「辻と後藤」復活希望スレ

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312名無し娘。

「皆さんも知ってると思いますが、吉澤さんは重症です」
開口一番にマネージャーはそう告げた。
集まったメンバーたちはじっとマネージャーの顔を見つめる
「彼女の病気は白血病です。何時治るか、そして治るかどうかも分かりません」

「白血病?」
後藤と石川を除くメンバーたちに衝撃が走る。ピーンと空気が張り詰める。

「ちょ、ちょっと。それマジ?」矢口が驚く。
保田も安倍も声がでない。飯田の視線は宙に浮いている。

後藤と石川はヒミツが自分たちだけでなく、メンバーに共有されたことに
少しだけ安心した。そして、メンバーたちへの影響を心配した。

「そ、それで吉澤はどうなるんですか?」保田がたずねる。
「休養という形をとるけど、何時復帰できるかはわからない」
「中学生たちにはどうするのですか?」
「一応報道のとおりに説明してください。病名は伏せる方向で。
いたずらに不安をあたえてもいけませんしね」
「分かりました」
「あと、記者会見をしてもらわないといけないと思います」
そういって、マネージャーは飯田の方を見る。しかし、飯田は宙を見たままだった。

「カオリ!」矢口が飯田をつつく。
「あ、ああ、はい。わかりました」
飯田は呆然とした表情のまま答えた。

313名無し娘。:02/04/11 10:16 ID:p5Hqnc/O

記者会見はこれから2時間後、事務所の会議室で行うとのことだった。
飯田、保田、矢口、安倍、後藤、石川の6人が出席する。
原稿の準備が進んでいく。緊張のなかに6人はいた。

「吉澤がどうして………」
保田が悔しそうにつぶやく。
早く、彼女の体調の変化に気付いてあげればよかった。
そうすれば、もっと早くに治療ができたのに……。
プッチモニで一緒にユニットを組んで以来、吉澤については気に掛けていた
つもりであった。

「白血病のイメージなんてないやつなんだけどね」
矢口はいつも元気で、たくましい吉澤が、そんな重病であることが
信じられない様子だった。

314名無し娘。:02/04/11 10:17 ID:p5Hqnc/O

「ねえ、カオリ、よっすぃ―のコメントはどっちが言うべ?」
「なっちがいってよ、私泣いちゃうかもしれないし」
飯田と安倍は必死で原稿を覚えている。飯田はかなり動揺しているようであった。
安倍はそれを見て自分を奮い立たせるように、原稿を覚えている。

想定される問答集が配られる。
それについては、モー娘。の解散の可能性についてもかかれていた。

「そうか、もしかしたら、解散するかもしれないって思う人もいるんだ」
石川はその文面をみてつぶやいた。
「そうだろうね」
後藤が返事をする。これからモーニング娘。はどうなってしまうんだろう。
漠然とした不安がメンバーたちに広がっていた。

315名無し娘。:02/04/11 10:27 ID:p5Hqnc/O

記者会見が始まる。報道陣は会議室に入りきらないぐらい集まっている。
6人と、事務所のスタッフがひな壇に上がる。

「みなさますでにご存知と思いますが、モーニング娘。メンバーの吉澤ひとみ
は、急性血液不全症のため、しばらく休養させていただくことになりました。」

飯田が立ち上がり会見を始める。
フラッシュがたかれる。まぶしい光が会議室全体をつつむ。

安倍が強張った表情で吉澤のコメントを発表する。

「ファンの皆様、そして関係者の皆様、ご心配をおかけしたことをお詫びいたします。
先日よりの報道により、皆様ご存知のことと思いますが、現在急性血液不全症のため入院
しております。今後は、治療のため、しばらくモーニング娘。の活動をお休みさせて
いただきます。しばらくは、治療に専念して、また皆様の前で元気な顔を見せることが
出来る日を楽しみにしております。 吉澤ひとみ」

石川は吉澤のコメントを聞いて、昨日の死の恐怖に怯えたの吉澤の姿が頭に浮かぶ。
きっと恐怖に耐えながら、でも一生懸命書いたんだろう。
鼻の奥がツンと痛くなる。涙が溜まっていくのが自分でも分かった。

「梨華ちゃん、泣いちゃだめ。私も泣いちゃう」

となりで後藤が小さくつぶやく。
後藤の肩が小さく震えている。涙をこらえていることが石川にも分かった。
ココで泣いたら、吉澤の病状などについていらない憶測を呼んでしまう。
私たちはプロなんだ。石川は必死で涙をこらえた。

316名無し娘。:02/04/11 10:28 ID:p5Hqnc/O

レポーターたちの質問が始まる。
「過労が原因ではないかとの報道がありましたが、その点についてはいかがですか?」
「医師の診断書のとおり病気と、仕事については因果関係がありません」

「深夜まで仕事をしていたというのは事実ですか?」
「収録等で遅くなることはありますが、労働基準法は遵守しているつもりです」

「吉澤さんはいつごろ復帰の予定でしょうか」
「半年を考えておりますが、まだ未定です」

「吉澤さんが重病であるとの噂がありますが」
「医師の診断書にあるとおりです。それ以上はわかりません」

「吉澤さんの脱退ということは」
「現在は考えておりません。復帰してくれるものと考えてます」

「これをきっかけに解散ということは?」
「ありませんし、吉澤もそれを望んでいません」

次々とレポーターたちから質問が浴びせられる。
メンバーたちは事務所から渡された想定集にそって無難にこなしていった。
317名無し娘。:02/04/11 10:34 ID:p5Hqnc/O

