その日の深夜遅くにあさ美ちゃんは帰ってきた。
先輩たちに怒られていたけど、「図書館で本を読んでいたら寝てしまって…」と言っていた。
なるほど、うまい言い訳だな…とは思ったけど、実際にありそうなので私は何も言わなかった。
ということで、翌日。
「ネェ、愛チャン!!」
同じクラスのハーフ娘、ミカちゃんがテンションも高く話かけてきた。
「ん?どうしたの、ミカちゃん」
「昨日のアノ娘!」
「え?…あ、あさ美ちゃんのコト??」
「イエス!ダイジョブだったノ?」
「あ、うん。へーきへーき」
「そうナノ。なら良かったワ」
いや、別に平気でもないんですけどね〜…。
あれから、今朝も結局話ができなかった。
だって、ね〜…。
それに、あっちからもどこか私を避けてるみたいな感じがしたので
一向に話かけるチャンスなど見つからなかった。
「なんだかなぁ…」
「ン?どうしたノ?」
「あ、いやっ、こっちの話!」
「フ〜ン」
はぁ〜…。何とかならないかなぁ〜…。
「愛ちゃ〜ん」
窓際の席でボケーっと外を眺めていた時、誰かが私を呼んだ。
声のした方向を向いてみると、教室の入り口にクラスメートのコが立っていて
もう一度「愛ちゃ〜ん」と呼んだのが、今度はきちんと耳に入った。
私は、椅子から静かに立ちあがると、「なぁに?」とそちらに近づいた。
「あ、今ね。中等部の辻さんと加護さんが来て、コレ渡してくれって」
「あいぼんとののちゃん??あ、手紙ね。ありがと…」
「うん」
私は、手紙を受け取ると、再び席についた。
その手紙は、言われた通りあいぼんからだった。
要約すると、『昼休みに中庭で待ってる』とのことだった。
恐らく、あさ美ちゃんのコトだろうなぁ…。
また、何かあったのかも知れない。
ハァ…どうにかなるのかなぁ〜…。
「待ってたでぇ〜!愛ちゃん!!」
「なのれす!」
「遅いよ、愛ちゃん」
「こんにちわ、愛ちゃん」
「んあ。愛ちゃんも来たんだ〜」
「ここで食べるお弁当は格別だもんねぇ〜♪」
「メシ食ったら運動しようぜ!!」
……。
左から、あいぼんにののちゃん、マコちゃんの里沙ちゃん、
向かって右から真希先輩に梨華先輩にひとみ先輩が座っていた。
…シートを敷いてピクニックのように…。
「あいぼん。用って…」
「用?」
「昼休みに中庭で待ってるって…」
「???用???」
「……そういうコトね……」
何のコトはない。
ただ、お弁当を一緒にみんなで食べようというそれだけだった。
あさ美ちゃん絡みでもなんでもないのね…。
「愛ちゃん!!」
梨華先輩が、例のキンキン声で叫んだ。
「え?」
「大事なコトを忘れてるわ!!」
「ホ、ホントだ!!」
「だ、大事なコト!?」
あ、あさ美ちゃんのコトかしら!?っていうか、なんであさ美ちゃんいないの!?
下手したら、梨華先輩たちにもあさ美ちゃんがいじめられてるコトが知れ渡ってる!!?
「い、言うよ…」
「ど、どうぞ…」
「…ホンットにいいの!?」
「ど、どうぞ…」
「愛ちゃんってば!お弁当忘れてるよっ!!」
・・・・・・。
ハァ…。そんなコトだろうと思った。
「もう〜、ランチタイムにお弁当忘れるなんてオバカさん〜」
「アハハハハ…」
…気楽でいいなぁ、この人…。