「辻と後藤」復活希望スレ

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632名無し娘。

モーニング娘。ライブ白血病の娘。を救えツアー最終日。
会場は超満員。もちろん相変わらずドナー登録のテントが張られている。
数百人の列がその前に並んでいる。

そのとき楽屋ではメンバーたちが出演前の休憩を取っていた。
吉澤は久々に味わう緊張感を懐かしく思っていた。

「すみません、失礼します」
その楽屋に、骨髄バンクの担当者が現れる。

「あ、どうも。どうされたんですか?」
メンバーたちは、楽屋にはめったにやってこない
骨髄バンク協会の人間が楽屋に現れたことに驚いた。
吉澤も何事かと思って振り返る。

「じつは、嬉しいお知らせがあります。吉澤さんのドナー適合者が見つかりました!」
担当者は嬉しそうにそう告げた。

「うそ!?マジで?」
「やったー!」
楽屋がいっせいに歓声に包まれる。
メンバーたちはおのおの抱きあって喜びを分かちあう。

「嬉しいよぉ……、嬉しいよぉ……」
ついに見つかった。やっと、やっと見つかった。
よっすぃーが治る。よっすぃーが助かる。
それを想うだけで、石川は既に泣き出していた。
「梨華ちゃん泣きすぎ。キショ。もっと明るく喜べよ!」
矢口の突っ込みも浮き足立っている。

喜びの中で呆然としている吉澤に後藤が話し掛ける。
「やったよ、よっすぃー。これで治るよ」
後藤は小さくガッツポーズをする。
すでに、吉澤はなにも答えられなかった。

みんなの気持ちと努力のおかげで、ドナーが見つかった。
本当に彼女たちは助けてくれた。
自分ひとりでは出来なかった。
モーニング娘。のメンバーになれてよかった。
メンバーたちへの感謝の気持ちで胸が一杯になった吉澤は、
小さく頷くだけで、なにもいえなかった。
嬉し涙が頬を伝うだけだった。

メンバーたちは吉澤を取り囲むようにして、喜びを分かち合っていた。

633名無し娘。:02/05/22 11:32 ID:K6sw/Ste

ライブステージが始まる。吉澤は舞台の袖で彼女たちのステージを見ていた。
観客たちの歓声が聞こえる。もうすぐだ。もうすぐ私もあそこに立てる。
そんな気持ちで胸の鼓動が早くなる。病気で動悸が激しくなるのとはまたちがった、
胸の鼓動だった。

プッチモニのステージが始まる。
小川のセンターは無事観客にも受け入れられているようであった。
自分があの場所に立っていないことになにか不思議な感じがしていたが、
それ以上に輝いている小川、そしてそれをフォローしていく保田と後藤の姿が
なにか嬉しかった。自分もアソコにまた戻れるんだ。そんな気持ちだった。

「小川、よかったよ!」
吉澤は袖へ戻ってくる小川に声をかける。
「あ、有難うございます。吉澤さんに見られてるから緊張しちゃいました」
小川はそういっていつもの笑顔で微笑んだ。

もう私は迷わない。私は私を表現するんだ。そんな気持ちで一杯だった。
そして、それを支えてくれた吉澤、後藤、保田の3人に心から感謝していた。

「あとは吉澤が戻ってくるだけね」
保田が吉澤に向かって言う。
「そうだよ。四人体制もまた違った味がでて良いと思うよ」
後藤もうれしそうに言った。

吉澤はそんな彼女たちの気持ちが嬉しかった。自分を待っててくれる。
もうすぐ戻るから──
そう心の中で呟いた。

634名無し娘。:02/05/22 11:33 ID:K6sw/Ste

ライブがひとまず終了する。アンコールの声が流れ始める。
会場では、一部のファンが、いつもの曲順と違うことに気付き、ざわつき始めていた。
なにかがアンコールで起る。そんな雰囲気が会場内を包んでいた。

アンコールの声のさなか、いきなり、ステージ中央にスポットライトが当たる。
ファンは声を沈める。

♪あーいーをーくーだーさーいー

高橋の歌声がライブ会場に響く。そして、その横には吉澤が立っている。
高橋は自分がなにもキャンペーンに協力できなかったことが辛かった。
自分にあるのは、ただ歌うことだけ。それだけしか自分にはできないんだ。
だから、この復帰のステージを絶対成功させて見せる。そんな気持ちをこめて歌う。

なにがこれから起るかが分かったファンはみな絶叫する。大歓声が沸き起こる。

「WAO!」
メンバーたちが現れる。そのなかに混じって吉澤の姿があった。

曲が流れる。流れるようなダンスが始まる。

吉澤が倒れて以来封印されていたMr.Moonlight-愛のビックバンド が始まる。
ファンの吉澤コールが鳴り響く。ファンも待ち望んでいた。メンバーも待ち望んでいた、
そして、吉澤自身も待ち望んでいたステージだった。
635名無し娘。:02/05/22 11:40 ID:K6sw/Ste

