-加護生化学研究所-
安倍と高橋がライフステージに着くと中澤が大急ぎで辻と加護の眠る
手術台に安倍を連れていった。
周りには中澤の家にいる改造人間、人造人間が全員いた。
みな、心配そうに辻と加護を見守っている。
「いったい、どうしたんだべ?ひどい怪我だべさ・・・。」
「ゼティマの新型の改造人間にやられてんや・・・それよりも」
「なっち、あんたの力が必要やねん。あんたの電気の力が。」
「この子らの人口臓器を動かすのに、高圧電流が必要やね!」
2人を見つめる安倍の中にさまざまな思いが渦巻く。
助ける事ができなかった親友、目の前で死んでいった戦友の事が・・・。
「福ちゃん、あさみ・・・もう、2度とあんな思いはごめんだべ!」
手袋を外すとあらわになったコイルアームを擦り合わせる。
「変身!ストロンガー!」
バチッ、バチッという高圧電流のほとばしる音と供になつみは
その姿を変えた。
「いくべさ、みんなさがってるべ!」
ストロンガーとなったなつみは、その体の発電機を自由に操る事が
できるようになる。何百万ボルトの電圧を生出す発電機から
3万ボルトの電気を生出すことはたやすい。
圭織はまだその調節を会得していないが、なつみにはそれがたやすくできた。
それが、彼女が「電気人間」であるあかしでもあるのだが・・・。
調節した電気を辻と加護に向かい、なつみは放つ。
「デンショーーック!」
3万ボルトの電気が辻と加護に当てられる。
なんども高電圧の電気のせいで、辻と加護の体が宙に浮く。
そして・・・
「ピーッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピ・・・」
2人に取り付けられていた心電図計が2人の人工心臓が動き出した事を告げた。
「やったー!」
「よかった、よかったよぉーっ!」
口々にみんなが叫び、場が一気に明るさを取り戻す。
「助かったんや!ありがとう、なっち!」
なつみは、変身を解く。そして、また呟いた。
「・・・福ちゃん、あさみ、やったよ・・・」
が、その時!
「うん?ゆうちゃん、なんか2人が変だよ!?」
矢口が叫ぶ。
「な、これは・・・なんやね、いったい?」
全員が驚きのまま、辻と加護を見る。
2人は、激しい光に包まれていた。目もあけられないぐらいの光に。
そして、その場にいた者は皆見た。
光に包まれた2人が一瞬仮面ライダー・・・見た事もない仮面ライダーの
姿になる場面を。
しかし、光がおさまった時・・・そこにいるのは、今までと変わらない姿の
辻と加護だった。
-辻、加護の夢の中-
「ううっ、ここはどこなのれすか?」
「うん?のの、うちらはいったい?」
2人は真っ暗な世界にいた。確か、さっきまでZXとかいう改造人間と
戦っていたはず・・・そこで爆弾が爆発して・・・
「なぁ、のの、あんまり考えたないけど、うち前にここに来た気がするで」
「ののもれす・・・あいちゃんと倉庫で炎に包まれた時に・・・」
「死後の世界ってやつか・・・はぁ、死んでもうたんかな?うちら」
「そうかもしれないれすね・・・・。」
2人はため息をついた。
「今度は助からんかもしれへんなぁ・・・。一回死んどるし、うちら」
「でも、まだ死ぬわけにはいかねぇのれす・・・ゼティマも倒してないのに・・・」
「・・・汝、輝きを求めるか・・・」
「・・・汝、光を極めるか・・・」
呆然とする2人の耳に何かの声が聞こえて来た。
「だれれすか?いったい?」
「せや、だれやね?」
2人は同時に声を上げる。
「・・・我等は、汝らに埋めこまれ賢者の石と聖石アマダムの意思なり」
「・・・我等、汝らが危機に陥りし時、目覚めるものなり。」
2つの声が辻と加護の耳に届く。
「賢者の石?聖石?そんなもんがうちらの中に・・・」
「・・・待てよ、もしかしてベルトのエネルギー返還装置についとる
石の事か?」
「あいちゃん、それってなんれすか?」
「・・・うちらのベルトの裏側にあるエネルギー返還装置にブラックボックスが
あるんや。そこにどういう意図でか知らんけど宝石みたいな石がはまっとるんや。」
「・・・多分、それの事やと思うね。せやけど、あれがそんな石やったとは・・・」
「あいちゃんの改造を手伝った時、箱は見たけど石は見てなかったのれ、
ののは、知らなかったれすよ。」
「・・・せやろな・・・うちもじいちゃんの記憶から引き出したもんやし。」
「で、その石さんがなんの用やね?」
加護がその声に尋ねる。
「・・・我等は汝らに新たな力を与えん」
