よっすぃ〜のプッチエロ小説。(2)

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46名無しよっすぃ〜

6限が終わったことに気がついたのは、隣で居眠りをしてい
た真希が目を覚ましたからだった。

「ふわぁぅ…いま何限目?。」
梨華に囚われていた視線を大きなあくび声のする方に向ける
と隣では寝ぼけまなこの真希が気持ち良さそうに伸びをして
いた。
枕代わりにしていた学校指定のジャージに顔を突っ伏して寝
ていたから頬が風呂上りのようにほんのり紅潮していて額か
ら少しだけ汗をかいている。
真希は何故か四季を通して長袖のワイシャツしか着ないから
それが余計に暑そうで、それで少しだけ不快そうに見えた。

真希と私は幼なじみで、ツーカーの仲というかとにかく二人
はとても気心の知れた間柄だ。
いつも一緒にいて意味のないただ流れていくだけの会話――
流行のテレビドラマの話なんかはまずしないけれど――をし
たり、ただブラブラと街を歩いたりしていて、それだけでと
ても楽しかった。
47名無しよっすぃ〜:02/03/24 20:17 ID:NBc/ht7j

二人とも根があまり社交的ではないから、お互いに学園の中
には他に気心の知れた友達がいない。
だから互いに唯一の親友と呼べる存在だと思う。

ただ私が中学の時にバレーボールを始めてからは忙しくて学
校以外で遊んだりはしなくなってしまった。
だから今となっては一緒にいられるのは教室にいる時だけだ
った。

「いまちょうど6限が終わったみたい。」
そう言ってから初めて教室を見渡すといつの間にか教壇に立
っていた教師が居なくなっていた。
黒板へ目をやると、重たげな色をしたそれを難解な数式でも
ってほぼ真っ白に埋め尽くした板書にもまったく記憶が無く
て、それで6時限目の間ずっと石川梨華のことを見ていたん
だと気づいた。

「ふぇ!?…昼休みじゃないの?」
何をどう勘違いしたのか真希はとにかく驚いた様子で、猫を
不意に踏んづけたような、鼻の穴と頭のてっぺんの両方から
同時に息が抜けたようなおかしな声をあげた。
もともと間の抜けたおかしな喋り方をする真希だったけど、
寝起きのせいでいつもより余計に舌が回っていないみたいで
余計おかしかった。
48名無しよっすぃ〜:02/03/24 20:18 ID:NBc/ht7j

「昼休み、ってゆうかさっき食べたばっかりでもうお腹すい
たの?」
「うん、まぁ少し」
そう言って、真希は照れくさそうに耳の後ろを掻いた。

真希は体が細いわりに大飯喰らいで、今日の昼食だって私の
倍は食べていた。
だけど私よりも背が低く部活動もやっていないのにその蓄え
たエネルギーを一体どこに使っているのか私にはとても不思
議だった。
と言っても真希は――私も含めて――大抵の女の子ならみん
な憧れてしまうくらいに胸が大きいので、そこにちゃっかり
と全部たくわえているんだとすれば頷けない事もないんだけ
れど。

「一日にそんな何度も食べたら相撲取りみたいになっちゃう
よ?」
「『ごっつぁんです』って?、あ〜それヒドイなぁ〜」
この『ごっつぁん』というのは中学時代に一つ先輩の矢口さ
んという人が真希につけたアダ名で、年頃の女の子にしてみ
れば不運な呼び名だけど、本人は特に抵抗はないらしい。
ちなみに私もその人には『よっすぃ〜』という変な名前を頂
いている。
「…ってゆうか本当に最近太り始めてるからマジでシャレに
なんないかもね…アハハ」
「マジで?、アハハっ」
真希が複雑そうな顔でお腹をさすったのがなんだかおかしく
て2人で小さく笑った。
49名無しよっすぃ〜:02/03/24 20:18 ID:NBc/ht7j

真希は『おっとり』を通り越して四六時中ずっと寝ぼけてい
るフワフワした性格なんだけれど、一度決めたことは諦めな
いような頑ななトコロもある。

『よっすぃ〜がいくならアタシもいきたい』

そう一言だけ私に告げたきり、クラス担任が合格は絶対に無
理と言ってはばからなかったこの朝比奈学園に猛勉強して一
般入試で受かってしまったというエピソードも、ほかのみん
なはただ驚いていたけれど真希のことをよく知っている私に
は最初から分かっていたことのように素直に頷けた。

ただやっぱり入学したらしたで学園生活は以前とちっとも変
わっていなくて、四六時中机にかじりついて眠りこけている
ぐうたらぶりだった。
定期試験の成績なんかは私と同じで答案用紙にはこれでもか
というくらいにバツが並んでいるのにそれでもまったく動揺
はしない。

