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「よっすぃ〜バイバ〜イ」
「ばいばい〜はぁ…」
足取りの重い中ひとみは生徒会室の前まで来ていた。
ため息を深呼吸にかえて意をけして乗り込んでいった。
すると予想していなかった人影が…
(りか…だっ…)
心臓が出てきそうな勢いで心拍数が上がる。
梨華はというとまだひとみの存在に気付いていない様子。
黒板に席順が書かれていたため目を通すと、
【1年:……………………】
【2年:……吉澤石川……】
【3年:……………………】
(梨華と席隣りじゃん!どうしよう…)
もう1度落ちつかせようと深く深呼吸を繰り返していると、
あとから来た保田に「アンタなにやってんの?」と話しかけられる。
「えっ!いやー深呼吸を少々…」
「深呼吸…(やっぱり変わってる子だわ…)そんなことどうでもいいわっ!
早く席に着きなさい」
「は〜い…」
小さな声で嘆き席まで向かうと梨華が笑顔で
「あれ?ひとみちゃんも実行委員だったんだ」
「そーなんだよねっ」と軽く苦笑いのひとみをよそに
最初は『実行委員長』を決めることから始まった。
なかなか決まらないため周りは静まりかえる。
すると保田の口から思いがけぬ一言が…
「じゃー吉澤を推薦するわっ」
思わずぎょっとするひとみ。
「な、なんでですかぁー!?あたしやったことないんですけど!!」
「まぁまぁいいじゃないの。これで居眠りの事もチャラにしてあげる
わよっ!」
「うぅ…(まんまとはめられた…)」
「じゃー交渉成立ねっ賛成の人は手挙げて」
パチパチパチ
静かだった生徒会室に拍手の音が響く。
諦めたのかしょうがなく前に出ることに。
次に委員長の次に偉い『副委員長』を決めることに。
するとスッと少し色黒の手が一直線に挙がる。
(えっ?!梨華?)
「おっ石川1人だけがみたいだから決定ねっしっかり吉澤支えてあげてよっ」
「はい」
「じゃー2人とも簡単に挨拶しておきなさい」
「あー吉澤ひとみです。頑張ります」
バシッと乾いた音が響く。
「アホかっもっと気の利いたこと言いなさいよっ!」
小声で言ってるつもりなんだろうが周りにモロ伝わっている。
「(痛って〜!しかも圭ちゃん関西弁だし…まぁいいや)しっかりやりま〜す」
笑い声と拍手の声が混ざりあう。
「ゴホン…次、石川っ」
「はい、私はこの文化祭をもっと最高なものにしたいので
副ですがやれることは精一杯、頑張ってやっていきたいです」
拍手がおこる。保田はうんうんと頷いている。
(梨華…カッケー!!)
目を輝かせているひとみを横目に1人ため息をつく保田。
(大丈夫なのかしら…)
保田の心配をよそに張り切りだすひとみ。
「んじゃ〜意見言って下さいじゃそこの人〜…」
勝手に当ててって言ってもらう。その意見を梨華が黒板に書き出す。
クセのない綺麗な字、思わず見とれてしまう。だが、後ろから咳払い
が聞こえ現実に戻される。
こんな時でも小さな幸せを感じるひとみだった。