呼ばれ今を生きる娘。
志を違えた二つの才能がここに激突す。
側転からの回転蹴り。アクロバティックな連続攻撃。
最初に飛び出したのは加護。しかもその技は…
「ソニンのカポエラ!」
予選大会で加護が盗んだ動きだ。しかもあの時よりも鋭さが増している。
「やはりあいつは天才だ。」
飯田はあらためて加護の才能を感じ、嬉しくなってきた。
体験した事のない変幻自在の攻撃に最初は戸惑いを見せた福田であったが、慣れてくる
につれ徐々に落ち着きを取り戻して行く。
(しょせん遊戯の域は出ていないか)
加護の足閃を躱しながら福田は己の指先の疼きを感じた。獲物を食らいたくて我慢しき
れない様だ。活きの良い獲物を前にしてもう押さえ切れない。
(いいだろう、存分に食らえ)
ついに福田が前に出た。
危険を察知した加護が体をひねって身を躱そうと試みる。
だが間に合わない。福田の指先が加護の左の足首に触れた。
プチン。
切った音。
これが戦場にて得た本物の実戦戦闘術。紐切り。
「なんじゃこりゃー!足が動かへん。」
特に痛みは感じない。だがまるで感覚が麻痺している様に足が脳の命令を受け付けない。
とはいえ慌てている暇はない、さらに福田の猛攻が迫ってくるのだ。
「気味悪い技使いおってからに。そんなんで参るあいぼんやないで!」
両手と片足をフルに用い必死で態勢を整え直す。
そんな加護を福田は情け容赦なく追いつめる。
「私の技の前では、お前達の武術など何の意味も成さない。」
閃光が加護の首筋を駆け巡った。
プチン!
それはまるで視力検査みたいな感じ。急に視界がパッと減ったんや。
しばらくしてやっとわかった、右目が見えてへんことに。
正直あせったでそんな感覚慣れてへんしな。けど…けどな、おもろいとも思た。
そないおもろい技見せられたら我慢できへんやん。
(さぁ次はどこを切ってほしい?腕か?足か?首か?)
福田は自分のリズムがノッテきたことを感じる。戦場のリズムだ。
相手の紐という紐を切裂いてしまいたい感覚。そいつに身を任せるともう止まれない。
虚ろに佇む加護に向けて福田は勝負を決めにかかった。
美しき音色を奏でる竪琴の線に優しく触れるかの様に…
加護の指先がトドメを差す為迫ってきた福田の首筋をかすめた。
咄嗟のことに福田は間合いをとって、相手の顔を仰ぎ見た。
「貴様、今のは…?」
「へへっ、もうちょい内側やったか。」
クイクイッと指を折り曲げながら、加護が白い歯を見せる。
「ふざけるなっ!貴様ごときに真似できる技ではない!!」
3年。天才福田が紐切りを修得するのに費やした時間である。
断じて今初めて見た様な奴が見様見真似でできる代物ではないのだ。
あまりにふざけた加護の行動により、福田の中で怒りの感情が膨れ上がった。
「八つ裂きにしてくれるっ!!」
前進する福田に向けて加護はカウンターの右ストレートを放つ。
しかし天才福田にとって、それは獲物が巣穴に入り込んできたに等しい行為。
(愚かな)
右腕の紐が切られる。これで加護は左足、右目に続き右手も失った。
肉体の半分が使用不可、もはや勝負ありといっても過言ではない状況である。
しかし次に加護の口から出た内容は、福田の予想を大きく外すものであった。
「なるほろ〜、そうやるんかいな。」
福田は意味を分かりかねた。
(もう一度観察する為に右腕を捨てたというのか?まさか?)
(いや、真似などできるはずがない!もしできる奴がいるとすればそいつは…)
今度は加護の方から攻めてきた。福田は構え、迎え撃つ。
加護が消えた!?
いや違う。小柄な体を活かして懐にもぐり込んだのだ。
体を反転し反撃の態勢に戻す。だが間に合わない。加護の指先が先に相手に届いた。
プチン!
(できる奴がいるとすればそいつは…)
福田の視界の半分が消えた。
それはどこから見ても文句の付けようがない完成された紐切り。
「ええなぁ〜この感触、クセになりそうやで。」
屈託のない笑顔を見せる対戦相手。
いままで福田が出会ったどんな奴とも違う。こんな奴はいなかった。
劣等感。福田にとってそれは生まれて初めての感情に違いない。
(そいつは…本物の天才だ!)
To be continued
力関係が把握できないんですが、
この福田と加護の実力は吉澤や安倍よりも強いんですか?
作中ではこの二人の実力って少なくとも紺野や小川よりも強そうだから。
>356
おいおい・・・
だまって見とけボケ
358 :
_:02/05/21 23:19 ID:pHwTJTeL
>357
お前
>>342か?
俺は356じゃないが、意見やら感想やら言うのが悪いのか?
辻豆さんが小説書いてそれを読むだけならわざわざ2chでやる
必要ないんじゃん?
別に煽りでもないだろうし。
お前こそ黙ってろと言いたい。
スレ汚しスマソ。
359 :
:02/05/22 01:32 ID:rQCXpVmx
力関係把握できたらトーナメントの意味ない・・
意見やら感想やらじゃなくて質問じゃん
ネタバレ希望な質問は無粋だよ
361 :
:02/05/22 03:58 ID:kBwPbeEt
質問っていっても読んで疑問に思った点を聞いたって
感じじゃねーの?
そういうのも含めて「意見やら感想やら」っつったんだが
解りづらい書き方だったかもな。スマソ。
まあ356がネタバレ希望って意図で聞いたんだったら無粋だが。
俺はここでいう力関係ってのは「結局誰が勝つの?」じゃ
なくて「世間的な評価ではどういう順番になってるの?」て
質問だと解釈したんだが。
それなら別にネタバレでもなんでもねーしトーナメントの意味
なくもないだろ。弱いと思われてた奴が勝っちゃうことだって
あるんだし。
世間的な評価ですか?
あんまり細かく書くとあれなんで大雑把に書きます.
1,2,3期>4期>5期
それと「ハッピーエンド」の主人公と影の主人公をこのまま放っておく
作者だと思いますか?おっとしゃべりすぎた。ではまた次回。
364 :
:02/05/22 14:05 ID:AoX2ANNU
>363
スマンね。もう消えるよ
俺は単に357や342みたいに昔の辻豆信者的な
「黙って読んでりゃいいんだよ。いちいち意見すんな」
みたいな発言がムカついただけなんで。
まぁ多少熱くなってしまったのは悪かった
|ハヽo∈
|´D`) マッタリいくのれす!
| ノ
|___
|
| サッ
|彡
|
|___
DTP板選対より参りました。
このたびはDTP板へのご支援を賜りまして、厚く御礼申し上げます。
おかげをもちましてDTP板は1回戦を突破いたしました。
投票前は100票行くかどうかも危ぶまれていたのに、
500票以上の得票を頂戴してあのラウンジ板に勝てたことは望外の幸せです。
これもひとえに皆様の貴重な1票1票の積み重ねの賜物です。
重ねて御礼申し上げます。
これを機会にDTP板にもお気軽に遊びにいらしてください。
それではこれで失礼いたします。
爆笑
370 :
名無し募集中。。。:02/05/23 02:28 ID:V45tEqYU
うわぁあああああ笑える!!!!
晒しage
ちょっとはログくらい読みなよ(w
辻豆さんカモンナ!
374 :
辻っ子のお豆さん:02/05/24 15:15 ID:gX6oBoal
加護が一気に間合い詰めてくる。
(いやまだ負けてない。私の紐切りが敗れた訳ではない!)
(奴の才能は認めよう…だが私にはそれ以上の経験という武器がある!)
感覚が研ぎ澄まされて行く。福田は今戦場の地に立っていた。
(戦場では敗北すなわちそれ死、私は絶対に負けない!負けられない!)
福田の紐切りと加護の紐切りが交差する。
ザンッ!!!
その真似は三度目。
加護の物真似は一度目でオリジナルに近づく。
二度目でオリジナルにあい並ぶ。
三度目でそれはオリジナルを越える。
あの一瞬で十指の紐が切れた。福田はそのまま崩れ落ちた。
加護の紐切りが福田の紐切りを上回ったのだ。
勝てない。いやそれどころではない。
これ以上続けても、自分と相手の差がより広がって行くばかりである。
重んじていた経験がその事実を福田に悟らせていた。
「まいった…・」
誰より敗北を恥ずんでいた娘の敗北宣言が場内をか細く包んだ。
新旧天才対決決着!
『勝者!!加っ護ちゃーんでぇーーーーーーーす!!!!』
「どもーおおきにー!」
華やかな喝采を浴びながら皆に手を振る少女。
福田はそんな対戦相手を傍目に、静かにその場を去ろうと立ち上がる。
(私の戦いは終った…)
敗北は死。そう考える福田にとって生き恥を晒すことは何よりの屈辱なのだ。
「いい勝負だったぞー福田!」
(え…?)
「また戻って来てねー!」
「次は勝てるぞ!!」
敗者である福田にも激励の歓声が飛び交う。
(馬鹿な、戦いに次なんてあるはずがな…)
「福田さぁーーーーーーーーーーーん!!!!」
何百という歓声を打ち消す程大きい呼びかけが、後ろから聞こえた。
「おもろかったで。またやろなー!」
(また…)
敗北は終わりじゃない。
この日福田は初めて本当の敗北を知った。
(こうやって、こう、やったな…)
さっきの指の感触を忘れない様に、加護は何度も指を伸ばし曲げした。
そのつぶらな瞳は未だ福田の背中を追っていた。
(ほんまおおきに福田さん。)
(あなたのおかげでうちはさらに強なることができた。)
「やったね、あいぼぉーん!」
花道の一番手前で辻希美が勝利の喜びに飛び跳ねている。
笑みを浮かべ加護はそちらの方に目を移す。
(そや、うちはまだまだ強ならなあかんのや。)
誰にも言えない想いがある。
「おいわいれす。アイスとケーキとクレープとおすし食べましょう!」
「アホか!まだ一回戦やないか!そんなん毎回やってたら腹こわすでほんま。」
と反論しながらも結局付き合うことになるのは目に見えている。
スキップする辻の後ろ姿を見る加護の瞳は複雑な色に濡れていた。
(強ならなあかんのや)
(あいつの前に立つまでに、もっともっと…)
1回戦第7試合 勝者 加護亜依
「さて、1回戦も残す所いよいよあとひとつかいな。」
興奮を抑え切れぬように、つんくはトーナメント表にかじりついていた。
辻希美(ド素人)
石川梨華(チャーミー流拳法)
後藤真希(総合格闘技)
小川真琴(プロレス)
保田圭(保田流柔術)
紺野あさ美(極真空手)
加護亜依(色々)
「どこをとっても海千山千、とても予測がつかへんわ。」
さらに、最後の一枠を見るだけで手に汗が滲んでくる。
矢口真里(中国拳法)
松浦亜弥(?)
「あのグラップラー真里と経歴一切不明の謎の女や、こりゃ見物やで。」
これでは騒ぐなと言う方が無理な相談である。だが、つんくの期待をよそに一回戦最後
の試合は、誰も予想だにしなかった結末を迎えることになる。
To be continued
キタ━━(゚∀゚)━( ゚∀)━( ゚)━( )━(゚ )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━ !!!!!
松浦vs矢口・・・見当もつかん・・・
紐切りで効かなくなった腕とか目はすぐ元に戻るの?
そもそも紐切りって何なん?
あいぼんは「加護流模倣格闘術」と言うことでよろしいのでは?
>>382 神経を引きちぎるということではないの?
385 :
382:02/05/25 00:32 ID:WYGe3mUA
矢口、あやや相手は運が悪かった。
ご愁傷様(チーン
387 :
:02/05/25 10:36 ID:tnQw6dQR
>>384 神経がちぎられたら治らないから加護は2回戦敗退が濃厚ですね。
388 :
:02/05/25 14:24 ID:jJg0TPpK
矢口、最初は主役的な存在だったのに、この影の薄さは…
まるで「グラップラー○○」でなくて、「バ○」のようだ。
「コラァみちよ、いつまでもウジウジしてないで仕事しろぃ!」
先輩の稲葉に怒鳴られるも、平家の表情から曇りの色は消えない。
憧れの格闘家なっちがいきなり敗戦した事が原因だ。
「だって…」
「記者が仕事に私情を持ち込むんじゃない!」
そんな事はわかっているのだが、そう簡単に納得できるものではない。
「先輩にはないんですか、そういうの。贔屓の選手とか。」
「え、私?うーん…まあ、いなくはないか。」
「誰っ?誰ですか?」
仕事の鬼の様な稲葉先輩にも、そんな一面があったのかと平家は驚いて聞き返した。
「矢口真里。」
それは選ばれし者だけが観戦を許される未知の世界、地下闘技場王者の名前。
「あの子のファイトが見たい為だけに、私は高い金を払ってその資格を得た。」
いつもクールだった稲葉の眼に情熱の色が見える。
「強いだけじゃないんだよ、見る者みんなを熱くさせるんだよあの子は。」
言葉にして聞かされるだけで、平家はなぜか胸にときめきを感じた。
(見たい、私も彼女のファイトを見たい!)
稲葉や平家だけではない。今や全観客がグラップラー真里の出陣を待ち望んでいた。
TAP会館の飯田、石川、加護は選手入場口に並び立っていた。
「なぁ館長、こない所にえんと控え室まで行かへんか?」
「駄目だよ、あいぼんが行っても邪魔になるだけだから。」
「なんやとぉ!梨華ちゃんのキィキィ声の方がよっぽど邪魔んなるわ!」
「なんですってー!そんなことないもぉーん(高音)!!」
「五月蝿――――い!!!!」
飯田の怒声にようやく二人は声を沈めた。
両脇で喧嘩をされて間に挟まれたのでは飯田も敵わない
「加護。石川の言う通り真里はウォーミングアップ中だ。ここで待っていよう。」
「せやけど…」
「真里のウォーミングアップはちょい特殊だから、近寄ったら怪我するかもしれない。」
「特殊?」
個室に矢口真里は一人、何者かと戦っていた。
空想の相手と実戦のシミュレーション、それが矢口のウォーミングアップなのである。
それによりポテンシャル最大の状態でいきなり試合に臨む事ができるのだ。
動きが止まった。全身から汗が滲み出ている。最高の状態。
さぁ御見せしよう、145cmの奇跡。
今、扉は開かれた。
汗を流しながら白壁の廊下を駆ける看護婦。
「先生、大変です。例の患者がまた発作を!」
「やれやれまたか。おい君、応援を用意しろ。二人…いや三人以上だ。」
先生と呼ばれた男が緊急棟へとひた走る。重体患者ばかりが集められたその病棟の中で
も最も奥地。男が目的の病室へと足を踏み入れると、たった一人の患者を相手に医師が数
人がかりで抑え付け悪戦苦闘している所だった。
「何をしている!ぼさっとしてないで君も手伝いたまえ!」
「あ、ああ。」
男は患者の左腕を抑え付ける。だが、全体重を乗せているにもかかわらず腕の力だけで
持ち上げられそうになる。とんでもない力の持ち主だ。やがて鎮静剤を持った応援が駆け
つけ、なんとかその場は事無きを得た。
「まったく、とんでもない娘だな。」
患者の名は石黒彩。全身が包帯で判別はし難いがれっきとした女性である。何かの格闘
技の大会での負傷者と言う情報だけは知っている。
「しかしこの化け物を病院送りにした女が存在するという事実が信じられないね。」
「人間じゃないよ、君も見ただろ彼女のカルテは。」
「ああ、私も多くの患者を見てきたがこんな残酷なのは初めてだ。吐き気がした。」
「心が抜け落ちているのか、例えるならばそう…」
その場に居合わせた全員の心に共通の単語が浮かび上がる。
「悪魔だ…。」
深い闇。終わりなどない、どこまでも続く深淵なる闇。
その闇の中で誰かが私を見ている。
お前は誰だ?
どうしてこっちを見ている?
やめろ!見るな!ほうっておいてくれ!
逃げられない、どこにも逃れる場所なんてない。
体が痛い。気を失いそうになる程痛い。
助けて、もうタスケテ…
「ッハア…ハアッ…ハアッ…」
薄暗い病室の中で石黒彩は目を覚ました。
悪夢から逃れた後に訪れるいつもの現実。変わらない現実。
全身が焼けるように痛み、腕を上げることすらできない。
悪夢でも現実でも、浮かぶ顔は一つ。あの悪魔のあの表情が寝ても覚めても付きまとう。
いっそ気が狂ってしまえば、どれだけ楽になれるだろう。
耳障りな幻聴すら聞こえてくる。
(あーやややや、やっやっやや♪)
石黒は己の名を恨んだ。
『只今より一回戦第8試合を開始します!!』
あれだけ熱気に包まれていた会場が、盆を返した様に静まり返っている。TAPの三人は
もちろん、すでに勝ち上がりを決めた他の選手達も息を飲んでその闘いの行く末を見守る。
『青竜の方角より、松浦亜弥選手の入場です!!!』
ついに現れた死神。松浦亜弥が闘技場の土に足を踏み入れた。
その空間に一斉に緊張が走る。
『続きまして白虎の方角――』
待望。まさにその言葉が相応しい。
皆の眼が入場ゲートに釘付けとなる。
『矢口真里選手の入場でーーーーす!!!』
入場アナウンスと共に大歓声を受け矢口真里が駆け込んでくる。当たり前の様に誰もが
そう思い込んでいた。
「ザワッ、ザワ…」
異変が起きた。
それは誰も想像すらしなかった出来事。
矢口が姿を見せない。
To be continued
ヤグチコナ━━(゚∀゚)━( ゚∀)━( ゚)━( )━(゚ )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━イ!!!!!
395 :
:02/05/25 21:07 ID:fWFu8Y4J
小さすぎて見えないとか・・?(W
彡彡彡从乂个个乂#| ||#乂个个乂从ミミミミミ 〜
彡彡彡彡 o∵o。∵∴。o∵゚∴o∵。o∵゚∴ミ☆ミミミミ 〜
彡彡彡/// ノ(∵ー∵。∴ー∴。∵ー \ ミミミ 〜
|/// ⌒ー ゚∴ー∵。∴ー∴。 λ 〜
´つ |// ' ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ `λ
|/ /κ ) >))((< (χヽ λ ´つ
| /●/ ノ へ\ \●ミ λ
| 彡/ (● ●) λ
ξヽ # ,へ-‐-へ、 メ ∫
ξヽ ,-|/ m`l w ‘ω { `l /∫ < ののがハロモニの主役なのれす
ξ ヽ / く γ/  ̄/ v`^ (、 / ∫
ξ \ (ノ (_ _('`u'μ ν'/ ∫
ξ \` `l´ ’ / ∫
ξ ヽ |-||||-| / ∫
/⌒へ√⌒───====\==|
/‖/ //~\\\\\へミミミミ\ ミミミ
|彡彡彡/ .¨∵∴∵∴\\\\\\\ミミミミミミ
|彡彡ノ ∵∴∴::∴∵ \\\\\\ミミミ〆
\彡ノ ∵∴∴∵黴:∴¨ \\\\\\ミミミ)
|ノ υ ι ∵ u \\\\\ミ\
ミ :■■■ J '■■■:\\\ソ)|
|│ ≦≧ ミ ≦≧ ミ〆ソ
|│ ミ 彡 |ソノ
∪∴∵∴ノミ● ● \ ∴∵∴ | ~
| ノ __ \ |
| ー'、_/UUuU\_,`ー 丿 < あいぼんゲロゲロ
\ \∴∵ / ノ
\ ι∴∂∴u J /
`―∴o∴ ―‐'
∞∵∴
/∵彡∵ヾ
399 :
わはは:02/05/27 12:54 ID:XGXlbD/r
ちょっとでも格闘技かじってたらもう少しリアリティだせたかもね。
まあそういう小説じゃねーか
幸運は続く
>>399 バキを下敷きにしてる小説にリアリティーを求められても…
402 :
辻っ子のお豆さん:02/05/28 12:43 ID:YH7WYQz3
「おいおい、どーなっとんのや!?」
大会主催者つんくの激が飛ぶ。会場中が混乱に渦巻いている。
出場選手が登場しない、前代未聞の出来事である。
「急に怖くなって逃げ出したのか?」
「まさか、あの矢口に限ってそれはありえない。」
「じゃあ何か事故にでも巻き込まれてるとか…」
そこで観客席にいる男二人はハッとして顔を見合わせた。
やがて視線をゆっくりと舞台場に立ち尽くす少女に向ける。
松浦亜弥。
同様の考えが、飯田達の頭に浮かぶ。
「控え室、行くぞ!!」
飯田の合図と共に、横にいた加護も付き従い駆け出す。
だが、石川だけは何を思ったか反対の方向へと歩み始めた。
その頃、つんくを含めた審判団達はこの緊急事態の対処に頭を悩ませていた。
「ルール上、松浦の不戦勝ということになりますが…」
「しかし、俺は二人のファイトがみたいんや。」
「ですがつんくさん、いつまでも皆を待たせる訳にもいきません。」
「しゃーないなぁ。10分、10分や。」
『10分立っても矢口選手が現れなければ、松浦選手の不戦勝と致します!!』
その場内アナウンスに観客達の間に不満と不安の声があがった。
選手達にも不満を持つ者はいた。
「なんだよー、怪我を押してわざわざ観戦に来たってのにさ。」
包帯姿の吉澤が口をとんがらせる。
「矢口って人、逃げちゃったのかなぁ、それとも…」
後藤は特に動じた様子もなく成り行きを見守っている。
そんな二人を諭す様に達人保田が口を開いた。
「安心せい、奴はそんな女ではない。」
保田は知っている。本当の矢口という娘を。
「奴は必ず来る!」
(ザワッ…)
突如、場内にざわめきが走る。
「あれれ、怖い顔して何か様ですか〜?」
矢口と同じTAP会館、石川梨華がゆっくりと闘技場へと足を踏み入れていた。
その表情は普段の愛くるしい石川のものではない。
松浦亜弥と石川梨華、合い並ぶ事のないと思われた組み合わせが今ここに。
「あんた、矢口さんに何かした?」
「え〜、あややわかんな〜いなぁ〜。」
相変わらずとぼけた口調の松浦に、石川の静かな警告がさらに強みを増した。
「10分経っても矢口さんが来ない様なことがあれば、私があんたの相手をする。」
衝撃の発言に会場中が驚きの声をあげる。
だが松浦は驚くどころかむしろ笑みさえ浮かべている。
「10分後と言わず、今すぐでもいいわよ♪」
プツン。
その科白に反応するように、石川の気が戦闘モードへと移行する。
「やめぇーい!!!」
つんくの制止の声も空しく、二人の凄いスピードで激突した。
吹き飛んだのは石川梨華、だがガードしていたのでそれほどダメージはない。
パラパラ…
松浦の袖口が落ちた。あの一瞬でこの芸当。これがTAPのリーサルウェポン。
(へぇ、意外とおいしそう…)
予定外の獲物を前に、松浦は舌なめずりをした。
「殺しちゃってよいのかな〜♪」
「なんや、これぇー!」
矢口の控え室を前に加護は大声を上げた。扉をいくら押しても一向に開かないのだ。
「どけ、加護。」
武神飯田圭織の気が拳に集中している。加護はあわてて扉から離れた。
稲妻の様な飯田の正拳が控え室の扉を破壊する。
(ひょえー!ののの奴、ようこんなもんくらって立ちよったわ。)
凄まじい破壊力を目の当たりにし、加護はポカーンと口を開けた。
だが矢口の事を思い出しすぐに控え室内部へと、意識を戻す。
そこで飯田と加護は信じられない事態を目にする。
荒れ果てた控え室。
山積みにされたロッカー、ソファ、テーブル。そのせいで扉が開かなかったのだ。
「矢口!矢口!いるかー!」
「あいぼんやでぇ〜、矢口さ〜ん!!」
だが返事はない。飯田と加護の声が空しく響き渡る。
(これは!これはあいつの!松浦の仕業だっていうのか!)
どうしようもない怒りが飯田の胸に渦巻く。
そして、時計の針は無情にも10分の経過を示した。
To be continued
気付かないうちにこのようなスレが・・・
ひっそりと読ませていただきます。
>>1に前小説が載っていないのですがどうしてでしょうか?
407 :
:02/05/29 01:31 ID:d36MMefI
卒業旅行はなかったことになったんだよ。
>>プリンスひつじ
てめー、昨日北海道入れてんだよ!
矢口は遅れて来たリザーバーと戦ってるとか?
410 :
辻っ子のお豆さん:02/05/31 15:17 ID:LkcLX+e4
さぁ御見せしよう、145cmの奇跡。
今、扉は開かれた。
「ピーチ♪」
眼前に松浦亜弥。思考する暇はなかった。胸倉に衝撃が落ちる。どうやって自分が弾き飛ばされたのかもわからない。室内中央のテーブルに背中を強打した。
(なんで?)(ここに?)(不意打ち?)(上等)(やったろうじゃん!)
(次に仕掛けてきたらそこで腕をとって反撃する。)
(戦闘準備は万全。だまし討ちする相手を間違えたなバーカ。)(さぁ来いよ。)
矢口の体内に反撃の態勢が整う。
だがテーブル上で仰向けになっていた矢口の視界に写ったのは松浦ではなかった。
ロッカー!?
空を飛んで襲い掛かってきたのは室内に配置されていた巨大なロッカー。テーブルごと矢口を押しつぶす。さらにソファ、鉢植え等部屋中にあるあらゆる物が投げ込まれた。
「まつうらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
矢口の絶叫はロッカーが潰れる音によって掻き消された。
試合開始5分前の出来事。
「まつうらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
先ほどと同じ叫びが意識を取り戻した矢口の口から発された。
飛び起きようとしたが、全身の痛みを感じそのままうずくまる。
「真里!!」
「矢口さん!!」
そして目の前にいるのが松浦ではなく、見知った飯田と加護である事に気付き、矢口はようやく我に返った。
「試合は…?」
一触即発状態の石川と松浦を止めたのは意外な人物だった。
「いい加減にせいや、お前等。」
本場物のドスを利かした睨みで二人の間に割って入ったのは中澤裕子。
「10分も待たれんのか、気ぃ短い子等やわほんま。」
流石と言うべき威圧感であったが、残念ながら安々と引く二人ではない。
「どいて下さい!矢口さんの敵討ちなんです!」
「アホォ、まだ矢口が負けたて決まった訳やないやろ!」
中澤の恫喝に石川の勢いが徐々に薄れてゆく。確かに彼女の言う通りだ。
「それに矢口の代わりはあんたやない、こんな時の為のリザーバーでしょ。」
中澤の眼が松浦を捕らえた。
時計の針は無情にも10分の経過を示した。
矢口真里は結局姿を見せなかった。肩を落とすつんく。不本意なアナウンスが流れる。
『矢口真里不戦敗!!!代わりましてリザーバーのなかざ…』
「ちょおーっとまったぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
その声に反応し顔を上げるつんく。
振り返る石川梨華。
思わず口端をあげる保田圭。
目を見開く松浦亜弥。
飯田と加護を従えて颯爽と登場した火の玉娘、グラップラー真里こと矢口真里。
最大級の歓声が彼女を歓迎した。
誰にも気付かれることなく中澤裕子は静かに身を引く。
彼女は初めから戦う気等なかった。ただ自分の後輩を信じていただけだ。
(それでこそチャンピオン、やったり!)
松浦の表情から笑みが消えていた。目を細めて火の玉娘を見詰め続ける。
(へぇ、あれだけのダメージでまだ刃向かうの。)
(なんだかイライラしてくるなぁ、あの人を見てると。)
(おとなしく寝ていれば良かったのに…)
「ほんとうに息の根を止めようかな。」
「すいませ〜ん、寝坊してました!」
全身打撲の重体をまるで感じさせない矢口の口調と表情。
(馬鹿、本当は戦闘どころか歩くのさえやっとのくせに…)
事情を知る飯田と加護だけが、苦い思いで火の玉娘の背中を見つめる。
「やっぱ無理やて、なんで止めへんのや飯田さん!」
加護の気持ちも分かる。だが飯田には矢口の気持ちも痛いほど理解るのだ。
「この大会を誰より楽しみにしていたのは真里だ、そんなあいつを止められるか。」
加護は気付いた。握り締められた飯田の拳から血が零れ落ちている事を。
(ああ、闘っとるんや、この人も…)
「加護、よく見ておけ。矢口真里という娘の雄志を。」
そう告げた飯田の言葉は微かに震えていた。
自分より小さい、145cmの背中が、その時の加護にはどんなに大きく見えたことか。
「強いだけじゃないんだよ、見る者みんなを熱くさせるんだよあの子は。」
(まだ何も始まってへん。闘技場に踏み込んだだけや。)
(だけど、それだけでうちの胸はこんなにドキドキしてる。)
いつしか、加護の眼から水の玉粒が湧き出ていた。
「さっきはどうも。」
不敵な笑みで松浦の前に現れた矢口。対する松浦は一転して無表情。
「イイワケしないの。うまくすれば私を反則負けにできるかもよ。」
「黙れガキ、お前程度にゃこんくらいちょうどいいハンデなんだよ。」
明らかに強がり。傍目からも無理をしているのが分かる。闘える体ではないと。
「分かりました。二度と強がりを叩けない体にしてあげましょう。」
長かった一回戦、ラストバトルが始まる。
To be continued
415 :
予告:02/05/31 15:25 ID:LkcLX+e4
次回、いよいよベスト8が決定する!
果たして145cmに奇跡は起こるのか?
その時松浦のとった驚愕の行動とは?
すんげぇ すんげぇ すんげぇ すんげぇ あつい
すんげぇ すんげぇ すんげぇ すんげぇ バトル
乞うご期待!
最近、予告の方が楽しみ(W
んげんげキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!
保全
419 :
辻っ子のお豆さん:02/06/02 16:19 ID:5qJLMPii
矢口の構えは中国拳法のそれ。だが構えるだけで体中が悲鳴をあげる。
一方、松浦は棒立ち。読めない。未知のスタイル?
(何を考えてるか知らないけど関係ない、私は私の全力でいくだけ!)
呼吸と間合い、そして初動作の速さ。実践の中で鍛え上げられてきた矢口の領域。
あの体でよくぞここまで…!武神飯田にそう思わせるほど完璧な流れ。
未だ棒立ちの松浦は反応すらできていない、入る。
パァン!!
宙を舞ったのは矢口。あの時と同じ衝撃。控え室へ不意打ちしたとき、同様に石川を弾き飛ばしたとき、正体不明の打撃。何をした松浦。
「ぐぅう!!」
全身打撲の体にさらに衝撃が加わり、矢口の表情に苦悶の色が浮かぶ。だが立ち上がらなければならない。こんな所で終る為にわざわざ来たんじゃない。そんな想いを嘲笑うかのごとく松浦の足が矢口の腹部を踏みつける。
「も〜う止〜められない♪」
カリッ!カリッ!カリッ!カリッ!
「ぃぎゃああああああああああああ!!!!」
まるでプリッツをへし折るかの様に一本ずつ骨を踏み砕いていく。
桃色の死神に笑みが戻る。殺る気だ。
もはや勝負あったが、それでも攻撃を止めようとしない松浦に、石川と加護の我慢は限界に達した。後で何といわれようと構わない、止める!二人はフェンスを飛び越え闘技場に飛び出した。だがそんな二人より先に飛ぶ影があった。
「飯田さん…」
武神の飛び蹴りを察知し、松浦は間一髪身を躱す。
「こわ〜い♪」
瀕死の矢口が、それでも口振りだけは一人前に。
「なに…しに、来た…んだよ。こっから…逆転…するつもり…だった、のに…」
「恨んでもいい、嫌ってもいい。それでも私はお前を失う訳にはいかない!」
涙を隠すように矢口は顔を腕で覆う。
「バカヤロ…」
『矢口真里反則負けー!!よって勝者松浦亜弥!!!』
試合中に第三者の援護を受ける事は当然の反則、勝敗を決した。
救護班の手により矢口は担架で運ばれて行く。
だが場内に残る四人は、睨み合ったまま動こうとしない。
「クスクス、弱い物はそうやって群れ合っているのがお似合いだよ。」
松浦の挑発に、飯田、石川、加護は顔を顰める。
「あんた、誰に口聞いてるかわかってんの?」
「よせ石川、お前はまだ試合があるだろ。ここは私に任せろ。」
互いに譲ろれない状況において、さらに松浦が挑発を繰り返す。
「アハハ、いいよこっちは。別に三人まとめてでも、ね。」
日本最大の格闘技団体TAPが、ここまで侮辱されたのは初めてのことである。
飯田と石川が今にも飛び出そうとしたその時、二人のシャツを掴む小さな手があった。
「館長!梨華ちゃん!駄目や!」
加護亜依。TAPの中でも特に矢口を尊敬し師事していた少女。
「ここで暴れたらそんなのこいつと同じや!」
「加護…」
「うちらは武道家やろ、殺し屋やないで。らしく正々堂々とぶっ倒そうや。」
その言葉が石川と飯田に冷静さを戻させる。
(まさか、加護に説教されるとはな。だがこいつの言う通りだ。)
松浦の二回戦の相手、それは…
「こいつはうちが叩き潰したる!!」
加護亜依が松浦亜弥の前に立つ。
「決めた。君はさっきのチビより酷い目に合わせちゃおう♪」
「それぁ楽しみやで。やれるもんならやってみぃや。」
こうして波乱含みの1回戦は幕を閉じた。
【2回戦組み合わせ】
第一試合
辻希美vs石川梨華
第二試合
後藤真希vs小川真琴
第三試合
保田圭vs紺野あさ美
第四試合
加護亜依vs松浦亜弥
出場選手中最大のパワーと最速のスピードが激突する第一試合。
無敵の王者が恐怖のチャンプキラーを迎え撃つ第二試合。
最強の矛を持つ少女と最強の盾を持つ達人が並ぶ第三試合。
天才を越えた天才と冷酷なる死神が牙を剥く第四試合。
地上最強の娘はこの中でただ一人。
To be continued
423 :
名無し募集中。。。:02/06/02 16:22 ID:mgCfyJvf
____
/ \
/ / ̄⌒ ̄\
/ / ⌒ ⌒ | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| / (・) (・) | |
/⌒ (6 つ | | こんな糞スレageるなんて、かあさん許しませんよ!
( | / ___ | <
− \ \_/ / \__________________
// ,,r'´⌒ヽ___/ ,ィ
/ ヽ ri/ 彡
/ i ト、 __,,,丿)/ ζ
| ! )`Y'''" ヽ,,/ / ̄ ̄ ̄ ̄\
! l | く,, ,,,ィ'" /. \
ヽヽ ゝ ! ̄!~〜、 / |
ヽ / ̄""'''⌒ ̄"^'''''ー--、 :::||||||||||||||||||||||||||||||||| / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
Y'´ / """''''〜--、|||||||||||||||||) < スマン!許してよ、母さん。
( 丿 ,,;;'' ....::::::::::: ::::r''''"" ̄""ヽ | \___________________
ゝ ー--、,,,,,___ ::: ::,,,,,ー`''''''⌒''ーイ ./
ヽ \  ̄""'''"" ̄ \____/-、
ヽ ヽ :::::::::::::::::::: / `ヽ
ヽ 丿 ) / ノ ゝ ヽ ,〉
ゝ ! / ∀
! | / 人 ヽ ヽ
| ,;;} !ー-、/ ヽ _,,,-ー'''''--ヘ
|ノ | | / Y ヽ
{ | | j ) 作者 ヽ
〈 j ト-.| / )
松浦コワヒィ〜
さ〜 待ちに待った石川対辻
楽しみにしてます。
知が克巳とは読めなかったよ..
427 :
:02/06/03 18:28 ID:jMb/idUe
引っ張った割にはあっさりやられたね
429 :
ななし:02/06/04 22:58 ID:vE//WIe7
克巳は石川じゃないのか?
