「まぁ、そういうこと。
加護も今、ものすごく悩んでるんだよ。
そんな時に急に現れた紗耶香に図星突かれたもんだから、
ちょっと腹がたったんでしょ。
許してやってよ、紗耶香。
あと、加護が来たらあやまりなさいよ」
「何、加護が来たらって?」
市井がそう言うと、保田は傍らに残されていた加護の鞄を指差しながら言った。
「これ。加護の鞄。
あいつよっぽど怒ってたのか、鞄忘れて帰っちゃったから。
財布も中に入ってるはずだし、家に帰れないから絶対とりにくるわよ。
だからその時は、あやまってやんな。
紗耶香の方が大人なんだから。17なんだろ?」
そう言って保田は笑った。
市井もつられて笑う。
「そうだね。大人の寛容さってやつを見せてやらないとね。
それにしても……」
物思いにふけりながらため息をつく市井を見て、保田は疑問符を浮かべた。
「ん、どうした?」
「いや、あいつも大人になったんだなって思って。
子供だって思ってたけど、いろんなこと考えてるんだね。
アイデンティティとか、生き方とか、そんなことも考えてるんだね。
私が腹たったのも、図星だったからかもしれない……」
「そうだよ。加護ももう子供じゃない。
いろんなことで悩む年なんだよ。
思いっきり悩めばいいと思う。加護も、紗耶香も。もちろん私も。
辻だっていろいろ考えてるんだし」
保田が穏やかな表情でそう言うと、矢口が驚いた顔をして聞いた。
「ええっ、辻も?
あいつ、そんなに難しいこと考えてるか?」
「考えてるよ。
今日の焼きそばはいつもよりおいしそうとか、アイスはやっぱりバニラだねとか」
「あはは、今日の圭ちゃん最高!
めちゃくちゃ冴えてない?」
「あたりまえだのクラッカー。
私だっていつも寒いわけじゃないんだからね」
そう言って保田はにやりと笑った。
「クラッカーは余計だったけどね……」
「さてと。じゃあお説教も終わったことだし、どこ行くかでも考えようか」
保田がそう言うと、矢口が反対する。
「とりあえず出たらいいじゃん」
矢口がそう言うと、保田は首をぶんぶんと振った。
「だめだめ、加護が来るまで待って紗耶香にあやまらせないと」
「そうだね。待たなきゃね」
市井がそう答えるのを見て、保田は頷く。
矢口もそれを見て納得したのか、座りなおした。
「じゃあどこ行く〜。やっぱ焼肉?」
「あんたいつもそれだね。私がいた時もずっと焼肉だったもんなぁ」
「おう、後藤も行くか?」
「え、いいの。じゃあ行くいく」
「ごっつぁんも行くのか〜。そうすると焼肉は駄目かぁ」
「そんなことないよ。私は構わないよ……」
4人は夢中になって話し始めたので、部屋のドアがそっと開くのにも気づかなかった。
ここまでです。
更新されてる〜!
しかも、( `.∀´)が主!!
さすがです。
604 :
:02/06/19 22:07 ID:7k8JHYpa
(・∀・)イイ!!
from
>>602 加護は迷っていた。
部屋の前まで戻ってきたのだが、先刻までの怒りも少し収まってしまい、
勢いよくドアをあけることができなくなっていた。
その上先程吐いた市井に対する暴言。
どう考えても怒っているであろう市井のことを思うと
少し首がすくむ思いがした。
「あ〜、みんなもう帰ってへんかな〜」
加護はそう独りごちると、ドアに耳をあててみた。
その瞬間、
「ちょっと圭ちゃん、なにやってるのよ!」
後藤のヒステリックな叫びが響く。
驚いた加護は一旦耳を離したものの、落胆しながらまた耳を当てた。
中の声は、耳を済ませてドアにあてているとようやく聞こえる程度だったが、
今の加護のように聞こうと思った者には聞けないことはない、
といったレベルである。
(今度からあんまり大きな声であほなこと言うの、やめよ……)
そんなことを考えながら、加護はしばらくの間聞き続けた。
数分後、加護の頬には涙が伝わっていた。
声こそださないものの、明らかに泣いていた。
モーニング娘。の加護がドアに耳をぴたりと押し付けて、
しかも自分の楽屋のドアに、そうして泣いている姿はどこか異様であった。
が、そんなことにはおかまいなし、といった様子で加護は
