1 :
あいぽん:
新曲&モーニングコーヒー2002ver の誰がどのパート歌ってる
か詳しく書いてあるHPとか知ってる人は教えてください。
2 :
名無し:02/02/20 22:17 ID:fCqzRkw9
9
4 :
名無し:02/02/20 22:19 ID:uUprZHUM
2
5 :
:02/02/20 22:20 ID:lTYouOEu
6 :
:02/02/20 22:21 ID:lTYouOEu
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| あーむしゃくしゃするぜ。
| 新垣蹴ってストレス解消ってか。
\
 ̄ ̄ ̄|/ ̄ ̄ ̄ ̄
ノハハ
川o゚Д゚) ((∋oノハヽo∈))
⊂/ つ ガンッ (((;・e・; )))
〜( ,ノつ ☆ (((⊃⊂)))
(/ ☆ ((((__)(__))))
ガンッ
7 :
名無し:02/02/20 22:22 ID:fCqzRkw9
漏れは文房具板には結構逝ってるぞ
9 :
あいぽん:02/02/20 22:23 ID:xIVKrLbq
ありがとうございました。みなさん
てす.....................
このスレもらっていい?
じゃあ、ちょっとかりますね。
『さよなら私』
14 :
:02/02/24 02:32 ID:4DRh7ek3
目の前をいそがしく通り過ぎていく人たち。
ずらりと並んだデスクの上には山盛りに資料がつまれ、誰もそこにとどまって仕事をしているよ
うには見えなかった。
壁際のすみでつっ立っているわたしの周りだけ時間が止まっているみたい。わたしの存在などな
いように、スーツを着た男の人、女の人、青年、中年、めまぐるしく人が入り乱れていた。
「ごめん、待たせたね」
その言葉が最初自分にかけられたと気づかずに、わたしはまだ目の前の光景に圧倒されていた。
「すごいだろ? 今ちょっと立て込んでてね」
今度はすぐ隣りから聞こえた。
ようやく声をかけられたんだと気がついて、振り向く。
「あ、おはようございます!」
「はい、おはよう」
メガネをかけた、少し神経質そうな面立ちのその人は、ジャケットの内ポケットから名刺を一枚、
わたしの目の前に差し出した。
インディーズレーベルで、とくに新人発掘を手がけている人だった。
「あのわたし――」
15 :
:02/02/24 02:33 ID:4DRh7ek3
「知ってるよ、"元モーニング娘。"さんだよね?」
「……あ、はい。……そうです」
「また増員するんだってね、5期メンバーになるのかな。――あ、じゃあそっちの、そう、そこの
ソファにでも座って」
テーブルをはさんだ黒い革張りのソファを指した。
向かい合って掛ける。
「持ち込み、だったよね?」
両手を組むと、わたしの顔を覗き込むようにして言う。あわてて、持っていたバッグからテープ
を取り出した。
クリアケースに入った、わたしの名前を書いたシールを貼っただけの60分テープ。
それを受け取ると、ちょっと待ってて、と言い残して彼は行ってしまった。わたしはまた、しば
らくぼうっと喧噪を見つめていた。
16 :
:02/02/24 02:35 ID:4DRh7ek3
「ごめんごめん、テープっていうも最近めずらしくてね。みんなMDで。ああ、別に問題ないよ、
ほら」
と言って、もどってきた彼は少し型の古いウォークマンをテーブルに置いた。
さっそくテープを入れると、イヤホンを片耳にだけつけてPLAYボタンを押す。その仕草をじっと
見つめていた。
自分の歌が、曲がどの程度なのか。どれぐらい通じるのか。そう考えると胃のあたりがきゅっと、
締めつけられるように痛くなる。
けれど、30秒もしないうちに、あれ、とその表情がかわった。すぐにイヤホンをはずすと、
「ありがちな曲だね、ただ――」
"ありがち"という言葉に萎縮しているわたしを無視して、ひとり考え込んでいる。
「あの……」
「ああ、ごめん。でもどっかで聞いたことあるんだよなぁ、いや、似てるとかそういうレベルじゃ
なくて。――同じ曲を」
17 :
:02/02/24 02:35 ID:4DRh7ek3
「え?」
「デモテープの持ち込み、売り込みは山ほどあってね。どれも似かよってるんだけど。その中に
あったのかもしれない」
「はあ……」
「でもさすがに同じ曲っていうのは初めてだなぁ。えっと、どこにしまってたっけ……」
「あ、あの!」
立ち上がろうとする彼を、引き留めるように言う。
「わたし曲、どんな感じですか? やっぱり、ダメですか?」
「……そうだなぁ。ダメ、ってことはないと思うよ。でもさっきも言ったけど、ありがち。あり
がちな感じしかしないんだなぁ。こう、新しさがないっていうか」
困ったような笑顔を作って、そう言った。
別れぎわ、また作ったら持っておいで、となぐさめられ、その事務所をあとにした。さんざんな
気分だった。
18 :
:02/02/24 02:37 ID:4DRh7ek3
電車にゆられながら、その車窓からの景色を眺めながら、ぼんやりと考えた。家への帰り道。
ありがち――、新しさがない――、
突き刺さった言葉はループするばかりで、まだ消化なんてできていない。だから別のことで頭の
中をうめた。
わたしの作った曲と同じ曲を聞いたことがある。彼はそう言った。
よっぽどわたしの曲がヒドかったのだろうか? だから誤魔化すために、その場から逃げたいが
ために、思いつきで嘘をついたのだろうか?
