仮面ライダーののV3

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835ナナシマン
 そう言うと、老人は里沙の頬に手を当てたまま目を閉じる。里沙も
同じように目を閉じる。その直後里沙の閉じた瞼に電光が走ると、
二人の姿はまばゆい光に包まれた。全身の細胞が覚醒する感覚、
心地よい風が吹き抜けるような感覚を全身で感じた里沙。
 やがて、まばゆい光は里沙の体の中に収束していく。里沙が再び
目を開けると、そこには少々疲れたような表情を浮かべた老人の姿が
あった。不思議な感覚から醒めた里沙は、老人の様子を案じて声を
かけた。

 「おじいちゃん、大丈夫?」

 「私は大丈夫だ。それより里沙。私はお前に、私が持っていた力の
全てを伝えた。お前が優しい心と本当の勇気、悪を許さない心を持ち
続けている限り、この力はお前を助けてくれる」

 老人はそう言って、優しくゆっくりと里沙の髪を撫でる。そして老人
は里沙にある道具を渡した。それはかなり派手な色遣いで、その中に
折りたたまれた三色のレンズが、そして外側に稲妻状のプレートが
スイスナイフのツール類のように納められている。
836ナナシマン:02/09/23 17:07 ID:BHS6zwGx
 「これは『ゼーバー』と言って、お前の力をより強くしてくれる。
じきにデスパーシティから追っ手がやってくるだろう。その時、お前を
助けてくれる」

 「どうやって使ったらいいの?力って何?」

 困惑の表情を浮かべて、里沙は老人に訊ねる。彼は里沙の目をまっすぐ
見つめて言った。

 「力の使い方は、お前の心の声に聞きなさい。私はお前にビジョンを
託した。後は心の声が自由の戦士になるためのビジョンを示すだろう。
お前の力は、正しいことのために使うんだよ」

 自由の戦士。老人のその言葉にも、今ひとつ実感がわかないのか小首を
かしげる里沙。しかし、老人にはあまり時間がなかった。少しでも彼女に
力の事を伝えておきたいと、急ぎ足で説明する。

 「覚えておきなさい。お前の力は今は一足飛びに使うことはできない。
お前の力は蛹が蝶になるように段階を踏まなければならないんだ。それが
サナギマンと、自由の戦士イナズマンだ」
837ナナシマン:02/09/23 17:08 ID:BHS6zwGx
 「蛹から・・・蝶?サナギマンとかイナズマンとかって何?」

 老人はなおも言葉を続けようとしたが、見ると里沙は戸惑いの表情を
浮かべ老人をじっと見ている。これを一度に全て理解しろというのは無理
な話だ。続きは明日にしよう、そう思った老人は里沙に優しく言葉を
かけた。彼女の知っている、いつもの口調で。

 「いきなり全部を理解することはできないだろう。今日はもう遅い。
車の中で休みなさい」

 老人に促され、里沙は車の中で眠りについた。その姿を見届けた老人の
顔に、優しい笑みが浮かんでいた。
838ナナシマン:02/09/23 17:09 ID:BHS6zwGx
 一方、老人と里沙が去った後のデスパーシティ。通用門から走り去る
二人の車の映像は、通用門に設置されたカメラに克明に納められていた。
それを見たウデスパー参謀は警備兵達を怒鳴り散らす。

 「バカどもが!みすみす脱走者を見逃すなど、何をしておるのだ!!」

 通用門の巡察に訪れた彼は、この失態を現場で知った。彼はすぐさま
部下のデスパーロボを呼び寄せる。彼の命令に応じ出頭してきたのは、
巨大なハンマー状の頭部と、左手にもハンマーを装備したデスパーロボ
だった。

 「ハンマーデスパーよ、これから地上に赴き、脱走者を始末してこい」

 「任せてくれ。見つけ次第必ず始末する」

 ウデスパーの命令にハンマーデスパーはすぐさま地上へと向かったが、
ウデスパー自身もまた地上に赴く事にした。彼の性格が、部下の報告を
ただ待っていることを許さなかったのだ。

 「万一と言うこともある。俺も地上に出ることにしよう」

 そして地上に姿を見せたウデスパー参謀は、地上との隠し通路がある
公園で思いがけない光景を目撃した。公園の傍らに止められた車、その中
にいたのはカメラが捕らえた二人の脱走者だった。