ひたすら中の様子を伺っていた。
「保田さん……」
誰に言うでもなく、そう呟く。
そしてまた大粒の涙がこぼれ落ちる。
保田は分かってくれていたのだ。
加護の悩みをすべて分かってくれた上で、何かあった時は
うけとめてくれようとしてくれていたのだ。
だから、どれだけ加護や辻がふざけても優しく見守っていてくれていたのだ。
そう思うと涙がとまらなかった。
勿論、加護が抱えている悩みは保田自身のものでもあったし、
彼女もまだ解決していない問題だったが。
それでも、彼女はそれを乗り越えながらここまでやってきた。
それでも尚且つ、同じ悩みを抱えているのだ。
「保田さん、凄いな。矢口さんも。ううん、みんなや。
みんな凄いわ。
……市井さんも。
みんな私のこと見てくれてたのに。
それやのに、私あんなこと言ってしもた。
どうしたらええんやろ……」
泣きながら戸惑う加護の耳に、得意げな保田の声が聞こえてくる。
「あたりまえだのクラッカー。
私だっていつも寒いわけじゃないんだからね」
(はは。そんなん言うから、おばちゃん言われるんやで……)
加護は笑った。笑いながらも、涙が止まらなかった。
私はなんて幸せ者なんだろう。
なんていい仲間にめぐりあえたんだろう。
あふれ出る涙が、そんな幸福感に拍車をかける。
部屋の中では、どうやら4人がどこに行こうか話し合っているらしい。
……加護を待ちながら。
(ほんとは、みんな帰ってから鞄、とりに戻るつもりやってんけどな……
でも、はよ行ったらんと、みんな飢え死にしてまうしな)
加護はなかなかとまろうとしない涙を必死でぬぐいながら、
部屋のドアをそっと開けた。
ここまでです。
連続投稿規制がえらくきつかったんで、ルータ再起動してしまいました。
ID変わってるのは気にしないでください。騙りじゃありません。
611 :
:02/06/20 19:47 ID:wl2aF1Qe
(・∀・)イイ!!
612 :
・:02/06/20 23:57 ID:YJQyQb3z
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!ツヅキキニナル―
613 :
名無し:02/06/22 07:44 ID:PSWMcVTj
保全
最近本スレ永田しかレスつけてないな
615 :
:02/06/22 21:06 ID:LDOfwB+l
永田ウザイから書き込む気になれない。
メール欄がこんなにウザイとは思わなかった。
616 :
名無し:02/06/23 09:23 ID:Qr/zGPtz
614=615バレバレw
永田って誰?
618 :
615:02/06/23 17:56 ID:7/YQFdI1
>>616 ハァ?憶測でもの言ってんじゃねーよ。
証拠でもあるのか?
(作者さんこんなところでキレて申し訳ありません。)
>>618 こういうのって大体はハズレなんだよな。
wとか書いてる時点で(r
620 :
:02/06/23 22:21 ID:9M7rmfLf
∋oノハo∈∩ )) 。oO( まあまあ皆さんマターリいきましょう
川∩・-・)⌒⊃
旦~~ ⌒ とノ
622 :
:02/06/24 18:30 ID:07Wd6pIM
>>620 半分はてめーのせいじゃねーか。逝っとけチンカスが!!
>>620 もう*** HOLLYWOOD WALKIN’…はやめてくれ。
from
>>610 ドアがそっと開き、こっそりと加護が入ってくる……
それに気づいたのは保田だった。
加護の顔を見た保田は、何でもないふうを装ってそのまま話し続ける。
そのため、ドアに背を向けていた3人は入ってくる加護には気づかなかった。
「お、ここにする?いい感じじゃん」
矢口は勿論背後に忍び寄る影に気づかずに言う。
「うん、いいんじゃない。
あ、なんか書いてるよこれ。
……4人まで割引券だって」
市井が目ざとく見つける。後藤もそれに調和した。
「ラッキーだね。ねえ、ここにしようよ、圭ちゃん」
後藤にそうふられた保田は、3人の背後に一瞥をくれてから言った。