430 :
小休止:02/06/05 04:24 ID:oNmaS2Qo
選手インタビュー
『ここで勝ち残った選手に二三質問してみたいと思います。』
【辻希美】
――注目している選手等いますか?――
「えーと、おばちゃんがおもしろかったのれす。」
――ずばり、決勝の組み合わせは?――
「ののとあいぼんに決まっているのれす。」
――ありがとうございました、次の試合も頑張って下さい。――
「アーイ!」
【石川梨華】
――注目している選手等いますか?――
「後藤真希さん。私は彼女と闘う為に出場した様なものなので。」
――ずばり、決勝の組み合わせは?――
「そこまで先はまだ考えてません。一戦一戦に集中してるから。」
――ありがとうございました、次の試合も頑張って下さい。――
「はい、がんばります。」
【後藤真希】
――注目している選手等いますか?――
「う〜ん、もういない。」
――ずばり、決勝の組み合わせは?――
「う〜〜ん?スースー…」
――あれ?後藤さん?――
「Zzzzzz…」」
――寝ちゃいました。――
【小川真琴】
――注目している選手等いますか?――
「おう、あいつ、あいつだよ。あのシャクレ、そう石川。いいアゴしてるねぇ。」
――ずばり、決勝の組み合わせは?――
「当然俺だろ。向こうのブロックからは…松浦かな。あいつが一番やばそうだ。」
――ありがとうございました、次の試合も頑張って下さい。――
「やるに決まってんだろコノヤロー!」
【保田圭】
――注目している選手等いますか?――
「そうじゃのう、とりあえずは次に闘る紺野さんかのぅ。」
――ずばり、決勝の組み合わせは?――
「順当に行けば私と真希じゃろ。そんで私が勝つと。」
――ありがとうございました、次の試合も頑張って下さい。――
「カッカッカ、任せとけぃ。」
【紺野あさ美】
――注目している選手等いますか?――
「吉澤さんです。すごく強かったです。え、勝者の中でですか?それは、えーとえーと…」
――ああ、もういいです。じゃあ、ずばり、決勝の組み合わせは?――
「そうですね、後藤さんと加護さん当たりかと。」
――自分じゃないのかよ、まあいいや、次の試合も頑張って下さい。――
「はい!」
【加護亜依】
――注目している選手等いますか?――
「良い意味でならのの、悪い意味で松浦や。」
――ずばり、決勝の組み合わせは?――
「ののは何てゆうてた?うちもそれといっしょや。」
――ありがとうございました、次の試合も頑張って下さい。――
「おいーっす。」
【松浦亜弥】
――注目している選手等いますか?――
「松浦亜弥ちゃんかなぁ。強くて可愛くてもうサイコーって感じです。」
――ずばり、決勝の組み合わせは?――
「私は誰とでもいいですよ。私を満足させてくれる人がいればの話ですけど。」
――ありがとうございました、次の試合も頑張って下さい。――
「え、もう終わり?少し遊んでいかないの?」
――っ!!――
(レポーター逃げ出す。インタビュー終了)
辻豆さん、夜更けにご苦労様。
435 :
二回戦突入:02/06/06 02:34 ID:Drenv4OO
見舞いに訪れた医務室を後にする石川、自分の試合が目前にと迫っている。先ほど見せ
た苛立ちも今では姿を消し、いつもの冷静さを取り戻している。控え室へと続く廊下にて
そんな石川に声を掛ける人物がいた。
「見事なアゴ、君が準決勝を闘う姿が見たい。」
声の主は小川真琴、一回戦にてなっちを破るという大金星をあげた娘である。だが石川
にとっては特別興味を示す相手でもなかった。どうせBブロックを勝ち上がるのは後藤さ
んに決まっている、そう思い込んでいたからだ。
「どうぞ見て下さい、観客席でね。」
相手をしている暇はないの、邪魔だからどいて下さらない?そう言わんばかりに冷たい
表情で答える石川。ところが当の小川はその態度に腹を立てるどころか大声で笑い始めた。
「アハハハ皆そうだ。後藤真希の勝利を疑っている奴などいやしない。」
石川には彼女が何を言いたいのか理解できない。
「安倍なつみの時もそうだった。だけどどう?最後まで立っていたのは私だった。」
「何が言いたい訳?」
「王者なんてまやかし、頂上で落ち着いたファイターなんて怖くもなんともないの。
後は落ちるだけですもの。次の試合でそれを再び証明してあげるわ。」
さらに倣岸に小川が顔を近づけてきた。なぜか避けるのを躊躇させる空気を持っている。
「安倍や後藤なんかより私は貴方を高く評価している。先に待っていてね。」
吐息と共にするりとアゴに触れ小川は去って行った。残された石川は独り思う。
(気に食わないが見所だけはある娘ね)
「いいらさん、いいらさん!」
狭い部屋に辻希美の舌足らずな声が響き渡る。ここはTAP会館館長飯田圭織の控え室
である。これから辻が対戦する石川はTAPの秘密兵器。当然この少女が出入りするのは
場違いに他ならない、普通の感覚の持ち主ならば近寄る事もしないだろう。しかし彼女は
全く気にする様子もなく、ごく自然に馴染んでさえいる。
「梨華ちゃんつよそうなのれす。弱点おしえてくらはい!」
呆れて物も言えないとはこのような時に使うのだな、飯田は認識した。
「あのなあ、石川は俺の愛弟子だぞ、その相手に弱点教える奴があるか。」
「いやれす。ききたいのれす。まけたくないのれす!」
「ハァ。ったく、しょーがねえなあ。」
ここまでストレートに来られるとむしろ素直に教えてやりたくなってくるから不思議だ。
「石川はああ見えて結構打たれ弱い所がある。それに加えてお前のパワーだろ。
一発でも当れば勝負ありだよ。」
「いっぱつれ勝てるんれすか、らったら楽勝なのれす、ありらとういいらさん!」
喜び勇んで辻は闘技場へと駆け出した。一気に静寂に包まれる事になった控え室にて飯田
の口から最後の助言が漏れたことを辻希美は知らない。
「当れば…な。」
ザワザワ…
選手入場口から闘技場へと続く道にトイレットペーパーが敷かれた。その異様な光景に
場内はざわめきが絶えない。いったい何が始まるというのか?
「ほう、TAPにアレができる者がおったとはのぅ。」
保田圭の眼が光る。
まさか生きている内にこの目にする事ができるとは、前代未聞のデモンストレーション。
『それでは2回戦第一試合、石川梨華選手の入場ですっ!!!』
現れた最終兵器、なんと薄いトイレットペーパーの上を回転演舞で登場する。
しないよしないよしないよしないよしないよしないよしないよしないよしないよ…
美しく最後の構えを決める石川、湧き起こる大歓声。
驚くべき事に足元のトイレットペーパーはまるで使用前の様に汚れ一つない。
「ありえへん…」
「奴の究極とも言えるスピードとしないよ精神が揃い初めて可能となる妙技、恐れ入る。」
同門の加護と飯田ですら度肝を抜かれる石川のデモンストレーション。今の登場で大半
の観客は石川の魅力の虜になってしまった。
「さぁて、どうでる?あのアホは…」
期待と不安に200%返しで応じるのが辻希美である。反対の入場口にあるモノが用意さ
れる。ののたんはやってくれた!
自慢の側転で登場、辻希美。だがただ回っているだけではない。ズラリと並べられたア
イスの列が辻が通り過ぎた後消息を絶っているのだ.
「まさか…」
嫌な汗を飯田は浮かべた。そのマジックの種は安易に予想できる。単純かつ明快。だが
実行不可能、人の業を越えている。そんな芸当できるとすればそれはモンスター。
「プハー腹八分れす。」
口の周りにアイスをつけたままのモンスターが石川の前に降り立った。
「汚らわしい、よく人前でそんなみっともない事ができるわね。」
「てへてへ…」
「誉めてないわよ。」
相反するふたり、奇跡の様なカードがここに実現した。
曰く、格闘技対喧嘩
曰く、武力対暴力
曰く、スピード対パワー
曰く、ポジティブ対デブ
曰く、しないよ対なのれす
この闘いを形容する言葉は事欠かない。
闘いの先に果たしてどのような結末を迎えるのか?今、矢は放たれた!
『はじめぇ!!!』
拳を振り上げて小さな巨人が走ってくる。
何を考えている?まさかその拳をそのまま真っ正面から繰り出そうというの?あまりに
単純、あまりに幼稚。このレベルの闘いでそんなモノが決まるとでも?館長に勝ったこと
で買いかぶりすぎたみたい、やはり素人は素人。まるで形もなっていないし、隙だらけ。
好きなだけ反撃して下さいと言ってるみたいなもの。いいわ、一瞬で楽にしてあげる。
ブゥンッ!!
豪腕をぎりぎりで躱してカウンター、そんな石川の目論見はあっさりと打ち崩される。
(躱した、確かに躱したはずだよ。なのに態勢がよろける。なんで?)
答えは風圧。常識を逸脱したパワーが織り成す拳風、それによる風圧の力のみで石川は
態勢を崩されたのだ。そこへすかさず辻の二撃目が迫る。石川の反射神経と速度がなけれ
ば勝負は着いていただろう。崩れた体勢からすぐに逃げの動きに入る。辻の拳は宙を舞っ
た。間合いを置いて再び二人は向かい合う。
どうやら考えを改めなければいけないみたいね。このおチビちゃんはただの食いしん坊
万歳じゃない。技術なしで勝ち上がってきた訳がわかったわ。洗練された技をも凌駕する
圧倒腕力!でも早めに分かって良かった、それが分かればこちらにも対処の仕様がある。
「辻は唯一無二の勝機を失ったかもしれん。」
飯田の言葉に加護は首を傾けた。まだ始まったばかりやのに何言うとるんや。
「石川に一撃を与えるチャンスは、石川がまだ油断しうる最初の一発にあった。」
「今ので油断がなくなった…?」
「ああ、本気で回避に回った石川に一撃を与えること、俺や矢口でも難しい。」
のの…!
辻の豪腕が迫り来る度、石川は大袈裟なほど間合いを開けてそれを躱す。元々二人の速
さには天地くらいの差がある。石川にとってそれは造作のないことだ。
「にげまわってないれたたかえ!ずるいのれす!」
悲痛な叫びにも耳を貸さない。
(逃げるさ、負けるくらいなら逃げる。私のベクトルは常に勝利に向けられているんだ。)
何十発の大砲が空を切っただろうか。石川はこのままスタミナ勝負に持ち込む気なのか。
いやスタミナでは辻にやや分があると思われる。では何か策が…皆がそう思考を巡らせて
いた時それは起きた。ふいに辻の脚がもつれる。
「あれぇ?」
狙い通り、この時を石川は待っていた。
吉澤は背筋が寒くなるのを感じた。
「お主も気付いたか。」
ふと気が付いて脇を見ると、あの保田の婆さんも顔を強張らせている。
「スピードを少しずつ上げていた!」
「ああ、しかも誰にも気付かれぬ様、徐々に徐々にじゃ。」
逃げ回っていたのではない、辻は知らない間に罠にはめられていたのだ。普段と変わら
ぬペースで打ち込んでいたはずが、いつの間にか己の限界を越えた速度に…。
冷たき仮面を持つ氷の女王の本領が、ついにその姿を現わした。
防御も回避もできない完全なる隙を生み出す。氷の女王、この試合初めての攻撃。
チャーミー流拳法 第一奥義「ハッピー」
一回戦にて新垣を観客席まで吹き飛ばしたあの奥義が再び炸裂!
背中にフェンスの衝撃を直に受け、石川は吐血した。
吹き飛んだのは辻ではない、攻撃を仕掛けた石川の方であった。
(馬鹿な…何でだよ?)
白い歯を見せながら自慢気にポォンとお腹を叩くモンスター。
「辻の腹」それはあらゆる攻撃を反射するミラクルシールド。
(腹だぁ!?ふざけてんじゃねえぞ餓鬼、わざわざ罠までこさえたのによぉ。)
(私を誰だと思ってる、TAPのファイナルウェポンだぜ!)
(てめえなんかとは格が違うんだよ!)
華麗な闘いを好む石川にとって、辻の型にはまらないスタイルは充分嫌悪の対象となり
得る。さらに自分の技で逆に倒されるという格好悪い姿を公に晒すことになり、その感情
は一気に増幅していった。氷の女王の双眸に熱きものが宿る。
立ち上がると物凄い速度で辻に迫る。今までにない感情剥き出しのファイトスタイルで、
前後左右あらゆる所から打撃の雨が降り注ぐ。
「梨華ちゃん、正面から打ち合う気か!?」
石川の綺麗な所しか知らなかった吉澤は、驚きを隠せない。
「勝負あった。」
無情なる飯田の審判の声。
チャーミー流拳法 第二奥義「ホイッ!」
見えない角度からの後頭部を狙う水平チョップ、これにはさしもの辻もぐらつく。だが
倒れはしない。無数の突き蹴りをその小さな体に浴びているにも関わらず少女は引かない、
譲らない。何が少女を支えている?夢か?信念か?小さな約束か?
「石川は何の為に闘っているの?」
「はい館長、私ネガティブで弱い自分を変えたいんです。もっと強くなりたいんです。」
「そっか、頑張れよ石川、お前ならきっと強くなれる。」
「はい、梨華がんばります!」
なんだよこれ、なんでこんな回想が浮かんでくんだよ。かっこわりぃ…
ずぐぉおおおおおおおおんっっ!!!
ハンマーが胸の中心をおもむろに打ち抜いた。辻の一撃がついにヒット!
(おいおい、マジかよ。)
一瞬にして閃光のごとき石川の動きが止まる。辻希美は止まらない。胃物を逆流させる
第二撃が石川の腹筋をえぐる。
(薄々気付いてはいたんだよなぁ)
(この子は命懸けてる、純粋すぎる。私と違って…)
嘔吐し悶え苦しむ石川梨華、第三撃は顔面を直撃。飛んだ。
(そりゃあ勝てねえよ)
醜く、汚く、格好悪く、異物を撒き散らし転げ回る。
死ぬか!?死ぬか梨華!?
To be continued
辻が花山だったとは・・・どんな「侠客立ち」(おとこだち)を
魅せてくれるんだ。
矛を止めると書いて武暴力を制する道武道。怪物辻の振るう超ド級の矛
を正義の盾で止めてくれよ 石川。
445 :
:02/06/06 18:01 ID:2rR18Ixz
>醜く、汚く、格好悪く、異物を撒き散らし転げ回る。
>死ぬか!?死ぬか梨華!?
なんかワロタ
去年のK1のフィリオVSハントのようだ
しないよ回転演舞(・∀・)イイ!!
こちらのトーナメントも盛り上がって参りましたが、
明日の<<狼>>もよろしこ
「もうやだっ!やめる!」
少女は泣きながら胴着を脱ぎ捨てる。
「逃げんのかよ。そんなんじゃお前は一生変わらねえな!弱虫のままだ。」
私に武術を教えてくれたのは飯田館長。
そして私の心を強く鍛えてくれたのはあの人だった。
「いい、負けるってのは試合の結果じゃないんだ。自分の気持ちにあるんだよ。」
「どんなに劣勢でも、自分があきらめなければそれは負けじゃない。」
「ポジティブにいけよ、石川。」
「立てっっ!!!」
仰向けの石川の耳に飛び込んできた声。そんなどうしてあの人が…?
松葉杖にぼろぼろの体を引きずって姿を見せたのは、ここにいるはずのないあの人。
どんなにやられても心だけは折れなかったあの人、ポジティブの体現者。
(矢口さん。)
「石川ぁ!!お前まさか負けたなんて思っちゃいないだろうなぁ!!!」
小さなミイラ娘の言葉が石川の胸に痛く突き刺さる。
(ずるいっすよ、あんたに言われたら立たない訳にはいかねえじゃねえっすか。)
全身に力が戻る。梨華はまだ死んでない!
「それでいい、石川。」
矢口の双眸に写るのは小さな怪物、その背に見え隠れするもう一つの影。
(これがお前の残したものか…なっち。)
叶う事のなかった対戦、矢口対安倍。
だが二人の意志は消えていない、それを受け継ぎし者達の闘いはここに実現したのだ。
(やっとお前との決着を付けれらるね。負けないぜ、なっち。)
「辻ちゃん、決着を付けよう。」
立ち上がった石川が真っ直ぐに目の前の少女に語り掛ける。
辻希美という本物を相手に戦力を隠す愚を思い知った。
地道に訓練を重ねることこそが強者への道と確信していた。
世の中は広い貴方のような娘もいる。
強くなるための努力自体を女々しい行為と断ずる強烈な雄度!
一切の訓練を拒否した誇りから生まれる闘争への自信。
本当に強かった・・・
チャーミー流拳法最終奥義、これだけは使いたくなかった。
だが格好良さ、名目、プライド、勝利への障害となるあらゆる物を捨て去った今なら。
今の私にならできる。本当の石川梨華をさらけ出そう。
「今から使う技は、私の最終目標に到達するために封じていたもの、すなわち…」
石川の視線が観客席に座る一人の娘に流れる。
「後藤真希!てめえを倒す為の技だったんだよ!!」
突然の告白に会場がどよめく、だが当の本人はピクリとも反応しない。
王者はあくまでもクール、静かに激闘の結末を待つのみ。
「この技を辻希美、貴方にこそ捧げたい。」
石川が辻を見詰める。辻が石川を見詰める。
「だされたものは全部食うのれす。」
ニイッ、辻が笑った。その笑みに氷の女王の口元にも笑みが…
石川が消えた!?
違う、消えたのではない、あまりの速度に姿を見失ったのだ。
次に見た石川はもう過去の石川とは別物であった。
チャーミー流拳法最終奥義「ボイン乱舞」
あ〜ボインボインボインりっかですりっかですウッヒョーウッヒョー
体面も捨てた。プライドも捨てた。それは残された勝利への執着のみの結晶。
全身の関節を軟体に、打ち出される無数の手足、これぞ究極。
「…してるのれす。」
銃弾の嵐の中で辻の口から漏れた言葉。
「今の梨華ちゃんが今まれれ一番イカしてるのれす!」
辻が動いた!銃弾の中で前へ、それでも前へ!
「ぺったん!ぺったん!ぺったんっ!!!」
矢口が目を見開く。そのファイトスピリットは…!
後藤が立ち上がる。そこに生まれし熱き鼓動は…!
二人の口から同時に漏れた言葉…
「なっち!」
さながら10トンブレスの3連弾の様な張り手三発。
石川の右胸、左胸、腹が陥没。呼吸が…!血液の循環が…!意識が…止まる。
(あきらめなければ…)
ひとつだけ止まらないもの、止められないものがある。
(…私は変わるんだ、強くなるんだ!)
そこで意識を失った。、それでも倒れない、強き意志。ポジティブ。
『勝負ありぃぃぃぃぃぃ!!!!!』
石川梨華の侠客立ち。
ひょろっとして頼りなかったあの石川が…
矢口は目頭に熱い物を感じたが、無理矢理鼻をかみ堪えた。
(お前はもう弱虫なんかじゃねえよ、一人前のファイターだ。)
気を失うも構え続ける石川を矢口は優しく抱きとめた。
激闘を制した辻希美が膝を落とす。試合が終り、溜まりきっていた疲労と緊張が一気に
湧き上ってきたのだ。ダメージがないはずがなかった。チャーミー流拳法の奥義をあれだ
け受けていたんだ。普通の選手ならば3回は負けている場面があった。けれど辻はそのど
れにも屈しなかった。それが勝利へと繋がったのだ。
「ののはれったいゆうしょうするのれす…」
気が付けば寝息を立てている、先ほどまで化け物の如き死闘を演じたとは思えないくら
い無垢な寝顔であった。
「辻希美…か。」
失いかけた情熱、あいつの匂いを感じる。
孤高の王者に小さな灯火が点いたこと、まだ誰も知らない。
To be continued
あれ??
石川の侠客立ち?(w
かっけー!
かっこよすぎるよ石川も辻も。
つまんねぇ…ハッピーエンドのころは最高だったのに…
ただのパクリやんか…どうしちゃったんだよ辻豆さん。
もとネタ知らない人は面白いのか?
愚痴ってごめんなさい。次回作に期待します…
内容はさておき、なんか最近男言葉だったり突然女言葉だったりしてるのがどうにも気にかかる。
元ネタママ引用が多いせいかもしれないが。
その辺はきっちりしておいて欲しい。
>>459 パクリがどうこうって、いまさらいってもねえ。
石川負けたのがそんなに不満なのかね
>>461 別に石川ヲタじゃないよ。辻豆さんが新しいの始めたのは知ってたけど
読む機会がなくて…今日始めて読んだ感想なんだけど。
なんかあんまりにも代わっててショックを受けた。漏れ辻豆さんのファンだったから。
懐古主義な漏れは旧メンヲタです(w
ボインボインかよ!
>>459 まったくあんたの言う通り、俺だってあの頃に戻りたい。
忙しすぎて頭がおかしくなりそうだ。愚痴ってごめんなさい。
>>460 石川の男言葉は最近ハマってるある娘。小説の影響のせいだな〜
読むと自信なくすくらいめちゃめちゃおもしろいしかっこいい。
>>461 確かにイマサラだ。娘切草の頃からずっと元ネタありでやってきたんだし。
でも今回のは確かにあからさま過ぎたみたいで反省してます。
元々バ○ネタは保高戦と辻石戦だけのつもりだったんで、もうないです。
あ、忘れてた、ある。あと一回だけ許して。
>>463 あの石川が、一番好きな石川なんです。
465 :
:02/06/10 16:43 ID:2z5cRa+m
>
>>463 >あの石川が、一番好きな石川なんです。
まじっすか!?(W
466 :
名無し:02/06/11 04:15 ID:vO/9+CQ3
>>464 >最近ハマってるある娘。小説
何だろう。教えて欲スイ。
個人的には元ネタ知らないんで結構楽しんでいます。
まぁ言葉使いその他で矛盾を感じてしまうことは確かにありますが。
ごっちんの様子がおかしい?そう最初に気付いたのは吉澤ひとみ。なっちが敗れ大会自
体へのやる気を失いかけていた様に見えた。だが今の彼女から溢れん出んばかりの闘志は
何だろう。誰が?誰が彼女に火を付けた?小川か?それとも…?
『二回戦第二試合!!』
拳を振りかざし姿を見せたのは小川真琴。プロレス最強を証明する為に参戦した燃える
闘魂。負けられない、格闘家にだけは負ける訳にいかないのだ!
「来いや!チャンピオン!」
後藤真希入場!こちらは対照的にクールに、どれだけの大歓声が起きようと眉一つ動か
そうとしない。静かにその瞬間を待つ。
「はじめぇぇぇ!!!」
小川の視線が王者の体を泳ぐ。
うまそうだ、どうやって料理してやろうか。
投げて欲しいか?決めて欲しいか?ぶっ叩いて欲しいか?
抵抗しても無駄だぜ、私にゃどんな攻撃も効かねえよ。
ほーらタックル行くぜ!なんだその程度のへなちょこハイで対抗する気か?
効かねえって言ってん…
小川の堅い顎が後藤の右ハイキックを無力化してみせた。だが次の瞬間放たれた左のハ
イに反応を示すことはなかった。堕ちる。
【双龍脚】
左右同時に迫り来る龍の牙。言葉にするのは容易いがそれは不可能レベルの遺産。
一本のおみ足が左右から飛んでくるという矛盾。
王者が、ついにその力のベールを覗かせた。
ハッハー!とった、とったぜ!捕まえりゃこっちのもんよ!
たかがキック一つでやられると思うなコノヤロー!プロレスの醍醐味とくと拝みやがれ!
さぁ皆さん御一緒にっ!!
バァーーーーーーックドローーーーッ…
棒立ちの後藤。
その腰に掴み掛かる小川。意識等とうの昔になくなっている。
「その意志だけは認めたげる。」
『勝負ありぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!』
つんくが手元の時計に目をやる。13秒ノックアウト。桁外れ。
「小川が弱いんやない、あいつが強すぎるんや。」
「これが本物のチャンピオン!」
悔しかった、歯がゆかった、抑え切れない気持ちが吉澤を悩ませる。
自分では呼び覚ますことのできなかった本物がここに。
(誰がごっちんを本気にさせた!?)
もう一人、常に笑みを浮かべていた達人の眼差しから優しさが消える。
(誰が真希を本気にさせた!?)
もう同門でも仲間でもない、一人の強大な敵。
足元に転がる小川に目もくれる事なくその場を後にする後藤真希。
その瞳に写るモノは・・?
「お前の責任だぜ、なんとかしてみろ。」
石川梨華が苦笑いを浮かべる先に、よだれを垂らし眠る少女。
地上最強のベスト4、その片方が埋まった。
To be continued
>>465 マジっす。ちなみに一番好きな後藤は、ハマミエの後藤。
>>466 自信家の辻っ子のお豆さんは自分の小説が誰よりおもしろいと思っている。
(上手いとはおもっていないが)
だが、ごく希に例外が存在する。
カテキョと「あれ」だけには勝てません。そんくらい「あれ」はおもしろい。
>>467 元ネタ知らない人でも楽しんでもらえるようがんばります。
>466
某有名サカー小説145cmシリーズなんじゃないかと思われ
男っぽい石川なんて後にも先にもこれでしか見た事ない
あと小川のキャラもいいんだよな〜
辻豆さん小川の名前直したって…ってもう出ないか(w
>>472 御名答!
W杯と145cmを同時に楽しめる幸せと感動。
チンピラ石川と小川麻琴のキャラがいいんだよね〜。
でもやっぱり一番のお気に入りは矢口かな。
474 :
:02/06/13 03:07 ID:Yerm0C9b
ho
475 :
:02/06/13 19:09 ID:MOan+iar
W杯日本ガンバレ保全。
「止めても無駄ですよ。」
険しい表情を浮かべる医師に向けて断固たる意志をみせる紺野。その左腕は先の吉澤戦
にて使い物にならなくなっている。折れた腕を支えるギブスが痛々しい。
「医師として、これ以上の戦闘を認める訳にはいかない。」
全選手の治療を一手に引き受けるこの医師はつんくの絶大なる信頼を得ている。彼がNO
と言えばそれはNOとなるのだ。紺野は戦わずして敗北の危機を迎えていた。それ程彼女
の状態は悪いと言えた。激戦が続いた1回戦の中でも吉澤紺野戦の激しさはもはや異常、
敗者である吉澤は当然のこと勝者である紺野ですら生死の境に足を踏み込むくらいヤバイ
ところにまで達していた。この試合を観戦していたある若者の言葉が、その激しさを如実
に物語っている。
「あの二人はまるで決勝みたいな気持ちで戦っていた。」
後の試合の事などお構いなしの削り合い。限界を超えたギリギリでの決着。その結果が
この負傷だ。紺野の肩が小刻みに震える。
「私…約束したんです。吉澤さんの代わりに優勝するって…」
「馬鹿も休み休み言いなさい。私の口からつんく殿に君の出場停止を告げるよ。」
冷たく吐き捨て立ち上がる医師。肩を落とす紺野。
その入り口で、一人の娘が行く手を塞いだ。
「何だね君は、そこをどきたまえ。」
「何って医務室に来んだから怪我人に決まってんじゃん。どけって酷えなあ。」
医務室の入り口に現れたのは小川麻琴。意外な人物の登場に紺野は目を丸くする。小川
は医師の前に立ち塞がったまま、紺野を指差し口を開いた。
「話聞いちゃったんだけどさ。先生よぉ、そいつまだ闘れんじゃねえの?」
助け船!?彼女とはほとんど面識もない、なのにどうして?
「馬鹿なことを、見たまえ彼女の腕!それ以外にも何本の骨が折れていると…」
「折れてねえだろ、ここは。」
親指で自分の胸を差す小川。不敵な笑み。
「小川さん…」
魂は折れていない!
「闘らせてあげたらいいんじゃないですか。本人がそう言ってるんですし。」
さらにもう一人、入り口に現れた影。
「高橋君、君まで一体何を!」
「武道家の気持ちは武道家が一番わかるんやって。死に場所くらい選ばせねや。」
新世代のエースと呼ばれた娘が同じ新世代の勇士にエールを贈る。
「高橋さん…」
「ああ五月蝿え!おちおち寝れもしねえ!」
カーテン向こう側にあるベットから新たな声。姿を見せたのは福田にやられた怪我を癒
す為休んでいた新垣里沙。
「おいデメキン!うるせえからとっとと行っちまえ!」
それだけ言うと新垣はまた布団にもぐり込む。本当に邪魔に思っただけかもしれない、
だけどそのぶっきらぼうな物言いも紺野には熱く届いた。
「新垣さん…」
「医者のあんたにはわかんねえかもしれねえけどよ。」
小川真琴の。
「彼女は私達新世代最後の代表、こんな終わり方だけはさせたくないの。」
高橋愛の。
「俺は思ってねーけどな。」
新垣里沙の。
同じ夢を持ち儚くも敗れ去っていった娘達の想い。
決して仲間と呼べたものじゃない。考え方も生き方もバラバラの4人。
ひとつ共通する想いがあるとすればそれは。上の奴等に一泡吹かせてやるってこと。
「みんな。ありがとう。」
声を張り上げる医師の脇をすり抜けて紺野あさ美は走り出した。
闘技場へと伸びる廊下で待っていた壮年の男、紺野の姿を確認するなり例の如く数枚の
書類を取り出す。
「遅かったな。次の相手、保田圭のデータだ。」
だが紺野は首を横に振り歩みを止めようとしない。
「どうゆうことだ。お前に託された使命を放棄する気か?」
「ごめんなさい師父、使命は忘れていません。だけどもっと大事な事を思い出しました。」
「何だと。」
「もうデータはいりません。私は機械じゃない、紺野あさ美です。」
二回戦第三試合 保田圭vs紺野あさ美
紺野の前に立ち塞がるのはあまりに巨大な壁、達人保田。
だが、この人を超えなければ優勝どころか何も始まらないのだ。
「全力でいきます。」
(勝利が蚊とんぼを獅子に変えおったか…)
現れた紺野を目にした保田の所感、ならば応える以外はない。
「やれやれ、本気を出すのは何十年ぶりじゃろうの。」
紺野の左手は吉澤戦にて破壊されている。頼りとするのは右手一つ。だがその片翼こそ
その闘いにて奇跡の逆転勝利を生み出した『神の拳』
(あの時の…あの感覚を…もう一度)
対する保田は腰を落とし両手を前に出すいつもの構え。この構えを取った時の達人にダ
メージを与えた者は過去存在しない。
「よっすぃーはどっちが勝つと思う?」
人目を避ける様にスタンド最上部で観戦する石川と吉澤。石川のこの質問は双方の力量
を身を持って知っている吉澤に打ってつけと言える。意外にも、吉澤はこの質問を迷う事
なく即答した。
「もう勝負はついている。」
『はじめぇ!!!』
幕は下りた。迷いを捨て切った紺野が前へ。
神の拳が両手をすり抜けて保田の胸を捕らえた!?風が舞う。
To be continued
乙
保全
その瞬間、静寂が辺りを包んだ。
右拳を突き出したまま微動だにしない紺野。仰向けに倒れ微動だにしない保田。
歩みを止めた時計の針を再び動かしたのは紺野、安堵のため息。
「フゥ。」
『勝負ありぃぃぃぃーーーーーーーーーーー!!!!!』
後藤真希に続く秒殺決着!しかも相手はあの…あの達人!
「あいつ、やりやがった!」
小川はまるで自分が勝ったみたいに拳を突き上げて歓喜した。さらに驚くのは高橋。保
田という女性がどれだけ怪物なのかをその身で味わっていただけに、駄目元で背中を押し
ただけだったのに、紺野はやってしまった。
「信じられない…」
「だから言ったろ、勝負はついてるって。」
驚く石川の肩を自慢下に叩く吉澤。
「あの拳はどんなものより速い、ババアの合気よりも。」
「あの拳はどんなものより強い、ババアのこなきよりも。」
私に勝ったんだ、そんくらい当然だよ、なぁ紺野。
「だから勝負はついてたんだよ。」
ヒヒヒヒヒヒ…
だ〜みだ立てやしねえ、こうまで完璧にやられちまうと逆に気持ちいいわさ。
笑っちまうぜヒヒヒヒヒヒ…
なぁ〜にが完全なる護身だ、なぁ〜にが達人だ。
一から出直しだぁ圭。
「紺野さんや。」
決着の後、倒れたままの保田さんが声を掛けてきた。
「はい。」
「私はあと10年は現役でいる。リベンジ受けてくれるかね。」
私はとびきりの笑みを浮かべ応えた。
「いつでも。」
また、負けられない理由が一つ増えた。
『勝者!紺野あさ美!!』
辻希美、後藤真希に続く地上最強のベスト4、その三人目に紺野あさ美が名乗りをあげた。
残る枠はあと一つ。加護か?松浦か?
ののと最初におうた日の事は多分一生忘れへん。うち(TAP)に道場破りなんて舐め腐
さった真似しよたガキぶっ飛ばしたろ思て飛び出したんや。あれは運命っちゅうんやろか、
引力っちゅうんやろか、自分でもびっくりするぐらいあっさり見つけてもうた。くさい事
言う様やけど、まるで出会う事が決められていたみたいに…
「お前が辻希美か?」
「へい、そうれす。」
負ける気なんてさらさらなかった。こうみえても色んなもん(格闘技)に手ぇ出してた
から、どんな相手でも互角以上にやれる自信あったからの。自慢してるんとちゃうで。ま
して相手はうちと同じくらいのチビッコやないか。大の男を投げ飛ばしてたうちにとって
はハナクソみたいなもんや。けど、あいつは違った。うちが今まで組み合ったどんな奴と
も。
「信じられへん、化け物かお前は!?」
「そっちこそ変な動きらっかりれ、ずるいのれす!」
「アホ!ケンカにずるいも糞もあるか!」
ののは強かった。そらぁ館長や矢口さんみたいな人と比べると劣るけど、あの人等は別
格や、人間やあらへんがな。(あ、これ内緒やで。聞かれたらうち殺される。)とても格闘
技と言えたもんやなかったけど強かった。ほんまに強かった。けど、けどな、こんなん言
うたら恥ずかしいけど、それ以上に楽しかった。うち楽しかったねん。
あの時は確か、結局二人同時に力尽きて川原で寝っ転がったんやったな。
「ハァーハァー、引き分けれすね。」
「ゼエゼエ,まだや、決着付けな気が済まへん!」
「ののもれす。」
「おう、どうせなら頂点で決着付けよう。」
「ちょうてん?」
「そや、うちはモームス最大トーナメントにでたる。お前もでろ!」
「れも当らないかもしれないれすよ?」
「アホ、どっちも負けなきゃ絶対どこかでぶつかるやろ。」
例え、それが本当の頂点でも…
(なっち、館長、矢口師範、梨華ちゃん、達人、吉澤、後藤さん、さらにまだ見ぬ強者達。)
(全部ブッ倒してでもうちはお前と闘いたい。)
「いっしょに強くなろうな、のの。」
「へい!」
その晩うちらは日本を発った。太平洋の沖に秘密の修行場があると聞いた事があった。
当ても確証も何もなかったが、うちは全然怖いとも思わへんかった。隣に最高の相棒がい
たからや。矢でも鉄砲でも持ってこい、二人で頂点とったるんや!
「いざ、ぶりんこ島へ!」
回想から戻り、気が付いた加護が辺りを見渡すとそこはいつもの控え室。
「まさかTAP最後の一人がお前になるとはなぁ…」
飯田館長が優しく加護の肩に触れる。
「おいらの敵討ちとか気にすんな、気楽に行け加護。」
包帯ぐるぐるで寝たきりの矢口さんが、意外にも昂ぶる気持ちを落ち着かせてくれた。
二人に会釈して部屋を出ようとした所で、突然首に誰かの腕が絡み付いてきた。
「梨華ちゃん。」
「ぶっ飛ばしてこい。」
加護は喧嘩友達の石川と笑顔で拳を突き合わせた。
(最高や、最高の仲間をもった。)
熱くなる目頭をこらえ、扉の前でもう一度振り返り三人の顔を眺め直す。
「ほんまおおきに!うちTAPで良かった!」
「バーカ、んなことは優勝してから言えぃ!」
館長の激を受け加護は走り出した。もう振り返らない。
(まってろ、のの!うちにはこんな仲間がおるんや!)
「誰にも負けへんでぇ!」
小さな天才にもう怖い物なんてない。
To be continued
488 :
やぐふぁん:02/06/15 15:18 ID:ZoQcYcjy
あいぼんガンバレあげ
489 :
:02/06/15 15:35 ID:jfGK65wn
この作品が続いているのに今気がつきました。(鬱
辻豆さん、やっぱ最高。
(注
489はクリックしない様に
保全
492 :
保全:02/06/17 12:18 ID:IuGlddxJ
ののたん誕生日おめでとう!!
