「ま、真希ちゃん…」
「……」
相変わらずじりじりと私たちを追い詰める後藤さん。
それを必死で後ずさりする私たち。
絶体絶命の大大大ピーンチ!!?
…と思ったら。
「あ〜〜〜っ!!!そうだ、アレよっ!!」
梨華先輩がいきなり大声を上げて、手にしていた買い物袋からゴソゴソと急いで何かを取り出した。
「ひとみちゃん!」
「あいよっ」
梨華先輩はそれをひとみ先輩に素早く渡すと、ひとみ先輩はまるで
野球のボールを投げるように大きく振りかぶり構えた。
…な、なんなの??
「梨華っ!」
「はいっ!!」
ひとみ先輩が合図をすると、梨華先輩が後藤さんに飛びつき両手でその口を思いっきり広げた。
口が広がったか…と思ったら、その口の中にビュン!と何かが入っていくのが見えた。
この間、3秒くらい?
ものすごいコンビネーションだったのよ。
あまりにも唐突な出来事だったんでよくわからなかったんだけど。
その瞬間に後藤さんの極悪人のような顔が、さっき裏庭で会った時のような顔に変わっていた。
「ハァ〜〜〜…」
「助かった…」
「いつもいつもコレじゃねぇ…」
ひとみ先輩や、梨華先輩、あいぼんたちもその様子を見て安堵の声を上げている。
「んあ?どしたの???」
すっ呆けた声を上げて、後藤さんは不思議そうな顔で私たちを眺めていた。
わ、私もよくわからないんだけど…。
「真希ちゃん。そのアメ、おいしい?」
「アメ〜…??あ、ほんとら。今気づいた。いつの間に入ってたんらろ」
アメ??さっき口の中に放り込んだのはアメ???
どうしてアメで大人しくなるの????
疑問だらけの私とは裏腹に、他の人たちが「よかった、よかった」という顔で喜んでいたのでした。