安倍が歌う。
彼女はコメントの発表を思い出していた。
あれからどれくらいたったのだろう。
彼女の苦しみを私はどれだけみんなに伝えられたのだろう。
そして、白血病患者の苦しみをどれだけ伝えられたのだろう。
そんなことを考えていた。

辻と加護が吉澤のそばで踊る。
お帰り、よっすぃー。
私たちもよっすぃ―の気持ちがわかったよ。
苦しかったよね。辛かったよね。これからもがんばろうね。
嬉しくてたまらない。そんな気持ちが踊りに現れる。

矢口が踊る。
国を動かした直接のきっかけ。それが彼女だった。
吉澤を助けるために、緊張の中、政治の世界に飛び込んだ。
その成果がここにあるんだ。彼女は返ってくる。
そう思いながら踊りつづける。

636名無し娘。:02/05/22 11:41 ID:K6sw/Ste

後藤も歌う
彼女はずっと吉澤のことを考えていた。かけがえのない友人である彼女を
なんとか助けることが出来ないだろうか、そればかりを考えていた。
それが今日とうとう実現する。
でも彼女は思っていた。これからなんだ、彼女の本当の闘いは。
私たちはそれをどうやってサポートしていけばいいのだろうか。
骨髄移植の治療が辛く、厳しいことを知っている後藤はそんなことを考えていた。

そして、石川と吉澤の2ショットのダンスが始まる。
石川は耐え切れずに泣いていた。

嬉しい──

友人以上の気持ちで彼女に接していた石川は本当に辛かった。何とかしたかった。
それがやっと実を結んだ。そして同じステージで踊れている。信じられなかった。
あとは骨髄移植をするだけなんだ。
そうすれば元気でやさしい吉澤が帰ってくる。
それを想うと嬉しくてたまらなかった。

吉澤は、メンバーたちとのダンスのなかで、彼女たちの気持ちを受け止めていた。
そして、ファンの歓声。みんな自分のことを考えてくれた。そして助けてくれた。
一人で生きているんじゃない。みんなによって生かされているんだ。
そんな感謝の想いが彼女の胸を去来する。

歌声が詰まる。息が上がってくる。少しだけダンスが遅れる。
それを見たファンの歓声が一段と高まる。
彼女の瞳からも涙が流れていた。

637名無し娘。:02/05/22 11:42 ID:K6sw/Ste

アンコールのステージは無事終了した。

MCを終え、メンバーたちは楽屋に戻る。
興奮したファンの歓声はいつまでも鳴り止まない。それが楽屋まで聞こえてくる。

「すごいよ、よっすぃー。ファンのみんながよっすぃーを応援しているよ」
石川は興奮したように吉澤に言う。

「う、うん……」
息が完全にあがっている吉澤はそう答えるのが精一杯だった。
「大丈夫?」
後藤が心配そうに尋ねる。

吉澤の体力は限界だった。リハーサルとは違う緊張感が、
ただでさえ貧血で上がりやすい心拍数を上げたのだろうか。
そう吉澤は思っていた。
息が苦しい。でも、何とか耐えられる。

「大丈夫。ごめん、ちょっと疲れただけ」
そう言って笑顔を見せる。

その笑顔を見て、二人は安心する。
それ以上彼女の心配をしなかった。
楽屋の中はライブの成功と吉澤の復帰、
そして彼女の適合骨髄が見つかったことで喜びに満ち溢れていた。

638名無し娘。:02/05/22 11:46 ID:K6sw/Ste

ライブの終了後、吉澤とメンバーたちは、都内のホテルに滞在していた。
メンバーたちは翌日の仕事のため、そして吉澤は埼玉に帰るよりも、
ホテルに滞在したほうが体の負担がかからないと思った事務所の判断だった。
そして、吉澤の母親が念のため付き添いでついてきていた。


メンバーと別れた吉澤はホテルの部屋に入る。
彼女の体は疲れきっていた。全身がだるい。
母親は心配そうに彼女の体を心配する。

「大丈夫だよ。でも、ちょっと疲れたからもう、寝るね」
母親にそういうと、ベッドに潜り込む。

「あ、そうそう、いつでも病院のほうは骨髄移植の準備にとりかかれるって」
病院側にも適合骨髄が見つかったという話は連絡がいっていた。
いつでも準備はできているとの回答だった。

「ほんと?じゃあ、明日仕事終わったら外来受診しないとね」
「そうだね。今日は疲れただろうから、ゆっくりやすんで」
母親はそういうと、部屋の電気を消した。