感動ってすてきやん

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80赤き涙を流す者
【最終章】終焉

雪は止む気配さえ見せずに降り続けている、もう歩くのもまま成らない位に積って来ていた
真希姉様達が出掛けてから、どの位の時が過ぎただろう、待ってなさいと言われていたにも
かかわらず、どうしても心配で森へと出て来た亜依と希美、あちこち探し回ったが中々見つけられず
いたが、丘の真下のあたりに来た時にその異変に気づいた、もうあたりは暗くなってきている
のに、丘のあたりから眩しい程の明かりが漏れてきている、妙な胸騒ぎがする、丘に登るには
直接は行けないので、少し遠回りになるが登れる所まで2人は急いだ、丘の所の明かり
もちろん、その事も気がかりではあるのだけれども、亜依は何か別の事で、変な気分になって
いた、自分でもそれが何なのかは分からない、只、あきらかに何かを思い出しそうな気がしていた」
失っていた記憶、もうそれ程は取り戻したいとは思わなくなっていたここに来るまでの自分
それがあの丘に近づこうとするたびに、少しずつ蘇ってきそうな気持ちだった、
81赤き涙を流す者:02/04/21 04:59 ID:HHReY4AO
本来失った記憶を取り戻せるのなら、それ程嬉しい事は無いに違いない、しかし亜依にとっては
いや、今の亜依にとってはと言うべきだろう、嬉しいという感情よりも、むしろ怖れの方が
勝っていたのである、記憶が戻ると戻らないとに関わらず、一つだけはっきりしている事
それは、自分は魔女では無いのだという事、そう、人間なのだ、その人間の自分の記憶
が戻ったら、亜依はここを出て行かなくてはならなくなるだろう、今の亜依にはそんな事
望むどころか、絶対に嫌だ、真希姉様と離れて暮らす事など想像すらしたくない、でも
人間の私は?どうなんだろう、人というのは物の見方や価値観によっては、同じ物を見ても
まるっきり違う印象を受ける生き物だ、今魔女と共に暮らす亜依は、人間に強い恐怖を
感じる、のと同様に人間の記憶を取り戻した亜依にとっての魔女は、やはり怖れ嫌う存在
になるのだろうか、そんな事になるのならいっそ、記憶なんか戻んなきゃいいのに・・・
希美「姫、あれ・・・」
あれこれ考えていた亜依に、希美が指差す方向を見るように促す、丘が見える位置まで
来た2人の目に飛び込んできたのは、丘の周りを取り囲むように無数に広がった警察隊と
その先頭にいる、女性だけで構成されたエンジェルの隊員達、そしてその隊員達の目線の
先にいる真希達魔女だった