その目の先には、手が届かんばかりの位置で仁王立ちしている
加護の姿があった。
「うん、いいかもね。でも1人分、足りないかもね〜」
言ってニヤリと笑う。
3人が思わず聞き返そうと口を開きかけた瞬間、後ろで大きな声がした。
「4人ってのはどういうことだ〜!」
「うわぁ!」
「ひぇぇ!」
「んぁ〜、加護?」
3人が思わず叫び声をあげる。
加護はそれをみて、してやったり、という表情をしていたが
保田と目が会うと市井の前に正座した。
「すいません、市井さん。
私、市井さんの気持ち考えんと……めちゃくちゃなこと言ってしもて。
なんか自分のことばっかりで。
みんな、私のこと見ててくれてたのに……私、それに気づかなかった。
ほんま、すいません」
市井はそう言って頭を下げる加護の肩に優しく手を置いた。
「顔あげなよ、加護。
悪かったのは私の方だよ。私の方が先輩で、年も上なのに。
それなのに、お前が悩んでるのに全然気づいてやれなかった。
それどころか、お前の気持ち踏みにじるようなことして。
ごめんな。悪かったな」
市井はそう言うと、加護の顔を持ち上げて笑った。
「で、なんだ?お前も来るってのか〜」
矢口がそう言うと、加護はきっと目を見開いて言い放つ。
「あたりまえだのクラッカー!」
それを聞いた保田の顔が思わず引きつる。
「いや、あのね。あれは場を明るくしようと思ったんであって。
別に普段から言ってるわけじゃないのよ」
保田が慌ててそう弁解したが、4人はまったく取り合わなかった。
「う〜ん、あんなこと言ってるけど?」
「どうする?」
「可哀想だし、そうしといてあげる?」
「ちょっと待ってよ。本当だってば!」
その後、ひとしきり4人で保田をからかった後、市井が立ち上がって言った。
「よし、じゃあこの5人で行くか!」
「「「お〜!」」」
「ふふ、このメンバーだとやっぱりいちーちゃんがリーダーなんだね」
後藤のその一言に、保田は苦笑いする。
「そうなんだよね〜。いっつも紗耶香にいいところ持ってかれるんだよね〜」
「なんだよそれ。リーダーってのも、大変なんだぞ」
5人がそんなことを言っていると、ドアの外から大きな声が聞こえてきた。
「遅い!何やってるんですか。早く行きますよ」
見ると、胸の前で腕を組んで待ち構えている辻の姿がある。
「つ、辻?何やってるのそんなところで」
矢口の問いに、辻は短く答えた。
「早く!腹減ってるんだから!」
まったく答えにはなっていなかったが。
「お、おい。ちょっと待てよ。お前も行くのか?」
市井の問いには答えず、辻はさっさと歩き出す。
代わりに保田が答えた。
「いいじゃない、紗耶香。
もうすでに邪魔なの、いくつかついてるんだから」
「え〜。私が邪魔だって言うの、おばちゃん〜」
「いくつかって、私も入ってるの?
それ、ひどくない、圭ちゃん?」
「あ〜、もう。つべこべ言わないでさっさと支度する!
辻リーダーに置いていかれるぞ!」
そう言うと保田は自分の鞄を手に取り、歩き出した。
加護と後藤もそれに続いて歩き出す。
「ちょっと待ってよ。私まだ片付け済んでないんだから」
先を歩く5人の後ろからは、慌てて帰る準備をしている矢口の
声が聞こえてきた。
そして翌日。
ミニモニ。の収録にでてきた加護は、いつもよりも元気に
ハードなスケジュールをこなしていく。
「どうしてん、加護。なんかええことあったんか?」
普段でないようないい声のでている加護に驚いたつんくが、思わずそう尋ねる。
加護は、満面の笑顔で答えた。
「いえ、別に。これが私の仕事ですから」
あっけにとられるつんくやスタッフをしり目に、
加護は辻のもとへと走る。
「いくで、のの〜!せ〜の
かごちゃんでっす!」
〜Fin〜
>>626の『顔あげなよ……』のところを変換した時
『顔ageなよ……』となってすごくがっくりきましたがw
ともあれ、終わりです。
ありがとうございました。
娘。の日常が覗けたようで良かったッス!
次回作も期待してます。
632 :
:02/06/25 18:58 ID:Vk2s8SLH
今までに無い作品で(・∀・)ヨカッタ!!