考えたくない。
それは、考えたくない。彼は事実を言った。そう、聞いたことがあるんだ、同じ曲を。
19 :
:02/02/24 02:38 ID:4DRh7ek3
同じ曲――、
そんなことがありえるのだろうか?
わたしのテープに入っているのは、イメージしたメロディを知り合いにギターで弾いてもらい、
そこにほとんどアカペラ同然で歌を入れ、録音をした曲。完全なオリジナルだ。
ギターを頼んだ人は信頼できる友人だし、なにより、わたしの曲は"ありがち"で"新しさのない"、
盗んでも仕方がないような曲のはずだ。
そこまで考えたところでちょうどドアが開き、夕方間近の車両はにわかに混みはじめた。
目深に帽子をかぶり直す。
最近ではもうほとんどなくなったけれど、未だに"元モーニング娘。"としてわたしに声をかけて
くる人はいる。
今はその相手をしている気分にはなれなかった。
そのあともずっと考えていたけれど、結局"同じ曲"というキーワードは、他の言葉と同じように
わたしの中で何度かループしただけだった。
20 :
:02/02/24 02:39 ID:4DRh7ek3
数日は何をする気にもなれなかった。ただ、そうしていても日々は過ぎ、それをもったいないと
感じたころに、また曲を作った。
メロディをギターで弾いてもらい、そこにわたしの詞を唄う。
もらった名刺の番号に電話をして、またアポをとった。彼はわたしが持つ数少ない、ギョーカイ
とのつながりだった。
その事務所の喧噪はあいかわらずで、わたしはまた壁際に立っていた。追いやられていたという
べきか。
そこに声がかかる。
今日はすでにソファに掛けていて、彼はこちらに向かって手を振っていた。
「前に言った似てる曲のテープ、見つけたんだよ、これ。ほんとに似てる、いや、もう同じ曲って
言ってもいいね」
「……あ、どうも」
ケースに入ったテープを受け取る。
21 :
:02/02/24 02:40 ID:4DRh7ek3
「それで? あ、今日も持ち込みだったね」
いきなり"同じ曲"のことを切り出されて、古傷がうずくような感覚があった。けれどすぐに気を
取り直して、テープをわたす。
テーブルに置いてあったウォークマンにそれを差し込み、イヤホンをつけた。彼が目をつぶる。
「これ……」
しかしすぐに、驚いた、という顔をしてこちらを見た。
テーブルに手をつき、身を乗り出して、
「また、同じなんだよ。この曲、今度は間違いない、さっきだよ。さっき持ち込みに来てた子が、
これと同じ曲のテープを持ってたんだ。だからほら、ウォークマンもさ、ここに置いたままにし
ておいた」
早口にまくし立てるように言って、スチール製のフタをコツコツと指先で鳴らした。
22 :
:02/02/24 02:41 ID:4DRh7ek3
「あの、それでその人は?」
「え? ああ、ちょっと前に帰って……。待った、トイレだ。お手洗いかしてくださいとかなん
とか……。いた! ほら、あそこ。あの子だよ!」
立ち上がって指さした先、彼女はちょうど事務所から出て行こうとするところだった。後ろ姿が、
あっという間にドアの向こうに消える。ショートヘアの髪がふわりとゆれた。
思わずわたしは、自分の髪に手をのばす。同じ、ショートヘア。
「あの、女の人、ですよね?」
「そうだよ、年もキミとかわらないぐらいだと思う。ちょっと、おい、どうした――」
「すいません! 今日はもう、帰ります!」
彼からの制止をきかず、わたしは駆け出していた。身体が勝手に動いていた。彼女を追いかけな
ければ。
"同じ曲"その意味だけでも知っておきたかった。
あのとき言われた残りの二つの言葉、"ありきたり"と"新しさがない"。そのどちらの意味もまだ、
わたしはわかっていなかったから。
ひとつぐらいは知っておきたかった。
つかんでおきたかった。
23 :
:02/02/24 02:43 ID:4DRh7ek3
勢いよく事務所を出ると、廊下を左右見わたす。――わたしと同じ曲を書く彼女。
廊下を曲がる後ろ姿が見えた。――わたしと同じ詞を書く彼女。
また駆け出す。その背中めがけて。――わたしと同じ感性を持った彼女。
息がすぐに切れる。けれど走る。――もしかしたら、
彼女はわたし自身なのかもしれないから。
しかし、廊下を曲がった先には誰もいなかった。そこに、彼女の姿はなかった。
見間違い?
