「私の父はね、あのおじいちゃん・・・五郎さんとは一緒に戦った
仲だったんだよ」
「おじいちゃんの、友達?」
沙紀の言葉に、里沙はそういって不思議そうに尋ねる。その言葉を
聞いて沙紀は言った。
「私の父はインターポールの捜査官だったの。でも、デスパー軍団
との最後の戦いの時に捕らえられて、処刑されてしまったの。五郎さん
は父を助けるために必死で戦ったんだけど・・・」
沙紀の話に表情を曇らす里沙。思えばデスパー軍団は、彼女にとって
も肉親同然だった五郎の仇である。
「ごめんね、いやなことを思い出させちゃったね。あたしったら」
うつむいてしまった里沙の気を紛らわそうと、精一杯の笑顔を見せる
沙紀。そして二人は、しばらくお互いのことを語り合った。
と、その時。不意に沙紀の携帯電話の着信音が鳴る。
「あ、誰からだろ」
そう言って沙紀はディスプレイに視線を落とす。それは電話ではなく
メールの着信を告げる音だった。しかし沙紀が送信者を確認した時、
彼女の顔から血の気が失せていく。そんな沙紀の様子を不思議そうに
見つめる里沙。
「どうかしたんですか?」
「・・・ううん、何でもない。里沙ちゃん、ちょっとごめんね?」
そう言って沙紀はあわただしく席を立つと、トイレに駆け込む。
そのまま彼女は携帯を手に取ると、キーを素早く押し始めた。まるで
メールを打っているようにも見えるその作業は、実は暗号化された本文
を解読するためのパスワード入力なのだ。数秒後、暗号を解除された
本文が出力されると、沙紀は本文を確認して絶句した。
「件名:花は死んだ 指令:脱走者の抹殺 市民統制番号:21GA−K1
氏名:新垣里沙 上記の者は渡五郎と接触し、イナズマンの力を継承した
危険分子である。写真を添付するので、確認次第指令を完遂せよ。 D」
何かの間違いであってほしい、と沙紀は添付された画像を開く。と、そこに
映し出されたのは、太い眉毛も印象的な少女の姿。間違いなくそれは里沙
だった。思わず天を仰ぐ。
「そんな・・・ひどい」
愕然となる沙紀。しかし彼女はそれでも努めて平静を装おうと、何食わぬ
顔で個室から出て行った。
「行くところがないなら、しばらくウチに居たらいいよ。ね?」
沙紀のそんな言葉に、里沙は甘えることにした。このまま街を
彷徨ったところでどうなるわけでもない。もしかしたら、デスパー
の刺客に見つかってしまうかもしれない。そう考えると、沙紀の申し出
は里沙にとって唯一の救いだった。そこで早速二人は沙紀のアパートへ
帰ることにした。
と、その道中。二人は通りすがった公園で怪しい人影に出くわした。
壊れて消えてしまっていた街灯のあたりに、確かに人がいる。デスパー
か、あるいはそれ以外の何者かなのか。里沙は恐ろしくなって沙紀の腕
にしがみつく。
「このあたりで待ってたら、もしかしたら会えるかもと思ってね。
その娘を連れてどこへ行くつもり?荒井沙紀、いや、レッドクイン」
不意に聞こえたその声は、女性のものだった。年の頃はまだ十代後半
くらいの、少女の声だ。すると、壊れていたと思っていた街灯に、突然
明かりが灯る。それはまるでスポットライトのように、声の主の姿を
浮かび上がらせた。そこに立っていたのは、黒いテンガロンハットを
かぶった少女。声の主はどうやら、彼女のようだ。