「・・・新たな驚異に今の汝らでは、立ち向かえん。」
そして、2つの声が重なる。
「・・・やがてくる究極の闇を止める為にも・・・」
「究極の闇?なんれすか、それは?」
「・・・究極の闇、それは全てを壊し、殺し尽くす者なり。」
「もしかして、こないだのウン・ダクバなんとかとかいうやつかいな?」
「せやとしたら、確かに今のままのうちらじゃ・・・きついわな。」
「ZXにも負けてる状態れすからね・・・」
2人は目を閉じる、そして見つめあう。
「あいちゃんはどうするれすか?」
辻が加護に問う。
「ののこそ、どないすんね?」
加護が今度は辻に問う。
「ののは・・・強くなりたいれす。今よりももっと・・・」
「・・・みんなを守りたいのれす、あいちゃんやみんなを・・・」
「うちもや・・・もっと力が欲しい。例えそれが辛い結果になっても・・・」
「・・・悲しむ人をみたないねや。ののやみんなをな・・・」
2人の意思に2つの声は答える。
「・・・ならば与えよう、光と究極の力を・・・」
「・・・ライダーの姿で勝てぬ時、願うが良い。力をくれとな。」
「・・・我等、汝らを輝きと究極の戦士へと変えん。」
言葉とともに辻と加護の体は光に包まれた・・・。
-加護生化学研究所-
「・・・うん、ここはどこれすか?」
「・・・どこやねん、ここ?」
辻と加護は、ライフステージのベッドの上に寝かされていた。
「おおっ?!ゆうちゃん、辻と加護目が覚めたよ。」
「なに?!ほんまか?!大丈夫か?2人とも。」
石黒と中澤、そして全員がかけつけてくる。
「ほんまに心配したんやで。なっちが助けてくれてんや。」
「2人に高圧電流浴びせてな。よかったわ、せやけど。」
「そうだったんれすか・・・あべしゃんが、のの達を助けてくれたんれすね。」
「世話になってもうたなぁ、安倍さんに。」
隣でなつみはにこやかに微笑んだ。
「たいしたことないっしょ?なっちも腕治してもらったし。」
「それより、お腹すいたのれす。ご飯が食べたれす。」
「あ、うちも!」
その場にいた全員がずっこける。
「・・・お前等、元気になったと思ったらそれかよ!」
矢口が口をとがらせる。
「まぁ、いいじゃないですか?そのほうが2人らしいし。」
ひとみがフォローする。
「じゃ、待ってな。すぐ作ってくるよ。」
石黒が部屋を出て行く。
「やっぱり、2人はこのほうがいいですね・・・」
「せやな・・・まぁ、ええとしとこか」
梨華が中澤に耳打ちする。
「ほな、うちもこの子らの着替えとりに一回家戻って来るわ。」
中澤は、梨華と梨花美達メイドにそこを任せると外に出ていった。
1人明け方の道を中澤は家へと向かう。
いろいろと考え事をしながら・・・。
「あの時の、辻と加護の姿。あれって、もしかしてSN計画とUM計画の
最終形態やなかったか?」
「一瞬やから、見間違えかもしれへんけど・・・。」
「そうやとしたら・・・希望が増えた事になる。せやけど・・・」
「2人に重いもん、また背負わせる事になるやもなぁ・・・」
朝日がだんだんと周りを包み始める。
中澤は、思いを振りきるように家路を急ぐ。
その時!
「中澤さんですね?」
後ろから突然声をかけられた。
「!?誰や」
さっと後ろを振り向き身構えると、そこには黒いスーツを着た
大柄な女性が立っていた。
「驚かせて、ごめんなさい。私、稲葉のFBIでの同僚で、
信田と申します。」
そう言いながら、女性は手帳を見せた。
「あっちゃんの仕事仲間かいな?そんな人が突然何の用で?」
「はい、実は、中澤さんに今度の事件の事でご同行願いたいと。」
「今度の事件?いや、まだあっちゃんからなんも聞いとらへんよ?」
「・・・仮面ライダーがやられたと聞いたもので・・・」
女性はふっと微笑む。
「!?なんで知ってるねん?いくらFBIが情報早い言うても・・・グッ」
女性は中澤の腹に拳を当て、気絶させる。
「ちょろいもんだ。こんな簡単にひっかかってくれるとはな・・・」
女性は、近くに停めてあった車に中澤を放り込むと無線を取った。
「・・・ZX、聞こえるか、タイガーロイドだ」
「・・・聞こえている、どうだ、上手くいったのか?」
「ああ、中澤裕子は確保した。これで奴らをおびき出す。」
「・・・ぬかるなよ。」
無線は切れた。
「クックック、これで、あいつらも終わりだ。」
「仮面ライダーも人造人間も一網打尽にしてやろう。」
「そしてZX・・・お前もナ。」
高笑いとともに中澤を乗せた車は走り去って行った・・・。
第26話「-輝きと究極-・・・新たなる希望!」完