いや、廊下には他に人はいなかった。見間違えるはずなどない。彼女はここを曲がったはずだ。
それなのに、彼女は――いない。
24 :
:02/02/24 02:45 ID:4DRh7ek3
電車にゆられながら、その車窓からの景色を眺めながら、ぼんやりと考えた。家への帰り道。
彼女は誰なんだろう。
あのあと事務所にもどって彼にきいてみた。彼女の名前、素性、プロフィール。
しかし返事は、自分にもわからない、というものだった。
わたしがはじめて持ち込みをした日のほんの数日前。彼女は突然あの事務所にあらわれ、テープ
をきいて欲しい、と言ったそうだ。
むげに断ることもできず、彼はそれを受け取った。
内容は――、
わたしのテープと同じ、彼の言葉を用いれば、"ありきたり"で"新しさがない"ものだった。彼も
正直にそう伝えた。
その言葉を聞いても彼女は別段落胆したところもなく、あっさりと帰ったのだという。
25 :
:02/02/24 02:46 ID:4DRh7ek3
そして今日、わたしが事務所に来る直前、彼女はそこにいて、わたしと入れ替わりに彼にテープ
をわたした。
同じ内容のテープ。同じ内容の曲。
ちらりとバッグの中をのぞき見る。彼女が最初に彼にわたしたデモテープがそこにはあった。
まったく同じなのだろうか?
まさか、ありえない。
わたしのテープに入っているのは、わたしの声、わたしの歌だ。完全に声まで同じ、ということ
はありえない。
似た曲調、似た歌詞なのだろうか?
ともかく聞いてみることだ。わたし自身が聞いてみて、確認すればいい――。
26 :
:02/02/24 02:46 ID:4DRh7ek3
その日から立て続けに、わたしは曲を作り、それを彼の元へと持って行った。半ば意地になって
いたと言っても、嘘じゃない。
理由は簡単だった。
あの日聞いた"彼女のデモテープ"。彼は同じ曲だと言っていた。しかし彼も聞いてわかっていた
はずだ。
確かに、わたしと彼女の曲は曲調も歌詞も似かよっていた。いや、ほとんど同じと言っていい。
けれどそれは微妙に、しかし確実に、わたしの曲よりうまく、なにより魅力的だった。
彼はわたしの"元モーニング娘。"というプライドに、遠慮をしたのではないだろうか? いや、
きっとそうに違いない。
それが単純に、わたしはくやしかったのだ。
27 :
:02/02/24 02:47 ID:4DRh7ek3
そして彼女もまた、わたしと同じように、まるで呼応するかのように曲を作ってきた。
何度か彼に言って聞かせてもらったが、やはりそれはどこかわたしの曲と共通するところがあり、
そしてわたしの少し上をいっている気がした。
後ろ姿を追いかけて以降、しかしわたしは彼女の素性にはそれほど執着しなくなっていた。
顔も名前も知らなくていい。
同じ音楽性、感性を持った人がいる。それだけで十分だった。
ライバル?
そうかもしれない。
彼女のことを考えていると、不思議と詞とメロディが日常から生まれ。加速度的にわたしは曲作
りに没頭した。
あるいはもしかしたら、友人に口を滑らせたときに聞いた、"ドッペルゲンガー"という、わたし
の分身であり死神である存在だと、意識していたのかもしれない。
28 :
:02/02/24 02:50 ID:4DRh7ek3
日々は過ぎる。夏が足早にやって来たころ、わたしの元にひとつの知らせが舞い込んできた。
UFA(モーニング娘。時代、わたしが在籍していた芸能事務所だ)の社員だという人からの電話
だった。
それを受けたお母さんは、うかれてわたしに言った。
"また、芸能界にもどれるかもしれない"
嬉々としたその顔に、わたしは曖昧な笑顔しか浮かべることができなかった。
――どうしてだろう?