┌──────────────────────―─┐
│ |
│ |
│ |
│ |
│ ∋oノハヽo∈ |
│ ( ´D`)∩ノン |
│ (つ ) ノン |
│ し(_) |
│ |
│ Now Nononing... |
│ |
│ |
│ 今日一日ののたんでお楽しみください... |
│ |
│ |
└───────────────────────―┘
「首締めて、ギュッと首締め〜て♪」
「(ニコ)殺すよ。」
「やだなぁ亜弥君。冗談に決まってるじゃん。ボクが君に手を出すはずないだろ。」
死神に微笑まれ、その爽やかな娘は首に絡めていた手を大袈裟に離してみせた。
「よく言うよ。で一体何の用なの美貴。」
美貴と呼ばれた娘は嬉しそうに、自分に質問する少女の隣に座り答えた。
「亜弥君に忠告に来たんだ。君がこんな所で遊んでるからあの人がお怒りだよって。」
「勝手に怒らせておけばいいわ、あややは誰の指図も受けないの。」
「フフフン、そう言うと思ってボクの方で承諾は得てきたよ。好きにしていいってさ。」
「言われなくてもそうするつもり。」
立ち上がる松浦、思わず笑みがこぼれる。
「亜弥君楽しそうだね、おもしろいおもちゃでも見つけた?」
「ええ、とびきり活きの良い。いじめ甲斐ありそうな子を。」
無邪気な娘の笑みが残虐な死神の笑みに変わった。普通の人間ならその場にいるだけで
恐怖にすくむ殺気が溢れ出ている。だが、この美貴と呼ばれる娘はその殺気を心地よさ気
に見送っていた。そう、彼女もまた松浦と同じ世界の住人。
「そうなんだ。まあボクはボクで遊んでるよ。タイプの娘も見つけたことだし。」
彼女の名は藤本美貴。もう一人の死神現る!
二回戦第四試合、加護亜依対松浦亜弥
因縁の対決がついに実現。会場の熱気はすでに最高潮。
『青竜の方角より!ご存知天才物真似士、加護亜依の入場だああああああ!!!』
「あいぼんさんじょおぉーー!!」
元気よく駆け込んできたのはあいぼんこと加護亜依。天才を越えた天才。
観客席からあいぼんコールが鳴り響く。
『白虎の方角より地獄からの死者!桃色の死神、松浦亜弥だああああああ!!!』
姿を見せた松浦の衣装は、一回戦で着ていた全身桃色とは異なり夏色イエロー。
「ウキウキで殺したい♪」
今度はあいぼんコールと同じくらいのあややコール。どうやら人気は互角の様子。
あの残酷な闘いぶりでもこれほどの声援を受ける松浦。いや戦闘スタイル等問題ではな
い。肝心なのは強いか否か。強者には惜しみない声援が送られる。どんな奇麗事を吐こう
が敗者には何も残らない。それがここのルール。勝利こそが全て。
「予告するよ。数分後、この声援は全部あややのものになっている。」
「うちも予告したる。あいぼんコールの中、お前は泣きながらうちに土下座するんや。」
待ったなしの一本勝負。勝ち残るのはどちらか一人だけ。
『はじめぇぇぇぇ!!!』
「大変、大変、始まっちゃうよ、あさ美、里沙。」
「あー待ってー麻琴ちゃん。」
「くそ、俺は別に見たかないのに…しょーがねえな。」
バタバタと廊下を走るのは、先の闘いで結束を強めた新世代グループだ。小川を先頭に
紺野に新垣、そして高橋。紺野の次の相手が決まる大事な一戦を観戦しようと、観覧席へ
急いでいる所だ。
「ほらー愛もぉー!」
高橋が一人遅れてもじもじしている。
「ごめん、先行ってて。」
その様子を見て小川は事情を察し、残りの二人を引っ張って試合場へと急いだ。高橋は
トイレへと駆け出す。
「ようやく一人になったね。」
人気のない廊下に突如、天井から声。誰?
高橋愛の目の前に大きな影が舞い下りる。実際の所、二人の身長差は3cm程度しかな
い。しかし高橋の目にそれはとてつもなく大きなものに写った。
「口づけて、そっと口づけ〜て♪」
目の前に迫る唇、綺麗、だがどこか陰りのある美しさ。恐怖が体全体に浸透する感じ。
(いけない、危険だ。)
高橋は迫り来る腕を払いのけ、身を翻した。
「クスクス、顔真っ赤にして照れちゃって、かわいい。」
不意打ちのキスを躱された藤本はそれでも、爽やかな微笑みを絶やさない。
「なんやってあんた!急に変な事せんといてや!」
「その訛りもかわいい。君の試合見てたよ、ずっとそそられていた。」
「フエ?」
唐突に可笑しな事を言われ、思わず変な声を出してしまった。
「ボクは好みのタイプ以外には手を出さない主義なんでね。ずっと待っていたんだ。」
「何を?」
「愛君。君が一人になる時を…。いただきます。」
全身に悪寒が走る。何言ってんのこの人?好みのタイプって女同士じゃ…やだ、来ないで!
大蛇の如く伸びる藤本の両腕を、間一髪飛び上がり避ける。と同時に後ろ足で肩口を蹴
り落とす。電光石火の空中殺法。
「それ以上おかしな真似すると、痛い目見ることになるわよ。」
蹴り込まれて思わず態勢を崩す藤谷。だがその表情には相変わらず笑みが。
「やはりイイ。イイよ愛君。」
地を這うタックル、またもジャンプで躱す。甘い。死神の手が足首を掴みとった。
「つ〜かまえた。」
To be continued
498 :
:02/06/18 16:36 ID:hseV66G/
「つ〜かまった。」(W
捕まっちゃったの?
藤谷さんに(w
保全
500 :
500:02/06/19 07:51 ID:LMT8qfy7
500
>>498 川o・3・)<愛ちゃんピンチですね。
>>499 川oT-T) <間違えました。鬱です。なんで谷なんだろう…?
>>500 川o・∀・)ノ<500おめ!アヒャ!
まだ出てないのは・・・石井リカか?
503 :
:02/06/19 20:52 ID:00qYIpQU
>>501 川o・-・).。oO(なんで辻豆さんが私なんだろう・・・?)
504 :
・:02/06/19 20:54 ID:c8wOuYnM
川o・∀・)ノ<カノソかみゃ?
505 :
やぐふぁん:02/06/20 21:49 ID:F1lt4ydu
高橋はこのまま藤本にハァハァされるのかッ?
506 :
.musume:02/06/20 21:53 ID:McYXTjT3
「きゃ!」
床へ力任せに叩き付けると、愛のか細い悲鳴が聞こえた。それが美貴をさらに欲望の渦
へとのめり込ませる。
(好みのタイプが泣き叫ぶ声と表情、いつ味わっても堪らないね。)
翼を掴み取られた天使に劣悪な大蛇が巻き付く。
「うあっ……ああ……やっ!」
寝技のスペシャリスト藤本美貴、彼女に捕まって逃れることのできた獲物は皆無。愛の
くびれたウエストに、形のよいバストに、美貴の手足が絡み付く。転がり抵抗する愛、だ
が離れない。むしろもがけばもがくほど体と体が密着してゆく。やがて首元へと辿り着い
た美貴の右腕が愛の喉に巻き付いた。
「かはっ……ぁはっ……ごほっ……」
完全に決まったアームロックにより、愛の呼吸活動が強引に遮断される。双眸から止め
ど無く涙が流れ始め、顔色が青白へと変色してゆく。
「もう……やめて……がほっ…」
「や・め・な・い♪」
喘ぎ声と吐息が漏れる愛の口元を、さらに美貴は自らの唇によって塞いだ。これにより
愛は完全に酸素の摂取行為を奪われた。死へのカウントダウンが始まる。
(そっと口づけて ギュッと抱きしめて)
509 :
:02/06/21 04:09 ID:/kmsTygA
「趣味が悪いのぅ。」
後ろからの声に気が付いた時には、髪を無理矢理引っ張られ一回転し床に叩き落とされ
ていた。さらに顔面目掛けて足の裏が振ってきたので、慌てて身を翻し間合いを広げる。
顔を上げ、そこにいた人物を見てようやく美貴は事態を理解した。
「残念、あなたか…」
柔術の達人、保田圭。ようやく息を取り戻し喉を押さえる愛の前に、立ち塞がっていた
のは彼女であった。
「ちと悪ふざけが過ぎんか、変態女や。」
「フフ、あなたも十分変態だと思いますけどね。」
「ならば変態は変態同士、私がお主の相手をしてやろうか?」
空気が張り詰める。一触即発の雰囲気が…
「お断りしますよ、ボクは好みのタイプにしか手を出さない主義なんでね。」
どうやらお婆ちゃんは美貴の守備範囲外だった様だ。
「邪魔が入った、今度は最後までイカせてあげるよ愛君。またね。」
未だ苦しむ愛にウインクを投げ、美貴はその場から姿を消した。
美貴は思う。
(まあいいか、どうせ彼女は第二希望だ)
510 :
:02/06/21 04:10 ID:/kmsTygA
「決勝で会おうね、あいぼん。」
あの約束がうちを繋ぎ止めてるんや。ののは不言実行、飯田館長に梨華ちゃんまで見事
に打ち破ってみせた。うちだけ負ける訳にいかへんやろ。
パァンという衝撃音と共に後方へ弾き飛ばされる。試合開始してすぐの出来事、勢いよ
く飛び出した加護の拳が松浦の体に触れるか触れないかという所でそれは起きた。
(なんや、なにされた?)
態勢を直し顔を上げた加護は考える。当の松浦は直立不動、一歩も動いた様子はない。
(あの時と一緒や、矢口さんをふっ飛ばしたあの時と)
なぜ自分が弾き飛ばされたのかわからない。触れもせずどうやって?
「わからないって顔してるね。」
「うっさい!してへんわ!」
(まいった、実際わからへん。触れもせんでダメージ与えるなんて魔法かエスパーか?)
ここで加護の動きが止まる。その行動は正解、敵の力も見抜けぬ内に突撃しても玉砕す
るのがオチ。(下手なオチはごめんや)待ちに徹する。見極めるまで待つ。天才の眼が大
きく見開いた。
511 :
:02/06/21 04:10 ID:/kmsTygA
「な〜んだ来ないの?拍子抜け。つまんない。」
アクビと共に大きく伸びをする松浦。もっと遊べるおもちゃかと思っていたのに…
「残念だけどいくら見ても見抜けっこないよ〜。」
この闘技場のルールは武器の使用以外は一切を認めるでしたね。
「超能力。」
会場が一瞬静まる。おいおいあそこの娘さんか何かバカなこと言ってるぞ。
「あややは生まれついてのエスパー(超能力者)なの。おわかり。」
一言も言ってない、この大会に超能力者が出場してはいけませんなんて。
「だから、天才さんでも真似はおろか見極めることもできないんですよ。」
存在する。ほんの僅かな全人類でもごく一握り程度だが、間違いなくその様な力を持つ
人間は存在する。その特異な存在の中でもさらに異質、彼女の能力は秀で過ぎていた。
(なにをゆうとるんや、このボケは…?)
だがそれを理解するには加護は若すぎた。それも仕方ないこと、こんな硬骨無形な話、
信じろという方が無理な相談だ。
「あ、いくよ。1,2,3!」
無防備な加護に対して見えない衝撃弾が三発打ち込まれる。後ろ向きで三段跳びをした
みたいな感じで張り倒された。
さぁお客さん、エスパーあややの殺人ショー、はじまりはじまり〜!
512 :
:02/06/21 04:21 ID:/kmsTygA
「スラーッシュ!」
あややの掛け声と同時に空気の刃が斜めに走る。加護の胸に斜めの傷口ができる。紅き
鮮血を吹き出して倒れる。でもすぐに立ち上がる。
「もうやめろ、加護おおおお!!!」
飯田が!矢口が!石川が!叫ぶ!無理だ。立つんじゃない。
「もいっちょスラーッシュ!!」
あややのショーは間髪入れず続く、今度は両足のすねが切裂かれそのまま前方に転ばさ
れる。尋常な痛みではない。でも歯を食いしばる。涙を堪える。すぐに立ち上がる。
「あいぼおおおおおん!!!いいよもーう!!」
応援席にいる辻の方がもう泣いている。
(ようあらへんやろ、のの。約束したやん。)
(いっしょにけっしょうせんいくねん。そんであんときのつづきすんねん。)
(ののなんかにうちは負けへんでー。だけどののも負けたらあかんで。)
(んん?なんか矛盾しとるかうち?まあ楽しいからいいよね。ね〜。)
(あれ、のの、どこいった、見えへんで、何にも見えへんで。)
「のの。」
死神の頬に一筋の汗が流れ落ちた。もう何発、何十発のショーを披露しただろう。だが
どうして、どうしてこいつは私の目の前に立っている。全身なます斬り、とっくに息耐え
ていてもおかしくないはず。なのにどうして、どうしてこいつは私の目の前で、しかも笑
ってやがる。
ニイィ…
(いっしょに…決勝で…)
ペチン!
あいぼんの拳が松浦の胸を叩く。力を込められるはずがない、腕が上がるはずがない。
しかしその拳は確かに届いた。一発返した。
ドドォーン!!
大きな音を立てて加護は崩れ落ちた。
「あいぼおおおおおおおおおおおおおおおんん!!!」
「加護ぉ!!」「あいぼむ!!」「すげーぞ!」「おまいらあいぼんさんにあやまれ!」
辻の泣き声と共に、会場中の大歓声が加護に贈られた。
勝者 松浦亜弥。
To be continued
ガーン!加護が負けるとは
ということは・・・あの子の使命はあやや狩り!?
515 :
:02/06/21 19:19 ID:4/U8kxk/
>「おまいらあいぼんさんにあやまれ!」
(W
@ノハ@ <辻豆!早よ、あやまれや!
( ‘д‘) ノ______
(入 ⌒\つ /|
ヾヽ /\⌒)/ |
|| ⌒| ̄ ̄ ̄|
´ | |
辻 ━┓ ┏━紺野
┣━━┫
後藤 ━┛ ┗━松浦
いよいよベスト4か。
やっぱり王国ブラジルかな・・。
保全
518 :
:02/06/22 21:03 ID:LDOfwB+l
紺野は加護には勝てる気がしなかったが、松浦ならいい勝負になりそう
藤本がこれからどう絡んでくるのか楽しみ
tes
辻 ━┓ ┏━紺野
┣━━┫
後藤 ━┛ ┗━松浦
辻は安倍の、紺野は吉澤の代理と考えると
この結果も割と納得いくな。
松浦の謎は紺野の明晰な頭脳で解析されるのかな。
それとも、後藤or辻の圧倒的な破壊力で粉砕されるのか。
飯田 ×┓ ┏× 高橋
┣○┓ ┏×┫
辻 ○┛ ┃ ┃ ┗○ 保田
┣□┓ ┏□┫
石川 ○┓ ┃ ┃ ┃ ┃ ┏× 吉澤
┣×┛ ┃ ┃ ┗○┫
新垣 ×┛ ┃ ┃ ┗○ 紺野
┣□━□┫
後藤 ○┓ ┃ ┃ ┏× 福田
┣○┓ ┃ ┃ ┏×┫
市井 ×┛ ┃ ┃ ┃ ┃ ┗○ 加護
┣□┛ ┗□┫
小川 ○┓ ┃ ┃ ┏× 矢口
┣×┛ ┗○┫
安倍 ×┛ ┗○ 松浦
↑勝ち残ってるのが分かりづらかった
飯田 ×┓ ┏× 高橋
┣○┓ ┏×┫
辻 ◎┛ ┃ ┃ ┗○ 保田
┣□┓ ┏□┫
石川 ○┓ ┃ ┃ ┃ ┃ ┏× 吉澤
┣×┛ ┃ ┃ ┗○┫
新垣 ×┛ ┃ ┃ ┗◎ 紺野
┣□━□┫
後藤 ◎┓ ┃ ┃ ┏× 福田
┣○┓ ┃ ┃ ┏×┫
市井 ×┛ ┃ ┃ ┃ ┃ ┗○ 加護
┣□┛ ┗□┫
小川 ○┓ ┃ ┃ ┏× 矢口
┣×┛ ┗○┫
安倍 ×┛ ┗◎ 松浦
525 :
名無し募集中。。。:02/06/23 19:22 ID:fsV6GmtS
飯田 ×┐ ┌× 高橋
┣○┓ ┌×┫
辻 ◎┛ ┃ │ ┗○ 保田
┣□┓ ┏□┫
石川 ○┓ │ ┃ ┃ ┃ ┌× 吉澤
┣×┘ ┃ ┃ ┗○┫
新垣 ×┘ ┃ ┃ ┗◎ 紺野
┣□━□┫
後藤 ◎┓ ┃ ┃ ┌× 福田
┣○┓ ┃ ┃ ┌×┫
市井 ×┘ ┃ ┃ ┃ │ ┗○ 加護
┣□┛ ┗□┫
小川 ○┓ │ ┃ ┌× 矢口
┣×┘ ┗○┫
安倍 ×┘ ┗◎ 松浦
ごめん・・・
◇ 飯田 ×┐ ┌× 高橋 ◇
┏○┓ ┌×┓
◆ 辻 ○┛ ┃ │ ┗○ 保田 ◇
┗□┐ ┌□┓
◇ 石川 ○┓ │ │ │ ┃ ┌× 吉澤 ◇
┗×┘ │ │ ┗○┓
◇ 新垣 ×┘ │ ☆ │ ┗○ 紺野 ◆
├□┴□┤
◆ 後藤 ○┓ │ │ ┌× 福田 ◇
┗○┓ │ │ ┌×┓
◇ 市井 ×┘ ┃ │ │ │ ┗○ 加護 ◇
┗□┘ └□┓
◇ 小川 ○┓ │ ┃ ┌× 矢口 ◇
┗×┘ ┗○┓
◇ 安倍 ×┘ ┗○ 松浦 ◆
辻(トルコ)
後藤(ブラジル)
紺野(ドイツ)
松浦(韓国)
まさか加護(スペイン)が負けるとはなぁ・・誤審だろ。
530 :
名無し募:02/06/24 13:35 ID:jQRmCjst
>>529 つまり、
飯田(日本)か・・・。
そりゃ勝てねーわ・・・
531 :
幸せ名無し音頭:02/06/24 15:57 ID:ccUH8nKw
波乱は初出場の小川(セネガル)にいきなり
チャンピオンの安倍(フランス)が敗れた所から始まったよな。
まあその小川(セネガル)も結局負けちゃったけど。
辻と松浦が決勝進出、で辻が優勝。
地上最強のベスト4出そろう。
Aブロック勝者 辻希美
格闘技という枠に収まりきることない絶対的パワー!
地上最自由、アンチェインののたん!
Bブロック勝者 後藤真希
やはり彼女を越えることは誰にもできないのか!?
連続秒殺記録更新中。優勝候補最有力、現役王者ごっちん。
Cブロック勝者 紺野あさ美
格闘技を極めし者だけが辿り着ける境地、神の領域。
そこに手を掛けた娘がいた。三度奇跡を起こすか神の拳コンコン
Dブロック勝者 松浦亜弥
その娘は地獄から来た。死神の鎌はあらゆるものを両断する!
彼女から逃れる事はできない、闇の使者あやや
「どうですか、先生?」
険しい表情を浮かべた飯田が、加護の容体を医師に尋ねる。隣には石川と矢口が、一番後ろで辻が、それぞれ心配そうな顔を浮かべて立っている。
「この場で治療できる程度の怪我ではない、すぐに手術せねばならん。」
すでに近くの大病院へと移送する為の救急車は手配済みであった。応急処置だけ受けた状態の加護は担架にて運ばれて行く。未だ意識は戻らない。
「あいぼんはぁ?またいっしょにたたかえるよねぇ…」
半泣きの辻が言葉虚ろに医師の服の裾を引っ張る。医師は静かに目を閉じ首を横に振った。
「手足の腱が切れている。闘いどころか、普通の生活すらもう二度と。」
何かが落ちて割れた。
もう二度と、彼女の笑顔は戻らない。あの約束が叶う事はない。
――――――――――――のの、いっしょにつよくなろ。――――――――――――
けたたましい音をたて、拳がコンクリートの壁を打ち抜いた。
初めて現れた怒りという名の感情、その矛先にいるのは当然あの娘。
「ゆるさない!!れったいにゆるせない!!」
辻希美の中で何かが確実に変化していた。
「梨華ちゃん、どうだった?」
吉澤の問いかけにもうつむいたまま反応できない石川。喧嘩友達でもあり良きライバルでもあった加護の再起不能は、彼女にとってあまりに衝撃がでかすぎた。何も言わず石川は吉澤の胸に顔をうずめた。泣いていた。
「梨華ちゃん…」
優しく頭をなでる。それくらいしかできることがなかった。
人気のない廊下、この二人の様子を天井裏から見詰める目がひとつあった。当然ふたりは気付くはずもない。
(やっぱり本命はいい、泣き顔も可愛いよ梨華君。)
(ボクはもう我慢できないよ、早く遊びたいなぁ…)
(でも、あいつ誰だ?ボクの梨華君にいっつもくっついて)
(なんかムカツクなぁ。あいつ、邪魔だなぁ)
暗闇の中に静かな殺意が芽生える。
「消そうか。」
薄暗い路地裏に、髪も乱れ服を汚しふら付き歩く娘がひとり。足がもつれゴミ置き場に崩れ落ちる。彼女は過去、栄光の道を歩き続けていた。だが、突然前に現れたある娘の存在によって運命は急変することになる。今はただの敗北者でしかない。
――――――――――それでも、あの場所が――――――――――
(誰…?)
娘を見下ろす者がいた。影になって顔がよく見えない。
(いつからそこに?なぜ私を見てる?)
「落ちぶれたものだ。今のお前は後藤どころか、それを遥かに下回る者にすら劣る。」
影からの声。後藤という名が、娘の肩をピクリと動かせた。
「欲しいか?」
(何が…)
「あの栄光がもう一度欲しければ、私と共に来い。」
闇の中から一本の手が差し伸べられる。この手を…この手を掴んでしまったら……。
もう二度と戻れない。そんな気がしてならない。だけど、それでも…
―――――それでも、あの場所が、後藤真希という名の娘の前が――――――
(栄光なんていらない、ただもう一度あの場所に…)
安倍なつみの手が闇からの手を受け入れた。
To be continued
>>516 本当はもっと活躍させる予定だったのに、はしょっちゃいました。
あいぼんさんごめんなさい。
>>結果まとめてトーナメント表作ってくれた皆さん
どうもです。
本当は自分で作りたかったけどズレることは明白だったんで、助かったです。
>>529 FIFAが認めました。
>>532 予想は歓迎
それによって勝敗を変えることはないんで、どんどん聞きたいです。
さて、次はいよいよ大一番。
なっちが残した者となっちが追い求め続けた者。
ストーリー的にも、個人的にも、重要な一戦。
お、リアルタイムだ。辻豆さん乙!
私の心臓はあの時からその鼓動を止めたまま、まるで機械仕掛けのポンプみたいに与え
られた仕事を淡々とこなしている。決して乱れることなく、揺らぐ事なく淡々と。きっと
私は待っていたんだと思う。あの情熱を、あの興奮をもう一度私に与えてくれる人を。そ
してそれができるのはあの人しかいないと思っていた。だからその彼女が消えた時思った
んだ、これで私の胸のスイッチが入る事は完全になくなったと。
ドクン……
だけどこの鼓動は何?今また胸が高鳴っている。これはあんたのせい?それとも…
確かめてやる!
『後藤真希だあああああ!!』
王者の入場。決勝への椅子をかけた闘いがいよいよ始まる。この場所に後藤真希が立っ
ている事は誰もが容易に想像できた。それこそは勝利が当然とされる王者としての扱い。
だが、対する相手の娘は、まさかここまで上り詰めるとは想像し難い存在であった。少な
くともこの大会が始まる前までは。
『対するは辻希美!!』
さぁ、はじめよう。
あんたに私のスイッチを入れるだけの器があるのかどうか。みせてもらうよ。
「隣、いいかね?」
「ん、ああ。」
「どれ、よっこらしょっと。」
この大一番を特等席で観戦しようと、特別観覧席に座り込んでいたTAP会館館長飯田
圭織の隣に腰を下ろしたのはなんとプッチ総帥保田圭であった。思わぬ所で格闘技界の二
巨頭が肩を並べることになった。
「飯田さんや、おぬしはどうみる。このカード。」
因縁浅からぬこの二人、先に声を掛けてきたのは老獪保田圭であった。
「なんだい婆さん、わざわざ俺の予想を聞きに来たのかい?」
「フォッフォッフォッ、ちと気になっての。」
「辻のことか。」
「うむ、罷りなりにもお主を倒した程の娘じゃからのう。」
「強いぜ。」
「ほお、ではおぬしの予想では、勝つのはあの娘と?」
「いや、無理だろう。」
飯田の瞳は、闘技場に立つ二人の猛者を冷静に見下ろしていた。
「ひゃ……99%、勝つのは後藤だろうよ。」
保田がうなずく。当然、誰がどう見ても後藤の方が上。
だが100とは言い切れない。あの小さな娘は1%の何かを秘めている。
『はじめぃ!!!』
開始の合図がなる。さあ熱き闘いが始ま……
「後藤さん。」
静かに乾いた声が闘技場に落ちた。その声は確かに辻の口から出ていた。いつもの辻な
ら開始の合図と共に拳を振り上げて突っ込んでくるはず。明らかに様子がおかしい、今ま
での辻とは明らかに雰囲気が異なっている。思わず後藤まで動きが止まってしまった。
「棄権してくらさい。」
出てきたのはあまりに場違いな科白。イントネーションがおかしいだけだと思っていた
が、どうやら日本語の使い方までおかしいみたいだね、この子は。
「あなたをころしたくはないのれす。」
拳を右胸あたりに持ち上げ呟く辻。その肩は微かに震えている。
(あいぼん……)
「いまのののはもうじぶんれもとめられない。」
怒りという未知の感情、辻は怖くて仕方なかった。この感情に身を任せて力を解放して
しまうことが。一体どうなってしまうのか。
(松浦亜弥)
この力を使うのはあいつだけ、大事な約束を、大切な友達を、全てを奪った憎き女。
だから何の罪もない人にこの力を使うことはしたくない。
「お願い、棄権してくらさい。後藤さん。」
幼子が父親の身を案じるか?アリが象の身を案じるか?
「とめなくていい。」
「ふぇ?」
「それでいい、殺す気で来い。でなければ私がお前を殺す!」
後藤の飛び出し、右のハイキック。咄嗟に身をかがめる辻、背の小ささが幸いし、かろ
うじて躱せた、と思うのも束の間、左ハイキック。伝家の宝刀、双龍脚!辻が崩れ落ちる。
小川戦と同じパーフェクトコンビネーションが決まった。だがまだ王者は止まらない。三
つ目の牙が天を駆ける。落ちる辻のアゴを爪先が捕らえた。小さな体が宙に舞った。防御
不可能、ダウンすら許さない、息も付かせぬ後藤の光速打撃は終わりを見せない。右フッ
ク、左ストレート。あまりの速度に辻は防御どころか反応することさえできない。重過ぎ
る後藤の一撃を全てもらっている。
「真希は本当に殺す気じゃ。」
保田の頬に汗が流れ落ちる。未だかつてこれほどの後藤真希を見た事はなかった。なぜ
そこまでこの娘にこだわる。挑発を受けたからか?それとも…
(何をしてる、早くみせてみなよ、殺すんだろ私を)
(それなんだよ私が望んでいたのは、自分でも抑え切れない程の力)
(あいつも、なっちもそれを持っていた。小さな体に修羅を押え込んでいた。)
「解放してあげるよ、私が!」
「またケンカしたって、あの子。」
「かわいい顔して、とんでもない暴力魔だってな。怖い怖い。」
孤児院の薄暗い部屋の片隅で少女はいつも独りぼっちで泣いていた。
「希美ちゃん、どうしてケンカなんかするの?」
「らって、みんなののをバカにすんらもん、お父さんもお母さんもいないって…」
顔も知らない両親、物心ついた時からずっとひとりぼっちだった。
「だからって暴力は駄目、あなたは強い子だから分かるわよね。」
強さは誰かを悲しませる物じゃない、誰かに勇気を与えるものだって。
「わかんない、わかんないよ先生!!」
孤児院を飛び出して当てもなく走った。走り続けた。見た事もない町角で、疲れと空腹
により少女はついに足が止まった。その眼に街頭放送の映像が映し出される。
『安倍なつみダウーーーン!!立ち上がった!!また立ち上がったぁーーー!!!』
偶然だったそれを見れたことは。倒れても倒れても立ち上がる、決してあきらめない本
物の強さ。少女は勇気をもらう。そして願う。私もあんな風になりたいと。
あの日あの時焦がれた場所に少女は立っていた。目の前には後藤真希。少女は今なっち
の場所にいた、本物の強さを手にして。
(なっちさん、ののも少しはつよくなれたかなぁ…)
ピシィ!
王者の頬に赤き線が刻まれた。この大会を通じて初めて負う傷。後藤は動きを止めた。
ついに、ついに、目覚めたか!?
頭を下向きにうつむいたまま、右拳をゆっくりと中央へと運ぶ辻。
ドクン……
(忘れもしない、この衝撃、この胸の高鳴り)
(ようやく、ようやく叶うんだね、なっち……いや、辻希美。)
修羅の目覚め。
(これでようやくあんたは私となっちに並んだ。)
「後藤さん…ありがろう。もうまよわないから。」
初めてできた大切なトモダチの為に、それを奪った憎き仇の為に。
「全力れあなたをたおす。」
空気が変わった。彼女が変えた。
ドクン…ドクン…
もうこの鼓動が鳴り止む事はない。スイッチは入った。あいつが入れた。
3年越しの真希の想いが、今ようやく叶ったのだ。
To be continued
盛り上がってまいりました
保全保全保全したい
547 :
辻っ子のお豆さん:02/06/28 12:48 ID:LBoWPzta
携帯のメール受信音、送り主はやはりあの人だった。名目上私達のリーダーとなってい
るあの人(まあ私は認めてないけど)からの作戦決行の合図。それなりにおもしろかった
遊びの時間はこれで終ってしまった。ここからは本来の仕事に戻らなければならない。し
がない暗殺家業。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ターゲットの名はつんく。現在準決勝第一試合中の為、ターゲットはVIP席ににて観覧
中。故に彼専用個室の方はやや警備手薄状態、今の内に忍び込み待機せよ。試合終了後、
ターゲットが個室に戻ってきた所を撃て。 SA
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「面倒くさい、こんなことしなくたって直接殺っちゃえばいいのにね。」
松浦は片肘ついてメールの中身を藤本に見せた。
「亜弥君、今回は君一人に任せていいかな。ボク他にやることできたから。」
「まぁた、あんたの悪い癖ぇ?別にいいけど、今度おごってよ。」
指でOKサインを出し、藤本は天井裏へと姿を消した。
「さて、あややも行きますか。」
飛び起きて、松浦も目的の場所へと動き出した。
もうくだらないお遊びは終わり、本物の戦闘のお時間だよ。
ひとり、ふたり…音をたてる暇もなく崩れ落ちるガード達。最強の暗殺者松浦にとって
これくらい動作のないことであった。もっと厳しい厳監態勢の中を掻い潜った事など多々
ある。今回の仕事は退屈な部類に入る。ものの5分で松浦はつんく専用個室の扉前に辿り
つくことに成功した。
「やはり、あなたでしたか。」
そこで予想外の展開。扉の前に一人の娘が待ち構えていた。
(どこかで見た事ある。そうだ、こいつは確か次の対戦相手だったはずの…)
「紺野あさ美です。よろしく。」
空手の構え。やる気っていうの?
「大会出場者の中につんくさんの命を狙う者がいるという情報を受けました。」
そうか、やる気か。
「私はそれを阻止する使命を帯びて参戦致したました。」
いいよ、退屈で仕方なかったんだ。やろう。
「いきます。」
来い。
「準決勝第2試合、カーン。」
観客も、審判も、誰もいない。もう一つのタタカイが今始まった。
「スラーッシュ!!」
斜めに走る見えない空気の刃が切り刻まんと迫り来る。だが紺野がススッと少しだけ半
身に体勢を移すと、後ろの壁に亀裂が入った。見えない刃を避けた!?
「腕の角度とタイミングを目測すれば、避けるのは容易いことです。」
冷静な分析力、これが紺野最大の武器の一つでもある。
「おもしろい、だったらこれはどう?」
構えを変えた松浦の指先が輝きを増す。
「あ、いくよ。1,2,3!」
見えない弾丸三連発、さっきのスラッシュとは比べ物にならないスピードに、いかに紺
野といえど判断が間に合わない。避けきれない。ドンドンドン!胸と腹に直撃し体が大き
く三回振動する。
「もいっちょスラーッシュ!」
痛みで判断が鈍る。咄嗟に側転で身を翻すが、足先をかすめそのまま転がり落ちてしま
った。紺野の表情に苦悶の色が浮かぶ。右の靴が真っ紅に染まり出していた。
(そう、その色、その真っ紅な血の色が、あややにドキドキをくれる。)
(もっと抵抗して、もっと泣き叫んで、もっとあややをドキドキさせてよ。)
決意なんてとっくに持っている。紺野の右手が拳を作った。
(それでいい。それを待ってたの♪)
あらゆる格闘技の最高峰、頂上と呼ぶに相応しい必殺力。神の拳。格闘技を批判するに、
そいつを破る以上の方法は思い付かない。
(そしてあややはさらに上を目指す。)
松浦亜弥、構える。
どれだけ体が傷ついても、骨を折られても、ここだけは守ってきた。この拳だけは最高
の状態である様に守り続けてきた。この瞬間の為に。
(いきます!)
紺野あさ美、構える。
ジリジリと、少しずつ間合いが狭まってゆく。
神の拳の間合いが近づいてくる。その時が近づいてくる。あと10cm、あと5cm、あと…
ゼロの瞬間、大地から闇の波動が吹き荒れた。その間合いを待っていたのは紺野だけで
はない。格闘技に神の領域が存在する様に、超能力と呼ばれる世界にも到達不可能な世界
がある。死神の手によってパンドラの箱は開かれた。
To be continued
551 :
予告:02/06/28 13:07 ID:LBoWPzta
ただひたすらに闘い続ける4人の娘達。辻と後藤と紺野と松浦。
神は選択せねばならない。残された椅子はたったの二つ。
誰が残る?誰が残る?
モームス最大トーナメント決勝戦、6月30日キックオフ!(予定)
Sanma Akashiyaか?
さんちゃん神だから許す!
30日まで、待つの?
・・・・鬱
一気に読みますた〜♪
はやく続きが( ゚д゚)ホスィ
Shibata Ayumiの予感・・・・アイドルサイボーグ1号
そういヤン出ていてもおかしくない娘がでていないジャン
今回は出番なしなのかな
今や伝説として語り継がれるあの激闘、なっち対後藤を知っている者ならば誰でも、こ
の修羅二匹の真っ向勝負を見て、胸を高鳴らせたはずだ。もう二度と再現する事はないと
思われた、あの奇跡の名勝負が形を変えて蘇ったのだから。
「これを…これを待っていたんです。」
平家みちよが泣いた。
「歴史が変わるかもしれぬ。」
「あの時のようにか。」
闘いに目を奪われた格闘技界の二大巨頭がたまらず立ち上がった。かつて王者なっちが
突如現れた後藤真希に敗れた様に、古き王は新しき王に打ち滅ぼされるもの。そして今ま
た時代は動こうとしている。
(どれだけ殴っても、どれだけぶっ飛ばしても、また立ち向かってくる。)
(本当に鬱陶しい奴で、本当におもしろい奴だったよ、なっちは。)
「そして、お前もなー。」
後藤が撃つ。辻は引かない。辻が撃つ。後藤も引かない。譲らない、どっちも。
決着が着かない、まるで神がその一人を選ぶ事を拒んでいるかの様に。
たった一人、たった一人なのだ、その先にある道を歩める娘は。
だがついにその時は訪れた。
559 :
:02/06/30 01:11 ID:a+izdfqX
ののはなっちさんに勇気をもらったのれす。
ほんもろのつよさというものをおしえてもらったのれす。
いっぱい、いーっぱいおしえてもらったのれす。
こんどはののが、誰かに勇気をわけれあれたいなぁ。
忘れないよ、辻希美という目茶苦茶強い化け物がいたってこと。
パワーはあんたが上だった。体力もあんたが上だった。根性もあんたが上だった。
ただ私の方がほんの少しリーチがあった、それだけ、それだけの差だった。
もしあんたがあと3cmでも大きければ、負けていたのは…
『けっちゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーく!!!』
激闘終結、最後の一撃はほんの数センチ、いや数ミリの差でしかなかった。同時に放ち
交差した腕と腕、相手に触れたのは後藤の拳の方だったというだけ。ついに力尽き果てた
辻は成す術なく崩れ落ちた。紙一重の勝利と言えどその差は天と地程もでかい。
『勝者!後藤真希!!』
神が選びし娘の名は後藤真希。歴史は変わらず!
