小説『モーニングクエスト3』

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48石川記念日
『グハハハハ…
人の心は闇に満ち溢れている!!
人間が滅びでもしない限り、
貴様等に勝ち目は、無いのだぁ!!』
(今度は何??)
チャーミーの記憶が、リカに流れ込んでくる。
「魔王を追いかけるために私は時代を超えてやってきた。」
(時代を超える??)
リカの胸に淡い期待がよぎる。
「それは無理よ?リカが居なくなると困るから…」
チャーミーにはリカの考えている事が、瞬時に伝わるらしい。
(そんなぁ〜ぁ。)
「続きを見ようか?」
(続き?)
これ以上何を見せようというのだろうか??
そしてチャーミーはリカに何を求めているのだろうか??
49石川記念日:02/03/11 19:30 ID:H+8rodtt
「ち…っくしょう!!!!」
「どうする?」
魔王と戦っていた戦士達が、リカに意見を求めてきた。
『また私が追う!!
 今度は逃がさない様にする。』
「でもどうやって??」
戦士達も不安を隠せないのか、口々に諦めの言葉を呟く。
『今ならアイツが逃げた時の扉がある。』
チャーミーは、先程魔王が逃げた時空の扉を指差す。
「あんな物大丈夫なの??」
「危険すぎる。」
『アイツは魔族の王だった私の父を殺すために
 父が唯一愛した人間とその娘を人質に取った。』
「魔族の王が人間を??」
妙な話である。
魔族が人間を好きになり、子供まで産ませるとは…
『父が若かった頃、
 ある街を襲っているとき、教会にシスター母が居て、
 最後まで抵抗を止めなかったらしい。
 その気の強さに惹かれて、城にさらったんだって』
「それって愛したって言うの??」
 魔族の愛情とは、人間とはかけ離れたもののようだ。
50石川記念日:02/03/11 19:31 ID:H+8rodtt
(私に何の関係があるの??)
リカの頭がこんがらがっていく。
はるか昔 
チャーミーは仲間達と魔王を追い詰めたが、あと一歩で逃げられた。
『まぁまぁ、話は最後まで見てそれからそれから』

『最初は母は当然父を拒んだけど、ある時父がひどい怪我をしたんだ。』
「怪我ってするんだ?」
仲間の一人が、意外そうに尋ねるが無理も無い。
魔族が怪我の治療をする所を人間は、殆ど見る事が出来ない。
なぜなら人間と魔族の戦いは、どちらかが死ぬまで終わる事が無いから…
『私もそうなんだけど、攻撃魔法は得意だけど、回復の方はちょっとねぇ〜。
 父の場合はもっと極端で、自然治癒しか無かったらしいの
 それでも母に会いに来るものだから、回復魔法を使ったんだって、
 「あぁ〜、この人(?)には、私が必要なんだ。
 きっと神様が私を導いてくれたんだ。」と思いながらね』
もはや運命と諦めてしまったのだろう
 『それから数年して私が生まれた。』
51石川記念日:02/03/11 19:31 ID:H+8rodtt
チャーミーの言葉に熱がこもる。
『元々魔族が人間と付き合うことに批判的だった魔族や
 人間界を支配したい魔族が、父に反乱を起こした。
 父もある程度は覚悟していたからねぇ
 何とか理解してもらおうとしたんだけどね。』
「どうなったの?」
『さっきも言ったとおり、魔王を中心とする組織がねぇ…』

「それで魔王を追いかけてきたの??」
『そう…
 だからぁ、アンタラともお別れ!
 そうそうアンタねぇ、
 アンタまで付いてくる必要はないよ。』
目の前に映っていた女性の体が、青い光に包まれる。
「んん〜ぅ」
『アンタに合わせて裏迦なんて名乗ってたけど、
 私にはチャーミーって、ちゃんとした名前があるんだからねぇ!!
 心の片隅にでも覚えてよ!
 アンタの中居心地良かったよ。
 って伝えておいてくれる?』
「わかった。」
『それじゃぁ…行きますか…』
チャーミーの記憶はここまでのようだ。
52石川記念日:02/03/11 19:48 ID:H+8rodtt
『理解できた?
 私が何でリカの中にいるか…』
(全然…)
さっきの女性と何か関係があるのだろうか??
『ん〜ん、何でわかんないの?』
チャーミーの悲しそうな声
(ひ.ひぃ...
 ご・ごめんなさぃ!)
『取って食ったりしないから安心して、
 私疲れたからねる!
 チャオ!!』

「リ〜カちゃん…」
名前を呼ぶ声にリカが目をパチクリさせて答える。
「???」
今のは夢だったのだろうか??
ではどこからが??
モンスターを倒した所までは記憶がある…。
ポケットの中に手を突っ込むと、コインが指に当たる。
とりあえず、あそこまでは現実のようだ。
「ねぇ、ごっちん?」
マキの姿がはっきり見えない。
ボンヤリとモヤのかかった状態から、視界が回復する。
「ごっちん??」
自分の知るマキの姿ではない。
どちらかといえば、夢に出てきたチャーミーとか言う魔族に似ている。
「ごっちんだよねぇ??」
リカがビクビクしながら尋ねてみる。
「う・うん。」
マキが途惑いながら答えた。
「あ・あのさ、リカちゃん!!
 今まで黙ってたんだけどぉ。
 私人間じゃないんだ。」
「人間じゃない??」
「そぅ!さっきの奴と同じ魔族なんだ。
 でもねぇ騙してた訳じゃあないんだよ??」
(さっきの奴??)
どうもチャーミーの事のようだ。
マキの目から涙が零れ落ちる。
「この木…」
「そうだったんだぁ。」
確かにリカだって、いきなり魔族の姿で現れたら警戒心を抱いていただろう。
今の姿は、約300年前に伝説の真偽を確かめるために
首都『サマーナイトタウン』から、
遥々やってきた勇敢な兵士の姿をアレンジしているらしい。
「私達友達??」
「うん…勿論…ずっと友達!!
 魔王倒したらまた会いに来るよぉ!」
「じゃあ、これ…友情の証…」
マキが照れ臭そうにペンダントを外し、リカの首にかける。
「良いの?」
「何かねぇ、
 空間を司る精霊が宿ってるらしいから、リカちゃん守ってくれるよ。」
「じゃあ、私からはこれ…
 帰る途中初めてやっつけた魔物から貰ったお金」
短い間だったが、長い付き合いの友人のような別れだ。
「まずはどこへ行くの??」
「もう一回オービットに行くんだ。」
アイボンに借金を返さなければならない。
「困った事があったら、エンジェルモーニングに行くと良いよ。
 世界で最も神聖な場所だからぁ!!
 神父とかも沢山居るし、きっと力になってくれるよ。」
「わぁかった〜」
リカの姿が段々と小さくなっていく。
心配そうにマキが空を見上げる。
冒険はまだ始まったばかり
    1章完