第17話
いや、火事の夢のつづきやねんけどな、また見てもうたわ。変な夢ばっかりやな。
でも、今回は、ののがウチのために体を張ってくれた夢やった。エエはなしやな。
とりあえず、ウチとののは永遠の友達やねん……。ってちょっとくさいけどな。
まあ、ファンのみんなも友達やとおもってるやろうから、これからも仲良くしたいところや。
せやけど、ふしだらな女やったら友達やめるで。
さあ、調査開始や。今日はテレビの収録。みんな楽屋におるわ。
「ののー、幸せになれる結婚年齢を占う方法があんねんて」
「ほんとれすか?どうやるのれすか?」
よし、食いついてきたで。えーと、どんなんやったかな。
「じゃあ、まず自分の好きな一桁の数字を思い浮かべてください」
「はい、いいれすよ」
ウチは紺野ちゃんに言われたとおりにすすめていった。
ののはちょっと時間がかかってたな。指折ってどないすんねん。
それぐらい暗算せなあかんで。
「それで、いままで付き合った人の数を足してください」
「そんなのを足すんれすか?えーと、えーと」
なんや、考えとるで。もしかしておるんか。いや、
ただ計算がでけへんだけやな。きっとそうや。
「それで、最後に10を足してください。それが幸せになれる結婚年齢なんやて」
「へー、わかったれす」
「いくつ?」
「はずかしいからいわないのれす」
なんやて?そんなんずるいわ。それじゃあ意味ないやん。
「教えて―な。なあ、いくつ?」
「いやれすよ。なんでそこまできくんれすか?」
「い、いや、別に……」
困ったなあ。どないしよう。
「どうしました、加護さん」
「あ、紺野ちゃん。いや、ののが結果教えてくれへんねん」
「あ、なるほど。加護さんは付き合ったことがあるかないかを知りたいんですよね」
「そうやで」
「じゃあ、わたしが聞いてきます」
「辻さん、さっきの結婚年齢の話なんですけど……」
「なんれすか?教えませんよ」
「いや、別に正確な年齢を聞きたいわけじゃないんです。はたち超えました?」
「こえたれすよ」
「あ、そうですか。それだけです」
紺野ちゃん、何きいとるんやろ。
うまいこときいてくれてるやろか。
あ、戻ってきた。
「クロでした」
「えー!」
ほんまに? うそや、信じられん。ということは、やっぱ同棲を考え取るんやな。
もうええわ。うち悲しいわ。すきにしたらええ。
プレステでもおしおでもなんでもしたらええやん。
みんなと同じや。もう友達でもなんでもない。
「ところで、わたしの本、いいかげん返してくださいませんか?」
あ、忘れ取った。いや、もうちょっと読みたいねんけど……。
いや、そんなことない。こんなん読んどったら、みんなと同じや。
こんなふしだらな本もういらへんわ。
「紺野ちゃんもふしだらや」
「はい?」
「もうええ!」
おもわず叫んでもうたわ。みんなオドロいとったわ。
せやけど、みんなが悪いねん。みんなおかしいわ。
色ボケしくさりよって。ウチだけや、清純派は。
あと、おばちゃんもやけど……。
これからどう接したらええねやろ。
「はい、それじゃあ、ケーキの作成の収録でーす」
お、ADさんから集合の合図や。
そういや、今日はHEY!×3の収録や。クリスマスケーキつくるねんな。
みんなうれしそうやな。彼氏にでもあげるつもりやろか。
そういや、ののもケーキ作るの得意やってんな。せやけど、10段ケーキなんて
だれも食べへんで。ののの彼氏も大変やな。
まあ、ふしだらな女どもはそうやって楽しんどったらええわ。ウチは将来大女優に
なるから、そんなことはせえへんねん。ほら、吉永小百合さんも独身やろ。
それと一緒やねん。永遠のアイドルやねん、ウチは。
寂しくなんかない。うらやましくなんかないねん。強がりなんかとちゃう。
多分やけど……。
さあて本番や。松ちゃんの隣やな。ののが横におる。いつものパターンや。
これがベストやで。松ちゃんのボケ突っ込みにたえられるのはウチしかおらん。
せやけど、ウチだけやねんな、子供は。ののも新メンバーも含めてみんな彼氏おるんや。
なんか、みんなごっついオトナに見えるわ。きっとウチのこと影でバカにしとるんやろな。
気が重くなってきたわ
せやけど、関西弁はやっぱええなあ。おうちに帰りたいなあ。
実家ではみんなでクリスマスケーキ作ってるんやろか。ええなあ。
