それはもう、私が振り返る直前に皆さん「しまった」という顔をしてたんです。
だから、私もこりゃマズイ…と思っていたんですよ。
後ろを振り向いたら最期。私、もしかしたら命を落とすかも…なんて思ってたんです。
でも、そういう時ほど…その、つまり。
振り向いてはいけないと解ってる時ほど、振り向きたくなってしまうものなんです。
だから…。私、思わず振り向いてしまったんです!!
「あ、あれ…?」
私、すごくビックリしました。
…決して、その『真希』さんが大女だったワケではないんです。
だって…その『真希』さんってば、裏庭で私を身代わりに裕子センセから逃げた、あの後藤さんだったんです!
そういえば、あの時。
裕子センセが「後藤〜!!後藤真希〜!!!」って叫んでいたような気が…。
そうかぁ…この人が、後藤真希さんなのかぁ。
考えてみたら、私とあさ美ちゃんを軽々と茂みに引き込めるくらいの力持ちだもの。
あの振動を起こすくらい、ワケないのかも。
…見た目は華奢なのに。
そんな後藤さんも今はとんでもないおっかない極悪人のような顔して…。
一歩、一歩とこちらに近づいて来るから、私も一歩、一歩と後ずさりしていたんです。
「あ、あの…真希ちゃん!落ち着いて、ネッ」
梨華先輩が後藤さんに対して、にこやかに苦笑いを浮かべてなだめるけれど、効果なし。
「真希ッ。ホラ、こいつら新入生なんだよ。だからアタシらで歓迎を…」
ひとみ先輩が私たちを引き合いに出してなだめても、効果なし。
それどころか、じりじりと私たちに近づいてきている。
…うう、怖い…。
まるで、アクションゲームのゾンビに襲われているかのような感覚に陥る。
目の前にいる人は、美少女なのに。
それほどの威圧感と、怒りのオーラが後藤さんの体から発せられているのが解った。
「………………」
「まきせんぱい、おちつくのれす〜」
「そ、そうやで。真希ちゃん。うちら師弟関係やろ??」
そ、それは説得には関係ないんじゃないかしら…?
そうやってみんなの説得もむなしく後藤さんはこちらにじりじりと向かってくる。
って、ていうかなんでこの方…こんなに怒ってるワケェ!?