QUIZ

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1366月28日 AM02:49

つんくの興奮が冷めてきた頃、再びつんく邸に静けさが戻った。
「…大丈夫やから…」
つんくの肩を抱き、頬をすり寄せる中澤。
「…せやな…」
おもむろに携帯を手に取る。
「誰に電話するん?」
「誰かって…決まってるやろ。保田や」
中澤はつんくの体から身を離した。
「あんた…!こんな時にどうして…!」
「こんな時だからに…決まってるやろ!ストレス…発散や!」
半ばヤケクソになってるのだろうか、つんくの目は常軌を逸していた。
「ちょっと待ってぇな!」
中澤が携帯を取り上げた。

日本テレビ。
「すいません。ここの楽屋にカメラのレンズありませんでした?」
局員にレンズの所在を尋ねる保田。
聞くところによると所有者がわからなかったため、一時小道具部屋に置かれたらしい。
ありがとうございました、と礼を言うと保田は小道具部屋に向かった。
その途中、後方で聞き覚えのある声がした。
「保田さ〜ん!」
石川が走って保田のもとへ近づいてくる。
「あんた!どうしてここにるのよ!」
前かがみになり息を整える石川。
「そんな事よりも…つんくさんから…電話ありました…?」
息が切れている石川はどこか色っぽかった。
「つんくさんから?ないわよ。で、なんでここにいるのよ」
「それは…なんとなくですよ…」
そうこう話しているうちに小道具部屋に着く二人。
小道具部屋とはいったものの、その役目はほとんど物置と変わらなかった。
「なんか…ほこりくさいですね…」
当たり前のように無視をされた。
…ここに私の大切なレンズが…
その事だけが保田の頭に浮かんでいた。

部屋を見渡すと、使わなくなった服、ストーブ、ドラマの台本などがあちこちにあった。

…忘れ物をこんな所に置いておくんじゃないわよ…
苛立ちを覚えながら石川に命令する。
「あんた、私のカメラのレンズ探しておいて」
そう言うと、部屋にあるパイプ椅子に座る保田。
「え〜、私がですか〜?」
利用されている反面、頼られているのが内心嬉しかった石川。
棚がいくつもあるため、探すのは困難だ。

…ふう、疲れた…
「保田さ〜ん、ありませんよ〜」
…紗耶香、元気なかったな…
「保田さ〜ん!これなんですか〜。面白いですよ〜」
…裕ちゃんも、なんか違ったし…
「あ!保田さ〜ん」
…2人ともつんくさんと上手くいってないのかな…

137回想:2000年の4月:02/03/26 02:09 ID:Zr1sUOJh

「紗耶香…本当に辞めるの…」
「うん、でもねつんくさんがね…」
「そっか…、じゃぁ栄光ある卒業なんだね…」
「そうよ!今に見てなよ〜!すっごいシンガーソングライターになってやるんだから!」

1386月28日 AM02:49:02/03/26 02:10 ID:Zr1sUOJh

…そう言えば、現像した写真見てなかった…
「ほら、ガス詮がありますよ〜」
…どこだっけ…あっ、これか…
「石川ここで暮らせそうですよ〜」
…ちゃんと現像してあるわね…
「保田さんも一緒に暮らしませんか〜」
…なに…これ…

「保田さん?」
写真を覗き込もうとする石川。
「な、なにやってるのよ!早く探しなさい!」
そういわれた石川はしぶしぶ戻っていく。
とたんに、保田の携帯が鳴り響く。すると、石川はすごい剣幕で声を張り上げた。
「保田さん!だ、誰からですか!?」
「うるさいわね…。裕ちゃんよ」
「そ、そうですかぁ」
どこか石川は安心したようだ。

「もしもし…?」
「あぁ…圭坊か…」
いつもの中澤の元気がない。
「裕ちゃん…?泣いてるの?」
「いや、大丈夫や…。サブリーダーのあんたに話があるんやけど…」
「何?」
「良いか、誰にも言ったらあかんで。あのな…」
「え?犯人がメンバーの中に?」
「そうなんや…。信じたくないけどな…」
「そんな事って…。圭織もこの事…」
「圭織には言ってへん。あいつリーダーやけど動揺しやすいからな」
「おかしい…おかしいよ…」
「気持ちは分かるで。でもな…これが現実なんや」
「……」
「それだけや、じゃまたな…」

中澤との電話が切れると、再び保田の携帯がなった。
「…、石川。つんくさんからよ…」
さらに驚く石川。
「出ちゃ駄目です!」
いつもとは違った、真剣な表情のでそう言った。
保田は少し勢いに押されたが、それでも携帯に出ようとする。
「保田さん…出ないで下さい…」
石川はいつの間にか涙声に変わっていた。
…うるさい…
そして保田は携帯に出た。