わたしが彼に会っていたのは、彼がギョーカイへの"ツテ"だったからだ。だから、わたしは芸能
界にもどりたかったはずなんだ。
けれど、どうしてなんだろう。わたしは心から喜べない。
その日はずっと、あの日もらった彼女の曲を聴いていた。
29 :
:02/02/24 02:51 ID:4DRh7ek3
翌日、わたしはお母さんへの返事を保留して、彼の事務所へとむかった。もう通い慣れた道だ。
事務所はあいかわらず混雑していて、けれどみんなが一生懸命に、自らに課した、あるいは課せ
られた仕事をこなしていた。
急なことだったが、彼は快く会ってくれた。そして、わたしの話を聞いてくれた。
「決めるのは、キミ自身しかいないんじゃないか?」
答えを求めたわけではない。
そう、ただ明確にして欲しかったのだ。わたしの前に道が二つあることを。
「やっぱり、そうですよね……」
めずらしく事務所の入り口まで送ってくれた彼が、わたしの肩をポンと押した。
振り返る。
「がんばれよ!」
慣れていないのか、手を不器用に振る彼の姿がずっと目に焼き付いていた。
30 :
:02/02/24 02:52 ID:4DRh7ek3
電車にゆられながら、その車窓からの景色を眺めながら、ぼんやりと考えた。家への帰り道。
わたしはどうすべきか――、
そんなこと、わからない。
土曜日のせいか、車両には親子連れが多かった。お母さんの顔を思い出す。よろこび、笑ってい
る顔を。
心がゆれる。ゆれる、ということはわたしの気持ちはそれとは別の方にあるのか……。
ふと思う。
彼女に会いたい。彼女に会って話したい。
彼女はなんと言うだろう。なんと言ってくれるだろう?
いや、それよりなにより、ますは音楽の話しになるのかな?
好きなアーティストは誰?
お気に入りのアルバムは?
お気に入りの曲は?
わたしは、わたしはね。好きなアーティスト、たくさんいるよ。尊敬して、リスペクトしてる。
お気に入りのアルバムだっていっぱいある。曲だってそう、数え切れない。
そうだ――、
あのね、わたしほんとはね、あなたの作った曲、すごく好きだったんだ!
31 :
:02/02/24 02:53 ID:4DRh7ek3
降りる駅に到着した。
帽子を目深にかぶり、改札を抜ける。夕暮れ過ぎた町並みが、見慣れた風景がひろがる。
立ち止まったわたしを残して、流れていく人たち。
思い出す。
ああ、あのとき、最初にテープを持っていったときのも、こんな感じだったな。わたしだけ取り
残されて。
緊張してた。
何をしていいのかわからず、そのことを誰にきいていいのかさえもわからず、ただ呆然と立ちつ
くしていた。
そのときふいに、メロディが流れた。それはたぶん――わたしの耳元だけに。
もしかしたら、ずっと前から流れていたのかもしれないのだけれど。
32 :
:02/02/24 02:53 ID:4DRh7ek3
*
33 :
:02/02/24 02:54 ID:4DRh7ek3
「市井さん、おねがいしまーす!」
ぼうっとしていた。
いそいで気持ちを切り替えると、ブースに入る。深呼吸をひとつ。うまく声が出てくれることを
祈りつつ、歌いはじめる。
しかしすぐに納得がいかず、NGを出した。
本格復帰への足がかりとなるアルバムの録音だというのに、気持ちはのらなかった。心のどこか
であの日の決断を後悔しているのかもしれない。
――芸能界復帰を了承した。
あたりまえの、当然の選択だったと思う。家族もみな喜んでいた。
いったん外に出て、ペットボトルを受け取った。
「紗耶香、なんか調子、悪そうやね」
「そんなこと、ないよ」
裕ちゃんにお礼を言うと、さらにスタジオの外、廊下にまで出た。
大きめの窓ガラスがずらりと並び、昼下がりの日射しをあますところなく入れていた。
34 :
:02/02/24 02:55 ID:4DRh7ek3
「あれ?」
「お、もう終わったのか?」
懐かしい、といってもほんの数週間前のことだが、見覚えのある顔がそこにあった。
彼とは事務所以外で会うのはこれがはじめてだった。
「いや、レコーディングしてるって聞いてね。近くまでよったんで来てみたんだけど。案の定」
そう言ってドアに貼られた"関係者以外立ち入り禁止"の張り紙を指した。
「順調?」
「え、ああ……。その、あんまり」
彼は、カンがもどってないだけだよ、と笑った。笑った顔を見たのも、たぶんこれがはじめてだ。
窓にもたれながら、二人並んで立っている。
背中は少し熱いぐらいだ。
35 :
:02/02/24 02:56 ID:4DRh7ek3
「嘘、ついてたんですよね?」
「あれ、ばれてた?」
見上げた彼は、また照れたように笑った。本当はすごく笑顔の絶えない人なのかもしれない。
「事務所の、あ、UFAの人ですけど、あとになって聞いたんです。音楽レーベル全体に、UFA
からの圧力がかかってたんだって。どんな楽曲を持ち込んでも、"元モーニング娘。"を受け入れ
てはいけないっていう」
言い訳もせず、彼は頭をかく。
「ヘンだなぁ、って思ったんです。気がついたのはずっとあと、復帰のこと相談しに行った帰り
だったんですけどね。同じ曲なんてありえないんじゃないかって。あのとき言いましたよね?
