モーニング娘。の小説書きます。

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471ごっつぁむ ◆ddUSDAplHQ

「私、福田明日香。あなたは?」
「え?あ、高橋愛…」
「あなた、薫でしょ!?嘘つくの、やめて!」
「ち、違うって…」
ん???待てよ…。
この人、例の井戸があった当時の人だから、生きてたら65歳くらいよね。
だとしたら、私と勘違いしてる“薫”って人は…。
可能性としては、考えられなくもないわ!!
「あの、もしかして、“平家薫”さんの知り合いですか?」
「あなた!薫を知ってるの?」
…やっぱり。
『平家』は、何を隠そう、私の『おばあさま』の旧姓。
『薫』は、そのおばあさまの名前…。
この人は、わたしのおばあさまの友人…?
んで、幽霊??
どういうコト??
「あの、私、愛です。薫さんの孫です」
勇気を振り絞って、彼女に告げた。
信じて貰えるはずなんかないでしょーけど…。
幽霊って、自分が死んだコトに気づかないって言うし…。
472ごっつぁむ ◆ddUSDAplHQ :02/10/06 01:12 ID:NS+133AR

「孫?」
「そ、そうです」
明日香さんは、怪訝そうな顔で私を見まわした。
そして、曖昧な表情で何度も深く頷いていた。
「確かに、薫に似てるけど、違う」
「あ、はい。私のおばあさんです」
「おばあさん…そう。薫、おばあさんになったの?」
「え、はい…」
明日香さんは、その言葉を聞くと、どこか悲しげな顔で上を向いた。
窓から、月光が差しこんでいる。
なんか、すごく切ない感じ…。
「私、ここで彼女を待ってるの」
「え?」
「薫を待ってる…でも…」
「え?え?」
「薫はもう、おばあさんになって遠くにいるのね」
「あ…えっと…」
「隠さないでいいの、愛さん。
 私、知ってるから。自分が幽霊ってコト」
し、知ってたのかよ!!
473ごっつぁむ ◆ddUSDAplHQ :02/10/06 01:12 ID:NS+133AR

「でも、ならなんで今もここに?」
私は、虚ろな瞳で空を見つめる彼女に聞いた。
その横顔が、恐ろしく冷たく見える。
彼女は、ちらりとこちらを見ると、すぐに視線を戻してつぶやいた。
「そう、そうね…なんででしょうね…。
 もう、この世に存在する意味なんてないのに…。
 だけど、せめて一言、薫に会って…謝りたい」
「明日香さん…」
この人と、おばあさまに何があったか知らないけれど…。
なんか、すごく切ないよ。
どうして?
「あの、明日香さん。
 どうして、おばあさまに会いに行かないの?」
「…え?」
「そんなにおばあさまに会いたいなら、会いに行かないの?」
「そうね。…でも、ここから動けないわ。私」
「そうなの?」
「ええ」
彼女は、静かにうなづいた。
…寂しそうな顔で。
474ごっつぁむ ◆ddUSDAplHQ :02/10/06 01:23 ID:NS+133AR

「何年も、ここにいたの?」
「…そうね。気がつくと、いつもここにいるわ。
 何人か、この部屋に住む女のコたちにも会った。
 でも、私を見えたのはあなたが初めて」
私が、初めて…。
それって、やっぱりおばあさまと関係あるのかしら。
「ねえ、明日香さん。
 おばあさまに、何を謝りたいの?」
「え…」
そう聞くと、彼女は少しビックリした顔で私を見つめた。
そして、静かにうなづくと、口を少し開いた。
「…意地悪して、ケンカしたまま…。謝れなかった」
彼女は、そうして虚ろな目で語り始めた。
475ごっつぁむ ◆ddUSDAplHQ :02/10/06 01:24 ID:NS+133AR

50年前の、思い出を。

「私と薫は、学園内でも一番の親友同士だったわ。
…でも、ある日、激しいケンカになってしまったの。
お互いに、すごく気の強い性格だったから…。
今思えば、あんなコトになるなんて思わなかった。
わかってたら、私の方から謝ってたわ。
だけど、ケンカしたまま、仲直りできないまま1ヶ月過ぎて…。
薫はお母様が急死して、実家に戻るためにこの学園を去ったわ…。
でも、私はとうとう薫にゴメンナサイを言えないままだった。
それだけなら良かったわ。
卒業したら、すぐにでも彼女のところへ行こうと思ってたの。
だけど…。
あの、雨の日…。
私は、あの井戸で…」
それだけ言うと、明日香さんは突然うずくまってしまった。
足のない体で、地面に倒れるようにして。
「大丈夫!?あっ…」
私がその体を抱き起こそうとしても、手が体をつかむことはできなかった。
「…大丈夫、ちょっと、疲れただけ…」
476ごっつぁむ ◆ddUSDAplHQ :02/10/06 01:24 ID:NS+133AR

「その、井戸であなたは…」
───命を落とした。
でも、そんなコトさすがに口には出せなかった。
「そうね。だから、薫に謝りたかった。
 幽霊になって、ここから動けない今も…」
そうだったんだ…。
なんだか、ちょっと…ううん、だいぶ可哀想。
それが、残留思念になって、ここからずっと動けないでいるんだ…。
「あの、明日香さん」
「…うん?」
どうにかして、おばあさまに会わせてあげたいな…。
でも、どうやって?
おばあさまを今更呼んだって、どうにかなるワケじゃないし。
第一、昔のおばあさまならともかく、今のおばあさまが、
明日香さんの言うコトを信じるかどうかわからない。
ああ、どうしたらいいの!?