「もしもし…」
「あぁ、保田か!お前になぁ、良い話持ってきたんや」
どこかつんくの息遣いは荒い。石川はなぜか涙を流している。
「良い話?」

「そうや。保田、お前脱退しろ」
「は!?」
「市井みたいに回りくどい辞めさせ方はやめや!お前はな、戦力外なんや。
お前1人いなけりゃ、今度のオーディションで1人多く合格させれるやろ?」
「ちょ…」
「お前もいい夢見れたやろ。会見とかのコメントは事務所に任せとき。」
「待って下さい!紗耶香がなんですって…?」
「だからな、市井辞めさせる時は面倒やったんや。色々嘘考えたりな。
せやけどな、やっぱ話題っちゅうのは必要なんや。」
「そんな…。紗耶香は…シンガーソングライターになるって…」
「なれるわけないやろ?大体、なんであいつが選ばれたか分かるか?あみだくじで決めたんやで…ハハハ」
「嘘…」
「嘘やない。ってか市井の事はもう良いねん。じゃ、保田は脱退決定な」
「なんで!なんで私が!?」
「…分かってるやろ」

そう言ってつんくは一方的に電話を切った。

1396月28日 AM02:49:02/03/26 02:11 ID:Zr1sUOJh

泣きながらリビングに入る中澤。頬がかなり赤い。
「裕子か…殴ってすまんかったなぁ」
悪気が微塵もこもってもない謝罪の声。
「でもな、お前が邪魔するからいけないんやで」
つんくが下品に笑った。
「トイレ…行ってました…」
中澤にとってその言葉は、『福田に報告しました』と同等の意味だった。
「またか、裕子!しかも、お前のトイレ長いなぁ!」
つんくがまた下品に笑った。

1406月28日 AM02:49:02/03/26 02:12 ID:Zr1sUOJh

「…」
無言のまま放心状態となる保田。
「保田さん…」
「…知ってたの…?」
保田の声からは怒りは感じられなかった。
むしろなんの感情もこもっていない無機質な声だ。
「石川は…なんでも知ってますよ…。保田さんが…ここに戻ってくる事も…。
安倍さんが誘拐された事も…あいぼんが…よっしーを階段から突き落とした事も…。なんでも…」
涙で途切れ途切れの声でも、保田にははっきり聞こえた。
加護が吉澤を階段から突き落としたという事が。
「そう…。もう駄目ね、娘は…。いらなくなったらすぐお払い箱。
おまけに仲間を疑ったり…傷つけるなんてね…。もう…疲れたわ」
そう言うと保田は石川を払いのけ、ガス詮を開いた。
シューとがガスがもれる音がし始める。
「保田さん…?何する気ですか…?」
そんな事はとっくに想像はついていた。だが石川は認めたくなかった。
保田はストーブの灯油を床に撒き散らした。
「やめて…やめて…下さい」
保田に飛び掛り止めようとしても振り払われてしまう。
「ふん…良い気味だと思ってるんでしょう…。もう疲れたわよ!そんな人生。
笑いなさい…笑いなさいよ!無様でしょ?」
シューとガスがもれる音が大きくなる。
「保田さん…そんなこと…言わないで下さい…」
灯油まみれの石川が保田の足にすがる。
倒れたストーブからは続々灯油が流れ出る。
それでも保田は棚にあったマッチを手にした。
「…行きなさい……」
涙を流すその目は力強かった。
「行きません…保田さん…駄目です…」
涙で顔がくしゃくしゃになる。その顔はとてもアイドルとは思えないほどだった。
「うるさい!あんたも巻き添えになるわよ!」
マッチを箱から取り出す保田。
ガスが部屋中に充満したせいか、2人ともせきをし始めた。
「駄目ですよ…そんなことしちゃ…保田さぁん…」
見下ろすとそこにある石川の顔。

…私はずっとこの顔が憎かった。
「はじめまして…石川梨華です。よろしくお願いします」
…この声も大嫌いだった。
「保田さ〜ん、今度の曲、石川がセンターなんですって!どうしたら良いんですか?」
…私を踏み越えていく女。


「やめましょう…保田…さん…」
「うるさい…!うるさいわよ!」
マッチ棒をやすりに付ける。
「駄目です…。駄目……!」
「だまれ…黙れ…!」

その時、日本テレビの建物が激しく揺れた。
ジリリリリリリ!
日本テレビの火災報知気が鳴り響く。
そして、けたたましい音と共に爆風が部屋のドアを吹き飛ばした。
熱気とざわめきが波紋のように広がっていく。