同じ曲があるって」
まくし立てるように言う。
「でもそのとき、あなたはその曲を聴かせてくれなかった。思い出せないような素振りで。それ
を聴かせてくれたのは何日か経ったあとだった」
思わず語気が強まった。
「でも、それだけあれば作れますよね? わたしたままだったテープを元に、アレンジを加えた
似たような曲なんて!」
36 :
:02/02/24 02:57 ID:4DRh7ek3
単純なことだった。"彼女"なんて最初からいなかったのだ。
彼にわたったテープはそのまま名も知らないアレンジャーの手にわたり、ほんの少し詞と曲調を
かえた、"同じ曲"として生まれかわる。
それを"彼女の曲"だと信じて、また新しい曲を作る。その繰り返し、そのループ――。
素人の書いたような曲に、そんな面倒を何度もかけれるはずもない。だから、彼が聴かせてくれ
た彼女の曲は、きょくたんに少なかったのだ。
そう考えると、彼にはずい分迷惑をかけていた気がする。
アレンジャーに編曲を依頼するのにも少なからず金がかかったことだろう。いやあるいはそれも、
UFAが出していたのかもしれない。
37 :
:02/02/24 02:58 ID:4DRh7ek3
「こっちは必死で、がんばって曲、作ってたのに。詞を作って、メロディ考えて……」
鼻の奥がツンとしてきた。
「作った曲、彼女にも聴かせるのかな、とか考えて。それでまたがんばんなきゃって、一生懸命
になってて……。そんなの結局――」
彼の肩をつかんでこちらを向かせた。涙はもうずい分前から目にたまっていて、あとひと言ぐら
いしか、まともにしゃべれそうにない。だから、
「馬鹿みたいじゃん!」
涙があふれてきた。
最後に見た彼の顔は、心底おどろいた、という感じで、それがまたくやしかった。まじめだった
のは、自分たった一人だけだったのだ。
しばらく泣いていた。泣いてどうなるということでもなかったけれど、目の前の彼が迷惑すれば
それでいいような気もした。
38 :
:02/02/24 02:58 ID:4DRh7ek3
しかし突然、プッ、と吹き出すのが聞こえた。
そして彼の笑い声。
予想外の反応に顔を上げる。もちろん涙は止まってくれないから、ヒドイ顔をしているだろう。
「な、なにが可笑しいんですか? なんで笑うんですか?」
「あ、いや、悪い。いやでも、はは、とんだ思い違いしてるな、と思って。はは」
彼はこちらを無視してひとしきり笑うと、なんとか呼吸を落ち着けようとしていた。
深呼吸。そして、
「これ、聴いてみるか?」
ジャケットのポケットから、見覚えのあるウォークマンを差し出した。
「最近のお気に入りなんだ、聴いてみてくれよ」
拒否していると、強引に耳にイヤホンを差そうとする。仕方なく涙をごしごしふくと、イヤホン
をした。
「じゃあいくぞ――」
PLAYボタンを彼が押した。
39 :
:02/02/24 02:59 ID:4DRh7ek3
「これ……」
「なかなかいい曲だろ? いや、個人的にはかなりいいと思ってる。この曲で"化けた”んだよ、
こいつ」
心地よいギターのメロディ、バラード系のゆったりした曲調に優しい詞が相まう。
そして――
「どう、かなりいいだろ? 実はこいつのところにも来たんだ。復帰の話がさ。それで、ちょうど
市井が帰ったあとだったかな? やって来てさ、話して、いっかい見送ったんだけど、しばらく
したらもどってきたんだよ。すごい曲を思いついたんです、って」
――どうして、
どうして忘れていたんだろう?
この声を、私はどうして忘れていたんだろう。
「――福田のやつ、ほんとうれしそうにしてさ」
―了―
こんな感じ。 1日でがーっと書いたので、おかしいところとかけっこうあるかも・・・。