「辻と後藤」復活希望スレ

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517名無し娘。

そんなある日、1通のメールが吉澤の元に届く。
それは辻、加護からだった。彼女たちはこのキャンペーンで殆ど活動できていない
ことを気にしていた。しかし、中学生の彼女たちになにができるのか、
そして、なにをしたらいいのかを考えることは難しい問題だった。
吉澤に直接それを尋ねる内容だった。

吉澤はもう充分だった。その気持ちだけで嬉しかった。
それに骨髄バンクのキャンペーンは石川、後藤、安倍が中心となって、
やっている。登録者数も少しづつだが、増加しているらしい。
別に中学生の彼女たちに負担をかける必要もない。
そう思っていた。

しかし、2人の気持ちは治まらなかった。
何かないのかと、もう一度メールが入る。
吉澤は自分が何をして欲しかったかを考えてみていた。

ふと、一緒に入院していた少女のことを思い出す。
長いこと入院していたためか、友人もなく、寂しく苦しい闘病をしている。
自分もいくら石川や後藤がいたとはいえ、孤独な闘病だった。
白血病には子供の患者もいるという。ミニモニはきっとそんな患者たちにも
人気があるだろう。そんな人たちの力になってあげたらどうか。
嬉しいこと、楽しいことがあれば、副作用の苦しみも少しは和らぐのではないか?
そして、メンバーたちと一緒に白血病と闘うことができれば、孤独感や恐怖感が
和らぐのではないだろうか。それも白血病の娘。を救うことになるはず。
そんな思いでメールを返信した。
518名無し娘。:02/05/10 09:08 ID:46bNjBgl

楽屋で辻加護はその返信を受け取る。
二人は少し複雑な気持ちになる。こんなことで登録者数は増えるの?
それで白血病の人たちは助かるの?
そんな思いでメールを返す。

暫くして吉澤からの返事がくる。
「白血病の治療ってホントに辛いんだ。そして怖いし、苦しいんだ。それは経験した人じゃないと分からないと思う。でもその苦しみを少しでも和らげることができたら、
それはすばらしいことだと思う。私はそれが一番大切なことだと思うんだ」

吉澤はメンバーたちの活動はうれしかった。そのなかでやはり一番うれしかったことは、
再発の恐怖におびえる回数も減ったことであった。孤独感や不安感がメンバーたちと一緒に
闘うことによって、減っていっていたのである。

しかし、自分以外の患者たちは、昔の自分のように孤独と死への恐怖におびえた
毎日を送っているはず。モーニング娘。と一緒になって白血病と闘うことができれば、
私と同じように、恐怖から開放されるのではないか、そう思っていた。
そのために直接患者に会って、メンバーたちとの一体感を感じさせなくてはいけない。
そのことを二人に分かって欲しかった。

「そうか、ウチらにはそれしかないな」
加護はメールの文面から吉澤の気持ちを理解する。
「そうれすよ。苦しんでるのはよっすぃーだけじゃないのれす。
このキャンペーンは、白血病の人みんなを助けるものなのれす」
「やるか?」
「やるのれす」
2人はそう言って小さくうなずいた。
519名無し娘。:02/05/10 09:09 ID:46bNjBgl

石川と後藤と安倍はテレビ番組の収録が終わった後の楽屋で、
白血病や骨髄移植のしくみを勉強していた。
何冊もの医学書、そしてパンフレットを読み比べる。

「うーん、なんとなく分かったけど難しいなあ。それに登録者もあんまり増えないし、
マスコミ使うのも限界だし、スケージュールも一杯だし、どうすればいいんだろう」
石川は大きな伸びをしながら呟いた。
「やっぱりさ、これって社会全体の問題だとなっちは思うんだけど」
安倍はそれを聞いて石川に話し掛ける。それを聞いて石川は安倍のほうを見る。
「だから、社会全体で考えないとだめってこと」
「どうゆうことですか?」
石川は安倍に尋ねる。
「この活動を国や社会に認めてもらうの」

きっとアイドルの片手間でやっているキャンペーンだと思われている。
でも自分たちとしては本気で骨髄移植の登録者を増やそうと考えているんだ。
それを認めてもらいたい。

それに、社会から認められた活動として受け入れられないと、
登録者数もふえなければ、活動自体もあまり浸透しないのではないか。
そう安倍は考えていた。

石川は不思議そうな顔をして安倍を見つめる。
「骨髄バンクは協力してくれてるんだから、こんどは国が認めてくれればいいんだけど」
安倍はそれを見て答えた。
「大きくでましたねえ」
石川は安倍の答えがあまりにも現実味のないものに思えた。

そんな二人を気にする様子もなく、後藤は骨髄移植に関する文献を読みふけっていた。

520名無し娘。:02/05/10 09:17 ID:46bNjBgl

「ねえ、なっちに梨華ちゃん。ドナーになる人ってボランティアだよね」
「そうだよ。それがどうかしたの?」
突然の後藤の質問に安倍は不思議そうな顔をする。
「提供するときには全身麻酔をしなきゃいけないし、入院しなきゃいけないんだって」
「へえ、そうなんだ。じゃあ手術みたいなものなの?」
石川が後藤に尋ねる。