 「あれが例の脱走者か。小娘ともう一人・・・待て、あれはまさか!」
 
ウデスパー参謀は、里沙も知らない老人の素性を知っていた。
839ナナシマン:02/09/23 17:15 ID:BHS6zwGx
 予定より遅くなってしまって申し訳ありません。実家近くの
カフェから大至急で更新です。しかもうっかりageてしまって。
勝手が違うとはいえホントすいません。今、下がってますか?
840名無し天狗:02/09/23 18:12 ID:rvbRXy1P
>ナナシマンさん
お帰りなさい!ぎりぎりのあたりですが、下がってます!
遅くなったなんてとんでもない、待ちに待った甲斐がありましたYO!
イナズマン新垣の奮戦に激期待!チェースト!!
841名無し天狗:02/09/23 18:15 ID:rvbRXy1P
>ナナシマンさん
連続カキコ失礼!今ちょっと下がりました!
842名無し読者:02/09/24 04:05 ID:bCbMJfNL
保全
843ナナシマン:02/09/24 23:20 ID:HNA7AsR+
 「あれは、まさか渡五郎?!」

 ウデスパー参謀はそこで思いがけない人物を目撃した。それはかつて
デスパー軍団に叛逆した超能力者、渡五郎・・・誰あろう、里沙とともに
シティを脱走したあの老人のことだった。二人は車の中から出て、里沙が
買ってきたパンを二人で食べていた。

 「俺には判るぞ。老いさらばえてはいるが、間違いない。総統閣下との
戦いに敗れて能力を失ったというのは本当だったか」


 仇敵渡五郎をみすみす逃す手はない。ウデスパーはすぐさま五郎を襲撃
せんと物陰から身を乗り出そうとした。だが、その時。

 「ウッ!!」

 後頭部に感じた強烈な一撃。よろよろと崩れ落ちるウデスパー参謀の
背後に立っていたのは、なんとハンマーデスパーだった。

 「悪く思うなよ、ウデスパー。あの小娘と渡五郎を葬る絶好のチャンス
なのだ」

 「その声は・・・貴様ァ・・・」

 何とハンマーデスパーはウデスパー参謀の手柄を横取りするために彼を
闇討ちにしたのだ。ハンマーデスパーは、ばったりと倒れたウデスパー
を尻目に物陰から里沙達の前に姿を現した。
844ナナシマン:02/09/24 23:21 ID:HNA7AsR+
 「脱走者め、見つけたぞ!」

 突如二人の前に立ちはだかったのは、自分たちを追ってきた追跡者。
デスパー軍団が差し向けたハンマーデスパーだった。その姿に、里沙の体
が恐怖にすくむ。

 「二人とも逃げられると思ったか!死ねぇ!!」

 一瞬逃げ遅れた里沙に振り下ろされたハンマーの一撃。しかし、間一髪
でこれを救ったのは五郎老人だった。しかし里沙を救った彼は、その身に
ハンマーデスパーの一撃を受けてしまったのだ。

 「おじいちゃん!!」

 肩口にハンマーデスパーの攻撃を食らった五郎老人は、殴られた場所を
押さえてうずくまる。しかし彼はひるむことなく、ハンマーデスパーを
睨み付けた。

 「貴様は渡五郎!それにしても老いたものよ。ここまで衰えるとは!!」

 「おじいちゃん、どういう事なの?」

 里沙の問いかけにも、老人は答えない。ただ歯を食いしばって痛みを
堪えている。

 「貴様はかつて総統閣下と戦い、敗れて全ての能力を失ったそうだな。
急激な老化はそのためか!!」

 そう言うやハンマーデスパーは今度は老人の腹部に一撃を見舞う。

 「昔語りをしに来たわけではあるまい・・・この娘は渡さない!」
845ナナシマン:02/09/24 23:22 ID:HNA7AsR+
 かつての超能力はほとんど失われていた。とりわけ里沙に自分の能力を
授けたことで、五郎の体力はもはや限界に来ていた。だが、敵から里沙を
守るために死力を振り絞って五郎は立ち上がる。

 「やめて、おじいちゃん!」

 里沙の制止も聞かず五郎は再び立ち上がると、傷ついた身体を押して
ハンマーデスパーに近づいていく。

 「里沙・・・今までありがとう。私の言いつけは必ず守るんだぞ」

 里沙の耳に聞こえた、五郎の言葉。しかしその直後、彼は敵の一撃に
よってなぎ払われた。風で吹き飛ばされた人形のように、あっけなく
倒れる五郎。

 「おじいちゃん!!」

 すぐさま里沙は五郎の元に駆け寄って抱き起こすが、彼はもう里沙
の言葉に応えることはなかった。五郎の亡骸に縋ってすすり泣く里沙。
しかし、その声に構わず敵はさらに一撃を加えようと里沙の元へと
歩み寄っていく。

 「安心しろ。お前もすぐあの世へ送ってやる」

迫りくる敵の姿に里沙は全く気づいていない。背後に立ち、五郎を
手にかけた左腕のハンマーを振りおろさんとするハンマーデスパー。