モーヲタは、常識者か非常識者か。

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58しのび寄る影
「な、何いってるんれすか?ののはののれすよ。」
「そうよ。私も梨華よ。人間以外の何者でもないわ。」
「二人とも、どうしたの?」
慌てる二人を、加護は不思議そうに見上げた。
「…やはりか。ロボがそんなに簡単に作れるとは
 思わなかったが、何にせよもう後には退けない。
 力ずくにでもあいぼんは頂くぞ!!」
男がそう言うと、勢いよくトランクが開いた。

「──!!」
「あいぼん、見ちゃダメれす!」
「えいっ!!」
とっさに梨華が加護の目を手で覆った。
「何、何!?てっぽーとか!?」
「……石川君。あいぼんを連れてってちょーだい。」
梨華はコクリとうなずくと、加護の目を覆ったまま走った。
「ちょっと梨華ちゃん。どこ連れてくのー!?」
最織田は加護が去ったのを確認すると、男に向き直った。

「──さて、と。……お前のそれは何じゃー!!」
「それ呼ばわりされたくないな…。
 この岸尾太郎様の最高傑作をな!!」
高らかに叫ぶ岸尾の横にいたのは、まさに加護亜依その人。
…ではなく、加護型ロボのあいぼんであった。
59しのび寄る影:02/04/09 15:18 ID:WVXchW08
「可愛かろう。何せ俺は天才だからな。
 …ただ残念なことに、『細部』が未完成なのだ。」
白いふりふりのワンピースに身を包み、
あいぼんはにっこりと微笑んでいる。
「…確かに可愛いが、そのあいぼんを完成させるために
 生身のあいぼんを誘拐したと言うのか!?」
「そうだ。悪いか。」
「悪いっちゅーの!お前、それ犯罪だぞ!!」
「ほんまゴメンなさい。悪いコトなんは分かってんのやけど。
 やっぱ、うちかて完璧な体がほしいし…。」
あいぼんは白いフリルを揺らして、ペコリとお辞儀する。
「か、関西弁──!?」
「ふ。どうだ。完璧だろう。」
「…相当な趣味入ってるな。お前のようなキショヲタを
 娘。には近づけさせん!!」
「馬鹿め。関西弁がいいのではないか。
 お前こそ、ちんけに覗きなんかしながら、
 ロボに『てへてへ』言わせてんだろ。」 
「何をぉ!こんちきしょお。喧嘩売ってんのか。
 よしっ、ののたん。こいつを懲らしめてやれ!!」
「望むところだ。あいぼん、迎え撃て!!」
二人は各々のロボを見やった。
60しのび寄る影:02/04/09 15:21 ID:WVXchW08
「ねぇ、ねぇ。電ボのモノマネやってよぉ。」
「しゃーないな。その代わり、ののもウドやりぃや。」
「いいれすよ。じゃあ、ヒツジもやるから、ガクトさんもやってね。」
ニ人の声も届いていないといった様子で、
ののたんとあいぼんはじゃれあっている。
「それにしても、あいぼんのおっぱいおっきいれすね。」
「コレか?でも、先っちょは未完成なんやけどな。
 おっ、なんや。ののにも小っこいふくらみが。」
「やっ。もう。あいぼん、さわっちゃだめれす。」
「………。こういうのってイイな。」
「…ウン。」

「…あのー、編集長。何やってるんですか?」
「あ。石川君。……はぅあっ、忘れてた!!」
梨華が話し掛けなければ、一生ののたん達のやり取りを見ていただろう。
「やい、岸尾!!もう誘拐なんてすんじゃねーぞ。」
「そんなこと言われても無理だ。完璧なあいぼんを作らなければ…」
ズシンッ──。
岸尾の言葉が終わる前に、爆音が辺りに轟いた。
「な、何だ!?」
音の先にあったのは、グシャグシャに潰れた車だった。
「ふう。これでもう誘拐できないですよね。」
梨華は、車の上で晴々と言ってのけた。
「おおぅ。石川君、ナイス!よしっ、ののたん帰るぞ。」
潰された車の前で力なく座り込む岸尾を尻目に、
最織田はののたんを呼んだ。が、その声に応じない。
「おーい、ののたん…え!?」
「サンタなんておらへん。」
「いるもん!京都に。」
「おらへん!」
「いるもん!!」
「だぁああ。サンタ論議やってるし!!」
最織田は改めて自分の天才振りを実感したのであった──。


第二話おしまい
ののロボのある生活・おしまい