決勝の椅子が一つ埋まった。残す椅子はあと一つ。
560 :
:02/06/30 01:13 ID:a+izdfqX
「良かった、後藤さんだ。」
透き通った声がザワメキ収まらぬ会場に、いやにしっかりと聞こえた。その声の主は全
身傷だらけで、しかも肩に娘を一人担いでいた。
「こっちもちょうど終った所です。」
担ぎ下ろされた娘を見て誰もがアッと声を上げた。松浦亜弥!
あの死神が意識を失った状態で運び込まれてきた!?しかもそれを行なった娘が紺野あ
さ美だったのだ。それが意味するもの、神が選びしもう一人のファイナリストがすでに決
定しているということ。
「コラー!紺野!どうゆうことやそれは!」
当然、大会主催者つんくの激が飛ぶ。まさか彼女が自分の命を救う為に闘ったなど知る
由もない。それどころか自分の命が狙われていることすら知らない。自分の目の届かない
場所で勝手に勝負を終えてしまったことが許せないのだ。だが、今の紺野の耳にその警告
は届いてはいなかった。いや、観客の大音声すら聞こえていなかった。今の彼女に耳に響
く声はひとつしかない。
「やるか?」
「いいのですか?もうボロボロでしょう。」
「それはお前も同じだろ。来い。」
その言葉しか届かない。
紺野は松浦を倒した。
闇の波動により全身が火傷する様な地獄を受けた、でもその拳だけは止めなかった。
神の拳が闇を切裂き、死神を貫いたのだ。
ずっと自分を縛りつけていた使命から、ようやく解放された瞬間。
でもそれはもう一つの使命の始まりでしかない。
他の誰でもない、自分が自分へとかした何より重い使命。
(後藤さん、あなたは覚えていないだろうけど、私はあの時のこと忘れたことはない)
(この拳も、すべて、あなたに勝つ為に磨いてきました。)
強い、この子は強いね。
よっすぃーに勝った。圭ちゃんに勝った。松浦に勝った。
本当に強い。怖いくらいだよ。
でもゴトーは負けないよ、まだ待ってる奴がいるんだから。
確信してる、なっちはもう一度ゴトーの前に帰って来るってね。
その時まで誰にも負けちゃいけないんだ、頂点のままなっちを待ってるんだ。
残った娘はこの二人。いざ決勝戦!!
To be continued
562 :
やぐふぁん:02/06/30 04:30 ID:o3F2kIuQ
にゃあ〜
加護のときといい、辻のときといい、
何か結末を急いでいるような・・・
ワールドカップが終わったが
こっちも終わってしまうんだろうか?
566 :
:02/07/01 06:27 ID:q12LKhir
sagarisugiage
567 :
:02/07/01 23:16 ID:FxP8Y6Aj
チアの先生SMAPにもチア教えてる・・・。
保全。
HOZEN
保全
保田
569 :
辻っ子のお豆さん:02/07/02 13:48 ID:xnS+Kb8y
世界一の夜、新横にいました。
ブラジルのお姉さんセクスィーだった。
一番胸に来たのは、すっかり人気もなくなった翌日の早朝、
見ず知らずのおじいさんが一人で黙々と道端に散らかったゴミを拾っている場面。
思わず空缶をくずかごに投げ入れて帰りました。
祭りが終った。そしてこちらもそろそろ・・かな?
「吉澤ぁーどこにいったー。真希の決勝が始まるぞー!」
保田の自分を呼ぶ声が聞こえ、吉澤は肩を竦めた。
「いっけね、ババアが呼んでる、私行かなきゃ。」
「あ、よっすぃー。」
「またね、梨華ちゃん。」
ショックを受けた自分を慰めていたくれた相手の手が離れたことで、石川の心にまた寂
しさが込み上げてくる。
「ボクがお相手しましょうか?」
「え?」
一人残された石川に、天井からの声。あいつが来た!
その娘はずっと待っていた。声を潜めて気配を殺して、欲望のままに飛び出したいその
気持ちを抑えてため込んで、この時を待っていた。
「こっちだよ、梨華君。」
「うわぁ。」
腕を引かれ真っ暗な部屋に叩き込まれた。そこは使用されていない空き部屋だった。藤
本の手により扉に頑丈な閂が入れられる。
「これで逃げられない、二人きりだ。」
「ちょっとあなた誰よ!こんなことしてどういうつもり!?」
石川の怒りの声に、まるで笑みを隠さんとばかりに藤本は口元を手で覆い答えた。
「ボクは君が好きだ。一緒に遊んでよ。」
あまりに直球な物言いに石川はたじろぐが、負けじと言い返す。
「悪いけど、そんな気分じゃないの!そこをどいて!」
「やだ。」
「怒るよ!私、暇じゃないの。飯田さんと矢口さんの所に行って、あいぼんのお見舞いも
しなきゃいけないし、後藤さんの試合も見たいし、よっすぃーにも…」
「あ・え・な・い♪」
人差し指を口元に運び微笑む藤本。
「梨華君、君はもう誰にも会えない。なぜなら…」
穏やかな気配を発していた藤本の気が闘気、いや殺気に変わった。
「亜依君が亜弥君にやられた様に、梨華君はボクの手でやられるのだから。」
そこ科白を聞いた石川の表情から血の気が引いた。
「ちょっとそれどういう意味、あんたあの松浦と…」
「フフフ、ボクと亜弥君はあるチームの仲間でね、親友さ。」
恐怖の感覚が怒りへと姿を変えてゆく。こいつは私の親友をあんな目に合わせた奴の仲間。
許せない。
石川の表情が変わった。普通の女の子から猛る格闘士へと変貌を遂げる。
「よかった、遊んでくれるんだ。」
「私を怒らせたこと、後悔させてあげる。」
藤本が低空タックルで飛び出した。照準を合わせた石川は冷静に対応、ローキックをお
見舞いする。まともにもらった藤本は思わず膝がぐらついた。だがふらつきながらも、そ
の眼は死んでいない。石川がローキックを放った足を強引に掴み取った。
「ギュッといくよ。」
取った足を思い切り締め付ける。石川がパンチングで抵抗するが藤本の動きを止めるに
は到らない。ついに反対の足にも絡みつかれ倒されてしまった。さらに藤本は、器用に一
回転して自らの顔を石川の顔の前に移動させる。
「そっといくよ。」
完全に上をとった藤本が歓喜の笑みを浮かべる。唇と唇が近づく。しかし倒されて相手
に上に乗られ、脅えを浮かべなければいけないはずの石川の表情は未だ冷静なままだった。
「この距離。」
(なんだよ、もっと脅えろよ、ボクを楽しませろよ。)
「チャーミーの距離。」
藤本は後頭部に強い衝撃を受け、息が止まった。
チャーミー流拳法第二奥義「ほいっ!」炸裂。
「…っ!」
そのせいで自分の胸元に、石川の両手が添えらた事への反応が一瞬遅れた。
「この距離なら、直で心臓に届く。」
チャーミー流拳法第一奥義「ハッピー!」
「あああああああああああああああああああああああ!!!」
断末魔が暗き小部屋の中に響き渡った。
「くすっ。アハハハハハ。」
悲鳴とは対照的な陰湿な笑い声。藤本の破れた服の下から真っ黒の防弾ベストが顔を覗
かせた。たまに青白い閃光がビリリと走るのが見える。
「わざわざ君用に用意した甲斐があった。これいいだろ、特注なんだ。言い忘れたけど、
高圧電流が流れてるから気を付けなよ。」
断末魔をあげたのは両手を真っ黒に焦がし転がり回る石川梨華の方であった。
「あああああああああ!!いたいいたいいたいいたい!!!」
(そう、それだよ、その表情、その叫び声。それがボクの望んでいたもの。)
立ち上がり、喚き回る石川を見下ろす藤本。
「梨華君、楽しみはまだまだこれからだよ。」
「え?」
決勝の会場へと続く廊下の中央で、その娘は足を止めた。
(今、聞こえたのって…)
もう会場の手前、大歓声の中でそんなものが届くはずなどない。
(でも、確かに聞こえた。)
悲鳴…。
吉澤ひとみはゆっくりと後ろを振り返った。
決勝はもう始まっている。
To be continued
575 :
やぐふぁん:02/07/02 20:52 ID:2BVQzUSl
ふじもっちゃんはドイルか(w
吉澤、「いしよし」と「よしごま」とどっちを選ぶ?
この後でハロプロキッズが乱入してくるんかな・・・
576 :
:02/07/03 09:14 ID:3VUPKqrC
中澤はついに戦わなかったか・・・
577 :
やぐふぁん:02/07/03 09:30 ID:7uUGd7xg
まだ分からんよ
578 :
:02/07/03 11:41 ID:y6GxLNCW
どうやって防弾チョッキに高圧電流流すんだろう?
579 :
やぐふぁん:02/07/03 15:56 ID:kFeF9OAb
ナックルショットみたいに電流を流すのでは?
まぁ普通の服は着れませんな
580 :
名無し募集中。。。:02/07/03 16:18 ID:9uXqfZbp
だれだよ、このすれageたの?(w
じゃ下げますか
583 :
:02/07/03 21:07 ID:2B0JVmZm
かまいたちの夜がテレビで放映されてますね。
むすめたちの夜もやらないかな・・・。
なんて言ってみたりして・・・。
でももしむすめたちの夜が放映されたら辻豆さん
印税(?)がっぽり・・・。ああ!うらやますい!!
ほぜん
ほぜん
たいせーはいつ出ますか?
587 :
辻っ子のお豆さん:02/07/05 21:20 ID:q1N1/zYQ
|ハヽo∈
|D`) …コソーリ…
|ノハヽo∈
| ´D`)<むすめたちの夜2
| サッ
|彡
松浦、藤本が属する組織・・・・続編への複線ですね?
590 :
:02/07/05 23:43 ID:OwPQYVgc
むしろやってください。
591 :
名無し:02/07/06 00:33 ID:1g0CweBk
その前に卒業旅行やってください
592 :
:02/07/06 01:24 ID:i0Gvym0t
松浦、藤本が属する組織=おどる11
>>587 シナリオライターの雰囲気を出してくれるとそーとーうれすぃかも
誰それ?っていう場合は三人のゴーストハンターを読むと吉
594 :
ごーち:02/07/06 01:53 ID:mNfVH/Bn
むすめたちの夜2!!
辻っ子のお豆さんぜひやってください。
泣き叫ぶ石川の上に無造作に腰を下ろし完全に相手の自由を奪う。マウントポジション、
藤本ほどの実力者にこの体勢を奪われたとき、逆転の可能性は皆無と言って良い。両手で
首を握り締める。石川も抵抗するがパワーも圧倒的に相手が上、外す事ができない。
「クスクス…」
(目の前が真っ暗、このまま殺されちゃうの…そんなの悲しすぎる。)
(タスケテ、誰か、助けて)
(よっすぃー!)
「梨華ちゃん!!!!」
けたたましく扉を叩く音、吉澤ひとみの声、来てくれた。
「どうしたのー!梨華ちゃん!!開けてよ!!」
だが無情にも唯一の入り口、その鉄製の扉には10cm程の厚さの閂が敷いてある。
「大丈夫だよ梨華君、ここには来れない、邪魔は入らないから。」
ドゴォォォォォンッ!!!!
扉をぶっ叩く轟音。まさか、まさかこの扉を拳で破壊する気か!?
「アハハハ、無理に決まってる。馬鹿じゃないの?」
ミシッ…
扉にヒビ、さらにもう一発、今度は閂に割れ目が生じる。
ドゴォォォォォンッ!!!!
真っ暗な部屋に一筋の明かりが差した。
ついにその部屋に入ることができた吉澤ひとみの眼に入ったもの。泣きじゃくる石川梨
華の上に乗り、その細い首を絞めるあげる見た事もない女。吉澤のスイッチを入れるには
十分すぎる光景だった。扉を破壊する為にボロボロになった拳を振り上げ突進する。咄嗟
に立ち上がり迎え撃つ藤本。
「バーカ、一回戦敗退のお前ごときにやられるボクじゃ……」
その科白が最後まで言葉になることはなかった。吉澤の拳が藤本の頬をまともに打ち抜
いたからだ。藤本が一回転しながら壁際まで吹き飛ばされる。
(なんだこいつ…なんてスピード、なんてパワー。)
(どうしてこんな奴が一回戦で消えたんだ?)
止まらない吉澤、ボディ目掛けて空を斬り裂くアッパーを発射させる。
(かかった!さぁ来い、お前も高圧電流の餌食だ!)
ズドォォォォォォンッッ!!!
「〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
声にならない悲鳴。防弾ベストにポッカリ空いた拳大の穴。常識外の破壊力。
バチバチバチ…行き場を失った電流がショートする。藤本の体を青白い火花が包んだ。
「うわあああああああああああああ!!!!」
自らの護身防具により自滅する形となった藤本、完全なる敗北を知った。
あれは一回戦だけど一回戦じゃないんだよ。
「梨華ちゃん大丈夫?」
心配そうに石川に駆け寄る吉澤。
「うん。へっちゃら。」
本当はすごくつらかったんだけど、石川は嬉しくて嬉しくて嘘ついた。
「そっか。」
一安心した吉澤も、笑顔をみせた。
(バカ、ウソだよよっすぃー。ほんとは怖くて怖くて仕方なかったんだから。)
(でも来てくれてほんとに嬉しい、チャーミーハッピー!)
「ね、よっす…」
顔をあげた石川の前には、すでに人影はなかった。
「あれ?」
決勝戦、後藤真希対紺野あさ美。
「ハァハァ、良かった。間に合った。」
大急ぎで試合会場へと駆け戻って来た吉澤は、まだ決着がついていない所を見て安堵した。
この闘いだけは見逃す訳にはいかない。吉澤にとって因縁深い二人。
この手で振り向かせたかったあいつと、その夢を打ち砕き託したあいつの闘い。
「勝てよ!」
それは両者に贈る言葉。
もう10分以上になるだろうか、未だ二人は一歩も動いていない。あれからずっと膠着
状態が続いている。動かないのではない、動けないのだ。それぞれ辻、松浦との闘いによ
り、すでに満身創痍の状態にある。一挙手一投足が勝敗を左右することに成りかねない。
「ゴクッ…」
誰かが息を飲んだ。誰もがこの闘いの結末を、片時も目を離さずに待っている。たった
一人の栄光が決まる瞬間を待ち望んでいる。
(もう…もう…)
傍目には対等に見える二人、だがその内面には大きな差が生まれていた。
プレッシャー。
大舞台を幾度も経験する後藤真希とは異なり、紺野あさ美にとってこの重圧は想像を絶
するものであった。最強の王者を前にして一歩も引けないという状況に、もはや紺野の精
神は限界に近づいていた。
(もう…待てない)
紺野が動く。全身全霊を込めた一撃。
(届け…届け!)
その瞬間、紺野の脳裏に過去の映像がフラッシュバックしてきた。
それは3年前、後藤真希との出会いの日のこと。
To be continued
599 :
oo:02/07/06 14:18 ID:3uXYxsSR
いつも楽しく読ませてもらっておりまするものですが
昔の小説で「帝国の章」から見れません何とか見れないものでしょうか?
600 :
一読者:02/07/06 17:31 ID:TyxB7XAn
601 :
ななし:02/07/06 23:43 ID:mD1epscS
こんこん死んじゃうの?
>>592 >松浦、藤本が属する組織=おどる11
おもいっきり笑ったのは俺だけ?
>>602 紺野も所属はおどる11だが・・・
と突っ込んでみる・・・
604 :
oo:02/07/07 17:56 ID:VpiSlkGo
>>600見れないんだけど。帝国の章から
「そんな板orスレッド」ないですって出てくる
>>604 その下に、
「隊長! 過去ログ倉庫で、スレッド 1008305977.html を発見しました。」
と書いてあるのが見えませんか?きちんとリンクも貼られていますし。
606 :
oo:02/07/07 20:22 ID:VpiSlkGo
>>辻っ子のお豆さん
>>oo、このオモシロボーイも登場させてください。
ミュージカル2部主演の二人が決勝で戦い、
勝った方が1部主演の安倍と戦う構図か
609 :
ファイナルバトル:02/07/09 14:08 ID:YsgZ6ZQL
地上最強を夢見た16人の娘がいた。
そして今、その頂点が決まろうとしている。
飯田┓ ┏高橋
┣┓ ┏┫
辻 ┛┃ ┃┗保田
┣┓ ┏┫
石川┓┃┃ ┃┃┏吉澤
┣┛┃ ┃┗┫
新垣┛ ┃ ┃ ┗紺野
┣━━━┫
後藤┓ ┃ ┃ ┏福田
┣┓┃ ┃┏┫
市井┛┃┃ ┃┃┗加護
┣┛ ┗┫
小川┓┃ ┃┏矢口
┣┛ ┗┫
安倍┛ ┗松浦
「はじめまして〜、後藤真希でぇす。」
金髪のギャル、それが当時の後藤を見た紺野の第一印象。
(こんな子が格闘技を?)
幼き日から空手一筋で生きてきた紺野にとって、彼女の風貌はとてもそれのものと思え
なかった。自分がこんなチャラチャラした娘に負けるはずはないと思っていた。
「では次、紺野あさ美さんと後藤真希さん。」
「はい。」
「んあ〜、はーい。」
総合格闘団体プッチと言えば、言わずと知れたTAPと並ぶ格闘技界の大御所である。
毎年その入門を夢見た子供達がこの入団試験会場に集まるのである。だが入団を許される
のはほんの一握り、選ばれし者だけという狭き門なのだ。
(大丈夫、私はやれる、いつも完璧です。)
紺野には少しばかり自信があった。事実、この頃の紺野は同年代の子供達の中ではずば
抜けて実力があったのだ。遊びたい年頃であるにも関わらず、空手道の鍛練に毎日を費や
してきたという努力の賜物であった。だから、目の前にいるいかにも遊んでそうなギャル
ちゃんなんかと、比べて欲しくないという気持ちさえ持っていた。
「よろしくお願いしま〜す。」
プッチの入団テスト、紺野あさ美が後藤真希を知った日。
才能、持って生まれた物の違いなのだろうか?
「では合格者の発表をします。」
何百といた入団希望者の中で、名前を呼ばれたのはたった一人だった。
「後藤真希。」
何年も空手の修行を続けてきた紺野は、素人同然の彼女に手も足も出なかった。あのと
き、誰の目にも後藤真希の存在しか映っていなかった。誰もがその天性のオーラに目を奪
われていた。あの日あの場所に紺野あさ美という少女がいたことを覚えている者など皆無
であろう。
(輝ける存在なんて初めから決まっているんだ。)
(落ちこぼれはどんなにがんばっても落ちこぼれ。)
少女にコンプレックスができた。もう格闘技をやめて普通の女の子に戻ろうと何度も思
った。それでも結局辞めることができなかった。茶色の帯を投げ捨てる度に、自分にはこ
れしかないんだって思わされた。真夜中の道を大急ぎで走って、ゴミ捨て場から茶色の帯
を引っ張り出した。
ちっぽけな石ころでも磨き続ければいつかダイヤモンドになるんだって信じて。
もうとっくに黒帯を取るくらいの実力はある。でも紺野はこの茶帯を離さない。こいつ
を締める度に思い出すからだ、あの頃の気持ち、あの頃の想いが。
(そうだった、私は決めたんだ。)
(もう絶対に負けない、後藤さんに勝つんだって!)
「届けーっ!!」
ひたすらに磨き続け、神の領域にまで辿り着いた紺野の拳が、永遠に並び立つ事のない
と思われたあの娘の前にまで伸びる。
―――――――落ちこぼれの私だって、いつかきっと―――――――
バシィィ!!
それは紺野にとって絶望の音。後藤真希の大きな掌が紺野の拳を包み込んだ。全身全霊
を振り絞った最後の拳は、これまでの想いを込めた拳は、届かなかった。後藤真希という
あまりに巨大すぎる相手を前にして、やはり届く事はなかった。
(終った)
紺野にはもう動く力すら残っていない、松浦との死闘でふらふらの状態から、今の一撃
にすべてを賭けたのだから。そいつが封じ込まれた、それはつまり敗北を意味する。
(結局私は落ちこぼれのまま。後藤さん、あなたには届かな…)
ダウンの音。それは最後の一人を決める審判の音。
長き闘いに幕が下りる。
王者の意地だ。立っていること、構えることすら苦痛と言えるダメージ。あの辻の攻撃
をどれだけ受けたと思う。この決勝、後藤に限って言えばこんなに待ちに徹する気はなか
った、だが動きたくても本当に動けなかっただけだった。果たす事のできなかったあいつ
との再戦までは、絶対に誰にも負けないという意地だけが、彼女を心根の部分で支えてい
たんだ。その意地があの奇跡を起こしたのだろう。
神の拳を受け止める。
動く力すらないはずの体が起こした奇跡、彼女は最後まで本物の王者だった。奇跡を起
こした肉体はその役目を終え、静かに眠りに就いた。孤高の王者が今ようやくその役目を
終え眠りに就いたのだ。
『後藤真希ダウーン!!!動かない!!!勝負あり!!勝負ありだぁぁ!!!』
『優勝!!!!!紺野あさ美ぃぃぃぃぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!』
「わああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
大歓声の中、最後まで立っていたのは紺野。
16人、いや地上最強を追い求めた何千何万という娘達の中で、たった一人。
最後まで立ったいたのは紺野あさ美だ。
新チャンピオンの誕生、新しい時代の幕開け。
全ての観客が、全ての選手が、この新しい王者に祝福のエールを贈る。
「おめでとうコンコン!!」「紺野あさ美最高!!」「お前が地上最強だ!!」
「信じられねえ!あの後藤真希を倒した!!すげえーーー!!」
一番信じられないのは当の本人である事は間違いない。
(何言ってるの皆、私は負けたんですけど。)
(ほら後藤さんも何とか言って下さ…どうして寝てるんですか?)
(私が地上最強?そんなはずない、私なんかぐずで落ちこぼれで全然…)
「私なんか…」
困惑し震える紺野の肩をポンと優しく叩く手。吉澤ひとみだ。
「紺野おめでと。」
吉澤だけではない、辻、飯田、石川、新垣、市井、小川、保田、高橋、福田、矢口、皆
が笑顔で紺野を出迎えてくれた。さっきまであれだけ殴り合って傷つけあったのに、もう
皆こんなに優しい顔をしている。こんなに喜んでくれている。
「ありがとう、みんなありがとう。」
小さなチャンピオンに涙と笑顔、この物語の主人公は君だ。
To be continued
615 :
やぐふぁん:02/07/09 14:22 ID:DhMX/+Ui
紺野優勝ォ!!!おめ♪
>>609 微妙にガタガタだね。コピペすればいいのに
◇ 飯田 ×┐ ┌× 高橋 ◇
┏○┓ ┌×┓
◇ 辻 ○┛ ┃ │ ┗○ 保田 ◇
┗×┐ ┏○┓
◇ 石川 ○┓ │ │ ┃ ┃ ┌× 吉澤 ◇
┗×┘ │ ┃ ┗○┓
◇ 新垣 ×┘ │ ★ ┃ ┗○ 紺野 ◆
┏×┗○┛
◇ 後藤 ○┓ ┃後 紺│ ┌× 福田 ◇
┗○┓ ┃藤 野│ ┌×┓
◇ 市井 ×┘ ┃ ┃ │ │ ┗○ 加護 ◇
┗○┛ └×┓
◇ 小川 ○┓ │ ┃ ┌× 矢口 ◇
┗×┘ ┗○┓
◇ 安倍 ×┘ ┗○ 松浦 ◇
617 :
ななし:02/07/09 21:39 ID:4bxOWkt7
こんこん優勝? ヤター
おめでとうございます。
エピローグ(SA)
「おっしゃー、やっと俺の出番みてえだな。」
SAことヤンジャンが拳を突き上げ高らかに吠えた。
「この俺を参加させなかったこと死ぬ程後悔させてやるぜ、つんく!」
彼女こそ、つんくの命を狙う謎の一味の大ボス(自称)だったのだ。
「おらああああ!!!死刑囚5人組、出動!!!」
返事はない、彼女の後ろに立っていたのは一人のボケーッとした女性のみであった。
「おいおい石井、お前だけかよ。松浦と藤本と安倍はどうしたよ?」
「あややちゃんとミキティちゃんならもう抜けると電話を受けましたぁ。」
「んだとあいつら勝手に!安倍はどうした!せっかく俺直々に誘ってやったのによ!」
「なんか約束を果たしにいくと、やっぱり電話で。」
「お前は電話番かゴラァ!!」
「そうです。まだ事務処理が残ってますんで私も失礼します。」
ペコリと頭を下げて石井リカは事務所へと駆け足で戻っていった。
小高い丘の上に一人残されたアミーゴ。
「さーて、帰って鉄拳でもすっか。」
ヤンジャン敗北を知る。
エピローグ(辻加護)
「あいぼん、治るんれすね!」
病院の一室に辻の歓喜の声が響く。間近にいた医者は思わず耳に手を当てた。
「信じ難いが、その通りだ。切れた靭帯が全て繋がっている。奇跡としか言えん。」
「やっらーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
病院脇の芝生にて車椅子でのリハビリを続ける少女、加護亜依。
半年もリハビリを続ければ元に戻れる、その希望が彼女を前へと突き動かしていた。
「あいぶぉーーーーーん、また一緒に闘えるんれすねー!」
喜びの知らせを受けた辻が駆け寄る。その勢いのまま車椅子を押す。
「アホォーののー!押すな押すなリハビリにならへん、危な…!」
ドンガラガッシャーン!!!
加護のリハビリ期間が半年から一年に延びたという話。
エピローグ(銀杏)
深夜の病院をこっそりと抜け出す影が一つ。
「勝手に引退してもらっては困る。少なくとも私がリベンジするまではな。」
紐切りを極めし者、切る事もできれば繋ぐ事すら可能だと言う。
「その時まで、天才の呼称は預けておくぞ。」
福田明日香はきっと帰って来る、再び我々の前に。
621 :
つじまめ:02/07/10 12:25 ID:QrDD3K0F
エピローグ(いしよし)
大会終了後最初の日曜日、おしゃれなバーに二人の姿があった。
「よっすぃーさぁ、もうトレーニング始めてるんだって?」
「当然、来年は絶対優勝するんだから。その為に今ウエイト上げてんの。」
石川の視線が吉澤の胴回りへと移行する。
「やめたほうがいいんじゃないかなぁ…」
エピローグ(圭婆さん)
「そろそろ引退時かのぅ。」
縁側に座りお茶をすすりながら考える達人保田圭。
(ていうか私のババアキャラに一回もクレームこなかったのはどうして?)
エピローグ(のっぽとおチビ)
「あーあ、なんか全然暴れたんない。」
「カオリはまだいいよ。おいらの時代はいつ来んだよ!」
「次じゃない?ほら、ナントカの夜2とか。」
「あんのかよ!おいら主役?犯人?何でもできるよ!」
(殺られ役もね。)
622 :
辻豆:02/07/10 12:26 ID:QrDD3K0F
エピローグ(あいまこ)
「空中殺法とプロレス、組み合わせたらおもしろいと思わない。」
提案をしてきたのは小川、今回の結果にもまだ満足はしていない。さらに上を目指す。
「う〜ん、いいかも。」
その気持ちは高橋も同じ、新世代。紺野にできたのなら私にだって。
「次は私がチャンピオン!」
彼女たちの時代はまだまだこれからである。
エピローグ(・e・)
特になし。
エピローグ(安倍と後藤)
「おまたせ。」
「もう、チャンピオンじゃないよ。」
「関係ない、ここに私とあんたがいる。他に何か理由がいる?」
「いらない。闘ろう。」
伝説は人知れず紡がれる。
その闘いの結末を知る者は二人だけ。
エピローグ(紺野あさ美、伝説の始まり)
かつて落ちこぼれと呼ばれた娘がいた。
誰も注目すらしていなかったその娘は幾度の奇跡を起こしてゆく。
事実上の決勝戦と呼ばれた一回戦にて、その真価は目覚める。
紺野あさ美、シンデレラストーリーの始まり。
ちっぽけな石ころでも磨き続ければいつかダイヤモンドになるんだって。
だけど彼女はまだ満足なんかしていない。
(本当の意味で後藤さんに勝利した訳じゃない。)
(もっともっと強くなりたい。)
後に、コンコン(complete konno)と称される事になる娘の、これは始まりの物語。
それでも紺野の微笑みは変わらない。
茶帯を拾い走ったあの頃のまま。
「いつも完璧ですっ!」
THE END
624 :
h:02/07/10 12:33 ID:7xXgRjTa
リアルタイムキターーーーー
辻豆さんおつかれさんでしたーーーーーー!
>作者
更新オツ&脱稿オメ。
楽しませてもらいました、どうもありがとう。
終わってみて「もう選択肢は必要ないのかもな」なんて
思えたり…
気長に待つんで、できれば次回作も読ませてくれ。
626 :
名無し:02/07/10 13:28 ID:J/QJxG98
更新のたび、楽しく読ませていただきました。
「辻っ子のお豆さん」さん、どうもお疲れ様でした。
627 :
:02/07/10 19:01 ID:xcf71lHH
ナントカの夜2
ほんとにアルノ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!??
お疲れ様でした。
ほんとーーーーーーーーーーーーーーーーーーにお疲れ
629 :
名無し募集中。。。:02/07/10 22:02 ID:PLx2OtnH
途中まで面白かったんだけどね・・。
後半からはダメダメね。
630 :
がじら。:02/07/10 22:57 ID:zobmPAiM
━キ━━━━(゚∀゚)━━━タ━━━ !!!
ついに矢口の時代が・・。。。
辻豆さん、おつかれでした〜。
あややとミキティの行動・・・・。
絶対魔人ブウのような展開になると思っていたのに・・
それとSA登場!ありがとでした。
(あとがき)
不思議なもんです。問題点や失敗点がいっぱいあったこんな小説でも、書き終えてみる
となんか結果オーライ満足してしまう。この瞬間が一番好きです。正直な話「街れす」の
とき、「ハッピーエンド」のとき、共にそれを最後の作品にしようと思って書いていまし
た。だけどこの達成感を味わうと、また書きたくなってきてしまうんです。そして今回も
また、バ○風にいうなら「もうこんなに書きたい。」です。むすめたちの夜2なんてネタ
のつもりだったんだけど……いや今でもネタです。
まあその話は置いといてモームス最大トーナメントについて語ります。一応弁護してお
きますが、読者予想を見て結果を変えたなんてことは一切ございません。初めから優勝者
は彼女のつもりでした。彼女がこの話の主人公であることは、最後の最後まで秘密にして
おこうというテーマがありました。やっぱりどっちが勝つかわからないってのがトーナメ
ントの醍醐味だと思うし、主人公がわかっているとどうせこいつが勝つんだろと思われて
なんか嫌だったので、なるべく最初は目立たない様に設定しました。結果的に目立たなす
ぎてやり過ぎたかと反省しております。(何度指摘されたことか)
主人公隠蔽とは別にもう一つ、物語の肝として置いたのが「なっち対ごっちん」。事実
上の主人公と言えるくらい、とにかく誇張して誇張して煽った。そんで結局書かないとい
う反則技。でもこの二人の決着だけは書きたくなかったんですよ。(伝説ともなった激闘
を書ききる自信がなかったとも言う)勝敗は読者の想像任せという事で。
これ以外に肝を挙げるとするならやっぱり「辻と加護の約束」かな。本当にこの二人の
決勝戦が実現するのでは、と読者に思わせるくらい勢いつけて二人を書きました。さらに
松浦を絡めて、辻松浦の線もほのめかせる。読者にそう予想させたらこっちのもんと密か
にほくそ笑んでいました。
さて、今マツーラの名前が出ましたが、今回も一番の問題児でした。こいつをどうやっ
て負けさせるか?誰をあややの餌食にさせるか?結構悩ませてくれました。まだ小説構想
の時期、トーナメントの組み合わせを考えているときです。辻飯田とか市井後藤とか比較
的あっさり決まったカードもあれば、なかなか決まらないカードもいくつかありまして、
その代表が松浦戦でした。5期メンだと相手にならない。だからといって上の重要キャラ
や年長キャラには申し訳ない。結局矢口しかいなかったんですよ。矢口vs松浦ならおも
しろそうに見えると思い決定した訳です。ごめん矢口、今覚えばもったいなかった。
トーナメント組み合わせを決める上でやりたかったこと、最初の方にブラジル対イング
ランドみたいな事実上の決勝戦と言える試合をもってくること。吉澤対紺野がそれに当る
訳です。実際シードなしのランダム抽選で組み合わせを決めたら、そういうことってある
と思うんですよ。(K−1とかでも毎年思う)よっすぃーを一回戦で消すことはそうとぅ迷
いましたが、決勝レベルは彼女しかいなかった。本当は強いんだぞってのを証明する為に
登場してきたのが第二の問題児ミキティという訳です。彼女がまた…(汗)
ぶっちゃけると最初は、トーナメントの後に第3部死刑囚編やるつもりだったんですよ。
松浦はその伏線として先に登場させて、なっちの話もそっちのメインで書こうと思ってい
て、だから早めに負けさせて。(これが失敗の元だった)せっかくだから第3部の大まか
な流れを白状します。まず死刑囚5人は鈴木、松浦、藤本、安倍、メカあいぼん。(この5
人目が間違っている。)松浦に再起不能にされた加護がアミーゴの手により機械化復活。
過去の意識は失っていて、辻との悲しい激突を迎えるというトンデモナイ話。さらに全体
の流れとしてはこの5人がトーナメント出場選手15人を闇討ちしていくバトルロワイア
ル物。特に藤本が本編の様に食いまくる。最終的には吉澤にやられますが。(この辺は受
け継いでいる)だけど、どー考えても蛇足になるなと思い直しまして、打ち切った訳です。
ヤンジャンはやっぱ最後にギャグで出した方がおいしいかなと。そんで5人目はどうしよ
うと考えていた所で、あのうたばんを見たんですよ。即決定です。
反省点はたくさんあります。もうちょっと第一部を長くして娘達の友情や因縁を書けば
良かったとか、そういえばTAPとプッチが一回も当ってない!?とか、はしょった部分
とかも結構ありますし、完全に納得いく作品ではありませんでした。新曲は原点回帰みた
いですね。それもいいかも…。
最後に応援してくれた読者の皆さん、本当にありがとうございました。
なんか、トーナメント終わっていよいよ物語の佳境にっと
思っていたら終わっちゃったんで、ちょっと消化不良です。
第三部あっても、ぜんぜん蛇足じゃなかったと思いますよ。
それから、原点回帰は2chネタですのでご注意を。
ごくろうさまでした
あとがきを長々書くのも4126の影響か?
辻っ子のお豆さんお疲れさま
元ネタを知らなかったので毎回楽しみな作品ですた。
@ノハ@
(;`д´) <oo、このオモシロボーイの登場なかったやん!
あいぼんさんにあやまれ〜ゴルァゴルァ!!
639 :
@:02/07/11 20:25 ID:2A+zLBJk
辻っ子のお豆さま、どうも乙でございます。
次回作も期待しちゃってますので、頑張っちゃって下さいませ♪
死刑囚編も見てみたかったような気が.....幻の作品になっちゃいましたな。
>>633 別に多少の矛盾んあんかいいから続ければ?
