ごっつぁんの目がもう見えなくなった。
「あたしの顔覚えてるー?」と聞いたら
「覚えてるよ、当たり前〜。」と、微笑んでくれた。
でもこの前、
「私の事、邪魔だと思ったら手を放して先行っちゃっていいよ。」と言ってきた。
思わずごっつぁんのことを抱きしめてキスをすると
「もう、えっちだね。」
と言って泣いていた。あたしも泣いた。
でもごっつぁんの目からは、もう涙が流れることは無いんだ…
>>177からの続きです。
部屋をでると矢口先輩が飯田先輩の腕をつかんで
「ちょっとやめなよ〜カオリ〜!!みんな疲れてるんだよ〜!!」
「いいじゃん〜!矢口は優しすぎるんだよぉ〜!(ガチャ)は〜い!起きろ〜!」
あたしが見ていることに気づいた矢口先輩が早歩きでこっちに向かってきた。
「もぉ〜ヨシザワー!カオリとめてよぉ〜!」
矢口先輩の訴えもむなしく続々と部員が部屋から出てきた。
そうその中には梨華も。
梨華は髪の毛の後ろ髪がピーンと立ってるのが気になるらしく
悲しい表情をしていた。思わずあたしは笑ってしまった。
こっちに気ずきそうだったのであわてて顔を伏せた。
無意識に梨華の事を探していた自分に腹が立った。
(もう関係ないんだよね・・・)
そう言い聞かせたときに、タイミングよく飯田先輩の
「はぁ〜い!!今から5km走るよぉ〜!!」
みんなからは「えぇぇぇ〜!!」とブーイングが聞こえた。
「はいはいっ!とにかくっドベだった人は〜カオリと100本
レシーブするのでみんなっ!気抜くなよぉ〜!!」
その時、飯田先輩が鬼に見えた。
ザッザッザッ・・・
みんなのコンクリートの上を走る音が聞こえる。
先頭には飯田先輩と矢口先輩が平気な顔をして走っていた。
「5kmなんてさぁ〜駅伝以来だよね〜」
「そういえばそうだよね〜懐かし〜!!」
「今年もでたいよね〜あたしら最後だけどさぁ〜」
「そうだねぇ〜じゃあそゆこと〜でヨシザワ!頑張ってね〜」
突然矢口先輩が振り返って何を言うかと思いきや。
まぁ一応「はい」だけ言っておいた。
後ろを見てみるとみんなキツそうにハァハァ・・・言ってた。
その時も、無意識に梨華の存在を探していた。
(いたっ!!)
見つけたときの梨華はお腹が痛いみたいなのか手で横腹を
押さえていた。とても苦しそうだった。
あまり走ることの得意じゃない梨華が可愛そうに見えた。
どんどん後ろに下がってく梨華を見ていたあたしに気づいた
飯田先輩が梨華に向かって
「石川ぁ〜そんなんじゃヨシザワ取っちゃうよ〜」
と言ってしまった。梨華はそんな飯田先輩を睨みつけて
ぐんぐん前に走ってきた。飯田先輩は梨華のそんな様子を見て
「おぉ〜やるなぁ〜よし!あたしらもペース上げよっ〜!」
飯田先輩相手にむきになる梨華を見て愛おしく感じた。
(あぁ〜ごっちんに相談したいなぁ〜・・・)
合宿のこと。梨華のこと。バレーの事。
なんでもいいからごっちんと話したかった。
そんなことを考えていたら体育館が見えてきた。
「やったぁ〜!1っ番乗り〜!」
「ハァハァ・・・カオリ〜・・・速すぎ〜」
顔を真っ赤にした矢口先輩がそう言いながら芝生の上で大の字に
なって寝ころんだ。そのあと少し遅れたあたしも芝生の上にあぐら
をかいて座った。汗で前がよく見えなかったから体操服の袖で目をこすったら
梨華が見えた。お腹をおさえながら芝生に倒れ込みながら座り
ハァハァ言ってとても苦しそうになってるのがわかった。
体操服の背中から透けて見える水色のチェックのブラがとても厭らしく見えた。
飯田先輩がこっちに来た。耳元でボソッと
「ヨシザワのためにおにぎり作ってきたから、あとで食べてね」
と言ってきたので首を縦に振って返事した。すると飯田先輩は笑顔で
「はぁ〜い!ドベだった人〜カオリに着いてきてね〜!
といってどべだった子と一緒に体育館に続く道を歩いていった。
「ご愁傷様・・・」
矢口先輩がその子を見ながらあたしの隣りに座った。
「あっつ〜い」と言いながら体操服をパタパタさせていた。
あたしの方を見て矢口先輩は、
「よっすぃ〜楽勝っぽい顔だね〜」
「そんなことないですよ〜」
「あははっじゃあたしらもそろそろ体育館のほうに行こっか!」
と立ち上がったので一緒に立ち上がった。
ふと梨華のほうを見ると太陽の光と汗でよく見えなかった。