633 :
:02/06/25 19:51 ID:Ze+M5Z8Z
>>633 調子乗りすぎました。
正直スマンカッタ
635 :
:02/06/26 19:44 ID:GYprkx2A
Rainy Day
女はコインランドリーの薄暗いライトの下で雑誌をながめていた。
読みふけるといったふうでもなく、ただ眺めているといったスピード。
それでも、女の持つ雑誌はそれなりに分厚かったので
そんなスピードでめくっていても結構な時間つぶしにはなるらしい。
「はぁ……」
『この夏流行のヘアー』と題打ったそのページで手を止め、
女は外に目をやる。
外では傘が水をはじく間もない程の雨が降っている。
「バケツをひっくり返したような、ってこんな感じかなぁ。
そのうち槍でも降ってくるんじゃないの」
そんなことを呟いていると、一人の男が入ってきた。
髪が少し濡れ、シャツもしわしわになっている。
男は不細工というわけではなく、むしろハンサムな部類に入る容姿だったが、
降りしきる雨のせいか少しくたびれた印象を受けさせられる。
目が合った男は、軽く頭をさげると洗濯機の方へと向かっていく。
「あれ?なんでこんなもんが売り気れてんだよ……」
女がまた雑誌に目を落とそうとした時、後ろから男の舌打ちが聞こえてくる。
見ると男は洗剤の自販機をうらめしそうに眺めている。
どうやらその洗剤が売り切れているのだろう。
確かに、運の悪い男だ。
女は男の方に歩いていくと、何も言わずに右手を差し出した。
「えっ?」
「これ、使いなよ」
女の手には、箱入りの洗剤が握られている。
男はそれを受け取りつつ、聞き返した。
「いいの?」
「別にどっちでもいいけど。また濡れるの、嫌でしょ?」
そう言って女は、顎で外を指した。
「ありがとう。じゃあ使わせてもらうよ」
男はそう言うと、洗濯機へと向き直った。
女はそれを横目で見た後、また先程まで座っていた椅子に
座りなおし雑誌を開こうとする。
と男が少し情けない口調で声をかけてくる。
「あのさ、これ。計量のさじとかついてないの?」
「うん、ないよ」
「いや、それだとどれだけ入れていいのか分からないんだけど……」
男の困り果てた顔を見ながら音をたてて雑誌を閉じ、女は立ち上がる。
「ったく、そんなの分かるでしょ。普段洗濯もしてないの?」
軽口を叩きながら、箱を傾ける。
洗剤はさらさらと軽やかな音をたててドラムの中へと流れ落ちていく。
「ん、これでいいよ。動かしなよ」
そう言いながら女は座りなおす。
男は慌てて『開始』と書かれたボタンを押しながら、小さく呟く。
「あ、ありがと……」
10分ほどして携帯をいじるのにも飽きたのか、男が雨の音を破った。
「ちゃんと洗濯とかしてるんだね」
あまりに唐突だったので、女はしばらく自分に話しかけられたのだと
気づかなかったが、それに答える声もなかったので、顔をあげて男の方を向く。
「あ、いや。さっきのこと。
計りもいらないぐらいだから、結構慣れてるんだなって」
「そりゃ、生きてたらやんないわけにはいかないでしょ」
何を言ってるんだこいつは?とでも言わんばかりの口調で女は答えた。
男は何か感心したような表情で、慌てて続ける。
「いや、そういうことじゃなくて。
その……アイドルとかって、そういうことしなくていいのかと思ってたから」
女はまっすぐに男を見つめた。
先程までは大きくてよく動いていたその目は、今は男を値踏みするかのように
動きを止め、少し細められている。
その目に気おされたのか、男の目には後悔の色が浮かんでいる。
しばらくそうやって眺めた後ー実際には5秒程度だったが
男には永劫に続くかのように思われたー女は口を開いた。
「なんだ、知ってたんだ」
「うん、まあ。普通は分かると思う」
「そっか」
女は短くそう言うと、もう興味を失ったかのように雑誌に目を落とす。
男はおずおずと声をかけた。
「あの、悪かったかな……」
「何が?」
「いや、アイドルってひとくくりにしたの、気悪くしたかなって」
「そういう商売だしね」
女は雑誌から目をあげずにそう答える。
降りしきる雨の音に、男の小さなため息はかきけされた。
その後、二人は何も話さなかった。
ただ黙って機械が止まるのを待ち、濡れた衣類を移し変えてコインを入れ、
また待つ。
10分ほど遅れて、男は同じ作業をした。
外では、ますます激しくなった雨が時を刻んでいた。
終わることのない砂時計で時をはかるかのように、一定のリズムで音をたてている。
その少し小さめの早い砂時計を何度ひっくり返した頃だろうか、
乾燥機が小さなビープ音とともに動きを止めた。
女は慣れた手つきで衣類を鞄に詰めた後、男の方を振り返った。
「じゃあね、かっこいいお兄さん」
「あ……ありがと、いろいろ」
男が搾り出すようにそう答えると、女は小さく頷いて傘を広げた。
そして男がまた口を開くより早く、夜の闇へと消えていった。
「がんばれ、よ……」
男の小さな呟きをあざ笑うかのように、雨が打ち消していった。
まだまだやみそうにない空を見上げながら、男はまた携帯を取り出した。
終わり
今日コインランドリーに行って乾燥機を使ったので思いついてみました。
とはいえ、保田にあってもないですし、かっこいいお兄さんでもないですけどw
梅雨の少し強めの雨が降る夜、私は結構好きです。
642 :
:02/06/27 21:41 ID:z5ilg0iD
俺も(・∀・)スキ!!
ひょっとしたらあるカモ?
っていうシチュエーションが(・∀・)イイ ! ですね。
644 :
:02/07/01 12:37 ID:tHj9CrDT
保全
hozen
それはそうとお前ら、結局だれも一緒に行ってくれないのかよ!
647 :
:02/07/06 00:08 ID:WjgxcMW0
648 :
:
hozen