641 :
プリンス羊(ペンギン):02/07/12 16:22 ID:7ORC6Euw
完結オメ。
ところで、「ソニンのカポエラ!」にツッコミが無かったのはどうしてだろう・・・
おまいらちゃんと読んでいるのかと小1時間(略
>>641 確かに。ヤパーリ「クムドー」だよね。かの国発祥の。
>>642 いや、そういうことじゃなくてさ・・・。
おまえも(略
644 :
.:02/07/13 21:41 ID:tWFZ+Jc2
>手を床に付け体を激しく回転させながら足技を繰り出す。カポエラと呼ばれる異国の武
>術を用いて、試合を勝ち進む娘がいた。
>「あいつがカポエラのアヤカ、この大会こいつが本命かな。」
>テコンドーのチャンピオン、ソニンは退屈していた。この大阪予選に出場し決勝まで勝
ですね
テスト運用中 1026703411
たしかこの話の始まった3月ころ
雑誌「Myojyo」でソニンがカポエラを学ぶ
という記事があったんだよね。
647 :
:02/07/17 00:57 ID:DmfaRJWL
保全
648 :
プリンス羊(ペンギン):02/07/17 03:37 ID:+7nxS1E+
かまいたち2age
保全
650 :
一読者:02/07/18 14:47 ID:Ul2Rp3hQ
やっぱり仕事で小説書くのも辛かったんでしょうね。後半は異様に展開早かったし。
第三章も見て見たかったです。
なにわともあれ、お疲れ様でした。数ヶ月間楽しませて頂きました。
また小説書いて下さい>辻っ子のお豆さん
名無しに戻ったこんこん連です。殺伐としたトナメの中ここで骨休みさせてもらってますた。
天地を揺るがすような(w 大作期待しています(でも社会人になられたみたいだから
きついかな)
保全書き込みを行います. 1027264104
このスレどうなるの?
保全
658 :
:02/07/28 07:06 ID:DtyzR4yo
保全
659 :
:02/07/28 19:41 ID:V8Hb9H+R
帆膳
660 :
:02/07/28 22:08 ID:Ee+XWhmt
hozem
661 :
:02/07/28 22:15 ID:V8Hb9H+R
穂膳
662 :
:02/07/28 22:37 ID:ZWmjgfpp
t
663 :
:02/07/29 11:08 ID:YDxNVus/
ho-ze-n
664 :
ななし:02/07/30 08:55 ID:0sqfVJjX
保全
665 :
_:02/07/30 19:01 ID:orzcejkW
(☼ー☼)
(◕ฺ´ー`◕ฺ)<保全♡
保全
667 :
:02/08/02 12:35 ID:iLgrYJ32
668 :
保全:02/08/03 13:36 ID:uMi2zuT8
ho
ホゼム
外伝 〜1年後〜
新チャンピオン紺野を迎え、熱き娘達の闘いが再び!
格闘技界は揺れていた。
後藤真希、保田圭が次の大会を最後に、事実上の引退を宣言したのだ。
総合格闘団体プッチのトップに吉澤ひとみが就任。
さらにプロレスの小川とカポエラのアヤカがプッチに電撃入団。新体制の表明。
同時期、TAP会館にも変化の波が押し寄せていた。
怪我により除籍していた加護に続き、飯田、矢口までもがTAP抜けを発表。
後任には石川梨華。ムエタイの新垣、キックボクシングの柴田を新たに迎える。
さらになんと、TAPは現役王者紺野あさ美までもを獲得していたのだ。
第三勢力、辻と加護そして高橋によるチームミニモの出現。
伝説のチャンピオン、なっちの完全復活。
松浦、藤本等、新戦力の台頭。
ここに地上最強の宴が幕を開ける
熱戦は予選大会から始まっていた。
昨年優勝紺野あさ美と準優勝後藤真希はシードにより本選出場が決定している。
残る枠14を巡る熾烈な争い。
安倍なつみ−小川麻琴
保田圭−吉澤ひとみ
りんね−飯田圭織
市井紗耶香−藤本美貴
加護亜依−あさみ
アヤカ−ソニン
中澤裕子−石川梨華
柴田あゆみ−高橋愛
矢口真里−ミカ
ダニエル−鈴木あみ
辻希美−石井リカ
里田舞−福田明日香
松浦亜弥−新垣里沙
石黒彩−?????
おおっ!いつのまにか新しいのが!
大丈夫なのか?
674 :
:02/08/09 01:09 ID:FIQ9jWNF
675 :
:02/08/09 04:00 ID:kZzVIZQy
今はじめてTAPがたんぽぽのことだと分かった……鬱氏
「すんげえ弱い。」
2秒だった。
松浦の手刀が新垣の首筋に打ち込まれるまでの時間である。
予選大会を勝ち抜き、決勝トーナメントへ進む最初の一人が決まった。
松浦亜弥。
遊び気分で参加していた昨年とは何かが違っていた。
彼女の視界に、すでに出場を決めている紺野後藤、
そしてこれから決まるであろう12人が写っていた。
(一番強い奴とやりたい!)
決勝トーナメントへの道、まず一人。松浦亜弥。
昨年のリベンジマッチ。
プッチ入りをし、プロレスの技にさらに我流を加えた小川は強くなっていた。
一度倒した相手に負ける要素は一つもなかった。
だが違った。
それはなっちではなかった。
少なくとも、小川の知っているなっちではなかった。
一つの攻撃も繰り出す事なく小川は地面にひれ伏した。
立っていたのは修羅であった。
伝説再び、安倍なつみ、決勝トーナメント進出。
加護亜依は遊んでいた。
加護亜依は楽しんでいた。
久しぶりの闘い、久しぶりの実践。
小さな天才がリハビリを乗り越え蘇った。
「いっぽぉんぜうぉぉぉい!!」
柔道金メダリストあさみを投げ飛ばす。
加護亜依はまたひとつ強くなっていた。
加護亜依、決勝トーナメントへ
自分はすでに一線から引いた身、出場する気なんてなかった。
だが、後藤保田の引退のニュースを聞いたとき全身に震えが起きた。
この機会を逃せば、もう二度とあの二人と闘り合えなくなる。
そう思うと体がうずいて仕方なかった。
自分の力を試してみたい。
王者になるべくして生まれ落ちた娘。
あらゆる武を越えた存在、達人。
この二人と単純にぶつかりたい。一人の武人として。
決断した。つんくの傍を離れた。
年齢的にもこれが最後の挑戦となるであろう。
今、中澤裕子が娘。の舞台に舞い戻る。鬼が舞い戻る。
その前に立ちはだかる娘。石川梨華。
今や現役最強との呼び声も高い、TAPのトップ。
決勝トーナメントへの切符を手にするのはどちらか一人だけである。
保全
681 :
:02/08/12 08:34 ID:Gy/JYx62
保全はsageるべきなのか?ageるべきなのか?
682 :
:02/08/13 03:17 ID:hoNwpWfT
>>681 小説スレは基本的に作者以外はsageで行います
683 :
:02/08/13 11:29 ID:KyNnQTXa
(あんたでよかった。)
(私の最期の相手があんたで本当によかった。悔いはない。)
前のめりに倒れ込む中澤裕子を受け止める石川梨華。
全身に傷を負いながらも、なんとか勝利を収める事ができた。
それは1年前の、まだどこかに弱さをもっていた石川ではなかった。
前に立って皆を引っ張っていく存在として、強くなっていたのだ。
(再びTAP会館の最強を証明する為に、私は負けられない)
石川梨華、決勝トーナメント進出
孤高を貫く女がいた。
誰の手も借りず、ただ己の力のみで地上最強の頂きを目指す女が。
昨年予選で破れたソニンという女は死んだ。
「これが、何かに頼り群れて生きる者と、そうでない者の差だ。」
地面にひれ伏し、すでに意識のないアヤカに向かって放つ言葉。
孤高の女。
彼女の闘いは終らない。
ソニン、いざ決勝の舞台へ
もうな〜んにも残っちゃねえ。
地位も名声も肩書きも、面倒なもんはな〜んにもなくなった。
残ったのはこの拳だけ。
もうTAP館長でも、武神でもない。
ただの飯田圭織だ。
ただの武道家だ。
これで条件は同じだぜ。
拳がパワーファイターりんねを打ち抜く。
そう、これだ。単純かつ明快。これだけでいいんだ。
あいつに教わった闘うことへの喜び。
「さーて、もう一華咲かせますか。」
踏まれても咲き続けるあの花の様に。
飯田圭織、決勝トーナメント進出。
奴が来た!
ダニエルの巨体が宙に浮いている。
それを支えているのはなんと一本の腕のみ。
「…ギブ…アップ」
吐き出されたその言葉に、奴は笑みを浮かべる。
「おい、お前。高らかに宣言しな、俺の名を!」
審判に向かって奴は暴言を吐く。
「しょ、勝者!!鈴木あみ!!鈴木あみぃぃぃぃ!!!」
その名前。
(そうだ、それこそが頂点に立つに相応しい名だ。)
ついに奴が娘達の前に姿を現わす。
鈴木あみ、決勝トーナメントへ。
保全
ゲリラ更新かよ。
お疲れ様です。
コソーリ
691 :
:02/08/18 00:40 ID:nTUnBqJc
良スレ保全します
一日位置保全
おいらはまだ何もしちゃいない。
後藤真希とも、保田圭とも、決着は付けていない。
どっちが本当に強いのか?まだ答えを出していない。
待ってろよ、今度はもう途中で躓いたりしないから。
矢口真里は二度負けない。
お前達はその場所で待っていろ。すぐにおいらも昇ってやる。
頂点って名のその場所へ!
安倍なつみ、辻希美、松浦亜弥、紺野あさ美。
全員まとめてかかってきやがれ!
誰よりも闘うことが大好きで、ひたすらに地上最強を目指す娘がいた。
彼女は圧倒的強さで対戦相手のミカを打ち破った。
汗が光るその姿は、美しくさえあった。
栄光なき王者、グラップラー真里が再びあの舞台へ!
「柴田あゆみを知っているか?」
「知らない。」
「一昨年のベスト4選手。その実力は疑い様がなくトップクラスだ。」
「ふうん。」
「昨年はあのなっちに本気を出させるまで追いつめた程だ。」
「その人に勝てば、少しは私の株が上がります?それなら勝つよ。」
この一年で、一番成長した娘を挙げるとすれば?
それは高橋愛だ。
もう新世代のエースではない、格闘技界全体のエースと呼ばれるまでになっていた。
後藤なき後の格闘技界を支えるのは彼女しかいないと言う者すらいる。
その試合、高橋は特異の空中殺法もモールス打撃も使わなかった。
純粋なありのままの実力のみで、あの柴田あゆみをねじ伏せたのだ。
王者の片鱗が僅かに顔を覗かせていた。
高橋愛、決勝トーナメントへ!
「石井ちゃんです。」
「つっじちゃんれす♪」
その試合はほのぼのと自己紹介から始まった。
互いに数発の打撃を繰り出し、その内のいくつかはヒットしたりした。
「楽しいね。」
「たのしいれすね。」
最終的にスタミナ負けした石井がダウンして試合は終了した。
「強かったよ。」
「ありらとう、またいつかやりましょう。」
最期までほのぼのと、二人は握手を交わし別れた。
「昨年の様な圧倒的爆発力が感じられない、今年は期待できないな。」
あるライターが今年の辻希美についてそう感想を述べた。特に反論はでなかった。
仕方がなかった。誰も知らないのだ、去年の辻希美しか。
辻は戻りつつあった。まだ誰も知らない頃の辻希美に。秘めた力だけを残して……
辻希美、決勝トーナメント進出。
―――ッ
音すらなかった。
福田明日香の腕が揺れたと思った瞬間、里田舞はもう崩れ落ちていた。
首の後ろ、全身を統括する脊髄の神経が切られていた。
紐切りが完全必殺となって帰ってきたのだ。
「勝者!福田明日香ぁ!!」
天才がさらにその進化を遂げた。
試合後、勝利のコメント求められた福田がマイクに向かって一言恫喝した。
「今の私なら後藤真希にも勝てる!」
福田明日香、決勝トーナメントへ
保田圭−吉澤ひとみ
市井紗耶香−藤本美貴
そして
石黒彩−?????
試合会場にいた石黒彩は苛立っていた。
対戦相手が名前も明かさず、なかなか現れないからだ。
彼女には、昨年の予選での苦い思い出があった。
その怒りを全部ここでぶちまけてやろうと意気込んでいた所だ。
ところが今回の相手がこの体たらく。
もう八つ裂きにしてやろうくらいの考えでいた。
「お・ま・た・せ〜」
来た。
この数分後、八つ裂きにされた石黒がそこに横たわることになる。
699 :
:02/08/23 02:34 ID:en0717Vf
保全します
700 :
ジャギ:02/08/23 16:20 ID:/0Uz9MO+
‐  ̄ ̄ ̄ ヽ
/ ┘└ \
/ ┐┌ ヽ
////( )\ )\)\ヽヽ
(ししし⌒⌒⌒) )⌒⌒⌒⌒) ) ) ) |
l\ ,ー,、‐/ |,ー,、―、/\|/ヽ | / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
l\/ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ノ ノ ノ | おい、兄者!
l\ /了 | 了 /了 |了 ) ̄| | | .∠ おれの名を言ってみろ!!
\ | | / | .| | .| | | | | | |
/| | .| | | .L.」 / | | | | | .\_______
∧| | | | .| L .| | .| | |J | |
( ヽ| .| | | | | | | | \|ヽ |
ヽ/|ヽ .|_| |_| .|_| .|_| / | 700ゲット
∧ /| | \_______ / / ヽ
/ ヽ/ |___| \_______/| |_ / | /|
hozendaze
石黒の相手って…
保全
703 :
名無し:02/08/26 19:31 ID:aQ2KSU3N
是非、後藤VSソニンでやってくれねぇか…?
「誰や!あいつの参加を認めたんは!」
大会主催者であるつんくの激が、運営幹部全員に飛ぶ。
「で、ですがつんく様。日本中から最強の猛者を集めろと言ったのは貴方では…」
「アホ!あいつだけには…あの女だけには手ぇ出したらあかんのや!」
だが、もう遅い。
あの女はすでにトーナメント参加権を手中に収めてしまった。
「今回の大会はおしまいや。もう誰にも止められへん。」
つんくは拳で机を叩き、うなだれた。
娘狩り、始まる。
浜崎あゆみがモームス最大トーナメントに!
一からの出直し、鍛練に鍛練を重ね、市井紗耶香の拳が戻って来た!
観戦に来ていた後藤が思わず唾を飲み込む。
「あの頃の市井ちゃんだ。」
プッチ最強時代の中心を担っていた頃の市井紗耶香。
その拳の破壊力は、正確さと速さを含めた総合力ならば辻にも勝る。
何よりも強烈なのはその拳の連打。
打てば打つほど速度を増し、やがて音速を超す倍音マシーン。
「後藤、今度は決勝で闘ろう!優勝も準優勝もぜんぶプッチだ!」
勝利を掴み、高らかに挙げられた拳を見ていると、それすら簡単なことに思えてくる。
(あんまり男っぽいのは好みじゃないんだよな〜。)
ボコボコに殴られて仰向けに転がりながら、藤本美貴はぼやいた。
「まあいいや、また裏であ〜そぼっと。」
勝者市井紗耶香、決勝の舞台へ
「婆さん、悪いけどこれがあんたの引退試合だ。」
決勝トーナメントの枠、残されたイスはあと一つ。保田圭と吉澤ひとみ。
当主としてプッチを支え、去り行く者。
そしてこれからのプッチを託された者。
この試合には、勝敗以上に重い想いが掛けられていた。
(負けられない負けたくない)
それは両者に通ずる気持ち。
「どうやら、手加減はいらんようじゃの。」
「殺す気で行くぜ。」
舞台場から一番近い場所で、後藤真希が試合の結末を見守る。
(つらい、どちらが勝つにしろ負けるにしろ)
最上部の柱の影で目立たない様に、市井紗耶香も腕を組みながら見下ろしていた。
その胸中にも複雑な物が流れる。
それぞれの想いを乗せ今、ゴングが鳴る。
ロケットの様な勢いで吉澤が突っ込んできた。
小細工もややこしい技も用いない。ありのままの自分を見せ付けるかの様に。
(おぬしらしいわ)
空が円を切る。ならば達人は達人らしい奥義で応える。それが礼儀というもの。
勢いをそのまま吉澤は地面に叩き付けられる。が、すぐに跳ね起きる。
(ダメージはないんか、この化け物)
吉澤のロシアンフックに肩を乗せ、反動でまた吹き飛ばす。
だがまた起き上がって、すぐに攻撃を仕掛けてくる。それの繰り返し。
(強え、一発も当らねえ、やっぱ強えぜ、婆さん)
ありとあらゆる攻撃を繰り出すも、保田圭には届かない。全てを返される。
(ずっと私は憧れていたんだ、あなた達に…)
(婆さん、やっぱりあんたは凄い、もちろんごっちんも凄い、市井さんも凄い)
(憧れていたんです。プッチに。)
(あなたに勝ったら、そろそろ私も誇って良いですか?プッチの吉澤だと)
吉澤ひとみの瞳に涙が浮かんでいた。
「負けじゃ!」
場内に保田圭の声が響いた。
「私の負けじゃ。」
(何言ってんだよ婆さん、私はまだ一発もあんたに与えちゃいない)
全身に滝の様な汗流しながら保田圭は笑った。
「スタミナ切れじゃ。もう指一本も動かせぬわ。次の一撃で私は死んでいた」
「なっ…!」
「少しは老人を労われい。」
実に30分という長時間、保田圭は吉澤ひとみという化け物の攻撃を受けきったのだ。
「おつかれさん。」
何時の間にか舞台場に上がってきた市井紗耶香と後藤真希が、保田圭の体を支える。
二人に肩を抱えられながら、保田圭は退場していった。
「後は任せたぞ、吉澤。」
それが、格闘史にいくつもの伝説を残した達人保田圭、現役最期の姿であった。
「ありがとうございましたっ!!」
去り行く先輩に、吉澤は深々と頭を下げお礼を言った。確固たる決意の現われである。
決勝トーナメント進出者最期の一人 吉澤ひとみ
前大会優勝者 紺野あさ美
前大会準優勝者 後藤真希
桃色の死神 松浦亜弥
帰ってきた伝説 安倍なつみ
小さな天才 加護亜依
TAPの長 石川梨華
孤高の女 ソニン
全ての称号を捨てた女 飯田圭織
出番を待ち続けた女 鈴木あみ
栄光なき王者 矢口真里
格闘技界の新エース 高橋愛
笑顔に力を秘めた少女 辻希美
完全必殺 福田明日香
触れてはいけない女 浜崎あゆみ
倍音マシーン 市井紗耶香
プッチを託された娘 吉澤ひとみ
710 :
NANA:02/08/27 23:13 ID:gJsAF0b5
おいおい、浜ちゃんまで出てきちゃったYO
711 :
保全:02/08/29 07:57 ID:SGKAZTKX
そういえば昔浜崎もつんくの曲を歌ったことがあったな。
山田花子は出ないのか・・・
714 :
トーナメント:02/09/01 09:45 ID:d/fA3UIM
紺野 ○┓ ┏○ 後藤
┣○┓ ┏○┫
高橋 ○┛ ┃ ┃ ┗○ ソニン
┣○┓ ┏○┫
飯田 ○┓ ┃ ┃ ┃ ┃ ┏○ 吉澤
┣○┛ ┃ ┃ ┗○┫
安倍 ○┛ ┃ ┃ ┗○ 石川
┣○━○┫
市井 ○┓ ┃ ┃ ┏○ 福田
┣○┓ ┃ ┃ ┏○┫
矢口 ○┛ ┃ ┃ ┃ ┃ ┗○ 辻
┣○┛ ┗○┫
浜崎 ○┓ ┃ ┃ ┏○ 加護
┣○┛ ┗○┫
松浦 ○┛ ┗○ 鈴木
紺野−高橋
初戦から目の離せない組み合わせである
昨年初出場ながら初優勝を飾ったシンデレラガール
後藤真希なき後の格闘技界のエースとなるべき器の娘
今、最も注目される二人の激突
飯田−安倍
第二試合はうって変わってベテラン同士の対決
モームス最大トーナメントはこの二人から始まったといっても過言ではない
長きに渡り格闘技界を支え、現在も走り続ける二人
ただで終るはずがない
市井−矢口
第二世代と呼ばれる娘達がいた
光の当らない場所で辛く苦しい時代を必死で戦いぬいてきた娘達
「約束だ。どっちでもいい、勝った方が優勝しよう」
引退してゆく保田圭に捧げる、最後の栄光を
浜崎−松浦
誰もが、その女との対戦を避けたがっていた
たった一人だけだ。あの怪物との対戦を望んだのは…
「あややはね、いちばん強い奴と闘りたいの」
史上最悪のバトル、始まる
後藤−ソニン
私は何の為に走っているの?私は何の為に闘い続けているの?
引退か再起か?これはきっと私の人生にとって最大の分かれ道
もう一歩足を踏み出そう。その先に何かが見えるかもしれない
ソニン最後のチャンス、後藤真希との勝負。
吉澤−石川
プッチのトップとTAPのトップが激突!
誰もが夢に見、けして実現することのなかった組み合わせ
吉澤ひとみと石川梨華
どっちが強いんだ!?
福田−辻
「ひとつ勝てば、加護に昨年の借りが返せる。」
「いっこかつろあいぼんなのれす。」
福田という伝説がいた。辻という伝説がいた。
決して交わることのない組み合わせ、二つの伝説が今交わる。
加護−鈴木
(ハイチュー女のせいで俺が目立ってねえじゃねえか、コノヤロー!)
(なんやこのおばさん?プルプル震えて、えらい気持ち悪いわぁ)
違う意味で期待に応える娘二人
一回戦最後の試合はアミーゴとアイボンだ!
720 :
修正ぽ:02/09/01 11:51 ID:Y0Dyn0GM
紺野 ○┓ ┏○ 後藤
┣○┓ ┏○┫
高橋 ○┛ ┃ ┃ ┗○ ソニン
┣○┓ ┏○┫
飯田 ○┓ ┃ ┃ ┃ ┃ ┏○ 吉澤
┣○┛ ┃ ┃ ┗○┫
安倍 ○┛ ┃ ┃ ┗○ 石川
┣○━○┫
市井 ○┓ ┃ ┃ ┏○ 福田
┣○┓ ┃ ┃ ┏○┫
矢口 ○┛ ┃ ┃ ┃ ┃ ┗○ 辻
┣○┛ ┗○┫
浜崎 ○┓ ┃ ┃ ┏○ 加護
┣○┛ ┗○┫
松浦 ○┛ ┗○ 鈴木
キタキタキタキタ━━━━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━━━!!!!
すんげぇ×4 組み合わせ!超期待sage!!
722 :
名無し娘:02/09/04 02:44 ID:Y5bLz4nh
まさか続編がはじまると思ってなくてうれしい!しかも同時進行だし。
吉澤のプッチへの憧れのとこで感動して涙してしまいました。。
ほんと辻豆さんサイコウっ
保全。
辻豆さん最高ーーーー!!
期待してます。
724 :
辻っ子のお豆さん:02/09/05 13:12 ID:+RJA6GEY
最後まで書こうと思うと
このスレだけじゃ終らなそう
うわ、続編やってたのか・・・ 全く知らなかった、不覚・・・
726 :
hiro:02/09/07 10:26 ID:phGgnQyf
おもしろそう。結果がわかりそうなの、後藤ーソニンぐらいだし。
727 :
名無し募集中。。。:02/09/07 11:07 ID:TQs0B4fl
宇多田ヒキーに勝てる者はいない・・・
728 :
:02/09/07 21:29 ID:j4Su3ikf
早く書いてほしい
729 :
保全:02/09/09 02:18 ID:IvxGX9CZ
保全
「まさかこうして貴方と闘うことになるとは夢にも思わなかったね、愛ちゃん」
「夢にも?思っていたよ毎晩、嫌っていうくらいにね」
「え?」
「てっぺんにいるあんたは私のことなんか眼中になかったかもしれない。でも私は違う」
「…愛ちゃん?」
「紺野あさ美をマットに沈める夢を、私は毎晩見ていてた」
「…」
「その為に私はこの一年、死ぬような思いでトレーニングを積んできた」
目の前に立つ友と思っていた人物から、鋭い殺気が放たれている。
そしてその殺気は自分に向けられている。違う、もう友ではないんだ。紺野は悟った。
この小さなリングの上で二人きりになった時から…
いや、地上最強という同じ夢を志した時から…
紺野と高橋が友になるということは、決して叶わぬことであったのだと。
「あんたを倒すのは他の誰でもない、私だ」
「…負けない」
モームス最大トーナメント、開幕戦のはじまり。
紺野の空手と高橋の拳法が真っ向からぶつかる。
王者を相手にして高橋は一歩も引かない、むしろ手数では紺野を上回っている。
打撃と打撃の応酬の中、徐々に後退しているのはなんと紺野の方であった。
「驚いたな、高橋の方が押しとるぞ」
リングサイドで観戦する二人組、保田圭と吉澤ひとみであった。
昨年の大会で、高橋紺野と対戦した二人である。二人の強さはよく知っている。
「だがまだ紺野はアレを出しちゃいないぜ」
吉澤が言うアレとは一撃必殺、神の拳のことである。昨年、吉澤もそれで敗れたのだ。
「じゃが高橋とて、ホッピーもモールスも出しておらぬぞ」
切り札を隠しているのは紺野だけではない、高橋も同じだ。
「どっちが来てもおかしくねえってことか」
吉澤の体が疼いている。二人の熱いファイトに闘争本能が刺激されているのだ。
(さて、先に切り札を出すのはどちらになるか…?)
きれいな衝撃音が会場をコダマした。
高橋のハイキックが紺野の頭部にヒットしたのだ。
たまらず膝を落とす紺野、チャンスとばかりに一気に攻め立てる高橋。会場が一気に沸く。
高橋の連続攻撃が次々と打ち込まれて行く、紺野の意識が徐々に薄れてゆく。
決まるか!?王者が消えるか!?
掌にチクリと痛みが走った。控え室で寝息を立てていた後藤真希が体を起こす。
忘れもしない、一年前に起きたあの奇跡。あのときの感触はまだその手の中に残っている。
(……紺野)
会場最上部、柱の影の中で微かな笑みを浮かべる娘がいた。
「それでいい…」
リングサイドの保田に吉澤に緊張が走る。アレを直に受けた者全員がそれを感じた。
意識を失った紺野の構えが、その構えになっているのだ。
数多き格闘士の中でただ一人、紺野のみが辿り着きし境地、神の拳。
高橋が呼び起こしたのだ、王者紺野の真骨頂を。
神の拳が発動する!
待っていた。高橋はこれを待っていた。
昨年の決勝戦、後藤真希はこの神の拳を受け止めている。
(私が後藤さんを越える為には、これを、これを止めなければいけない)
高橋は両手を胸の前に突き出す。
二人の間に閃光が走った。
「あれ、ここは…」
小さな病室のベットの上で高橋愛は目を覚ました。
「気が付いたか。」
見るとベットの横に保田圭が腰を下ろしていた。同時に腹部に強い痛みが走った。
(そうか、もう…)
高橋は悟った。自分の闘いはすでに幕が下りていることを。
(届かなかったか、あさ美)
「なぜホッピーもモールスも使わなんだ。あれを使えば結果は変わっていたやもしれぬ。」
「安倍さんも後藤さんも、どんな相手にでも真っ正面から闘っています。」
高橋は静かに目を閉じ答えた。
「私、決めたんです。もう小細工は使わないって。本当の実力だけで勝負するって。」
エースに小細工は無用。
「なるほど。」
保田は思った。この娘は先を見ている。きっともっと大きくなって帰って来ると。
「どうやらわしがいなくなっても安泰の様じゃな。ふぉっふぉっふぉ」
高橋愛の闘いはまだまだこれからである。
勝者 紺野あさ美
キテタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!
高橋愛を破り二回戦へと駒を進めた紺野あさ美。
「なさけねえな」
控え室へと続く廊下にて、そんな彼女に声を掛けた人物がいた。吉澤ひとみだ。
「どういう意味ですか、吉澤さん。」
少しムッとして聞き返す。微笑を浮かべた吉澤は壁にもたれながら答える。
「おせじにもチャンピオンの闘いとは言えねえってことだ。」
「それは、愛ちゃんが強かったから…」
「だな。試合内容は完全に高橋の方が上だった。たまたま最後の一発が決まっただけ」
自分でも感じていたことをそのまま言われ、紺野は耳が痛かった。
「そんなんじゃ、この先に当る人には通用しねえぜ」
この先…今まさに会場では第二試合が始まろうとしている。あの二人の試合だ。
「去年のお前、少なくとも私と闘ったときのお前は…もっと強かった。」
そう言い残し吉澤は通り過ぎていった。
(もっと強かった?チャンピオンになって私、弱くなってる…?)
一人残された紺野あさ美は考え込むように立ち尽くしていた。
(やれやれ、私もおせっかいだな。自分の方がやばいってのに…)
吉澤は頭を掻いた。対戦相手のことを考えると憂鬱になってくる。
だが、それはもう避けることのできない決定事項なのだ。運命の刻は近づいている。
更新キタ-wwヘ√レvv〜(゚∀゚)─wwヘ√レvv〜─ !!!
辻豆さん大変だろうケドがんばってー
ホゼム。
こんこん勝利おめでとー。
738 :
ho:02/09/14 07:04 ID:FA448zV+
zem
739 :
1103:02/09/15 11:02 ID:isssmE6Z
保全
(なっち師匠といいらさんが闘う)
大好きなお姉さん二人の対決を辻希美は未だ遅しと待ち焦がれていた。
辻は違った形で、その二人から闘うことの楽しさを教わっていた。
「どっちも勝てー!」
(無茶言うな)
安倍も飯田も心の中で突っ込んだ。
「一回戦第二試合!飯田圭織vs安倍なつみ!」
一気に歓声が湧き起こる。この組み合わせにはある因縁があった。
「ひさしぶりだね、圭織」
「うん、ひさしぶりだ」
このカード、実は第一回モームス最大トーナメント決勝の組み合わせなのである。
その時の勝者は安倍なつみ、なっち伝説の幕開けとなった。
「TAPを作ったのも、そこから抜けたのも、全部この為だったのかも…」
「何の為?」
「あんたに借りを返す為」
圭織は笑みを浮かべた。なっちも笑った。さぁ始めよう。
ゴングと同時に飯田は瞬時に間合いを詰めた。予備動作もほとんどない突然の攻撃。
これはあの時と同じ。去年の第一試合、飯田が辻に対して仕掛けた攻撃と同じ。
飯田の拳が目の前にある、安倍の顔面目掛けて正拳突きが放たれる。
(反応ができていない、決まった。)
その刹那、安倍の姿がカゲロウの様に揺れた。拳が安倍の顔をすり抜けた。
熱い物を腹部に感じ、飯田は前のめりに倒された。
(いきなりかよ)
目の前に修羅がいた。もう誰にも止められない地上最強の修羅。
右、右、左、下、右、上、下、左、右。
ありとあらゆる方向から飛んでくる打撃、避けるどころか反応すらできない。
(こんなにも、こんなにもあるのか)
勝者と敗者の差。
5年前、二人は確かに同じスタートラインに立っていた。だがどうだ、この力の差は。
(頂点に立った者とそうでない者には、これだけの差があるものなのか!?)
(いいや、まだだ。圭織はまだ咲かせるんだ!)
薄れゆく意識の中、飯田の拳に最後の力が込められる。
(タンポポの様に強く)
飯田の拳が安倍の頬を強く打ちぬいた。
安倍の口元から真っ赤な血が滴り落ちる。それを腕で拭う。
「いいパンチだ」
安倍は言った。すでに意識を無くし立ち尽くす対戦相手に。
飯田圭織は倒れなかった。踏まれても踏まれても最後まで咲き続けた。
「勝者!!安倍なつみーーーーー!!!!」
33秒KO。圧倒的だった。少しの容赦もなく、あまりに強すぎた。
勝利の喜びを微塵も感じさせることなく、なっちは退場して行く。修羅の如く。
最前席でその後ろ姿を不満気に見詰める少女がいた。
(こんなの、のののすきななっちさんらない!)
これで二回戦第一試合のカードは紺野あさ美vs安倍なつみと決定した。
「強えな、カオリだから一発当てられた様なもんだ。」
入場ゲートにて今の試合の感想を述べる娘がいた。
全くといって隙が見当たらない。
どうやらなっちは本気で取り戻しに来ているみたいだ。地上最強の四文字。
だけどそれは自分だって同じ。どんなに強い相手でも、負けてやる気なんてない。
「おーし、行くぞー!」
グラップラー真里出陣。
743 :
:02/09/16 17:13 ID:x5qA88Py
sage
更新キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
なっちえらい変わり様だな〜。次も期待!
745 :
:02/09/17 10:48 ID:2aFFJ549
前から思っていたけど、続編が始まってから少し残念なところがあるっす。
戦闘の描写が省略傾向になってるのはやっぱり・・・
大変難しいとは思いますが、できたらもう少し戦闘シーンも丁寧に書いてくださると読みがいがあると思います。
生意気言ってすみません。
残りレス数の問題がありまして・・・
>>745 辻豆氏は現在「スレ立てすぎです」状態なんだと思う・・・
君が次スレを立てる事を約束すれば全ては解決するだろうね!
保田圭が見守る中、その闘いは幕を開けた。
リーチは市井に分がある。模範の様なきれいなワンツーを打ち込む。
だが矢口にとって、自分よりリーチのある相手との闘いなど、日常茶飯事のこと。
彼女にはその差を補って余りある程の武器があった。
格闘センス。
矢口は器用に市井のコンビネーションを捌いてみせた。
(甘いぜ紗耶香、そんなんじゃおいらに通用しねえよ)
クイクイッと指を動かして、矢口は誘っている。最高の市井紗耶香を。
(まったく真里には敵わないね)
スウッと大きく息を吐く、と同時に刺すようなするどい闘気が発する。
一部では、安倍後藤をも凌駕すると言われた全盛期の市井紗耶香が目の前に。
(たまんないねえ)
手に汗が握る。こういう相手とガチでやりたかったんだ。
昨年は不完全燃焼で終った。矢口の闘争本能はもう抑え切れない所にまできている。
市井紗耶香が前へ。
矢口真里が前へ。
一歩も引かない者同士、真っ向勝負だ。
市井が打てば矢口が打つ。矢口が打てば市井が打つ。本当に単純な拳と拳の殴り合い。
「やっぱりあいつは馬鹿じゃ。紗耶香相手に殴り合いを挑むとは…」
保田は呆れてそのぶつかり合いを見上げた。
鉄拳と称される市井のパンチ、その破壊力は半端ではない。
さらにその連打は打てば打つほど速度を増し、やがて音速を超す倍音マシーン。
そんな相手にあえて殴り合いを挑むのが、この矢口真里という娘。
だが徐々に、矢口の手数が市井の手数に追いつかなくなる。
つぼに入った市井紗耶香を止めることは至極困難、矢口が押されて行く。
一方的になってきた。矢口は防御に精一杯で攻撃にまで手が回らなくなった。
それでも市井の連打は速度を増してゆく。すでに防御すら追いつかない。
矢口の顔が血に染まってきた。おびただしい出血。これまでかと思われた。
だがそれは違う、ここからがグラップラー真里の本領であった。
「え!?」
矢口が飛んだ。
(頭付き!)
矢口の額が顎にヒット、思わず市井の動きが止まる。
その一瞬、矢口の掌が市井の胸に移動した。
SEXYビーム!!
