囚われし者
愛は震えが止まらなかった、背中が焼けるように熱くて痛い、でもそんな事よりこれから私は
どうなるんだろう、気が付いた時には車の中にいた、動こうにも体の自由がきかない、
背中の痛みもあるんだが、何かで体を縛られているので身動きが出来なかった
車に乗っていたのは3人か、4人の人間、戦って勝てる状況では無い、もっとも相手が1人でも
勝てないと思うけど、そのうち車が止まり、車から降ろされどこかの建物へと連れてこられた
そして連れてこられた部屋の奥の物置か何かなのか、狭い部屋に閉じ込められている
部屋の中には更に何人かの人間がいた、どうしよう・・・愛だって、れっきとした魔女だが
だからといって、何でも出来る訳では無い、もちろん愛にも得意な魔法はある、というより
これは愛にしか出来ない魔法なんだが、目さえ合わせる事が出来れば・・・
相手に自分の目を見させれば、一種の催眠術のような効果を与える事が出来る、要するに
しばらく見つめ合ってさえくれれば、その相手は無条件で愛を好きになってしまうのだ
効果はそれ程長くは続かないけど、それで逃がしてくれさえもらえれば・・・
もう、それしかない、何とかその機会さえつくれれば、いくらなんでもずっとこのまま
なんて事はないだろう、そのうち誰かここに入って来るはず、まあその目的にもよるけど
殺すつもりなら、もう殺されてるだろうから、たぶん・・・大丈夫だろう、と思う、問題は
目を合わせてくれる状況をつくれるかどうか、出来れば誰か1人で来て欲しいんだけど
そう都合よくいけばいいけど・・・
そんな事を考えていた時、突然ドアが開いて、誰かが入って来た、愛の心臓がより激しく
動き出した。
(決議)
なつみ「どうゆう事なの?」
よく会議の時などで使う、円形のテーブルを囲むように座れるソファーに全員座っている
ひとみ「何がですか?」
香織「あの子の事に決まってるでしょ、魔女よね?あの子」
ひとみ「そうですよ、分かってるなら、今更どうゆう事もないんじゃないですか?先輩方
だって知ってるでしょ?人間が入っていけるのは森の中まで、その先の世界にまで
は入る事は出来ない、どういう訳か・・・ね、なつみさんの妹さんを救出しに行くは
いいけど、この問題をどうするつもりだったんですか?先輩方」
真里「何にも分かってないのねーあんた、だから雪になるのをなつみさん達は、今まで
待ってたんじゃない、雪が積れば足跡が残るでしょ?その足跡を追うのよ」
自分だってついさっき知ったくせに、心の中で梨華が呟く
ひとみ「ふ〜ん、で?森に魔女が足跡を残してくれる保証は?その前にこれだけの吹雪
の中、森に出掛けてくれる魔女がいます?先輩等が言うように、足跡が残る
危険を侵してまで? 」
真里「あっ・・・・・・」
なつみ「・・・・・・・・・・」
そのとおりだ、それはなつみも考えていた事だっただけに、何も言えなかった、分かっては
いたのだが、なつみにしてみれば、もうそのあまりにも薄い可能性に賭けるしか無かった
のである
香織「・・・・それで?皮肉はいいから、あんたの意見を言ってみなよ」
ひとみ「ふ、いいですか、さっきも言ったように、人間には何故か入れない世界、でも
魔女なら?当然入れる、なら足跡なんか追わなくても、直接魔女に案内してもらえば
問題無くなるじゃないですか、しかも、いざという時には人質にもなる、どうです?」
真里「なるほどね・・・人質って言うのかな?魔女でも・・・」
どうだっていいでしょう、んなこと・・・・梨華である、口に出して言えばいいんだが、先輩に
そんな事の言えるタイプではなかったりする
香織「でもそれじゃあ、最初から喧嘩売るようなもんだよ?あの子怪我してるじゃん、
撃ったんでしょ?あんた達」
真琴「あの〜すいません・・・・・」
もちろんひとみの命令に従っただけなのだが、撃った真琴が誤る
ひとみ「謝る事はないよ、別にいいじゃないですか、元々戦争は避けられないんだから
それとも、お話し合いでもするつもりですか?先輩」
香織「あんたねえ」
なつみ「いいよ香織、ひとみの言う通りだし、それに、もうやってしまった事は仕方ない
からね、でもね、ひとみも勝手な行動はこれっきりにしなよ、いい?」
ひとみ「・・・・・分かりました」
普段はおとなしいんだが、何故かなつみの言葉には逆らえない何かがある、それは強気の
ひとみとて例外では無かった、その時梨華が立ち上がって歩き出した
香織「どうした?梨華」
梨華「あ、あの子怪我してるんでしょう?せめて手当てくらいしてあげようかなって」
なつみ「ああ、そうだね、じゃあお願いね」
軽くうなずいて、救急箱を手に魔女のいる部屋のドアを開けた。