モーニング娘。の小説書きます。

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361ごっつぁむ ◆USDAplHQ

☆PEACE5・☆「初めての夏休み」

「ん〜…毎日暑い…」
「ホントですねぇ〜…。北海道にいた時は、もっと…」
ベッドに寝転がりながら読んでいた雑誌を、パタンと閉じてあさ美ちゃんがこちらを向いた。
暑さのせいか、その顔が青白く見える。
あ〜あ…額には、大粒の汗が浮かんでいる。
「ふぅ〜…こう暑いと、何もする気になんなぁ〜い」
「そうですね…」
全く、この部屋ってば冷房ないんだもの。
それどころか、扇風機もない!
手ぶらでこの寮に来た私とあさ美ちゃんにとって、初めての夏は過酷なものとなった。
リビングのソファに座りながら、冷房を強にしてゴロゴロしてもいいんだけど…。
裕子先生に怒られるし、冷房を使った分だけ設備費を払わなければならないので
やはりこの暑さに耐えるしかなかった。
…まあ、例のおばあさまからの仕送りが一応あるから別に気にするコトないんだけど。
でも、それって結局おばあさまに依存して居きるってことじゃない?
それは、さすがに自分で許せなかった。
…授業料は払ってもらってるけどさ。
あ〜…それにしても暑い!
「ふぅ。もうここに来て4ヶ月かぁ」
「…そうですねぇ…。8月ですからね」
そう。
世間は夏休み真っ只中。
しかも、今は夏休みの真昼間。
セミはミンミン鳴いてるしぃ〜…。
そりゃあ、暑いってもんだわ。
362ごっつぁむ ◆USDAplHQ :02/08/05 14:17 ID:vqFlMloU

しかし、早いよなぁ〜…。もう、ここへ来て4ヶ月だよ、4ヶ月!
そう考えると、もうお父さんとお母さんが死んでから…。
……。
あ〜。やめやめ!!考えるとキリがないから!!
いいんだもん、私の帰る家はここだもの!!
ということで、今は帰省ラッシュ。
今年で卒業する圭先輩は就職活動のために一時期、東京に行っているし。
運動部はもう休みなので、梨華先輩にひとみ先輩、真希先輩、
あいぼんにののちゃん、里沙ちゃんも実家に帰っている。
レポートやら何やらが残っている、なつみ先輩と圭織先輩もお盆には実家に帰るらしいし
合唱部も休みになれば真里先輩と紗耶香先輩も実家に帰るんだろう。
…ということで、お盆の間にこの寮にいるのは、私とあさ美ちゃんとマコちゃんだけになる。
ちなみに、マコちゃんの所属している水泳部は、夏休みの終わりに大会があり
そのために、練習の休みの日がほとんどないので
マコちゃんすでに一回、実家に帰っている。
その時に、親には怒られたらしいけど。
お盆にも帰ってきなさい!…って感じに。
そして、あさ美ちゃんは家庭の事情がアレ、なんで…。とのことだった。
それに私は、帰るところがないのでどこに行くわけでもない。
…おばあさまの家…に帰るコトも考えたけど、やっぱり会いたくない。
なので、このクソ暑い「モーニング荘」で一夏を過ごすってワケ。
「ね〜、あさ美ちゃん〜」
「…はい〜…」
「暑いから、またマコちゃんに頼んでプール入らせてもらおうよ…」
「う〜ん…。もうすぐ、水泳部終わる時間ですね…」
そう。
実は、暑さに耐え切れない私たちは水泳部のマコちゃんに頼んで
何度かプールに入れてもらった。
同じような目的で、水泳部に来てるコも結構いたんだけどね。
あまりやると、先生怒られるのでできないらしいけど。
ふぅ〜…。
363ごっつぁむ ◆USDAplHQ :02/08/05 14:28 ID:vqFlMloU

現在時刻、午後2時。
何も一番暑い時間に、練習を終わらせることもないと思うんだけど…。
それでも、普通の運動部よりは水泳部は楽なんだろうなぁ。
私は、運動あまり得意じゃないから入らなかったけど。
「じゃ、決定」
「ん〜〜〜〜…」
あさ美ちゃんってば、あんまり乗り気じゃないみたい。
きっと、この暑さの中でプールまで歩くのが嫌なんだろう。
「え〜…どうするのよォ」
「でも…暑いし…」
な〜んてやってる間に、ドタバタと階段を駆け上がる音が聞こえて来て、
その数秒後には、パタンとドアが開きマコちゃんが立っていた。
「あ〜〜〜〜!!!!暑い暑い暑い!!!」
部屋に入るなり、マコちゃんはショルダーバッグを乱暴に床に叩きつけ
袖を半分まくった、青いジャージを脱いだ。
「暑いったらありゃしない!」
「麻琴さん、暑苦しいので静かにしてください〜…」
ベッドに横たわり、ぐでっとしたままあさ美ちゃんが言った。
「だって、暑いんだからしょうがないでしょ!!」
「ふぅ…仕方ないですね、リビングに行きましょうか」
「いいわよ。その代わりッ、冷房代は3人でワリカンだかんね!」
「え?ちょ、私まだ何にも言ってな…」
「愛さん、先行ってますからね」
「ちょ…2人とも〜〜!!!」
…ハァ。結局、こういうオチになるのね…。トホホ。
「あっ、そうそう。里沙ちゃんからエアメール来てたよ」
「エアメールぅ?」
「エアメールですか?」
マコちゃんが、懐からさっと封筒を取り出した。
364ごっつぁむ ◆USDAplHQ :02/08/05 14:28 ID:vqFlMloU

そこには、
『拝啓、みなさん。私は今、カナダにいます。
 カナダはすっごく涼しいの。みんなにも、この涼しさを分けてあげたいなぁ。
 あっ、そんなコト無理だよね、うふふ。
 パパが今からアメリカのオーディション番組に連れて行ってくれるの。
 それに、パパが出演させてくれるんだってぇ〜。
 もうね、里沙ってばチョーカワイイから絶対合格じゃないですかぁ。
 だから、ちょっと行ってきて合格してきま〜す。
 お土産待っててね。里沙のブロマイドでいいわよね?
 それじゃ、また9月に会いましょう。ラブラブ!
                   新垣里沙fromカナダ』
・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・。
読み終わった後、3人してしばし無言になった。
私とマコちゃんは明らかに怒りの表情をあらわにし、
あさ美ちゃんは少々困惑の表情を浮かべていた。
その時、あさ美ちゃんの口から信じられない言葉が!!!
「……氏ね」
「えっ!!?あ、あさ美ちゃん!!?」
「あ、え、えっと。なんでもないんです」
ビ、ビックリしたぁ。今、確かに「シネ」って言ったわよね…。
ま、まあ確かに飛行機墜落して死んじゃえ♪くらいには思ったけどさぁ。
「かぁぁ!!!クッソ、マジ調子こきすぎコイツ!!」
と、マコちゃん。
「…お嬢様は、いいですよね。オーディションですって」
と、あさ美ちゃん。
「勘違いしすぎなのよ、子供だからしょうがないじゃない?」
と、私。
そうなんだよなぁ〜。最初はさ、大人しくって礼儀正しいコだと思ったら。
意外としたたかだし、図々しいトコもあったりして。
ちょっと、ねぇ…。というのが里沙ちゃんに対する素直な感想だった。