中国武術に伝わる軽気孔発徑、それを彼女オリジナルに改良し名付けた技がこれだ。
マトモに受けた市井が大きく弾き飛ばされる。
「ゲホッゲホッ」
(忘れてた、闘れば闘る程強くなる。それがグラップラー真里だったね)
受けた部分が熱くなって、今にも意識がなくなりそうだ。
でもまだ終われない。見せるんだ。圭ちゃんに最高の試合を見せるんだ。
そんな必死で立ち上がろうとする市井を、矢口は一切の手加減抜きで叩き据える。
蹴り上げる。殴る。また蹴り込む。殴る。その速度が徐々に増してゆく。
崩れ落ちる市井の胸に、本日二度目の気孔が込められる。
(あと、任せたぞ)
パァァァァンという音を立てて、市井紗耶香は弾き飛ばされた。もう動かない。
『勝者!!矢口真里ぃぃぃぃぃ!!!!』
グラップラー真里の完全勝利だ。
任された。もう保田も、市井も消えた。たった一人残された矢口。
第二世代最強を知らしめる為の、彼女一人の闘いは今始まったのだ。
闘技場を後にした矢口が廊下の角を曲がったとき、待っていた娘がいた。
「おめでとうございますぅ〜」
松浦亜弥。闘いを終えたばかりの矢口の血が再燃する。
「松浦ぁ!てめえ何しにきた?」
「勝利のお祝いですよ〜。怖いなぁ〜ヤグチさんはぁ」
矢口がこれほど怒りを露わにするのも無理はない。
昨年はこの松浦のせいで、まともな闘いも、何もできずに終ったのだから。
「今度はおいらがお前をぶっ殺す番だかんな。覚えとけよ!」
「クスクス、でっきるかな〜?」
それでも松浦は余裕の笑みを浮かべている。
これから対戦する相手のことを知っているのか?あの怪物を…
「まあ待っていて下さい。今年はちゃんと普通に殺してあげますから。」
そう言うと松浦は歩き出した。
前には闘技場へと続く門、それは地獄への入り口。
こいつをくぐったらもう後へは引き返せない。死出の旅時。
「望む所」
松浦亜弥は迷うことなくその門を抜けた。
史上最悪のバトルが始まる。
バービィーVSサイボーグ
ワクワク!
松浦と浜崎かぁ
どっちにも負けてほしくないなぁ
あと、紺野はこのまま神の拳だけで進んでいくの?
そろそろ拳の三倍の威力を持つ神の脚とかほしいな
500超えたんで上げときますね
754 :
名無し:02/09/22 23:31 ID:1ognLRgh
保全
保全。
保全
闘技場の中央にこの二人が並び立っている。
浜崎あゆみと松浦亜弥。
この、あまりに危険過ぎる組み合わせが実現してしまったのだ。
「子供はとっとと帰って、オネンネしたら〜キャハハ」
「あら、何か言いました?おばさん」
ピクン。あゆの表情に変化が。目を細めてあややを見下している。
「ちょっと〜このガキ感じ悪くない〜。殺っちゃっていい?」
「うっさいての、ババア!」
「もう駄目、殺す」
「やってみる?」
挑発合戦は終り、両者が開始位置へと戻って行く。あとはゴングを待つばかり…
突然、あゆの体が大きく跳ね飛んだ。いや飛ばされた。
当然あゆは何が起きたのか理解できていない。慌てて前に振り返る。
目の前に靴底があった。思いっきり地面へと踏み落とされる。
まだゴングは鳴っていない。不意打ち。あややの不意打ちだ。あの超能力が出た!
地べたに打ち付けられたあゆの顔が泥にまみれる。
あややはお構いなしにその顔を何度も何度も踏みつける。
感情を表に出さず、全くの無表情で、あややは攻撃を止めようとしない。
『まだ合図はしてない!反則!!松浦の反則負けええええええ!!!』
場内に大音量のアナウンスが流れる。
数人の審判員達が闘技場に駆け下り、松浦を止めに入った。
あっという間の出来事に、その場に居合わせた誰もが呆気に取られる。
松浦だけが、当たり前とでも言いた気に憮然とした表情を続けていた。
「浜崎様、試合は終わりです。あなたの勝利です。大丈夫ですか?」
審判員の一人が、地面にうずくまるあゆに声を掛ける。
「うぎゃああああああ!!」
野太い悲鳴が巻き起こる。あゆに近づいた審判員の体が切り刻まれていたのだ。
「これでおわると思う?あゆが?」
審判員の体を切裂いたあゆのネイルから、血が滴り落ちる。
泥と血であゆの顔は汚れきっていた。口元は笑みだが、眼は笑っていない。
「もう殺さなきゃ終んないよ。このガキ殺すしかないっしょ」
眼を血走らせて、あゆが近寄って来る。
「お止め下さい浜崎様!貴方の勝ちなんですから!このまま…」
「邪魔」
止めようと近寄って来る審判達を、あゆは問答無用で切裂いてゆく。
反則である。審判に危害を加えること等、当然の違反行為である。
暴獣あゆの手により、闘技場内は地獄絵図と化していた。
止めに入った審判達が次々と血の海へ倒されて行くのである。
「だから言ったんや、あの女に関わったらあかんと…」
VIP観覧席で、つんくは頭を抱えていた。
「もうしまいや、誰にも止められへん。この大会はしまいや」
結局、浜崎は全ての審判を血の海に沈めてしまった。
それでも止まらない。その眼はずっとあややを見たままである。
松浦も浜崎を睨んでいた。二人共、試合が終了した気なんてさらさらない。
試合じゃない、殺し合いだ。もうこの二人を止める者は誰もいない。
あゆが牙を剥いた。ダメージをまるで感じさせない洗練された動き。
「H」
独立・七月・花火。三つの必殺技を同時に放つという信じ難い身体能力。
だがあゆにとっては別段特別な事ではない。この女は底が見えない。
いかにあややと言えど、一つの技を受けきるのが精一杯。
残りの二つの技には対応しようがない。松浦の体が後方へ弾き飛ばされる。
ここにきて、大きすぎる器の差が浮き彫りになってきた。
松浦亜弥では浜崎あゆみに対抗する術がもはや無い。
「あんたが10万クラスの力だとしたら、あゆは100万なの」
更新キター!
あやや死ぬるか?死ぬるか?
あゆ女優デビューキター!!
てか、昔売れないタレントやってたんだよね。
再びデビューか。
>>761 今のへんなしゃべり方じゃなくて結構いけてたよ>演技
そうだねーアイドル系でいうと桜っ子タイプってかんじ
>>762 アニメ龍虎の演技がいけてたとは思えないですとか言ってみる(w
当時、未成年見てて
「あの河合我聞の彼女かわいいなー」
て言ってた
>>765 あれはよかったよね
モーニング娘。の誰よりも上手かったと思うよ
可能性としては辻なら対抗できる素材になれるかも
ぼやっとしてたらスレ総数が600超えてる!
保全するよ。
保全
保全
浜崎は多彩な技の数々で、息付く暇なく松浦を攻め立ててゆく。
もう何発、何十発受けた?百万クラスの技をどれだけ受けた?
ケタ違いすぎる浜崎あゆみという女の実力。あの松浦亜弥が、まるで手出しできない。
それでもまだあややの眼は死んでいない。ボロボロにながらそれでも引かない。
「まだレベルの違い、わかんないの?物分かりの悪いガキね〜」
「ハアハア…負けない。死んでも負けない…」
「じゃあ死ね」
浜崎あゆみ最大の奥義「A」が放たれる。四方向からの同時攻撃。
あややはそれを避けようとはしなかった。狙っていたのはたった一つ。
三方向からの打撃をまともに受ける。だが最後の力を振り絞り浜崎の腕を一本掴み取った。
「道連れ♪」
真っ紅に染まったあややの顔に最期の笑み。このとき浜崎は生まれて初めて恐怖を知る。
あゆの右腕が逆方向に折れた。会場に甲高い悲鳴が鳴り響く。
その声を確認したあややは、そのまま静かに目を閉じた。蝋燭の灯が落ちる。
最期の最期まで引かない。
あややの美学。
桃色の死神、松浦亜弥散る。生き残ったのは片腕を奪い去られた浜崎あゆみであった。
すぐさま担架にて医務室へ運ばれて行く松浦亜弥。
だが、もう遅い。誰の目から見ても手後れ。
あの浜崎の殺人メニューをどれだけもらったと思う。
その鼓動は永遠に戻らない。
「ウソだろ。どうせいつもみたいに演技でしたって起きるんだろ。なぁ起きろよ!」
松浦亜弥の盟友、藤本美貴が取り乱しながら叫ぶ。
それでも返事は返ってこない。死んだんだ。あややは殺されたんだ。
試合中の死は事故として扱われる。浜崎が直接その罪を問われることはない。
(まあ待っていて下さい。今年はちゃんと普通に殺してあげますから。)
矢口の脳裏には、最期に松浦と交わした会話が浮かんでいた。
「おいらを殺すんじゃなかったのかよ、勝手に死ぬんじゃねえよ」
矢口真里は泣いていた。大嫌いで、死ぬ程ムカツいてた奴の死を嘆いた。
(許せない、あいつ、絶対に許さない!浜崎あゆみ!)
藤本美貴は見た。
怒りに打ち震える矢口の背に、ミニモちゃんの顔が浮かび上がったこと。
二回戦第二試合は矢口真里vs浜崎あゆみに決まった。
一回戦も半分の試合が終った。
全ての試合が熱く、全ての試合が名勝負であった。
そして一回戦後半四試合が始まる。衝撃的な幕開けと共に…
ソニンが意識を取り戻したとき、目の前には相手の靴があった。
(何これ?倒れている?私が?どうして?)
記憶が抜けていた。ソニンは試合開始のゴングすら覚えていなかった。
(冗談じゃないわよ、ここに来る為に私がどれだけの努力をしたと思う)
(立たなきゃ、終ってたまるもんか、立つんだ!)
だが足腰に力が入らない。どれだけ力を込めても起き上がることができない。
泣き出したくなる気持ちを抑え、ソニンは上を見上げた。
見下ろしていた。後藤真希という女が自分を見下ろしていた。
どれほどの屈辱。何もできない自分にソニンはいつしか涙していた。
それでも立ち上がることができなかった。
「勝者!!!後藤真希いいいぃぃぃぃ!!!」
試合開始一秒と経たぬ間のダウン、そしてそれでおしまい。
ソニンの闘いは脆くも終幕を迎える。
強すぎる女はここにもいた。後藤真希、二回戦進出。
「やっぱ、ごっちんは凄えや」
吉澤ひとみは控え室のモニターでその秒殺劇を観戦していた。そして次は自分の出番。
「ファイト!」
「必勝っすよ吉澤先輩!」
新門下生のアヤカと小川が吉澤の背中を押す。嫌が追うにも気合が入る。
(こりゃあ何がなんでも負けられなんないなぁ)
新プッチの旗の下、吉澤ひとみ出陣す!
「ほら、梨華ちゃん。リラックスリラックス」
柴田あゆみに肩を揉まれ、石川の緊張が少しだけほぐれた。
「TAPの名に賭けて、プッチにだけは絶対負けねえで下さいよ」
しかし新垣の激により、再びプレッシャーが石川を襲う。
(もし負けたら、飯田さんや矢口さんに合わす顔がないよ〜)
時間が来た。もう闘技場へ向かわなければいけない。
扉を開けると、廊下には紺野が待っていた。現役王者の紺野あさ美だ。
「吉澤さんは強いです。でも、石川さんも強いです。完璧です。」
不器用な紺野なりの励まし。それが石川の口元に笑みが浮かばせる。緊張が取れた。
新TAPは負けない。石川梨華、いざ決戦の舞台へ!
更新キテタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
保全。。。
あやや保全しま〜す♪
ノノノ△ヽ
从‘ 。‘从
ノ  ̄) ̄)
( )ノ~)ノ
) ノ
V
保全します。
779 :
名無しな:02/10/06 16:12 ID:GWt7PmP/
保全せせ
「めずらしいね、あんたがわざわざ他人の試合を見に来るなんてさ」
「んあ〜そんなことないよー。いちーちゃんのいじわる」
「さすがにこの試合だけは見逃せぬか。それはあちらさんも同じの様じゃ」
右サイドに陣取るプッチの面々、市井紗耶香、後藤真希、保田圭。
そして左サイドに陣取るTAP会館の顔ぶれ、矢口真里、加護亜依、飯田圭織。
「あーもう、おいらの方が緊張してきた。じっとしてらんねー!」
「矢口さん乱入したらあかんで、大事な試合なんやから」
「二人共おちけつ。ほら始まるぞ。」
(あんたがおちつけ)(飯田さんが一番緊張しとる)
矢口と加護が心の中でつっこむ中、いよいよ幕は上がる。
『受け継がれる伝説の称号、新プッチリーダー、吉澤ひとみ!!』
『蒲公英の未来は彼女の肩に託された、TAP新館長、石川梨華!!』
大歓声の中、吉澤ひとみと石川梨華は同時に入場してきた。
湧き起こるひとみコールとチャーミーコール。
応援歌である「ベビ恋」と「恋しちゃ」の大合唱。
壮観な景色、会場が真っ二つに別れた。
さぁ、プッチ対TAP。吉澤ひとみ対石川梨華の始まりだ。
二人は中央に歩み寄り握手を組み交わす。そして誰にも聞こえない声でささやきあった。
「手加減したら怒るよ、よっすぃー」
「じゃあしよっかな、梨華ちゃん怒らせたいから」
「馬鹿、もう怒った、許さないからね」
「ニヒヒ、怖い怖い」
「エヘヘ〜」
「勝った方がごっちんとだ」
「うん、恨みっこなしね」
「当然」
手と手が離れる、この瞬間から二人はもう親友でもなんでもない。
倒さなければいけない敵と敵だ。
吉澤ひとみも石川梨華も、後藤真希を倒すことがずっと追い続けてきた夢だった。
そして後藤が引退を宣言したこの大会が、そのラストチャンスなのである。
そのチャンスを与えられるのはどちらか一人のみ。
「はじめぃ!!」
開始の合図、ゴングが鳴る。
後藤真希の前に立つのはどっちだ!?
最初の攻防、積極的に前へ出るのは吉澤ひとみ。ジャブを中心に果敢に攻めたてる。
石川はそれを冷静に見極める。カウンターを狙っているのだ。
この状況がしばらく続くのかと思われたが、吉澤がそれを止めた。
腕をブランとさせて笑う。ノーガード。誘っている、明らかに誘っている。
その誘いに逃げる訳にはいかない。当然、石川は乗る。
光速のワンツーブローを吉澤のテンプルに打ち込む。
だが吉澤は倒れない、それどころかさらに前へと踏み込んで行く。
打ち込んだ拳ごと石川は後ろへと押され、体勢が崩される。そこに大鎌が振り下りる。
ジャイアントロシアンフック。物凄い打撃音がガードの上から石川を叩き潰す。
『ダウン!石川ダウーン!!』
驚異的タフネスとパワーを兼ね備える吉澤だからできる戦術。肉を切らせて肉を絶つ!
流れを掴んだのは完全に吉澤であった。息も付かせず吉澤はさらに石川に迫る。
試合は決まっていただろう。一年前の石川梨華だったならば…
「―――――?」
倒れ込んでいたはずの石川が、突然吉澤の視界から消えた。
この一年で石川は「打たれ弱さ」という弱点を克服してきた。
あの矢口等を相手に散々突っ込まれ、「打たれ強い石川」を作り上げてきたのだ。
吉澤の懐に石川はいた。気が付いた時にはもう遅い。超スピード。
チャーミー流拳法第一奥義「ハッピー」発動
みぞおちに完全に入った。吉澤の体が宙を舞う。その勢いのままフェンスに激突する。
『ダウン!吉澤ダウーン!!』
この圧倒的スピードと多彩な技が石川の持ち味である。
だが砂煙の中、吉澤は普通にムクリと立ち上がった。平然とした表情。
逆に顔をしかめていたのは石川だった。攻撃した手が痺れている。
(重い…予想以上に…)
この一年で成長したのは石川だけではない。吉澤は横に成長していた(泣)
共にダウン一つずつ。再び向かい合う二人、吉澤のパンチとキックの応酬。
これだけ動いているのに、吉澤はまだ息も切らしていない。
生まれ持った驚異的体力と身体能力。石川はそれを自慢のスピードとテクニックで躱す。
(くそっ、追いつかない)
だが平然とした顔の裏で吉澤も焦っていた。動きのキレで完全に負けているからだ。
まともに当ったのは最初の一発だけ、それも身を犠牲にして放ったもの。
石川のことだ。もうあんな挑発には乗ってこないだろう。
(どうすれば…どうすれば?)
「――!」
考え事をしていたせいか、再び石川を見失ってしまった。
慌てて辺りを見渡す。そのとき、後ろから今まで以上の闘気を感じる。
(しまった!)
恐怖のチャーミー流拳法最終奥義ふたたび。
「はぁーぼいんっぼいんっぼいんっ!!」
背中に後頭部に、打ち込まれる何十発という猛チャージ。
いかに吉澤といえどこれには耐え切れない。なんとか振り返って回避したい。
だができない。石川の乱舞が動く自由を与えてくれない。
これだけは、これだけはもらってはいけなかった。しかも後ろをとられるとは…
「りっかでっす!りっかっですう!うっひょー!うっひょー!」
全身に渡るダメージ、吉澤の意識は徐々に遠のいてゆく。もう駄目か…
吉澤は倒れる。先程のダウンとは明らかに異なる。立ち上がれない倒れ方。
その途中、視線の先に観客席が見えた。あの三人がいた。
(私が負けるってことは、プッチが負けるってこと?)
(プッチが負けるってことは、あの三人が負けるってこと?)
(かっこわりーひとみ、こんなんで終ったらかっこ悪すぎる!)
ダンッ!足を地面に打ち付けふんばった。吉澤ひとみの眼が変わった。
(思い出した。本物の、かっけーよっすぃー、てやつ)
ゾクッ。石川の背筋に冷たいものが走った。獰猛な肉食獣に睨まれた感覚。
昨年、紺野あさ美が解き放った鎖を、今石川梨華も断ち切ったのだ。
吉澤がこちらを見た。それはもう石川の知る吉澤の眼ではなかった。
破壊力、技のキレ、スピード、全てが規格外。人間の領域の限界レベル。
(これが、これがよっすぃー!?)
石川は倒された。強すぎた。立ち上がっても倒された。理解を超えた強さだった。
(もう力が入らない。)
(私じゃどうあがいても勝てっこないよ)
(ギブアップて言おう。負けましたって言おう。そうすれば楽になるよね)
ドスン。猛獣のとどめの一撃が石川の胸を打ちぬいた。為す術なく崩れ落ちる。
たった一本残された蒲公英の、最後のハナビラが散った…?
「立てっ!」
その声はどこから聞こえた。
飯田が振り返る。矢口が振り返る。加護も振り返る。石川の眼にも写った。
その声の主はボロボロの体で立っていた。飯田がその名を呼ぶ。
「彩…」
そこに現れたのは絶対安静のはず、「早咲きの蒲公英」石黒彩であった。
「最後まで咲き続ける。それがTAPだろ」
気が付くと、観客席は黄色いライトで包まれていた。まるで花畑の様に…。
「タンポポがいっぱい」
TAPの娘達の眼に、涙が零れる。
トクン…。石川の心臓にそれまでとは異なる鼓動が芽生えた。
786 :
1103:02/10/08 18:36 ID:4lJEw3re
どっちだーー。
この展開、先が見えたな
↑ ダブルノックアウトですか??
ついに出るかパチョレック石川
ごまっとうの予感…
出るか禁断の最終無差別殺人業 石川の歌
793 :
1103 :02/10/15 17:18 ID:Fsdz8EHK
どっちだーー。
フワッ。浮き上がるように起き上がる石川梨華。それを待ち受ける吉澤ひとみ。
人知を超える野獣と化した吉澤に、勝るとも劣らない闘気を発する石川。
もはや両者に理性は残されていない。あるのは闘争本能のみ。
「ついに壁を越えたか、石川…」
飯田が呟く。自らの跡目を継ぐ娘の眩しい姿をその眼に焼き付け。
市井後藤保田はあえて声を掛けない。言わずとも信じているから、吉澤の強さ。
もうプッチ対TAPじゃない
吉澤ひとみ対石川梨華だ!
どちらからともなく前に出る二人。交差する拳と拳。全ての想いを込めた拳と拳。
同時だった。同時に二人は拳を打ち込み、同時に二人はそれを受け、同時に地に落ちた。
会場が静まり返る。倒れたまま二人はピクリとも動かない。審判員が場内へ入る。
後藤真希は静かに目を閉じた。
「両者、ノックダウーーーーーーン!!!」
勝利でもない、敗北でもない。試合終了。
医務室へ運ばれる二人、首を横に振る医師。二人共もうとても闘える体ではない。
今大会、リザーバーは用意していなかった。
では、どうなる二回戦の後藤真希の相手はどうなる?無条件で準決勝か?
物議を残したまま、大会は進む。
『後藤選手の二回戦対戦相手につきましては、一回戦全試合が済み次第発表致します』
ざわつきを残した会場に、そんなアナウンスが流れた。それでも喧燥は止まない。
一人の娘の登場が、そんな会場の空気を一変させた。
「ののたんれ〜す!」
なんとも緊張感のない、トテトテと駆け込むチビッコ戦士。
「やれやれ、またお子様か…」
反対側の入場口からは、痺れを切らした福田明日香が姿を見せる。
『ただいまより、一回戦第七試合 福田明日香vs辻希美を開始します!』
一気にヒートアップする会場、時を越えた未知数の激突。
「しょうぶなのれす。ワクワク」
「悪いが一瞬で終らせる。この進化した紐切りでね」
『はじめぃ!!』
未だ棒立ちの辻に向かい、合図と共に一気に間合いを詰める福田。
音すらない、一瞬で脊髄の神経を切り落とす新化した紐切り。
その福田の指が辻の首元に触れた。辻は反応すらできていない。
(勝負あった)
ぷいん。
福田は一瞬、自分の指を再確認した。何も切れてはいなかった。
(まさか?いや、私のミスだろう。もう一度…)
福田は改めて腕を伸ばす。レベルの違う動きに辻はまた反応もできない。だが…
ぷいん。
また同じだ。辻の首筋に触れた瞬間、福田の指が弾かれた。
(何だ、この感触は?)
「てへてへ、こそばいのれす」
辻は笑いながら、触られた首筋をさすっていた。
我が指に切れぬもの無し。そんな自分の全てを否定された。紐が切れない。
「そんなはずはないっ!」
怒りに身を任せた福田が、何十発という紐切りを連打させる。
ぷいん。ぷいん。ぷいん。
その度にあの音が聞こえる。全てが弾かれる。
「こんろはこっちのばんれす。のののしんひさつわら!」
辻がくるっと後ろを向く。読めない。福田には読み切れなかった。何をする気だ?
次の瞬間、目の前に巨大な桃があった。辻のケツだった。
「ぷいんぷいんぷいん」
まさか真剣勝負で本当にこんな技を使うとは。超絶ヒップアタック。
圧倒的なパワーと見事な尻から繰り出されるこの技をもらって、立ち上がれる者はいない。
福田明日香はふっとばされた。
まともな格闘技の試合ならば、おそらく辻は福田の足元にも及ばないだろう。
だが、こと何でもありに関しては、辻は福田の何倍も上にいた。
『勝負あり!勝者辻希美!!』
「アーイ!」
辻の完勝であった。浜崎や松浦とは違う意味で恐ろしい娘であった。
「常識では奴には勝てないって訳か…」
試合後、眼を覚ました福田はそう洩らしたという。
「だが私は、常識外の娘をあと二人知っている。」
「一人は加護亜依」
福田は息を吐き、続けた。
「そしてもう一人の名は、そう鈴木あみだ」
・・・それにしてもののたんって・・・(加護藁
ヤン・・・あみーごクル━━━(゚∀゚)━━━!!!
800ゲト━━━(゚∀゚)━━━!!!
( ´D`)ノ 保全!
ホゼン
(/ノノハ
(´D`川 < あ、ぷいん ぷいん ぷいん♪
⊂ヽ/⌒ヽ
ん/__ノ_ノ´
保全━━━(゚∀゚)━━━!!!
保全*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!
( `.∀´)<保全するわよ!
モームス最大トーナメント一回戦もいよいよ残り一試合を残すのみとなった。
熱戦が続く中、闘技場の裏ではつんくを始めとした大会運営委員達が頭を抱えていた。
その問題とは「リザーバー不在」である。
先の石川吉澤戦が引き分けとなり、後藤の二回戦の相手が不在となったのだ。
「どないする、もう時間もないで」
「今から募集してみましょうか、我こそはという猛者を飛び入りで」
「相手はあの後藤真希やで。その辺のしょぼい奴が来てつまらん闘いなんか見とうない」
「ですが他に当てはないですし…」
「どうする…?」
いくら言い合っても答えは見つからない。誰もが頭を抱え込んだそのとき。
コンコンコン。
突然のノックに頭を上げる一同。
扉を開けるとそこに、フードで顔を隠した一人の娘が立っていた。
「誰やお前?」
つんくが尋ねると、娘はフードをまくり上げ名乗った。
「あや…うえとあや。」
長かった一回戦、いよいよ最後の二人が登場する。
辻が退場してからずっと、会場は「あいぼんコール」で埋め尽くされていた。
誰もが期待しているのだ。この試合で加護が勝てば、夢の辻加護決戦が実現すること。
「あーあ、こりゃあ完全にヒールだな。」
首を捻りながらあみは苦笑いを浮かべた。
「まあ俺らしいか…」
アミーゴはゆっくりとその敵地へと歩を進めた。
一方、加護の前にはあの娘がいた。
「まけちゃダメれすよ」
「誰に口聞いとんのや、のの」
「ののがいちばんたたかいたいあいてに…れす」
「人の心配する暇あったら自分の心配しとれボケ!次に当るのはこの加護亜依やで」
そう言い放って加護は歩み出す。永遠のライバルの前に立つ為に。
「はじめぃ!」
幕は下ろされた。天才物真似士と未知の闘士のバトル。
加護は、目の前に立つヤン…鈴木あみという女を値踏みした。
あみは空手っぽい構えをとっている。だがどこかに違和感を感じる。
(けっこういいガタイしとんなぁ…どんな技使うんやろ?)
(まあ、どんな技でもうちがもろたるけどな)
と加護が思考を巡らせている中、先手をとったのはあみの方だった。
右の正拳突き。
加護はそれを余裕で躱し、そのまま後ろへ回り込んだ。
(遅っ!)
足を絡めて前のめりに倒す。器用な加護にとっては寝技もお手の物。
(やりたい放題やん、こいつもしかして…)
マウントポジション。加護は完全にあみの上に乗った
下からの反撃は不可能とも言われるこの状況、加護の圧倒的優位。
(もしかして…めっちゃ弱いんとちゃう?)
殴る。殴る。加護は上からあみを殴り続ける。あみにはガードしかできない。
「もうええやろ、ギブアップせいや。こっから反撃できんことくらい分かるやろ」
ところが、あみからの返事は加護の予想とは逆のものだった。
「わかんねえ」
するとあみはガードを解き、二本の腕を加護の腰に回した。
次の瞬間加護の体が浮いた。あみは腕の力だけで加護を持ち上げたのだ。
さらに持ち上げたまま、あみは立ち上がった。
「軽いな」
あみは加護をフェンスにぶん投げた。フェンスに叩き付けられた衝撃で一瞬息がむせる。
顔を上げるとあみの拳が物凄い勢いで迫っていた。
ドゴオオオオオオオオオオン!!!
加護は前に転がりかろうしてその一撃を避ける。
さっきまで加護のいた場所。フェンスに穴が開いていた。
技術も無い。戦術も知らない。パワー、純粋なる圧倒的パワー。
それがこの鈴木あみという女の全てだったのだ。
(…ったくなんやこのデタラメな力は。胸くそ悪いでほんま)
(こいつ闘い方、まるでののやんか)
@ノハ@
| | |
〆⌒ヽ
( `д´) <更新キタ―――――――――――!!!!!
( ´D`)>同時更新お疲れなのれす
ヤンジャン=破壊王か・・・
川o・-・)ノ<hozeeeeeeeeeennn!!!!!
∋oノハヽo∈
( ´D`)
∪ーーー∪
| 保 |
| 全 |
ーーーー
815 :
名無し:02/11/01 12:03 ID:3ip4uOCb
保全
圧倒的破壊力を秘め、アミーゴの拳が加護を追う。
一発でももらったらKO必死。その勢いに押されてか、加護の動きが逃げ腰に変わった。
アミーゴの拳をぎりぎりで躱す、反撃の余地が無い。
「ちょろちょろしやがって、いつまで逃げ回るつもりだよ?」
「決まっとる、うちが勝つまでや」
「何だお前、まだ気付いてないのか、格の違い。いいよ見せてやる」
あみの動きが止まった。空気が変わる、嵐の前の静けさの様。
やがて静けさが嵐に変わる。あみが隠された牙をついに剥いた。
「ビートゥゲーザ!ビートゥゲーザ!」
かつてなっちをも、そらにはあゆすらも越えたと言われる伝説の奥義がここに復活!
リズムに乗ったアミーゴ乱舞、地上最強の名に相応しき最高の技。
加護は避ける、避ける、必死で避ける、だが止まらない、止められない。
「ううああああああああ!!」
ここで加護が暴挙に出る、完全にガードを下げ前へ、最後の賭け!?
プシュ
空しく乾いた音。加護の想いを乗せた最後の手刀は、あみの首の皮一枚にて終る。
「おしかったな」
フツウな姿の天使が、吹き飛んだ。
ついに炸裂したあみの拳は、あいぼんの小さな体を折り曲げフェンスへと飛ばす。
「これでわかったろ。圧倒的力の前には小賢しい小手先等、何の意味も持たねえ!」
お腹を抑えもだえ苦しむ加護、だがそれでも天使の瞳は死んでいない。
「ハアッ…ハアッ…ハアッ…」
ガクガクと震える足を手で握り締め、無理矢理にでも立とうとする。
「その根性は認めるよ。だが立ってどうする?お前にはもう1%の勝機もないぜ」
口元から血を流しながら、天使が微笑んだ。
「その1%から勝機を見い出すのが、天才っちゅうもんやで」
あみは声をあげ笑った。現実を見ない愚かな娘に対する嘲笑。
「おもしれえなお前、だけど頭悪りいよ。次で死ぬぞ」
「やってみぃ」
「死ね」
あみがビートゥゲーザの構えに戻る。静けさが場内を包む。
ゴクリ、誰かが息を飲んだ。まだ動かない、未だ静けさが続いている。
一分は経過しただろうか、あみはまだ動き出さない。
流石にこれはおかしい。観客達もざわついてきた。なぜ動き出さない?
対峙する天使だけが、静かに口端を上げていた。
(なんだこりゃあ!なんで動かねえ!なんで俺の体は動かねえんだよ!)
心の中であみは叫んでいた。まるで石になったみたいに自分の体が反応しないのだ。
「ようやっと気付いたみたいやの〜」
目の前で天使が微笑んでいた。いや天使ではない、あみの眼にそれは悪魔の笑みに写った。
「ホントは対のの戦の切り札で、使いたくなかったんやけど、しゃーないわ」
加護は指をくねくねさせて、また微笑んだ。
全部、全部、演技だったというのか?
ギリギリで逃げ回っていた訳ではない、少しずつ切り続けていたのだ。
誰にも気付かれない様に静かに、あみの線という線を…
そして最後の手刀、あれはフェイク、外した訳ではなかった。
脳から肉体へと命令を伝える神経の線を切っていたのだ!
この小さな天才は、その場に居合わせた全員を騙していた。
「圧倒的力の前ではナントカ言うてたな。吹き出しそうになったで」
目の前で笑うこの小さな娘に対して、あみは心から恐怖を感じていた。
「小手先上等!うちは小手先で天下とったるんや」
身動きの取れないあみに対し、加護のトドメの一撃が入る。成す統べなく倒れるあみ。
『勝者!加護亜依!!』
あみはその名を頭に刻み込まれる、フツウな姿の悪魔、加護亜依。
第一試合勝者 紺野あさ美
第二試合勝者 安倍なつみ
第三試合勝者 矢口真里
第四試合勝者 浜崎あゆみ
第五試合勝者 後藤真希
第六試合勝者 引き分けにより不在
第七試合勝者 辻希美
第八試合勝者 加護亜依
こうして八つの試合、その全てが終った。
勝者の数は七人。だがこの七人の誰も知らなかった。
このとき舞台裏で、残された最後のイスを巡りとんでもない事態が起こっていたこと。
更新乙
821 :
祝・更新:02/11/02 02:23 ID:JkHurlky
( ´D`)ノ@ノハ@<ぶりんこたいけつキタ―――――!!! のれす!
〆⌒ヽ
( ;‘д‘) <返さんかい!
822 :
:02/11/04 02:38 ID:N4LbaC7j
保全
823 :
:02/11/05 02:39 ID:7wrH3i1C
ホゼン
こっちは更新まだか・・・
その空間に数人の娘達の姿があった。
「あれは海外へと渡り、日本人初のバーリトゥード王者となったあの上戸彩だ!」
「向こうの4人組は北の実力派レスラー団体ZONEじゃないか!」
「まだいるぞ!ほら、琉球武術の達人AKINAが来た!」
「あのタイトなジーンズにねじ込んだボディは!若き韓国王者BOAだ!」
ざわめきたつ大会運営委員の面々。
全国海外各地からとんでもない奴等が、その匂いを嗅ぎつけ参戦を求めている。
そうだ、彼女達もまた地上最強に魅せられた馬鹿者達なのだ。
だが空いたイスはたったの一つ。
この豪華な面々の中で大会出場の権利を得ることのできる者はたったの一人。
「さーて、どうやって決めましょかね〜」
つっかけたのはZONEの一人、さきっちょのマスクを被った娘。
「トーナメントでもする?ちょうど8人いることだし…」
その上戸の提案にさきっちょは首を傾げる。ここには7人しか…
いやいた!部屋の隅でちょこんと座っているお面の女。
「誰だあんた、いつからそこにいんだよ、こっち来なよ」
さきっちょにそう言われると、お面は無言で立ち上がった。これで8人。
「組み合わせはどうやって決めるの?」
琉球武術の一派フォルダを抜け出し独立した娘、AKINAが問い掛けた。
「面倒くさい、適当でいい、誰がきても、勝つの、私、決まってる」
腕を組み余裕を見せるBOAのその態度に、皆の顔色が変わる。
「ちょーし乗んなよ、お前」
「駄目だよMIZUHOちゃん、下手な挑発に乗っちゃ」
カチンと来て今にも飛び掛かりそうになっていたさきっちょを止めたのは、
最年少ながらZONEのエースと呼ばれる娘MIYU
しかし誰も止める者がいないAKINAは、まっすぐにBOAへと進む。
「何が決まってるって、パアちゃん?」
「ぱあ違う。私BOAよ。奇跡、私、NO1、決まってる」
AKINAとBOAが睨み合う。
「どうやら組み合わせが一つ決まったみたいね」
上戸が笑みを浮かべた。だが納得してない者が一人。
「勝手に決めんな!あいつは私がぶっ飛ばすんだよ!」
さきっちょだ。ピーピーピーピー騒ぎを止めない。
「うっさい、MIZUHO死んで」
あまりの騒々しさにリーダーのTAKAYOがキレた。
「ちょっと誰に言ってんのよ!仲間っしょうちら」
「もう仲間じゃない。MAIKOもMIYUもいい?イスは一つなのよ」
TAKAYOが三人を諭す。四人で闘う訳ではない、闘うのは一人一人なのだ。
MAIKOとMIYUの顔色が変わる。その意味を理解したのだ。
だがそれでも騒ぐのはさきっちょ。
「だからって死んではないでしょ、死んでは!お前が死ねっつーの!」
「ああ!誰が死ねだってゴラァ!」
MIZUHOとTAKAYOぶつかる。
「やれやれ二つ目も決まったか」
そう言うと上戸は自分の相手を指名する。彼女はMIYUの前に進んだ。
「あんだが一番おもしろそうだ、闘ろう」
上戸彩の申し出にMIYUは微笑む。それは強き者に選ばれし闘争本能の笑み。
第三の組み合わせも決まる。
ぽつん。一人残されたMAIKOたん。
辺りを見渡すと、同じ様に立ち尽くすお面の女がいました。
「お相手してもらえますか?」
ペコリとおじぎをするMAIKOに、慌てるお面。
「あらあら、これはご丁寧にどうも。」
初めてしゃべるお面の女に、MAIKOは首を傾げて考えた。
(この人の声、どこかで聞いたことある)
こうして残された最後のイスを巡り8人の娘が激突する!
上戸彩、MIYU、MIZUHO、TAKAYO
AKINA、BOA、MAIKO、お面
勝ち残り後藤真希の前に立ちはだかるのは一体どいつだ!?