もう、こんなふしだらな集団におりとうないわ。
おかあちゃん……。おうち帰りたいよ……。
あかん、涙が出てきたわ。本番中や、やばい。
「あれ。自分ないとるんとちゃう?」
まずい、松ちゃんがきづいた。さすがや、サクッと突っ込んできよる。
「いいえ、大丈夫です」
「ほんま、自分ないとるって」
もう、ほっといてえなあ。ほら、会場引いてもうたやん、そうっやって子供や思うて
馬鹿にするん?もういやや……。
まあ、浜ちゃんがなんとかしてくれたからええけど、ほんま今日は憂鬱や。
あ、クリスマスケーキの試食や。はよいかんとあかん。
おおっと、ののにぶつかってもうた。
うわ、なんかごっつうにらまれてるやん。あかん、なんかののがオトナに見える。
「ご、ごめん」
クスッとののは笑いよった。やっぱ馬鹿にしとるんやろな。
彼氏がいないことがそんなに悪いんやろか……。
はよ終らんかな、収録。
はあ、めっちゃ悩むわ……。
第18話
なんか最近憂鬱やねんなあ。みんなが彼氏おるっていうのはなんかショックや。
みんなオトナやねんなあ。ウチもオトナに成ってきたと思ってたんやけど、
まだまだやわ。なんかめっちゃ寂しいわ。
しかし、ウチはなんで誰からも口説かれへんのやろ。
結構カワイイと思うねんけどな。胸も大きいし、愛嬌やってあるで。
もしかして人気ないんかなあ……。せやけど、結構好感度ランキングでは
上位におるねんけどな。とりあえず、ウチがどんな芸能人に好かれてるか
おばちゃんに調べてもらおうか。
「おばちゃん、なあ、ウチって人気ないんやろか……」
「どうしたの?急に。最近元気ないじゃないの」
「いや、ちょっとな……。ウチのことええって言ってくれる芸能人とかおるん?」
「うーん、いると思うわよ。早速調べてみるわ」
やっぱおばちゃんはエエ人やな。おばちゃんも彼氏おれへんのやったな。
まあ、おばちゃんはしゃあないで。でもウチがおらへんのはやっぱおかしいのかもしれん。
「あ、加護、なんか明日つんくさんが来るようにっていってたよ」
飯田さんや。なんや、つんくさん何の用事やろ。
「最近元気ないからじゃないの?」
いや、それはあんたらのせいやんか。あんたらがふしだらやから、ウチが悩むねん。
まあ、でもそれを言ったら人間関係悪なるからなあ。ウチは周りを明るくさせる天才やからそんなことはいわへんねん。
ののはなんかまだ住宅情報誌みとるなあ。ウチとは話したくもないんかな。
寂しいわ。どうせ男と同棲するねんやろ。ウチみたいな子供とは話したくないんやろな。
ええねん、どうせ。
「加護、データが出たわよ」
おばちゃん、相変わらず仕事速いがな。
「えーとね、しゅーくりーむの有田でしょ、それに島田伸介、杉作J太郎ってところかな」
「はあ?」
な、なんや、芸人とおっさんやんか。関西系やん、しかも。
もっとええのんはないんか?
「も、もっとなんかアイドルっぽいのはないんか?」
「うーん、ないかも……」
「そ、そんなあ」
なんかガックリきたわ……。ほら、某アイドル事務所の子とか、スポーツ選手とか、
そんなんを期待しとったのに……。おばちゃんでも氷川きよしとか、
マリナースの佐々木とかごっつうええひとにすかれとるっていうのに……。
なんか敗者の気分やわ……。
「あ、でも石橋さんの娘さんとか、さんまさんの娘さんは加護ちゃんのファンらしいよ」
そんなん、ウチでもしっとるわ。なんたって小学生のカリスマやねんから。
せやけど、素敵な男性の心はゲットできてないんか……。
自信喪失や……。
「ありがとう、おばちゃん。なんかガッカリやわ。
明日はなんかつんくさんの所にいかないかんし、嫌なことばっかりや」
「え?なにつんくさんによびだし?なんで?」
「いや、ようわからへんねんけど」
おばちゃんどないしたん。目の色かえて。
「ひどい……、私にはいつもお仕置きしてくれないのに。加護、うらやましいわ」
なんでうらやましいんやろ。あんなおっさんのどこがええねん?
お仕置きされるんかウチは?そんなんいややで。
なんかおばちゃんは、つんくさんずるいとかいうて、ワンワン泣いとるし。
ウチはもう自信なくなったわ。あーあ、関西帰ろうかな。吉本の芸人さんと
一緒にお昼の番組でもやって、細々と暮らそうかなあ。
はあ、めっちゃ悩むわ……。