「はぁ…寒い」
ベッドに寝転んだあさ美ちゃんが、小さくため息をついた。
「どーしたの?」
「んっと…。こう寒いと、北海道を思い出します」
「ああ…そっかぁ。北海道だったら、毎日雪だもんね」
「はい…」
こっちでは、まだ雪は降っていない。
私の地元でも、きっとまだ雪は降ってないんだろうな。
「ハァ…」
あらら…?珍しく、沈んでる…。
もしかして、北海道が恋しくなったのかな?
それとも、いつだか話してたけど、悲しいコトでも思い出したのかな…。
しばらくそっとするために、私は静かに部屋を出た。
あさ美ちゃんは、それにも気付かないように窓に手をあててボーっとしていた。
廊下に出ると、隣の部屋から、騒がしい声が聞こえる。
まあ、それはいつものコトだけど…。
今日はより一層、騒がしかった。
少しだけ開いてるドアから、覗きこんでみた。
メチャメチャに部屋を散らかした、あいぼんとののちゃんがいた。
「ののォ。ちゃんと厚着持ってかないとあかんで」
「わかってるれす。あいぼんの実家に行くのはひさしぶりれす」
「えーから、手を止めんでシタクせんかい!」
どうやら、帰郷の準備を進めてるみたい。
クリスマスが終わったら、ののちゃんはあいぼんの実家に行くって言ってたもんね。
そこでお正月を過ごしたら、今度はあいぼんがののちゃんの実家に行くって。
ホントに2人は、仲が良いなぁ…。
私は、微笑みながら静かにドアから離れた。
下に降りると、梨華先輩とひとみ先輩と真希先輩が揃っていた。
さすがに3人揃うと、華が勢ぞろいっていうカンジ…。
はぁ〜〜〜。これ見れるだけで、すっごい幸せ〜…。
珍しく3人して、何やら討論をしているみたい。
話に加わるのは…。やめとこう…。
そのまま、回れ右して後ろを振り返り、再び階段を上った。
12段目くらいまで上がった時に、奥の方から声が聞こえてきた。
「あ、……うん……」
あ、マコちゃんの声だ。
何だろ…。
階段の途中から、壁に隠れるようにしてその様子を眺めた。
電話中…かな?
ケータイを右手に持って、嬉しそうな顔で話してる。
「うん。じゃあ、年末には帰るね。うん…じゃあ」
あ…。お母さんと電話してたのか。
…お母さん、かぁ…。
私は、そのままマコちゃんと顔も合わさずに部屋に戻った。