さ、さきっちょって・・・(ワラ
お面誰だお面・・・w
あいつか?w
ご苦労さん
なぎー
さあ4つの対戦が一斉に始まる!と思ったその時、誰かさんの声がそれを止めた。
「盛り上ってるとこ、ごめん。ひとつ提案があるんだけどさー」
お面だ。それまで黙っていたお面の女が急に残りの七人に声を掛けてきた。
不信がる七人、そしてどこかで聞き覚えのある声。
「七対一でいいよあたし、その方がはやいでしょ。」
誰も意味がわからずにいた。この女は何を言っているのか。自分でわかっているのか?
「なんなのあんた、邪魔すんなよ」
当然、気分を害されたさきっちょが、お面の女につっかかる。
バタン。次の瞬間、さきっちょは地面にうつぶせていた。すでに意識もない。
「はいはい、あと六人。ちゃっちゃと行こう。(うーん、私って作者思い)」
誰も理解する間もないまま、舞台裏に戦慄が走る。
5分後、お面の女が舞台裏から出てきた。その体には傷一つない。
話を聞きつけたつんくがその場へ訪れて見たもの。
あの上戸彩が!ZONEが!AKINAが!BOAまでもが!床に倒れ気絶していた。
「たった数分で、この七人を!そんなことができる奴…」
お面の女はケラケラと微笑んでいた。氏名の欄に書かれた一文字の漢字。
光。
833 :
二回戦:02/11/08 23:09 ID:4W7eLylf
第一試合 紺野あさ美−安倍なつみ
第二試合 矢口真里−浜崎あゆみ
第三試合 後藤真希−光
第四試合 辻希美−加護亜依
紺野も安倍も矢口も辻加護も、実際に対戦する後藤ですら、気付いていなかった。
とんでもない奴が参戦してきた事実に。
光。その文字に反応したのは一人の怪物のみ。
「きやがった、あのヤロウ!」
あの浜崎あゆみが、驚きと焦りを露わにしている。
やがて自分を落ち着かせる様に息を吐き、ソファに腰を下ろす。
(決勝の相手は決まった。いいわどっちが地上最強か、決着をつけよう)
嵐巻き起こるモームス最大トーナメント、二回戦いよいよ始まる!
(少なくとも私と闘ったときのお前は…もっと強かった。)
紺野の頭には、まだあのとき吉澤に言われた台詞がこびりついていた。
(今の私に足りないもの…あのときの私と違うこと…駄目、わかんない)
ぎゅっと拳を握り締める。もう迷っている時間はないのだ。
『只今より二回戦第一試合を始めます!』
アナウンスが聞こえてきた。出番がきた、相手はあのなっちだ。
「誰が相手でも変わらない、私は私の闘いをするだけ」
右の掌に神を秘め、紺野あさ美は闘技場へと続く薄暗い廊下を歩み出した。
「相手は現役チャンピオンだぜ、どんな気分だ。」
そう言いながら、安倍なつみの控え室に姿を見せたのは意外な人物だった。
「矢口真里…どうゆう風の吹き回し?」
問いには答えず、矢口はベンチに腰掛けて安倍を睨んだ。
「なっちさんよぉ。去年の大会前の約束、覚えてっか?」
安倍は小さく頷いた。人気のない廃工場跡にて矢口と交わした会話がある。
(なっちは後藤真希とも闘いたいけど、矢口真里とも闘いたいべさ。)
「当然だべさ」
安倍の瞳が修羅に変わる。それを見た矢口は満足そうに微笑んだ。
新旧チャンピオン対決ここに実現!
共に一回戦は圧倒的な力で勝利し、当然今大会も優勝候補の一角に名を連ねている。
『青竜の方角!ディフェンディングチャンピオン紺野あさ美だあああ!!』
『白虎の方角!初代モームス王者安倍なつみの入場!!!』
時代は違えど、同じ栄光を掴みし二人。だが現れたその表情は対照的であった。
安倍なつみはすでに戦闘モード。あの人懐っこい笑顔の欠片も見られない。
対して紺野あさ美の方はどことなく不安気な面持ち、僅かに迷いが見て取れる。
紺野と安倍。二人が闘技場中央に並び立つ。
「なっちはあんたをチャンピオンとは認めていない」
「――――!」
突然の安倍の言葉に驚き、紺野は顔を上げる。目の前に修羅がいた。
「あんたが頂点を名乗るには十年早い。それをこの闘いで証明してあげる。」
あからさまな挑発にくすぶっていた心がざわめき立つ。
たとえ紺野自身が許しても、紺野の拳がそれを許さない。
「私は負けません。いつも完璧です!」
紺野がなっちを睨み返す。王者が王者を睨み返す!
やがてゴングが鳴る。
歴史的一戦、チャンピオン対決が幕を開けた。
|ほれ!また前髪がボサボサだべ!|
\__ ___________/
∨
(●´ー`)ノ(・‐・o;川
ア・アノ・・・
837 :
:02/11/10 22:02 ID:EXE78Fen
ホゼン
838 :
紺野あさ美−安倍なつみ B:02/11/11 12:05 ID:X5EYoKWj
(私は完璧なんだ!誰にも負けないんだ!)
開始早々紺野が猛る。研ぎ澄まされた空手の技を駆使し、なっちを攻め立てる。
だがなっちはまったく焦ることなく、その一つ一つを冷静に観察し捌く。
「もう一度言う。十年早い」
絶妙のタイミングで繰り出されるなっちのカウンターに、紺野は反応すらできない。
あの紺野が、まったく成す術なく吹き飛ばされる。そして気付く。
(口だけじゃない、この人は本当に強い、強すぎる…)
無言で自分を見下ろす安倍に、紺野は畏怖の念すら抱き出していた。
(でも負けない、私にはこれが…これがある!)
紺野が再び構える。もはやおなじみとなったあの構え。出るか神の拳!?
「馬鹿の一つ覚えね」
「五月蝿い!私は絶対に負けないんだぁ!」
紺野の右手が光る。何よりも強く何よりも早い、武の究極地。
バシィィ!
その右手がなっちの左手に受け止められる。神の拳が止められた!?
「真希にできて、なっちにできない理由がどこにある?」
次の瞬間、なっちの右腕が紺野の顎をとらえた。紺野は地べたに崩れ落ちた。
(ようやくわかった。あの言葉の意味…今の私が去年の私より弱くなったという理由)
(私は頂点に立って勝利にこだわる様になってしまった。チャンピオンだからと…)
(あの頃の…吉澤さんと戦ったときの様な馬鹿さがなくなっていたんだ)
(勝利に捕らわれ過ぎて…闘いを楽しむ、そんな単純なことを忘れていたんだ)
(戻れるかな?私はまだあの頃に…戻れるかなぁ?)
ダウンを奪われた紺野がフラフラと立ち上がってきた。
勝利を確信しフェンス際に戻りかけていたなっちが、少し驚いて振り返る。
「へえ、まだ立てたの」
「立てますし、戦えます。まだ貴方と戦いたいんです!」
(目の色が変わった。澄んだキレイな目…)
「いいよ、やろう」
紺野のまっすぐな想いを安倍は正面から受ける。二人は再び打ち合う。
紺野は己の全てを安倍にぶつけた。それは神の力ではない、紺野あさ美の力。
(見直した、あんたは立派な闘士だ。もう十年早いなんて言わないよ、紺野あさ美)
だが全てをぶつけた上で安倍なつみはさらにその一歩上をいっていた。
『勝負ありいいいい!!勝者!安倍なつみ!!!』
文句のつけようがない、気持ちいいくらいの完全なる敗北だった。
仰向けに寝転がる紺野に、退場する勝者がハナムケの言葉を贈る。
「まだ、五年早い」
「相手は超特大級の怪物だよ、どんな気分?」
矢口真里の控え室扉を叩いたのは、たった今試合を終えたばかりのなっちだった。
なっちは先ほど自分がされたお返しとばかりに、同じ台詞で訪れたのだった。
「ちぇ、うるさいなー。自分は勝ったからって…」
矢口真里の体が小刻みに震えている様に見えた。知っているのだ、あの怪物の凄さを。
「なあに?ビビってるの?天下のグラップラー真里ともあろう人が」
カチンときた。そんなこと言われて黙っていられる娘ではない。
「誰がビビってるって!?上等だっつーの。やってやろうじゃん怪物退治!」
震えが消えた。火の玉娘はその勢いのまま控え室を飛び出した。
(おいらの名前を知ってっか、怖いものなし矢口真里だぜ!)
(浜崎なんか物真似してやるっつーの、あゆで〜す。)
大歓声とライトの明かりが近づいてきた。
そこで入り口手前に誰かいることに気付いた。藤本美貴であった。
その手に安物の位牌…松浦亜弥と手書きで書かれている。
ドクン!
表現し難い感情のうねりが矢口の全身に荒れ狂う。そうだ、これは只の試合ではない。
「死なないで下さい」
藤本の言葉も、もう矢口の耳には届いていなかった。
お面の女は観覧席の隅で眺めていた。あゆの眼にはそのお面しか写っていなかった。
『二回戦第二試合!はじめぃ!!』
「悪いけど、あんたなんて眼中にないの、秒殺でいい?……!?」
気が付くと、本当に浜崎の眼中に矢口真里の姿がなくなっていた。
辺りを見渡すあゆ。対戦相手がどこにもいない。
「いいぜ」
後ろから声がした。小さすぎて見逃した…なんていい訳にならない。
バゴオオッ!!!
強烈なオーバーヘッドキックがあゆの後頭部を蹴り落とす。
あゆが地面に落ちるよりも速く矢口は着地し、さらにあゆの顔面を蹴り上げる。
常識を超えた運動能力と反射神経…
止まらない。矢口真里が止まらない。あゆに反撃の芽を与えない。いける!
対松浦戦で右腕を奪われた浜崎、だがこの程度のレベルなら左腕一本で充分とふんでいた。
――――――その考えは今も変わっていない
この怪物に反撃の芽など必要ない、芽がなければそこに花を植えればよい。
常識を超えた運動能力と反射神経…その遥か上をゆく動き。左手のネイルが牙を剥く。
ザンッ!!
無情に響き渡る音。浜崎の左手が矢口の胸を貫いた。
(〜T◇T〜) ・・・イタイ・・・
843 :
:02/11/13 00:31 ID:iufaOp5O
保全
844 :
:02/11/14 02:04 ID:8XIFZYni
ホゼン
845 :
:02/11/14 18:48 ID:cAhq1ZvK
age
こっちはなかなか更新しないね・・・
ニヤリ。笑みを浮かべたのは浜崎…ではない。矢口真里。
(抜けない!?)
ネイルごと矢口の体に突き刺した指先が抜けないのだ。戦慄が走る。
「最期の腕、もーらいっ」
肉を切らせて骨を断つ。矢口の腕と足が浜崎の左腕を上下に分断する。
「ぎゃあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
絶叫が響き渡る。
「いい声で鳴くじゃん。歌出したら売れるかもよ」
矢口がクルッと回転する。あゆは見た、その背中に顔が…ミニモちゃんの顔が!
空中回し蹴りが、両腕の自由を奪われガードもできないあゆを容赦なく叩く。
それでもまだあゆは倒れない、下がることを知らない。
「なめんなガキィ!!」
まだ足がある。あゆが大鎌の様なハイキックにて反撃する。
だが矢口には当らない、小さすぎて焦点が定まらないのだ。
今度は逆に矢口が足を振りかぶった。ボールを爪先に当てて押し出す様に…
パァンと破裂する様な音。必殺シュートがあゆの脳天に炸裂する。
情けも容赦もない、鬼の如き佇まい。
―――――――――――狂気の145cm
「堕ちるか」
ぽつりと呟き、お面の女はその場を後にした。
浜崎あゆみは完全に気を失っていた。審判の一人が手を横に振る。
『勝負ありいいいいいいいいい!!!』
「わあああああああああああああああああああっ!!!」
『大金星!!!グラップラー真里が超特大の怪物を倒したぁぁぁ!!!』
うねるような大歓声に、矢口はようやく我を取り戻す。
そしてようやく胸の痛みに気付き、その場にごろんと寝転がった。
常人なら即死でおかしくない一撃をもらっていたのだった。
あと1mm奥だったならば、自分も死んでいたかもしれない。
いや、浜崎が五体満足だったならば、松浦があいつの右腕を奪っていなければ…
自分はきっと相手にすらならなかっただろう。
それくらい圧倒的な怪物だった。勝てたことは奇跡に近い出来事だ。
「この歓声が聞こえてっか、松浦のバカヤロー」
「くやしいけど、二人の勝利だぜ。おいらとお前の勝利だ!」
天国(いや地獄か?)にいる宿敵に、矢口は拳を掲げた。
あややがペロリと舌を出して微笑んだ様な、そんな気がした。
仲間達に担がれて医務室へ運ばれる矢口真里に、握手を求める女がいた。
「よくやった。感動した」
すると意識白濁していた矢口が、真水をぶっかけられた様に目を覚ました。
「……!」
その女は妙なお面を被っていた。矢口は言葉が出なかった。
手を放すとお面の女は軽い足取りで闘技場へと進んでいった。
残された矢口がポツリと洩らす。
「地上最強…」
格闘技界からの引退を表明した後藤真希には、ある決意があった。
その決意の為にはこの大会、何としても負けられないのだ。
思い出されるのは、デビューしてからの日々。
(長かった様な、短かった様な、三年間だったな…)
(あと三試合。多くても三試合で私のここでの闘いは終る)
眼を閉じると激戦を繰り広げてきた数々のライバル達の顔が思い浮かぶ。
(行こう!思い残すことはない様に…)
お面の女と後藤真希が闘技場に並び立つ。
「正直な話、私この大会なめてたのね」
唐突に語り始めるお面の女、後藤はそれに黙って耳を貸す。
「でもさっきの試合見て見直した。あの浜崎あゆみを倒すなんてたいしたもんだよ、ウン」
お面の女の両手が自らの顔に移動する。
「本当はこのままやるつもりだったけど、気が変わった。」
静かに、お面がその女の顔から離れてゆく。
「…本気だすから」
静寂が轟音に変わった。その顔を知らない者はこの場に存在しない。
――――――――――宇多田ヒカル
お面の下から現れたのは世界を舞台に活躍する、名実共に日本最強の女の顔であった。
「あなたもこっちの世界に来る気なんでしょ、ゴマキちゃん」
圧倒的存在感、威圧感、その全てが遥か高みのレベル。
対峙するだけで胸が潰れそうになる。後藤真希は言葉を返すことすらできずにいた。
だから意志を体で表現する。握り締めた拳を宇多田ヒカルに向ける。
(宇多田ヒカルをぶん殴る!)
日本一無謀な挑戦、後藤真希vs宇多田ヒカルが始まった。
矢口さんおめでとうございま〜す♪
ノノノ△ヽ _______
从 ‘ 。‘从 ||. ノノハヽ .||
ノ  ̄) ̄) .|| (^◇^〜;) ||
( )ノ~)ノ ||, 〜〜'⌒⌒ヽ〜-.、
) ノ .||\ ' , `、 ゙ヽ、
V ||\\|| ̄| ̄| ̄| ̄| ̄||
\|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄||
|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄||
852 :
:02/11/15 23:17 ID:XxZr0r4t
ぁゃゃいなくなったらごまっとうできないじゃないか。
今ポンキッキーズにぁゃゃ出てる!と思ったらはしのえみだった
「狂気の145cm」とは恐れ入った…
どう転んでも半端な戦いにはならないだろうウタダvsゴマキ
856 :
保全:02/11/18 17:27 ID:YZ9ke2s+
< 宇 多 田 vs 後 藤 だ と ぉ ? ? ! !
<
∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨\ /∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨
______________
/_,,___ ._,,,,__,_ :::::::::::\
/ ゙^\ヽ.. , /゙ ¨\,.-z ::::::::::\
「 ● | 》 l| ● ゙》 ミ.. .::::::\
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|  ̄ ,,、 i し./::::::::.}
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( ゙゙^^¨^¨゙゙¨  ̄ ̄ ̄ /::::::::::: ::::::::::\
ヽー─¬ー〜ー――― :::::::::::::
858 :
:02/11/20 00:34 ID:XBNzU6kk
hozen
859 :
募集厨:02/11/21 15:49 ID:biIKb3ty
ほzone
保全
地上最強に最も近い存在が目の前に立っている。
その事実が後藤真希の闘争心を今までにないくらい熱く熱く燃え滾らせていた。
宇多田ヒカルが指をチョイチョイと自分の方へ向ける。
(誘っている、地上最強が私を誘っている)
(今…ここで…この拳を…あの顔にぶち込めば…)
(私が地上最強!)
後藤真希が飛んだ。もうこの闘争心を抑え切ることができなかったのだ。
疾い。今までで最高の動き。完璧のタイミング。伝家の宝刀、双龍脚!
「まあまあね」
だが宇多田ヒカルはこれを難なく避ける。
いや違う、避けさせたのだ。蹴り足が途中で止まる。時同じくして後藤の右腕が風に乗る。
フェイント!必殺奥義を囮に、本命はこちらだったのだ。これには流石の宇多田も…
「やっぱりまあまあだ」
後藤の右腕は空を切った。宇多田ヒカルは何事もなかった様に佇んでいた。
誰かが言った。
「これがWait&See…地上最強の防御」
Wait&See…その名の通り「待つ」ことと「見る」ことを基本としたスタイル。
宇多田ヒカルがこのスタイルに入ったとき、彼女に見切れないものはないと言われている。
単純だが、単純だからこそ対処の仕様がない。地上最強の防御と呼ばれる由縁。
その後、後藤真希は幾度の攻撃を繰り出す。その全てが素晴らしいものであった。
けれども、宇多田ヒカルにはかすり傷の一つ付けることができなかった。
肩で大きく息をする後藤。彼女のこの様な姿を見るのは誰もが初めてである。
対する宇多田は汗一つかいていない。試合前と同じ表情。
「もういい?今度はこっちがいくよ」
空気が一変する。宇多田ヒカルがスタイルを変えたのだ。後藤は慌てて構え直す。
(え?何これ?ちょ…読めない)
全ての突きが、蹴りが、後藤にクリーンヒットしていた。
後藤も防御はしている。だが何故か躱すことができないのだ。
(動きが読めない…予測ができない…防御できない)
これが宇多田ヒカルの攻撃スタイルAutomatic
己の意志とは無関係に自動化された技の数々、思考していては追いつくはずがない。
後藤真希の顔に体に、傷と痛みが蓄積してゆく。
「とどめ」
会場の全ての人間が息を飲んだ。その姿に完全に魅せられていた。
宙に蹴り上げた後藤を追って自らも舞い、そして後藤の頭部に手を添え振動を与える。
意識を奪われ落ち行く後藤真希の姿は、さながら散り行く桜の様にも見えた。
「SAKURAドロップス」
あまりに強烈にしてあまりに優雅な、宇多田ヒカルの最新奥義であった。
かつてはモームス最大トーナメント最強の王者であった後藤真希をして、この強さ。
特別力がある訳でもない。特別動きが速い訳でもない。特殊な能力がある訳でもない。
ただ強いのだ。
宇多田ヒカルはただ強い、それだけなのだ。そしてこの世界ではそれが全てなのだ。
「レベルが違い過ぎる」
観覧席にいた飯田が悔し気に唇を噛んだ。達人保田ですら震えが止まらない。
病室のモニターで観戦していた石川と吉澤は互いに言葉も出ずにいた。
自分達がずっと追い続けてきた娘が、何もできずに負ける。その現実の重さ。
後藤真希の敗北。誰の頭の中にもその七文字が浮かんでいた。ただ二人を除いて…
グラップラー真理。奇跡を起こせるもんだ!彼女は自らの体でそれを証明してみせた。
そしてもう一人…なっち。安倍なつみが後藤真希を睨み付ける。
こんな処で終る気かと!お前が本当に闘いたい相手は誰だと!
私はここにいるぜと!
後藤真希は目覚めた。そしてふらふらと立ち上がった。
(誰かが呼んだ気がした。ううん、それが誰かは分かっている)
宇多田ヒカルは眼をパチクリさせた。そして少し笑みを浮かべた。
(あの技を受けて立ち上がるか。いいねぇ、それでなきゃ参加した意味がないよん)
後藤真希と宇多田ヒカルが再び合い並ぶ。
「さぁてどうくるゴマキちゃん?何か対策みつけた?」
「ない。みつかんない。でもだけど負ける訳にはいかないんだよね」
「ワガママ?」
「これが普通の試合だった多分もう起きなかった。でもこれは、この大会は違うんだよね」
「……」
いつしか後藤真希の双眸に熱いものが込み上げていた。
「わたしにはこれが最後だし…まだ決着を付けなきゃいけない奴等がいるんだよね」
「その小さな体で奇跡を起こせる奴がいる」
「多分私を越えるくらいの未知数のモンスターが二人程いる」
「そして…なっちがいる」
「彼女等と決着付けないまま…卒業はできないんだよね。だから…だから負けない!」
王者の咆哮。その手が再び拳を握る。後藤真希の全ての想いを乗せた最後の一撃!
宇多田ヒカルは「見た」。と同時に後藤真希の熱き想いに一瞬「見とれた」。
その一瞬が僅かな遅れを誘った。地上最強の防御が崩れた。
ピシッ!
紅き血が舞う。宇多田ヒカルの頬に紅い線が浮かび上がっていた。
「傷だ。」
「宇多田ヒカルに傷を付けた!」
観客席が湧く。宇多田ヒカルに傷を付けた女は過去に一人しかいない。それ程の出来事。
後藤真希は拳を突き出したまま、もう動く力も残ってはいなかった。
宇多田ヒカルは頬に手を当て、久しぶりに見る自分の血を確かめた。そして思った。
(ここで潰すには惜しい)
「ゴマキちゃん。ここは貸しといてあげる」
くるりと背を向けた宇多田ヒカル、彼女の口から信じ難い言葉が出た。
「え?」
「もう飽きちゃった。アタシはここらでおいとまします。んじゃね〜」
手を振って宇多田ヒカルは闘技場を出ていった。最後まで読めない行動。
結果、宇多田ヒカルの途中退場、勝者には後藤真希の名が高らかに挙げられる。
(どうせなら優勝してこっちの世界に来い!後藤真希!)
地上最強の女は自らの舞台へと戻り、いつの日か借りを返しに来るのを待っている。
ノノハヽ んぁ、疲れちゃった・・・
⊂´⌒つ´ Д `)つ
ageてないから気付かんかったよ!
そうきたか………いや、それはそれで「らしい」決着だ。
とりあえず、
「ゴマキ言うな。」
なんか「赤と青」の方が先に終わりそうだ(W
紅白で後藤が一日だけ娘に復帰するという話が出ている。
これが本当の【なち×ごま】ファイナルバトルなのか?
871 :
トップ3:02/11/28 19:06 ID:F/OmAjpi
「安倍なつみ。矢口真里。そして後藤真希か」
会場のメインボードに残された三人の名前を読み上げる飯田。
その横には保田、そして吉澤と石川が並び座っていた。
「悔しいが、残るべくして残った名実共にモームス格闘界のトップ3だな」
飯田の言葉に誰も反論を述べることができずにいた。
すでに引退を宣言していた保田はともかく、吉澤も石川も自分こそが最強と信じていた。
だがこの三試合を目にし、その自信は脆くも崩れ落とされた。
王者紺野を相手に圧倒的実力差を見せ付けた安倍なつみ。
浜崎退治という奇跡の偉業を成し遂げた矢口真里。
地上最強に傷を付けた女、後藤真希。
もしそれが自分だったら…できたか、いやとてもできる気がしない。
(今の私じゃ…まだ及ばない。もっともっと強くならないと…)
吉澤も石川も想いは同じであった。次は隣にいる娘にも勝つという気持ちも含め。
「トップ3かえ。果たしてそいつを崩す者は現れるのかのぉ」
達人の言葉が残り三人の表情に緊張を走らせる。皆の頭に二つの顔が浮かぶ。
「その答えはこれから出る」
もはや想像の域を越えた世界、誰も予測はつかない。
「さぁ…どっちがくる?」
二回戦第四試合を前に、格闘雑誌記者の平家みちよは勝者三人の控え室を訪ねていた。
辻加護戦の勝敗予想を三人に聞く為である。返答は三者三様であった。
「ノーコメント」
普段は温厚にインタビューを受けてくれるなっちは、その一言で扉を閉めた。
平家は背筋に汗が浮かんでいることに気付く。今までのなっちではないことを悟る。
「去年は辻ちゃんとやったから、今年は加護ちゃんかな?」
後藤真希の答えはいい加減だった。そのまま疲れたと言って寝てしまった。
一番まともに答えてくれたのは(やっぱり)矢口真里であった。
「辻と加護かーどっちも化け物だけどね」
「矢口さんはどっちがくると思います?」
「うーーん、強いのは辻かな」
「じゃあ辻選手の勝利と…」
「でもおいらが闘りたくないのは加護の方だ」
「もう結局、どっちですか?」
「わかんないからおもしれんだ。ま、どうせ優勝はおいらだからどっちでも一緒一緒♪」
そう言って矢口選手は行ってしまった。彼女の冗談は冗談に聞こえないから怖い。
あの145cmが本当に歓喜に包まれるのではという錯覚に陥ってしまう。
このグラップラーを止めるのは果たして安倍か?後藤か?それとも…?
『夢のカードがここに実現致しましたっ!!』
『格闘技界の常識を覆す程の娘が!同じ時代に生を受け!そして出遭ってしまった!!』
『二人は最高の相棒であり!最高の仲間であり!最高のライバルである!!』
『だが!勝利の二文字は!どちらか一方にしか与えられません!!』
『残酷にも!運命は二人を!!勝者と敗者に分けるのです!!』
『しかし!それがこの世界の掟!!二人が同じ夢を持つ限り避けては通れない道!!』
『さあ決断の刻は来た!!出でよ!!小さな戦士達!!』
『青竜の門!!!辻希美!!』
『白虎の門!!!加護亜依!!』
『ぶりんこ対決だああああああああああああああっっ!!!!!』
二人に言葉はなかった。いつもの笑顔もない。ちらりと一度眼を合わせただけであった。
死闘の始まりを告げるゴングが鳴り響く。辻が動く。加護が動く。二人がぶつかる!
ぶつかると思われた一瞬に身を翻したのは加護、グンッと辻の腕を抜け懐へ入る。
目標を見失った辻の豪腕は物凄い音と衝撃を上げて空を切る。
加護が辻の右足と腰を掴んだ。得意の寝技に持ち込む気である。思い切り重心を変えた。
ところが、辻はビクともしなかった。まるで足が床に根を生やした様に。
逆に辻は肘打ちで、自分の腰元に掴み掛かる加護を狙い撃つ。
しかしその肘も空を切ることになる。瞬時に作戦を変えた加護が今度は背中に回り込む。
思い切り腕を振り回して辻は加護を払いのけようとする。
しかし全ての動きを読んでいるかの如く、加護はさらに行動を先へと移している。
加護の眼が辻のうなじを捕らえた。そこからの動きは実に速かった。
イキナリズムでの脇腹打ち。対ソニン戦で得た物真似の一つ。
脇腹に辻の視線を集中させて素早く身を翻し、反対の腕で辻のうなじを掴んだ。
辻はすぐに反応するがもう遅い、首に加護の腕と腕が絡み付く。首締めが完全に決まる。
加護は一気に勝負を決めにかかる。全力で落とす。辻の首を締め付ける!
何とか解こうと辻は体を反った。そのまま勢いを付け加護を背負ったまま正面に飛んだ。
首を絞められたままの背負い投げ。有り得ないパワーだと加護は思った。
と同時に考える。腕を外して逃れるか、倒されてもこのまま腕は離さないか。
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 見てみィ!のののキャラ凄いで!
\
 ̄ ̄|/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
@ノハ@ ∋oノハヽo∈/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
. ( ‘д‘) (´D` ) < あいぼんらって!
( つ_つ_ ( ⊂ ) \_______
 ̄\| Lavi |\ (_)
======= \
876 :
保:02/11/30 15:56 ID:3d0uRM46
全
やっぱり向うの方が早く終わったな・・・
878 :
:02/12/03 07:27 ID:kQME8G2d
hozen
更新まだ〜?
すっかり作者に忘れられてねぇか?
なんだこの駄文
hozen
保全!
保田全快!略して保全!
885 :
?:02/12/09 16:33 ID:Olny9ODA
?
886 :
名無し:02/12/10 16:25 ID:p4yPAZzM
保全
(こないチャンス二度あるか分からん。多少の犠牲を払ってでも決着をつけたる!)
加護は放さなかった。辻の全体重が加護の胸部を叩き付ける。
あばらが二三本いった。だが加護の腕は依然辻の首を絞めたままである。
むしろ投げつけた衝撃によって、さっきより締め付けがキツクなった程だ。
(いける!もうこの手は放さへん!うちの勝ちや!)
加護が勝利を確信したその瞬間、異変が起きた。
「うぬぅああああああああああああああ!!!」
首から腕が離れる。悲鳴を上げたのは加護。手首を押さえてもがいている。
「プハァーー、ハァー、ハァー、ハァー」
久しぶりの空気を堪能する辻。まだ意識が危うい。もう少しでオチル所だった。
自分の手を見つめると、辻は苦しみ悶える相手の方を顧みた。
加護の左手首が赤黒く腫れ上がっている。辻がそうしたのだ。その握力で。
人間離れした握力で、加護の手首を思いっきり握り潰したのだ。
(これしか…これしかなかったのれす)
呼吸を整えると辻は立ち上がった。闘いはまだ終ってはいない。
自分のしたことを理解している。線を越えてしまったのだ。
試合と呼ばれるものと、殺し合いと呼ばれるもの、その間の境界線を。
(ええんやな。ええんやな、のの。そっちの技を使うて、ええんやな)
額に脂汗が玉になって浮かんでいる。おそらくもう左手は使えないだろう。
加護は震えていた。それは恐怖によるものでも武者震いでもない。
相棒を殺してしまうかもしれないこと、そのことに震えているのだ。
(のの、お前やで。先に線を越えたのは…)
加護の手の構えが変わる。切る気だ。辻を繋ぐもの、神経を…全てを…。
例えそのことにより、辻が再起不能に陥ったとしても…
張り詰めた空気が場内に流れる。二人は睨み合ったまま動かなかった。
スタンド上部から、包帯に包まれた一人の女が試合の行く末を見守っている。
名を鈴木あみという。彼女は先の闘いにて加護亜依に敗れている。
その恐ろしさを、身を持って味わっているのだ。まだ節々が痛む。
試合の後、加護が切った線を戻しに来てくれなければ、一生動けなかったかもしれない。
そのとき加護が口にした台詞が頭をよぎる。
「もっとヤバイ技がある」
あみはもう一人の娘、辻希美という娘に視線を落とした。
彼女が並の怪物であることを願った。もしそれ以上であれば…真の怪物を起こす事になる。
止まっていた時が再び動き出す。狙いを定めた加護がその腕を伸ばす。
辻は身を屈め、そこからアッパーでカウンターを狙う。しかし加護はそれも読んでいた。
野獣の牙の如き五指が辻の首元に噛み付いた!
ぷいん!
鍛えぬかれた加護の指が弾かれた。まるでゴムマリにでも触れたかの様に…
福田戦にでも見せたこの肌の弾力こそ、腕力に並ぶ辻の最高の持ち味。
そしてその瞬間、この試合始めて加護が隙を見せた。辻はそれを逃さない。
ズドゴオオオオン!!!
大砲の様な辻の拳が加護の脇腹をえぐった。勢いのあまり加護は回転しながら吹き飛んだ。
フェンスに激突する。顔が血に染まる。嘔吐する。内臓がイカレタ。のたうち回る。
一撃。たった一撃で勝負を決めてしまう。これが辻希美。怪物中の怪物。
(勝っら!勝っら!あいぼんに勝っら!)
辻は勝利を確信して雄叫びを上げた。観客もそれに合わせて喝采を上げる。
その変化を逃さなかったのはただの一人だけである。
鈴木あみは確かに見た。
地べたに顔を擦り付けた加護の口元が僅かに緩んだところを…。
真の怪物が目覚めてしまったところを…。
12日ブリーッ!
∋oノハヽo∈
(`D´ )⊃@ノハ@ ← しょうぶあったのれす!
(⌒)∪ (⌒)
⊂(‘д‘;⊂⌒ヽつ
キサマ、タブーヲヤブッタナ・・・
更新おめ!
893 :
名無し募集中。。。 :02/12/11 09:06 ID:ighoAkU/
勝っら!
…(;´д`)オイオイオイオイオイオイ
894 :
辻ちゃん:02/12/13 01:33 ID:FoGLxtbI
負けちゃいそうだな。
最後までがんばってほしい。
こっちですぐ会える罠
>>895 やはりあっちの方が先に終わったな(w
・・・で、こっちの続きは〜?
「勝者!辻のぞ…!」
高らかに決着の宣言をしていた審判員の声が、突然止まる。
先程まであれだけ騒ぎ立てていた観客達の声が、ドヨメキに変わる。
何事かと辻は恐る恐る後ろを振り返った。その大きな瞳が映し出すもの…
顔面を血で真っ赤に染めた加護亜依が立ち上がろうとしている。
握り潰された左腕をブランとさせ、残された右腕で体を支え込んでいる。
その双眸はずっと辻を睨み付けたままである。呼吸も荒い。
(まだ闘ろうというのか、この娘は!)
誰もがそう感じていた。立ち上がることさえ無理だと…
「あいぼん…」
加護の性格を良く知る辻は彼女の想いを噛み締めた。そして再び拳を握る。
例えどれだけ追いつめても、そこに僅かでも力がある限り加護亜依という娘は諦めない。
自分の手で完全決着を着けてやらなければいけないんだ。それが彼女への礼儀。
大きく深呼吸し、辻は加護に向かって走り出した。
まるでこれが二人の最期の立ち会いであるかの如く…
(もっとヤバイ技がある)
あらゆる物を破壊しうる辻の拳が、再び加護に迫る。
その瞬間、ふら付いていた加護の足取りが一転、指先があらぬ形に変化する。
まるで刃の如く、研ぎ澄まされた手閃が辻の首元へ飛び掛かる。
ぷいんと弾かれるはずであった。だが刃がさらに回転を加える。首筋をえぐる。
拳を突き出す形で動きを止める辻。真っ赤な血が観客席にまで飛び散る。
頚動脈破壊!
悲痛な絶叫がコダマする。それは先程の雄叫びとは正反対を意味する。
出血が止まらない。噴水の様に血が飛び出て行く。気を失うくらいの激痛。
辻は手で首を押さえ、出血を塞ごうと試みた。今気を失ったら死ぬ。間違いなく死ぬ。
激痛で涙があふれ出てくる。涙で前が見えない。目の前にいる人物が見えない。
見えない辻に対し、加護は容赦することなく攻撃を続けた。刃が辻の左ふとももを裂く。
左足神経断切!
ふとももの内側からも血が吹き出す。辻はもう片方の手をそちらにまわす。
もう悲鳴もでなかった。激痛が声を出すことすら拒むのだ。
(痛いよ!死ぬ!あいぼん!殺す気?あいぼんはののを殺す気だ!)
加護の狂気(矛)が辻の弾力(盾)を越えた!
泣きながらうずくまる辻を静かに眺め落とす。それはまるでトドメの場所を探す様に。
やがて加護の黒目が動きを止める。視線の先に辻の胸があった。その奥に心の臓がある。
狙いは定まった。右手が再び刃を作る。
(あいぼん…)
涙で前も見えず、両手は塞がれ、身動きもろくにとれない。声すら出ない。
逃れる術はもはやなかった。
辻は後悔した。あのときすぐに勝利を確信せず、もう一発殴っていれば…。
こんな風にはならずに済んだかもしれない。立場は逆だったかもしれない。
しかしその様な後悔が無意味であることを、辻は理解していた。
と同時に誇りの念も抱いていたのだ。
自分が相棒としていた娘はこれほどに凄い奴だったのだと。
最高の女とコンビを組み、共に成長し、最高の闘いが出来たのだと。
死に恐怖はしていなかった。最高の敵の手で死ねるなら本望とさえ思えていた。
ただ一つ心残りがあるとするなら…
辻の脳裏に一人の女性の顔が思い浮かんだ。そしてこれまでの思い出が浮かんでは消える。
(これ…走馬灯…?)