記者会見が終わり彼女たち戻ってくると
事務所には中学生メンバーたちがすでに集まっている。

辻が泣きそうな顔をしている。
「よっすぃーは病気なんれすか?」
そういって、飯田に詰め寄る。

「うん、ちょっとね。でも頑張ってるから、また戻ってくるよ」
「いつ帰ってくるの帰ってくるのれすか?」
「まだわからないんだけど、半年ぐらいしたらね」
辻の不安そうな表情をみて飯田は辻の頭をキュッと抱きしめた。

「よっすぃー、ひっく……、ひっく……、可哀想れす……」
辻はいいだの胸の中で泣いてしまった。
318名無し娘。:02/04/11 10:35 ID:p5Hqnc/O

加護や、新メンバーたちもみな泣いてしまっている。
いくら病名を知らなくても、重病だと言うことは雰囲気で分かっている。
まだ中学生である彼女たちに普段通りに振舞うようにというのは酷であった。
安倍と矢口と保田は彼女たちのそばで、吉澤は頑張っているんだ。
絶対戻ってくる。私たちも吉澤に負けないように頑張ろうと言い聞かせている。

石川はその光景をみて、堪えきれなくなって後藤の肩で泣いてしまった。
後藤はそっと、石川を抱きしめる。
メンバーが病気になることがこんなに悲しいなんて。
それも、一番仲のいい吉澤がそんなことになるなんて。
そう思うと涙がとまらなかった。

ふと、石川の顔に冷たいものを感じる。
見上げると、後藤の両頬にも涙が流れていた。

319名無し娘。:02/04/11 10:38 ID:p5Hqnc/O

事務所全体が悲しみにくれている中、マネージャーが今後の活動について説明した。
とりあえず、12人体制として、仕事はいつもどおり行う。プッチモニは2人体制で
しばらく行くこと。ミュージカルはハロプロメンバーから代役を立てる。
ミスタームーンライトは吉澤復帰まで封印。
平家とのラジオは中澤が代行するとのことだった。

そして、基本的に病気の性質からみて吉澤の見舞いは控えること。
中学生メンバーは高校生メンバーか事務所の人間と一緒に行くこと。
病院の迷惑になるので、あまり表立っていかないことなどが説明された。

説明が終わり、メンバー全員たちは自然と円陣を組む。

「吉澤が病気になってしまいました。残念だけど、彼女のためにも頑張らなくちゃいけません。モーニング娘。は吉澤の復帰を信じて、これからも、一生懸命仕事をしましょう」

飯田がメンバーみんなに語りかける。飯田の目は真っ赤になっている。メンバーたちもリーダ―として、しっかりしないといけないと思って気を張っている飯田の気持ちがよく分かった。

「頑張っていきまっ」
「しょい!!」

メンバーたちは悲しみに暮れながら、いつもの掛け声を叫んだ──

320名無し娘。:02/04/11 10:41 ID:p5Hqnc/O

吉澤は病室で記者会見の模様をテレビで見ていた。
彼女の左腕には点滴がつながれていた。
すでに抗がん剤の治療が始まっている。
病院側もかなり急ピッチで検査治療へと動いている。

「どう、気分悪い事ない?」母親が心配そうにたずねる。
「まだ、大丈夫」そう答える。
メンバーも自分のことを心配してくれてる。
そして復帰を願ってる。頑張らなくてはいけないのは
痛いほど分かっていた。
しかし、やはり病気、そして死への漠然とした不安が彼女の心を暗くさせていた。

吉澤の携帯に次々とメールが入る。

「心配しないで、治療に専念して。私たちは大丈夫。 かおり」
「記者会見みた?みんな信じてるよ なつみ」
「早く戻ってこーい 真里」
「プッチはお前が帰ってくるまで2人で守っとく 圭」
「寂しいよー。でも、頑張れ ごっちん」
「またお見舞い行くね。今度はおいしいの作るんだから。 梨華」
「ほんまに病気なん?つまらんからはよ退院して 加護」
「病院にお菓子はありますか?持っていきますか? のの」
「吉澤さんがいないとミスムンが踊れません。 小川」
「びっくりしました。はやく良くなってください。 高橋」
「戻ってくるのをみんな待ってます 新垣」
「私も頑張ります。吉澤さんも頑張ってください。 紺野」

メンバーたちからの励ましのメールがどんどん入ってくる。
自分を必要としてくれる人たちがいる。
それを考えるだけで頑張れる気がした。

「みんな、気にしてくれてるね」
母親がそれをみて吉澤に言った。
「うん……」
吉澤はそういって小さく頷いた。
321名無し娘。:02/04/11 10:43 ID:p5Hqnc/O

翌日以降、吉澤が過労でなく、病気であったこと、事務所側の圧力、それに加えて、
大きな政治問題があったおかげで、報道は落ち着いていた。
復帰を願う、芸能界や、ファンの声や、12人体制になったモーニング娘。の今後の
活動展開についての報道がなされる程度であった。

メンバーたちも吉澤がいないことを除けば、ふだんと変わらない生活に戻っていた。
レコーディング、テレビの収録、雑誌の取材にミュージカルの打ち合わせ。
めまぐるしく毎日が動いていった。
事務所側も普段どおりの仕事量をメンバーたちに与えていた。
仕事はハードだけど、順調。何も変わらない。

ただ、そこには吉澤だけがいない──