よっすぃ〜のプッチエロ小説。(2)

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5名無しよっすぃ〜

何を考えてるんだろう、と思う。

七月の蒸し返すような内気を開放するため開け放った窓から
斜向かいの教室にいる石川梨華を見て、ひとみは何故か小さく
ため息をついた。

彼女、石川梨華は今日も独りだった。
窓際最前列の席に座り、退屈そうに肘を突くでも熱心に授業に
聞き入るでもなくただ俯いている。

ダラリと垂れた少し長めの前髪は陰湿な印象を残すが、その
くせ目元はやけに涼しげで、今度は反対に凛とした印象を受け
る。
きっと優しく微笑んだりしたら素敵なんだろうな。
それがひとみの石川梨華に対する印象だった。

だがひとみはまだ一度としてそれを見たことはない。
まるで教室の片隅にいつのまにか忘れ去られてしまったオブジェ
が置いてあるみたいだった。
6名無しよっすぃ〜:02/02/25 16:45 ID:lKfrRvHz

ひとみがこうやって石川梨華のことを観察するようになったの
はごく最近のことだ。

でもこれといったきっかけがある訳じゃない。
あるとするならば、それはただ単に同じバレーボール部に属し
てるということだけだ。

もともと梨華には周囲から疎ましく思われているような傾向が
あり、常に周囲から浮いた存在で、ある意味目立っていた。

けれどそれもただそれだけの話で、価値観の違いを自分は自分
と割り切れるタイプのひとみはそんな他人の意見に過度に同調
するつもりなどは毛頭にない。
かといって何の理由もなしに話しかける様な気さくな人間でも
ないので、梨華と接触することは殆どなかった。
7名無しよっすぃ〜:02/02/25 16:46 ID:lKfrRvHz

それに梨華もおしゃべりなほうでは決してなかった。

どこか前時代的とも言える貞操観念の強そうな陰のある容姿、
そこから溢れる彼女独特の雰囲気は今どきの女子高生の鼻につ
くのかもしれない。
―現に制服のスカートをちゃんと膝下10センチという規定の
丈にして履いているのは梨華くらいのものだった―

それに勉強が出来るらしく、学園の教師には優等生と呼ばれて
いるらしかった。
そんな梨華に対する接し方にはみんなの感情が素直に表れてい
るのかもしれない。
8名無しよっすぃ〜:02/02/25 16:47 ID:lKfrRvHz

周囲から浮いた存在。

今のこのご時世、そんな人間の存在を珍しがる人間なんてそう
はいない。
いつだって少し街を歩けば怪しい人間なんてこの世にはごまん
といる。
だけどバレーがそこそこ出来るということ以外は割と平坦な
学園生活、ひいては人生を送ってきたひとみが梨華に気を引か
れるにはそれは十分な理由だった。

この朝比奈学園の校舎は地図で見るとL字型になっていて、親
指と人差し指でL字を作ると親指の第一関節にひとみのクラス、
そして割と広い中庭を挟んで人差し指の付け根に梨華のクラス
が位置する。

そもそもひとみがこの進学校として名高い朝比奈学園に入れた
のは中学時代に熱中したバレーボールの部活動推薦枠のおかげ
で、勉強などろくすっぽしてこなかったひとみが授業について
いける訳もなく、いつも暇を持て余していた。
9名無しよっすぃ〜:02/02/25 16:48 ID:lKfrRvHz

だから暇つぶしといえば昼寝か窓の外を眺めるくらいで、席決
めの時に無理を言って窓際の最後列を譲ってもらった。
―友人の真希とおしゃべりをしたいんだけれど、真希はいつも
昼寝ばかりで困っている―

そしてそんな折、斜向かいのクラスに梨華を発見したのだ。

クラスでもひとり。
バレー部でもひとり。
そして帰り道もひとり。

その存在を知って以来、梨華が誰かと楽しげに話しているとこ
ろを見たことがなかった。
なぜこんなに気になるのか分からない。
しかしもうひとみには気にするなという方が無理で、考えれば
考えるほど溜め息の数は増えていったように思えた。
10名無しよっすぃ〜:02/02/25 16:50 ID:lKfrRvHz

ヌッと、まるで幽体離脱でもしたみたいに梨華が椅子から立ち上
がったのでひとみはすこし驚いた。
教壇に立つ教師を見るからにどうやら向こうは古文の授業らしく、
声こそ聞こえてこないが梨華は古文の読解をさせられている様だ
った。

特に猫背という訳でもないのに背中を丸め、自身なさげに小さく
口を動かす。
そして梨華のそんな様子を見たクラスメイトの数人はあざ笑うか
のようにクスクスと密かに肩を揺らしていた。

やはりその様はどこか陰惨で、彼女の学園での立場を象徴してる
みたいに思えた。

読み終えたらしい梨華は顔色一つ変えず席に着いた。
優等生らしくあっという間に読み解き終えた梨華に白ひげを蓄え
た教師は拍手を送っていたがクラスメイトのほとんどは無反応だ
った。

6時限目の終わりを告げるベルが鳴り止んでも、梨華はまだしば
らくの間うつむいていた。