「うん。でもそれで会社とか休んでも、会社側から補償とかは出ないんだって」
「それってなんかおかしくない?」
安倍が後藤に尋ねる。

「おかしいよね。だって命を救うために、命をかけて提供するんだよ。
こんなすごいことをしてるのに、会社側は知らん振りなんて今時おかしいよね」
「企業モラルの問題だよね。でも、よく知ってるね、ごっちん」
安倍が驚いたように後藤に向かって言った。
「ほんと。よく勉強してるね」
石川も同意する。二人は後藤の意見に納得したようだった。

「いや、ライブの参加者からの手紙がきっかけなんだけどね」
後藤は少し恥ずかしそうにそう言って、一通の手紙を彼女に見せた。

ライブの参加者から、骨髄移植の問題点についての指摘の手紙が
何通か彼女たちの元へきていた。

ファンの人たちも、一緒に考えてくれている。
その気持ちがうれしかった。
そして3人は少しでもドナー登録者を増やすために、
社会全体の意識を変える必要性があること、そして、
ドナーに対する環境の問題にも取り組んでいかないといけないと実感していた。
521名無し娘。:02/05/10 09:19 ID:46bNjBgl

キャンペーンを国に認めてもらう必要がある。
そして、ドナー保護のためには国家として法律の整備が必要となる。
やはり国との交渉が必要だと3人は考えていた。

でも、一体どうしたらいいのだろうか。

しばらく考えていたが、結局3人は国会議員に陳情をするぐらいしか
思いつかなかった。
ただ、自分たちが勝手にやっても相手にしてもらえないのは目に見えていた。
そのため安倍と後藤は事務所に相談する。
芸能事務所はいろいろな国会議員とのコネクションがある、それを期待してのことだった。
しかし、事務所側はそれを断った。

最近、国会議員との関係が取りざたされた事務所の問題もある。
それに事務所側としてもこれ以上、このキャンペーンを
強化することを快く思っていなかった。ただでさえスケジュールがタイトになり、
仕事をいくつか断ることになり始めていた。
そんな状態であるのに、このような申し出を事務所側が認めるわけがなかった。
522名無し娘。:02/05/10 09:26 ID:46bNjBgl

二人は失意のもとで、楽屋にやってきた。

「そうかあ、だめだったんだ」
話を聞いて石川が2人に言った。
「事務所もさあ、もっと協力して欲しいよ」
後藤がつぶやいた。
「でも、ライブの売上は骨髄バンクに寄付してるんだし、
スケジュールはタイトになるし、事務所としてもあまり力をいれたくないみたいだしね」
それを聞いた保田は小さくため息をつく。
「じゃあ、よっすぃーはどうなるの?助けたくないの、事務所は?」
そのため息をきいて後藤の口調がきつくなる。
「だから、あまり表立ってやって欲しくないんだよ。
いつ吉澤の件がばれちゃうかわからないんだし」
矢口が保田の横から口を出した。

ドナー登録者は増えてきているが、まだまだ足りない。
ただ訴えるだけではダメだ。自分たちがドナー登録をしやすくできる環境を整えないと。
でも、これ以上の活動は私たちにはできない。社会全体を巻き込んだ運動にしないと。
それには国会議員に会ってなんとか活動を認めてもらわないと。

メンバーたちはそう考えていた。

「国会議員なんて、どうやってアポとるの?」
「それに、どの国会議員にお願いしたら良いかわかってるの?」
「やっぱり門前払いだよ。それになんか怖いし」
メンバーたちは自分たちと殆ど縁のない人種へのアプローチに
困惑するばかりだった。

「紺野、なんかいいアイデアないの?」
メンバーたちの困惑に耐え切れなくなった飯田が訊ねる。
そしてじっと考え込んでいる紺野の姿をメンバーたちは
期待するように眺める。

「とりあえず、厚生労働省の管轄だと思うんで、その系統の議員さんだと思うんですけど……」
紺野はつぶやく。
「なるほど、で、どうやってお願いするの?」
メンバーたちは尋ねる。
紺野はじっと考え込む。だれも何も言わないまま、時間だけが過ぎていく。

523名無し娘。:02/05/10 09:27 ID:46bNjBgl

「難しいですね……」

暫くして紺野がつぶやく。
紺野にもいいアイデアが浮かばなかった。中学生に国会議員に会う方法を考えろ
と言っても無理な話である。
メンバーたちはそれを聞いて、またため息をついた。

やっぱり、これ以上は無理なの?
地道にライブやテレビ、ラジオで訴えるだけしか方法はないの?
そんなので吉澤の骨髄は見つかるの?

メンバーたちは自分たちの無力さを実感していた。

気まずい雰囲気が楽屋内を流れる。そしてテレビの収録の時間が迫ってくる。
メンバーたちは衣装やメイクの準備をし始めようとした。
その時、一人のメンバーが口を開いた。

「なんとかなります」

声のしたほうにメンバーたちは振り向く。
そして、予想もしてなかったメンバーの姿に全員が驚いた。