「どうですか? 調子は」
スタジオ壁面の大きな鏡に向かって、
あさ美が話し出す。
「え? 見えるの?」
天使ID、ABが驚く。
「はい。でも、半分、透き通ってます。
ABさんと鏡にうつったわたしが重なって見えますよ」
「そっか」
「コンサートの時は、はっきり見えたのに、
だんだんぼやけてくみたいです」
「じゃあ、そのうち、見えなくなるね」
「そうですね」
「そうすりゃ、立派な人間だ」
「…ごめんなさい」
「気にしなくなっていいよ。天使それぞれだからさ。
どう、モーニング娘。やっていけそう?」
「はい、すごく幸せです」
「よかった」
その時、後藤がハイテンションで、
階段を駆け下りてきた。
「さあて、早く行かないと圭ちゃんに怒られちゃう。
紺野、じゃ、バイバイ」
「あれ、後藤さん」
あっという間に走り去った。
その後を梨華が無表情で降りてきた。
あさ美は様子が少し変に感じた。
「石川さん、どうしたんですか?」
「いや、べつに…なんでもないよ」
そして沈黙が続いた。
雰囲気に耐えられず、思わずあさ美は、
プロジェクターのリモコンを手にした。
「テレビ、つかましょうか」
「うん」