ただ、それでも人通りの多い街を一人で頼りなさげに歩いて
いてもキャッチセールスなんかには絶対に引っかからないと
思う。
それはシワシワのお婆ちゃんになってもきっと一緒で、近所
の公民館なんかでたまにやっているウソみたいに高い羽毛布
団――実際にウソなんだけど――の押し売りなんかにも引っ
かからないだろう。

私の親友、後藤真希とはそういう不思議な子だった。
50名無しよっすぃ〜:02/03/24 20:20 ID:NBc/ht7j

「そういえばもうすぐ夏休みだね。例のアレ、結局どうなっ
たの?」
目を細め窓の外を眺めていた真希が寝グセでややトサカ気味
の前髪をペタペタとさわりながら言った。
「アレって?」
私は本気で身に覚えがないと思い、無骨に聞き返した。する
と真希は一旦不服そうに眉をひそめたあと軽く頬を膨らませ
た。
「もぉ…だから、お泊り会のこと」
「あぁ!そうだった」
あれこれと余計に記憶を掘り返すこともなく、私はすぐにあ
の約束のことを思い出した。

昔から『お泊り会』と称して、2人の間では夏休みの恒例行
事として互いの家で何泊かの泊り合うことになっていた。
互いの家を行ったり来たりして、その時ばかりは夜更かしし
て布団にもぐったまま、好きな男の子の話とか将来の夢の話
とかをとりとめもなくしていた。

ただ中学から始めたバレーのせいでここ数年は一度も実現出
来てきていなかった。それも、夏休みには必ず部活動で泊り
がけの長期合宿があったからだ。
51名無しよっすぃ〜:02/03/24 20:20 ID:NBc/ht7j

入学式の日の新入生歓迎イベントの席で舞台にあがった部長
が『夏休みは無いものと思ってほしい』と言っていたのを思
い出していた。

それは一年生の体力では練習についていくのが精一杯で遊ん
でいる暇などないという意味なんだろうと私にもすぐに分か
った。
けれど夏休み合宿の有無については触れていなかったので、
そのことを部長か顧問に聞いておくと真希に約束しておいた
のだった。
だけど結局その約束も練習に夢中ですっかり忘れていた。

「で、どうだったの?」
真希は気だるそうに背凭れに体を預けると、脱力してため息
混じりに聞いてきた。
「………」
私は何とか適当に理由をつけて誤魔化そうとも思ったんだけ
れど、付き合いが長い分、さっきの私の様子を見ていた真希
にはきっと見透かされてるんだろうと思って諦めた。
見掛けに騙されて嘘をついても無駄だと言うことは私が一番
知っているのだから。
52名無しよっすぃ〜:02/03/24 20:22 ID:NBc/ht7j

「ごめん、まだ聞いてない…」
真希の確かめるような視線を真に受けて、私は情けなくそう
答えるしか出来なかった。

「まぁよっすぃ〜がバレーに本気なのは知ってるからさ、ヒ
マが出来たらちゃんと聞いといてね。」
そう簡単に言い放った真希は何も無かったように帰り支度を
始めた。
その言い回しから、どうやら私なりの事情を考慮してくれた
らしく、何のお咎めも無しに私は許してもらえたみたいだ。

「総体が近いんだもんね。部活、ガンバんなよ」
バッグに簡単な化粧品や筆記用具なんかをバラバラと適当に
詰め込みながら言う優しげな真希。
「うん、ありがとう。」
感謝の意を込めて一言返すと真希も微笑んでくれた。
それを見て、どうにか今年こそお泊り会が開けないものかと
強く思う。
今日こそは忘れずに部長の飯田さんに聞いてみようと心に誓
った。
53名無しよっすぃ〜:02/03/24 20:23 ID:NBc/ht7j

ガラガラとアルミ製のトビラが鉄のレールの上をすべる軽快
な音と共にクラス担任がやってきた。
周りを見るとみんな帰り支度を始めていて、そんな少し慌し
い中帰りのHRが始まった。

ずっと寝グセを気にしていた真希だったけれど、結局は最後
まで直らなかったみたいだった。
私に整髪料を借りようとしたけれど私はそんなもの持ってい
ないので向こう隣の子に借りてボソボソとグチをこぼしなが
ら直していた。

私も帰り支度を整え、空っぽのバックの中に真希への感謝の
気持ちと部活へのヤル気をいっぱいに詰めてHRが終わるの
を待った。

コートに白い玉が弾む音を思い浮かべ、私の小さな胸はほん
の少しだけ高鳴った。