小説『モーニングクエスト3』

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39石川記念日
「ゴホゴホ…オエ」
マキの口から大量の血が噴き出す。
「効かないね!!」
マキが青ゴブリンを睨みつける。
『ふん…!
 では人間に先に死んで貰って、
 貴様の絶望に歪んだ顔を見せてもらうとするか??』
「待て!!!!」
マキが左手で口を拭うと、下っ端の手を振りほどき青ゴブリンを蹴った。
「ハァ〜、ハァ〜…
 リカちゃんには、指一本触れさせないよ!!」
『死にぞこないに何が出来る??』
ゴブリンの指摘は最もだ。
(でも負けられない…。)
マキの魔力は、既に底を尽いている。
殴られ続けたおかげで、大量に血を失ったため
視界も意識もハッキリしていない。
自慢の体力も尽きかけている。
「やってみなきゃ、わかんないでしょ?」
口だけでも強がっていないと、とてもじゃない倒れてしまいそうだ。
『減らず口を!!』
苛立ったゴブリンが、再びマキを蹴り上げる。
「オエ…」
マキの体が宙を舞い、地面に叩きつけられる。

40石川記念日:02/03/05 09:28 ID:butz7uXi
『他愛無い…。さてまずは命令通り木を…』
「…待…て!!」
マキの左手が、ゴブリンの右足首を掴んだ。
『離せ…!!え〜い、忌々しい!!!』
ゴブリンが大きな遠吠えをする。
『ゴガ〜!(集まれ!!)』
瞬く間にモンスターが、集まってきた
「やめろぉおおおおおお!!!」
マキの顔が絶望に歪んだことで、
勝利を確信したゴブリンは、
マキの体を左足で踏みつけ満足そうに木へと向かう。
周りを囲んでいたモンスター達も、徐々に木へと近づいていく。
「やめろ〜!!!」
瀕死のマキの叫びは、むなしく響き渡るだけだった
『この木さえ無くなれば…』
ゴブリン達が斧をセーので構える。
(守らないと…)
思うように動かない体をもどかしく感じる。
(ん…??)
何だろう?
この嫌な予感は…
高い魔力が接近してくるのを感じる。
ンっと空を見上げると、突然真っ暗だった空がが光りだした。
(雷かな?)
ゴブリン達はまだ気が付いていないようである。
「気のせいかな??」
殴られすぎて、気が変になってしまったのだろうか??
マキがブンブンと首を振る。
(ま…ま…さ…か…)
間違いない…この魔力の高さは魔族である。
思い当たる魔族が一人居る。
41石川記念日:02/03/05 09:32 ID:butz7uXi
上空の雲が二つに割れ、中から魔族がゆっくりと降りてくる。
(あれは??)
かなり強い魔力を感じる。
ひょっとしたら、魔王が??
万事休すとマキが目をつぶったその時…
ズガァアアアンッ!
『グァァァァ…!!』
リカを捕まえていたモンスターが一瞬にして消滅した…。
それを皮切りに次々と、リカの周囲のモンスターにも稲妻が命中する。

(これはライデイン??)
伝説の勇者にしか使えないといわれる魔法…デイン系
はるか上空に雷雲を呼び起こし、
それが発生する稲妻で、モンスターの脳天を直撃する呪文…
(のはずなんだけどね…)

『何事だ?』
ゴブリンがようやく異変に気がついた。
まだ誰が呪文を唱えたかには、気がついていないようである。

どうやら、モンスターの仲間ではないらしい。
ましてや、魔王でもないようだ。
魔族は、禍々しい両翼を動かし、世界樹の木の方へ向かう。
(じゃあ、この強力な魔力は??)
「危〜な!…!」
マキが体を逸らして、稲妻を避ける。
(助けてくれるんじゃないの??)
モンスターの姿が、はっきりと見え始める。
『貴様ぁぁ!!!何のつもりだ!!!』
ゴブリンの一匹が、謎のモンスターに向けて斧を投げる。
『…』
謎の魔族は斧を長い指二本で、軽々と止めると
空中で二・三回転してそれを投げ返しす
『グォォォ!!』
力の差は歴然としていた。
(木に当たったらどうするのよ?)
斧はブーメランのようにゴブリン達の首を飛ばし、青ゴブリンの足元に突き刺さった。
『お…おのれぇぇ!!!』
残るは青ゴブリン一匹
(何者よ??)
あの実力から言って、青ゴブリンは瞬殺されるだろう。
問題はその後だ…。
今のマキではあれには勝てない…。
魔族が地上に降りてくる。
そのまま魔法で楽勝なのだが、腕力でも力の差を見せ付けるつもりなのだろうか??
(何を考えてるの??)
青ゴブリンが飛び掛る。
『…』
黒い腕が青ゴブリンの腹を貫いた。
『ウガァァァ!!!!」
敵は全滅したが、緊張は消えない…。