加護の右手が辻の胸をえぐり裂いた。
901 :
名無し:02/12/15 11:46 ID:EwNcVkbl
保全
ブィ〜ン
〆⌒ヽ Ш
(‘д‘#)⊃日 <覚悟はええな・・・
(⌒)∪ (⌒) ∫
⊂(;´D`;⊂⌒ヽつ
ヒ〜ン、ボウズハイヤレス〜
川o・−・)ノ保守です・・・
遠い世界で光り輝いていたヒーロー。ののにとっては憧れの存在でしかなかった。
いつからだろう、それが手に届く様になったのは?
泣き虫で臆病で怖がりだけど…でも、ののはそんなヒーローになりたい。
NON STOP!
加護は目を疑った。確かに切った。確かに破壊したはずなのだ。
けれど血が止まっている。傷がふさがろうとしている。そんなのありえない。
頚動脈を切り、左足を破壊し、胸を切裂いた。しかし目の前の娘は生きている。
それどころか再び立ち上がろうとしている。超肉体が傷を塞ぎ込んでいる。
辻希美が再び立ち上がる。加護亜依の眼前に並び立つ。
真の怪物が真の怪物を呼び覚ましてしまったのだ。
(せやった…)
加護亜依の目の前で辻希美が微笑んだ。
(せやったから、うちはののが…)
辻の拳が加護の頬を叩く。破壊の神をも唸らせるであろう破壊力。完璧な一撃。
(…ののが好っきゃねん)
加護は意識を失う。音を立てて崩れ落ちた。
それは辻にとって最後の力だった。もう動くこともできなかった。
少しでも動けば塞ぎ込んだ傷がずれ、再び大出血が吹き荒れることとなるだろう。
(立つな!立つな!立つな!)
(立って!あいぼん!)
矛盾しているのは理解っている。しかし辻の脳裏にそんな二つの想いが巡るのだ。
あいぼんに勝ちたい!でももっとあいぼんと闘いたい!二つの気持ちはどちらも嘘でない。
常識で考えれば、辻のパンチを二回もまともに受けて、立ち上がれるはずがないのだ。
しかし今辻が相手にしているのは他の誰でもない。加護亜依なのだ。
最高の友で、最高の相棒で、最高の敵である加護亜依なのだ。彼女は立つ。
もう意識はないはずであった。ピクリ、指が動く。手が動く。足が動く。体が動く。
その顔に意識は見て取れない。それでも加護亜依は立ち上がった。
足を引き摺り、ゆっくりとゆっくりと辻希美に近づいて行く。
もっとののと闘いたい!その気持ちがだけが彼女を動かしたのだ。
(ごめんね、ののにはもう動く力はないよ…)
加護が辻の前に戻って来た。しかしその後の攻撃はなかった。彼女は静かに崩れ落ちた。
自らの胸に頭を預ける少女を、辻はそっと抱き留めた。紅い血が舞う。
(あいぼんの勝ちれす)
「勝負ありぃぃぃぃぃ!!!勝者!!辻希美!!!」
突然血が止まる。不思議に思った辻が、抱きしめた加護の顔を覗き込む。
彼女は意識を失い眠ったままであった。しかし偶然にも彼女の手が辻の傷口を塞いでいた。
遠くから見る人々には、二人が抱き合っている様に見えたという。
辻は加護を抱きしめたまま退場していった。
辻が動けるのは加護のお陰だった。そのことは誰も気付かない。
試合の結果だけが皆の記憶に残るのである。本当の勝者を知るのはたった一人だけ。
(もう絶対に負けないよ)
小さなヒーローはその腕の中で眠るヒーローに微笑みかけた。
死闘が終わりを告げる。そして、あの三人が再び動き出す。
退場していく弟子の背を、安倍なつみは冷ややかな眼で見送っていた。
やがてかぶりを振ってその場を離れる。その表情に特に変化はない。
矢口真里は走っていた。体中が熱く熱く燃え上がっていた。もう抑え切れない。
自然と笑みがこぼれてくる。安倍!後藤!辻!みんな強え!最高!全員ぶっ倒す!
静寂に包まれた控え室にて、横になり眠っていた後藤真希がその眼を開く。
遠くから聞こえる歓声にて敵の名を確かめると、孤高の王者は再び眠りについた。
イタミワケレス ソヤナ・・・
〆⌒ヽ 〆⌒ヽ
(;´D(;;) (;;;)д‘;)
( つ旦O ( つ旦O
と_)_) と_)_)
・・・ところで辻豆さん、スレ残り足りるの?
908 :
川`.∀´):02/12/18 05:23 ID:daL5D1iq
川`.∀´)<dat落ちしそうだからヤスス上げちゃう。
909 :
名無し:02/12/20 12:37 ID:m+9Xs4+p
保全
なっちにとってもそれはラストチャンスなのである。
地上最強の称号を再びその手にする為の。
後藤真希がいないトーナメントに勝った所で、誰も認めてはくれないだろう。
「これがラストチャンス…」
誰もいない部屋、明かりも点けない暗闇の中、娘は一人呟いた。
闇の中にひとつの影が浮かび上がる。小さな小さな、だけど猛き影。
グラップラーと呼ばれる女。不可能を奇跡に変える女。矢口真里。
こいつに勝たなければ道は開かれない。勝つんだ,倒すんだ。そう頭に叩き込む。
情を捨てる。笑みを捨てる。心を捨てる。ただ勝利の為に…
―――――――――修羅をその身に宿らせる。
扉が開く。闘技場へと通じる薄暗い廊下をゆっくりと進む。光が見える。
光の先に小さな戦士が待っていた。待ちきれないといった顔つきだ。
悪いけどそれはこちらも同じ。
なっちの修羅はもうお前を仕留めたくてウズウズしてるんだ。
入場するのが早すぎた。勢いが付き過ぎて走って来たからだ。
大歓声を受けながら、闘技場の中央で矢口はググゥと溢れる闘気を押え込む。
(待った。この時を一年以上待っていた。いよいよあいつと闘れる)
ずっと表舞台でモームス格闘界の顔と呼ばれ続けてきた娘だ。
逆に影で支え続けてきたのが、この矢口真里である。
「はっきりさせようぜ。なっちか?おいらか?どっちが強えのか!」
ビリビリビリ…
全身に電気が走ったような緊張感。暗闇からあいつが姿を現わした。
(完全に戦闘態勢てな表情してやがる。たまんねえ、疼くなぁ背中が)
矢口の顔にもまた狂気が見え隠れし始めている。もう止められない。
『準決勝第一試合!!安倍なつみVS矢口真里!!』
なっちが構える。グラップラー真里が構える。
『はじめぃ!!』
二人は同時に飛び出した。火花でも飛び散りそうな勢いで腕と腕がぶつかる。
物凄い速さで足と足が交差する。連続攻撃の応酬。汗が飛び散る。
目で追うことも難しい速さ、最強に近き二人だからこそ成せる立ちあい。
この二人に準備運動など必要ない。いきなりクライマックスだ!
矢口は思う。この安倍なつみという女の強さ。
少なくとも油断していた浜崎あゆみよりは強い。間違いなく強い。
安倍なつみには油断の欠片も見られない。全身全霊を込めて自分を倒しにきている。
それがたまらなく嬉しかった。そして最高に楽しかった。
このときの為に生きていたのだという想いさえ込み上げてくる。
(最高だぜ、なっち!)
安倍は思う。この矢口真里という女の強さ。
負ける気はしない。スピードとパワーはほぼ互角。技術も同等と言えよう。
だがリーチに差がある。そしてそれが何より大きい。事実ヒット数は勝っている。
少しずつ押し始めて来ている。矢口の方がダメージは大きい。しかし違和感を覚える。
このまま終わる様なイメージがちっとも湧いてこない。
(なぜ?何なのこの胸騒ぎは?)
(ううん問題ない、いける。勝つのはなっちだ!)
グラッ。ダメージが膝にきた矢口が少し躓く。やはりなっちは強い。
多少の攻撃は受けているものの、致命傷は確実に避けている。
勝負を分ける隙をまるで見せない。なっちの闘いは安定しているのだ。
派手な技の多い矢口と比べて、格段に無駄な動きが少ない。
なっちの優勢は続く。そこで後ろに振りかぶった矢口は起死回生の一発を狙う。
市井戦にて見せた。とっておきの必殺技。中国武術に伝わる軽気孔発徑オリジナルだ。
「セクスィーブィーム!」
「知ってる」
死角からの声。なっちは読んでいた。動作が大きい分、その後に生じる隙も大きい。
安倍なつみには一度見せた技は通用しない。矢口は思わず顔をしかめた。
右ストレートが矢口の顔面を打ちぬく。145cmがサンドバックの様に宙を舞う。
地面に落下する直前でさらに蹴り上げる。もう一度蹴り上げる。殴る蹴る殴る蹴る。
(ありえねえ…)
矢口の体が宙に浮いたまま、なっち乱舞は止まらない。反撃ができない。
(こんなの人間の技じゃねえよ、マジかよ。ヤダよ。まだ終わりたくねえよ!)
(おいらは…おいらはまだ…何にもしちゃいない!)
そのとき、矢口の背中にミニモちゃんの顔が浮かび上がった。
その背中にミニモちゃんの顔が浮かぶ時、矢口は数々の奇跡を起こしてきたのだ。
(寒気!)
なっち乱舞が止まる。違う、止められたのだ。矢口がなっちの腕を掴み取っていた。
そのまま力任せに振り回す。態勢が崩れたなっちはすぐに起き上がる。
その目の前にあったもの。光り輝く矢口の手の平。
セクシービーム!
轟音と共に、くの字に曲がり折れるなっちの体。そこへとどめの一撃。
小さな体をフルに使ったジャイアントフック、拳がなっちの顔を打ちぬいた。
無残に転がり落ちるなっち。
立ち尽くすグラップラー。
だが表情が優れないのは矢口、拳を抱え震えている。背中のミニモも消えている。
「奇跡ってのはその程度か…」
ゾンビの様にムクリと立ち上がるなっち。矢口の頬に大粒の汗が流れ落ちた。
砕けたのは拳の方、なっちはまるでダメージを受けていない。
(冗談だろ)
怖いもの知らずの娘が恐怖を知る。
今まで誰も目にしたことのない恐怖がそこにいた。
強い奴と闘いたい。ずっとそう願って生きてきたんだ。
でも今のおいらは避けたがっている。本物の強者を目の前にして逃げたいと思っている。
正直まいった。安倍なつみってのがここまでの化け物だなんて思いもしなかった。
もしかしたら、あの後藤真希との勝負でも、このなっちは出なかったんじゃないか?
本当に本物のなっち。
安定も爆発力も冷静さも怖さも、全部兼ね揃えた本物。
なるほど、地上最強ってのは、こういう奴にこそ相応しい称号なのかもな。
こりゃ無理だ。いねえよ、こんな化物に勝てる奴なんていやしない。
ちっと嬉しいのは、地上最強の安倍なつみを引き出したのが…
後藤真希でも他の誰でもなく、おいらだったってことかな。
圭ちゃん。紗耶香。ごめん、優勝できなさそう。
でも見ていてね。おいら逃げないから。グラップラー真里の最後の晴れ舞台。
「あちょぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
矢口真里は覚悟を決めて飛び出した。
その先はもう試合ではなく、一方的な殺戮。
勝敗が決まり、審判員達が間に入っても、145cmの勇者は最後まで吠えていた。
勝利インタビューに駆け寄る予定だった平家は、その場を動けなかった。
声を掛けようとした飯田と紺野ですら、その凄まじき気に圧倒された。
「これが本当の安倍さん?私と闘った時とはまるで違う」
「矢口の奴、この気に正面から向かっていったのか」
昨年の王者と元TAP館長をもってしても、近づくことすらできない。
担架により運ばれて行く矢口に付き添う、保田圭が小さく呟いた。
「心まで修羅に堕ちよったか」
一言も発することなく、なっちは退場していった。
控え室へと続く廊下に一人の娘が待っていた。かつて弟子と呼んでいた少女だ。
「もうなっちさんらない!」
修羅は小さく笑みを浮かべ、少女の脇を通り過ぎる。
「お前にあいつが倒せるか?」
「んあ〜良く寝た」
修羅の退場に請おう呼応するかの如く、もう一人の修羅が目覚める。
「さて、いきますか」
準決勝第二試合 後藤真希vs辻希美
917 :
名無し:02/12/25 11:49 ID:cUueF80o
保全
うひょ
919 :
修羅:02/12/28 01:02 ID:PQa7OmyT
しゅしゅしゅ。マジ駄作だね
920 :
名無し募集中。。。:02/12/28 14:23 ID:XLdY3GKl
>>919 禿同くだらね
組み合わせ見ただけで結果が読める
保田、石黒、新垣なんてやられ役専門
基本的に人気のあるメンバーが勝つ
作者の思い入れがプラスアルファされるだけの
お約束とオナニーだけの代物
意外性も何も無い
こんなもの面白がってる馬鹿がいるからレベルが下がる
じゃああんたの書いた小説うpしてみなよ(w
どうこういうのはそれからだ
922 :
名無し募集中。。。:02/12/29 01:45 ID:spwxue+M
>>921 アホか?読んでつまらんと思ったものをつまらんと言って何が悪い?
自分で小説書かなきゃ文句すら言えないのか?
ちょっと貶されたくらいでグダグダ抜かすならこんなとこに発表しなきゃいいだろ
絶賛だけされたきゃ自分のHPで書け
>>922 釣られて糞レスするあたりが冬厨そのものだな。あほくさ
924 :
名無し募集中。。。:02/12/29 01:52 ID:spwxue+M
>>923 正論突きつけられて反論できなくて捨て台詞か?
アホは身のほどをわきまえて中途半端に絡んでくるな
925 :
名無し募集中。。。 :02/12/29 06:50 ID:5L5Mnerl
いいよいいよ
>>920 人気≒強さの設定なんだからそれでいいと思うが。
それに前半のトーナメントで紺野が優勝したのは十分意外だったと思うが、
お前はそれを予想できていたのか?
なにより、お前は石黒が決勝に進む展開を望んでいるのか?
新垣の活躍が読みたいのなら、狩のいたずらスレがおすすめ
おまいらもちつけ
928 :
名無し募集中。。。:02/12/29 16:03 ID:nocR19Cf
>意外性も何も無い
920は水戸黄門をツマンネと思うタイプらしい。
”好き嫌いは人それぞれ”あるからなぁ。それはそれでいいんだろうけどサ。
面白がって読んでいる私は「馬鹿」ですか。 ケッ、余計なお世話だよ。
で、私のような者が居るから「レベルが下がる」と。
彼の批判はきっと「レベルの向上」に繋がるんだろうな。
いまでも十分に楽しんでおるんだが、より良くなるなら大賛成だ。
是非頑張ってくれ。
釣られて発言すると
>>919は素直な感想
>>920は秀同とか言ってる時点で只のアホ、同じ事を繰り返し言ってるだけ。
その後に反論する奴もアホ。小説の感想以外の事を書いてる所が。
もちろんオレもアホでーす。
ここからは感想書こうぜ。
次スレ使ってでも、もうちょい詳しく戦闘の内容を書いて欲しいな。
前半は面白かったです。
931 :
お〜い!:02/12/29 20:22 ID:vomo1D7C
正直、後藤辻はどっち勝つか予測つかない
なちごまもみたいし、なちののもみたい
寝起きの後藤真希は顔を拭き、鏡に写る己の姿を見つめる。
(やっとここまで、ここまでこれた。あと一つ、あと二つ、それで終わる)
(ううん、終わるんじゃない。それで始まるんだ。私の戦いは…)
宇多田ヒカル、浜崎あゆみ…こんな猛者達が渦巻く世界へのたった一人での船出。
躓く訳にはいかない。後藤真希は最強のまま卒業して行かなければいけないんだ。
(貸しもできた…)
静かに眼を閉じ、未だ見ぬ世界に想いを馳せる。さぁ、行こう…
「ほんまにその怪我でやる気か?ボロボロやでお前」
「あいぼんらって、ボロボロれすよ。」
病室のベットの上で、出て行こうとする相棒に呆れ果てる加護亜依。
あの怪我でもう動ける辻の驚異的タフネスが信じられなかったのだ。
「のの…」
「なに?」
「負けんなや」
辻はニッコリと八重歯を見せて笑い、駆け出していった。
奇しくも昨年の準決勝と同じカード。辻にとってはリベンジマッチとなる。
勝ち残り、決勝でなっちと対峙するのは果たして後藤か?それとも辻か?
宿命の激突が幕を開ける。
『はじめぃ!!』
開始の合図と共に二人は互いの顔を見詰めあった。
「楽しみだよ、この一年でどのくらい腕をあげたか」
「今度は絶対に勝つからね!」
スイッチが入る。昨年の激突と同じ様に…。
両者共、宇多田ヒカルと加護亜依にやられた怪我で、とても五体満足とはいえない。
それでも、その攻防は昨年のそれを遥かに上回る勢いだ。
競い合っているのだ。この一年でどちらがどれだけレベルアップしたか。
突きの一つ、蹴りの一つに到るまで、五臓六腑に染み渡る。
汗が舞い、血が飛び交う。二人は止まらない。笑っている。
「ぷいん!ぷいん!ぷいん!」
「双龍脚!」
互いの技と技がぶつかり合う。ダウンしてもすぐに立ち上がる。またぶつかる。
怪我や痛みのことなど、もう二人の頭にはなかった。
(鈍らせる)
(この子は本当に、私の決意を鈍らせる)
(こんな闘いができるなら、まだここに残ってもいいのではと私に思わせる)
(最高に楽しい!最高だ!この感じなんだよね。私が望んでいたもの)
(あのなっちとの闘いだよ。あれと同じ)
(でもいけない、私はもうここに残っていてはいけない)
(ここにいたら私は、いつまでもあんたやなっちに甘えて生きることになる)
(後藤真希だ。私は後藤真希なんだ。そうやって生きるんだ!)
(辻、あんたを倒して、そしてなっちを倒して!さらに上へ行くんだ!)
(もう…ここにはいないぜぃ!)
ふいに後藤の体が大きくブレル。その数分の一秒、辻は彼女を見失う。
その技は、外の世界での闘いにととっておいた新必殺技。
「サン・トワ・マミー!」
上中下から成る三連打に、辻の体は波打つ様揺れ落ちた。
(とっておきなんていらない。今このときに全てを出し尽くす)
(後藤真希の全てを賭けて、辻希美をぶっ倒す!)
(やっぱり強い、れも負けない!あいぼんと約束したんら!)
崩れ落ちた辻はすぐに起き上がろうとする。しかし足に力が入らずまた転ぶ。
顔を上げると、後藤が静かに自分を見下ろしていた。
「立て、まだ終わっていない。まだ全てを出し切ってはいない」
ゾクッとした。辻は息を整えすぐに立ち上がる。
(後藤さんは全てを見せようとしている)
嬉しかった。後藤真希が自分を認めたのだ。ようやくなっちに並んだ気がした。
「辻も辻の全てで貴方を受け止めます」
まだ子供じみていた辻の表情に、大人の影が浮かび上がった瞬間である。
安倍なつみはじっと激闘の行く末を見守っていた。
去り行く最高にして最強のライバルか!?
ずっと自分を追いかけてきた愛弟子か!?
決着の瞬間は近づいている。
モームス最大トーナメント、そのラストバトルのカードが決まる瞬間だ。
937 :
:02/12/31 04:51 ID:DDBZkEva
素晴らしい!
ageておこう
新年明けましておめでとうございま〜す!
辻豆さんは今日の日テレ特番を見て、エンディングの変更を
考えてるのに5000ペヒニ賭けるよ!
辻ちゃんは世界一!マジ感動した!ありがとう!
興奮して更新もできやしないよ!
しなくていいけどね
正直新スレが必要になってない?
と、言いつつ保全
943 :
ほい:03/01/03 12:21 ID:L/0KHwpw
1000
走る。打ち合う。殴る。蹴る。締める。投げる。また殴る。何度繰り返しただろう。
無限に続くと思われるこの連鎖。何時になったら終わるのだろうか?
諦めれば、自分が敗北を認めれば、すぐに終わる。すぐに解放される。
しかし後藤真希も辻希美も絶対に退かない。二人共とっくに限界は超えている。
もう駆け引きもなにもない。ただの比べ合いだ。己のすべて。そのどちらが上であるか?この一点に収縮される。自分とあいつのどっちが強いのか?この一点!
後藤は辻にも劣らぬパワーを持っている。速さは僅かに後藤が上だ。
体力はほぼ互角。技と経験では明らかに後藤が勝っている。それ以外の要素…。
言葉では説明できない領域、格闘センス「オーラ」と呼ばれるもの。
後藤真希はこのオーラが、他の追随を寄せ付けぬ程圧倒的であったのだ。
それが後藤をチャンピオンとして君臨させていた最大の要因であった。
しかし、しかしだ。今、後藤真希は飲み込まれている。目の前の小さな娘に。
(辻?辻?あんた?なんだよそれ?なんで引かないの?)
(いつもなら、みんなここで倒れるんだよ。無理だって思って諦めるんだよ)
(私の時間なんだよ!)
後藤真希の空気が変化を余儀なくされている。彼女の空気へと。
辻希美のオーラが、後藤真希のそれを凌駕した瞬間。辻の時間!
速く、強く、そして美しかった。これが後藤真希という娘だった。
その一挙手一投足がモームス最大トーナメントの歴史そのものである。
歴史が崩れ落ちようとしている。一人の小さな娘の手によって…。
ひとつの歴史が終わる。それは新しい歴史の始まりでもある。
(気付かない振りをしていただけかもしれない)
(私は逃げようとしているだけなのかもしれない)
ついに辻の拳が後藤の頬を真っ当に捕らえる。灯火が消える。
(もうわかったよ)
(彼女はとっくに私を追い越していってたんだってこと)
『後藤真希!!ダウン!ダウン!ダウーーーーーーン!!!』
(宇多田さんゴメンナサイ。どうやら私は貴方に貸しを返すことはできなさそうです)
『立てない!後藤動けない!審判団が腕を大きく振った!』
(その代わり近い将来、トンデモナイのが貴方達の前に立ちます。きっと。)
『勝利だあああ!!辻希美の勝利だああああああ!!!』
(覚悟しとけよ、へへっ)
孤高の王者、最期の闘いが終わる。その顔にはなぜか笑みが浮かんでいたという。
飯田と加護が闘技場を下りる勝者の顔を恐る恐る覗き込む。
「えへっ」
それは普段の、まだ幼さの残る笑みであった。
「本当にたいした子だよ、あんたは」
安堵した飯田は込み上げる涙を堪えながら、辻の髪をクシャクシャ撫で回す。
「こうなったら、いくとこまでいったれや!」
あいぼんがののの胸をドンと叩く。衝撃で辻はちょっとむせた。
「すぐにうちもその横までいったるから」
仰向けになり動けない敗者に駆け寄るのは、保田と吉澤そして市井。
心配そうな三人の顔を恥ずかしそうに見上げる後藤。
「アーかっこ悪いとこ、見せちゃった」
三人のゲンコツが次々に真希の頭上に降り注ぐ。
「バーカ!一人だけかっこつけすぎなんだよ!」
さらに吉澤は真希のほっぺたを引っ張る。変顔に苦笑しばがら市井は聞いた。
「負けて悔しいか?」
少し思考した後、アザだらけの顔を緩ませて真希は答えた。
「ちょこっと」
保全。
948 :
決勝戦:03/01/05 19:28 ID:sdQwaXw9
本戦に臨みし者達。
紺野あさ美。高橋愛。飯田圭織。市井紗耶香。矢口真里。松浦亜弥。浜崎あゆみ。
後藤真希。ソニン。吉澤ひとみ。石川梨華。福田明日香。加護亜依。鈴木あみ。
惜しくも本戦出場を逃した者達。
小川真琴。保田圭。りんね。藤本美貴。あさみ。アヤカ。中澤裕子。
柴田あゆみ。ミカ。ダニエル。石井リカ。里田舞。新垣里沙。石黒彩。
リザーバーとして挑みし者達。
宇多田ヒカル。MIYU。MIZUHO。TAKAYO。MAIKO。上戸彩。AKINA。BOA。
その他この何十倍もの数の格闘士達の屍を越えて
今二人の娘がこの遥かなる頂きへと手を掛けた。
安倍なつみ。辻希美。
さぁ決勝戦だ!
捨てられた子犬みたいな眼をして、どこまでも私の後を追っかけてきた。
「悪いけどなっち、弟子とかとる気ないから」
冷たく突き放しても、あんたは首を横に振り続けた。
走って逃げても、あんたは一緒に走って追いかけてきた。
躓いても、泣くのを堪えて、どこまでもどこまでも…
「強くなりたいのなら他にいくらでも方法はあるでしょ?」
ある日、私は言ったよね。そしたらあんたはこう答えた。
「なっちさんらなきゃ駄目なのれす」
私じゃなきゃ?アハハ、あいつは何か勘違いしている。神様でも見る様な眼で私を見てる。
なっちはそんなもんじゃない。自分のことしか考えてない汚い人間だよ。
どうやって後藤真希に借りを返すか?どうやってチャンピオンに戻るか?
考えてるのは、そんなことばっかりだ。
なのにあいつは諦めなかった。私の元を離れようとしなかった。
そして強くなった。後藤真希に勝ってしまう程に。私を脅かす程に。
邪魔だ。邪魔だよ。辻希美。
なんにもなかったののに、勇気と夢をくれたのは貴方れした。
『安倍なつみダウーーーン!!立ち上がった!!また立ち上がったぁーーー!!!』
あのときの映像は、今もまだ鮮明に瞼に焼き付いているよ。
金色の髪をなびかせ、天使の様に圧倒的な存在感の後藤さんに、立ち向かってゆく姿。
貴方が教えてくれました。力は暴力じゃない。時にそれは人を勇気付ける。
なっちさんの強さは、国境を越える歌みたいに、みんなに響き渡る。
ののもそうなりたかった。
強くなって、ののを見ている子供達に勇気をあげたかった。
だからののは貴方の元へ行った。あなたの様になりたかったから。
でも今は違う。
(今のなっちさんはののが好きだったなっちさんらない)
今の貴方が人に与えているものは恐怖。力は暴力でしかない。
ののがあなたを止めます。
それが、あなたに勇気と強さをもらった者としての義務れす。
ののがなっちさんを倒します。
決勝の舞台へと向かおうと腰を上げたなっちの前に、一人の女が立ちはだかる。
その女は全身を包帯で覆われていた。たった今医務室を抜け出てきた様な雰囲気だ。
「…」
なっちはその女を無言で睨み付けた。
「ごめん。負けた」
「…」
「でも悔いはない。私じゃ多分あんたを止められないから」
「…」
「辻は強いよ。あの子ならできるかもしれな…」
「…どけ、負け犬」
なっちは入り口に立つ真希を強引に押し倒した。そのまま無言で去って行く。
安倍と後藤。二人はすでに勝敗を決していた。前回の大会の後、人知れず闘っていたのだ。
そのときの結果、そして今日の結果が、なっちの言葉にそのまま反映されている。
(辻。なっちは私より強いぞ)
真希は、暗い廊下を一人歩くなっちの背中をいつまでも見続けていた。
ずいぶん距離があるにも関わらず響く、殺気で胸が詰まりそうになりながら…
伸びた髪を上部で一つに束ねる。ポニーテルが小刻みに揺れた。
(ついこないだまで、まだまだお子ちゃまだと思ってたんだけどな)
ここの所めっきり大人っぽくなってきている辻を、複雑な面持ちで見下ろす飯田。
辻はそれ以上のスピードで、どんどんどんどん強さに磨きを掛けている。
福田戦、加護戦、後藤戦。それこそ一試合ごとにである。
TAPの道場に殴り込みに来たあの頃が懐かしく感じる。
辻がどこか遠くの世界へいってしまうようで、寂しくなった。
「ほえ?ろうしたの?」
そういって顔を覗き込むおチビちゃんは、まだあどけないいつもの辻だった。
「何でもない。勝ってこい!」
「うん!」
飯田は辻の背中を押して送り出した。その手が離れたとき、なぜか胸がチクリと痛んだ。
もう今の辻希美が帰ってこない様な…そんな気がしたのだ。
辻希美は駆け出していた。あの人の待つ場所へと、まっすぐに。
更新乙、でも真琴→麻琴ですねw
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|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
∬;´◇`∬ ツイニ ツジマメサンニマデ・・・
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「辻豆さんは昨日のニュースで俄然書く気が失せた」
に5000ドル賭けるよ・・・
何度も訪れたはずの場所なのに、風景がいつもと違って見える。
眩しい照明、騒ぎ立てる観客、闘技場へと伸びる一本の道。
その先に待っているのは、ずっとずっと追いかけ続けたあの人。
「なっちさん」
「来たか、のの」
言葉が続かなかった。言いたいこと、伝えたいことは山ほどあるのに。
この人の前に立つこの瞬間を、私はずっとずっと待ち焦がれていたはずなのに。
私が戸惑っていると、なっちさんはスッと拳を前に出してみせた。
(そうだ!)
言葉で語る必要は無い。この円形の空間にはもう私となっちさんの二人だけ。
誰も邪魔する者はいない。拳で語れ!
私の伝えたい気持ちを!想いを!感謝を!反抗を!全部!その手に乗せて叩き付けろ!
二人の拳と拳が軽く触れ合う。それが始まりの合図。
モームス最大トーナメント最期の闘いの始まりだ!
(地上最強はたった一人、なっち一人だべさ!)
なっちの拳が辻の胸を強打する。なっちの蹴りが辻のふとももを削る。
辻の反撃は届かない。一方的に辻の肉体を打ちのめしてゆく。
元弟子に対する優しさや甘え等は一切ない。むしろ他の誰より残酷に。
(強い、強い、強い、なっちさんはやっぱり強い。本当に強い)
修羅だ。なっちは人の姿をした修羅に限りなく等しいまでの強さを得ていた。
(飯田さんれも、紺野しゃんれも、矢口さんれも、誰も止められなかった…)
しかしどれだけ叩いても。辻の眼は、辻の心は打ちのめされてはいない。
(ののしかいないのれす。なっちさんを止めるのはののなのれす!)
アザだらけの体に力を、腫れ上がった顔の中で瞳が光る。一撃、たった一撃でいい。
(なっちさんの眼を覚ますことのできるだけのパンチを一発。それらけれいい!)
なっちの攻撃は止むことを知らない。鬼神の如き気迫と殺気。
顔をガードしていた右腕をゆっくりと胸の位置に運ぶ。全ての力をその腕に…
(あなたを見て、あなたに憧れて、あなたの様になりたくて、ここまれ来た)
(れも今のあなたはのの好きななっちさんらない。今のあなたと闘いたい訳らない!)
(本当のなっちさんは、強くて、最高にかっこいいなっちさんら!)
辻の右腕が閃光と化した。
その拳はあまりにまっすぐで、あまりに純粋で、あまりに無垢であった。
なっちをそれを避けることができなかった。
いや厳密には、避けたくないと心が反応してしまったのだ。
その拳を受けてみたい、何故かそう思ってしまったんだ。
修羅の中に残された安倍なつみの想いが、辻希美の声に呼び起こされたのだ。
(のの…)
(そうだ、なっちはののと…)
(強くなったののと闘いたかったんだべさ)
辻希美の全てを込めた右拳が、安倍なつみの体に届いた。
その強さは…誰かを傷つける為のものなんかじゃない。
その強さは…誰かに勇気を与えるもの。
辻希美の強さは…世界に夢と希望を振りまくんだ。
(…ありがとう)
最期の瞬間、辻希美の耳に聞こえた声は、間違いなく大好きなあの人のものである。
「後悔してるんじゃない?」
耳元で囁かれ、驚いた後藤真希が振り返ると、そこには見覚えのある顔があった。
「藤本…美貴…」
「クスッ、卒業なんてしなけりゃ良かった。そんな顔してるよ」
「何を!そんなはずな…!」
「あんな美味しい獲物を食らうことが、もうできなくなるなんて可哀想な真希ちゃん」
藤本の視線はずっと、激闘を終えた二人の方に注がれている。
「安心して。ボクが君の代わりにあいつらを食うから」
舌なめずりの音。後藤は不快を露骨に表情に出す。
「地上最強を目指すってのも悪くない。そう誓ったんだ、彼女に。」
その手には位牌が握られていた。そこに書かれた名は…
真希は悟る。自分がいなくとも歴史は続いて行くのだと。
「彼女に伝えておいて。束の間の栄光を楽しんでおけってね」
新たなる修羅はすでに誕生していたのだ。
川原で組み手を続ける娘が二人。
「せやけど惜しかったなぁ、のの。最後の最後で気絶やなんて」
「いいのれす!来年もう一度挑戦して今度は絶対に勝つのれす!」
「させへんわ。来年なっつぁんを倒すんはうちや!」
「ダメー!あいぼんれもこれは譲れないのれす!」
「なんややる気か?」
「やる気れす!」
にらみ合いを続ける二人に、おずおずと近づく影があった。
「あのー」
辻と加護は喧嘩を止めて、そちらを振り返る。
まだ幼い少女が一人、恥ずかしそうに立ち尽くしていた。
「私…この前の大会を見て…あの…」
「感動…しました。私も…あなたの様に…強く…なりたいんです」
END
961 :
オリー:03/01/09 18:00 ID:2m6QNsd5
いい終わり方だ。
感動した!!
新スレで3rd STAGEが始まるんでせうか?
963 :
:03/01/09 22:20 ID:cY/MH06e
なんだかんだで良かったよ
しばらくは充電するのかな?
まぁまた書いてくださいよ。お疲れさんでした>辻豆氏
965 :
:03/01/10 01:12 ID:W3yk5xjH
うまい事モームスネタと絡ませてある所が凄い!!
辻豆さんお疲れ様でした!!今回は全くバキネタ無かったすね。
966 :
山崎渉:03/01/10 04:19 ID:4v/SGyEY
(^^)
>>961 ありがとうございます。ラストはこれしかないと決めてました。
藤本の方は完全に即興ですけど、うまい具合にできて良かったです。
>>962 今の所3rd STAGEは考えてないです。外伝が完結版でしたので。
ただ6期に僕の格闘魂をくすぐる娘が入ったら、書きたくなるかもしれない。
>>963 藤本加入についてはまだ微妙。ただ娘小説界にとっては新しい風になると思う。
>>964 しばらく充電するつもりです。仕事が忙し過ぎるので落ち着くまで。
>>955 元々ネタ書きだったので、ネタ絡ませるのは得意分野です。
1がバキすぎたから外伝は自分の思い入れ重視に変更しました。
>>966 無事に終わって、僕の顔もそんな感じです。
968 :
山崎渉:03/01/10 16:38 ID:ihkdfu2Y
(^^)
辻豆さんお疲れ様でした!
藤本事変もサラリと組み込まれてるな
庵的ベストバウトは矢口VS浜崎か場外戦の藤本VS吉澤、心が燃えたス
幽白ぽかったけど、藤本と最後のシーンは巧いと思った。
974 :
川`.∀´):03/01/14 08:58 ID:W5+yzbxc
川`.∀´)<落ちそうなので上げます御免
4期では辻
5期では高橋
を応援していたが今回は亀井だ
のんSTOPうどん食べたい
いよいよ今日ですね。
さてどうなることやら。
980 :
名無し募集中。。。:03/01/20 00:08 ID:LSmXp8n4
ちゃんと1000まで使い切ろう!
981 :
名無し募集中。。。:03/01/20 00:09 ID:LSmXp8n4
age
982 :
名無し募集中。。。:03/01/20 00:11 ID:LSmXp8n4
誰か協力してくれぇ
983 :
名無し募集中。。。:03/01/20 00:11 ID:LSmXp8n4
983
984 :
名無し募集中。。。:03/01/20 00:15 ID:LSmXp8n4
984
985 :
名無し募集中。。。:03/01/20 00:15 ID:LSmXp8n4
985
986 :
名無し募集中。。。:03/01/20 00:15 ID:LSmXp8n4
986
987 :
:03/01/20 00:17 ID:D2QtjqoE
>>ID:LSmXp8n4
次スレ出来てないうちは止めろ!!!
人間のカスめ!!!
988 :
辻っ子のお豆さん:
実は池脇千鶴が大好きで大好きで