仮面ライダーののV3

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656名無しX

(5)


「ダメだぁ〜見つからないよ〜」
「これだけ探しても見つからないなんて、あさみさん一体何処に行ってしまったんですか。」

なつみと愛はあさみを探して散々走り回ったが手がかりひとつ見つけることは出来なかった。

「仕方ない。こうなったら『加護生化学研究所』に行ってあさみを待つ他ないよ。」
「そうですね、もしかしたらもう先に向かっているのかもしれませんね。」



 ──── 数時間後『加護生化学研究所』

「お腹がすいたのれす。」
「またかいな〜。なんであんた改造人間やのにそんなにお腹減んねん。」
「そんなの知らないのれす。ののを作った加護博士に聞いて欲しいのれす。」

今日も今日とて繰り返される中澤家(?)の日常。

「仕方ないよ。この子今が食べ盛りなんだし。よし、じゃあ圭織が8段アイス
でもご馳走してあげようか。」
「本当れすか!わーい。やっぱりいいらさんは話がわかるのれす。どっかのおばちゃん
とはえらい違いなのれす。」

「誰がおばちゃんやねん!圭織あんまりこの子を甘やかせんといてや。」
「たまにはいいじゃない。それに今日は他の皆が居なくて退屈なんでしょ。」
「しゃーないなぁ。」
「わーい。8段アイスだいすっきなのれす。」
657名無しX:02/08/19 22:18 ID:+3WWui9Q
今日の『加護生化学研究所』には中澤、飯田そして辻希美の3人しか居ない。
他のメンバーはそれぞれパトロールやアルバイトに出かけて留守のようだ。

「じゃあ裕ちゃん、ちょっとアイス買いに出かけてくるね。」
「行ってくるのれす。」

「車に気をつけるんやで〜」

上機嫌で出かける飯田と辻。
手を繋いで歩く二人の後姿はまるで本当の姉妹のようだと中澤は思った。
こんな穏やかな日常がいつまでも続いてくれればどんなにか幸せだろう。


しかしその幸せな後姿を見つめていたのは中澤だけではなかった・・・・。
658名無しX:02/08/19 22:20 ID:+3WWui9Q

(6)


『加護生化学研究所』から目と鼻の先にある児童公園のブランコに座り飯田と辻は
アイスを食べていた。

「もぅ、辻ったら。なんでお家に帰るまで我慢できないのよ。祐ちゃん待ってるよ。」
「そんなにちんたらしてたら8段アイスが溶けてしまうのれす。
それにアイスは外で食べたほうがずっとおいしいのれす。」
「まあ、それはそうだけどね。」

児童公園には辻達の他には砂場で遊ぶ幼い子供とそれを見守る母親だけしかいない。
小学生達はまだ学校に行っている時間なのだろう。

辻と飯田はその親子を優しい目で見つめていた。

「優しそうなお母さんれすね。」
「そうね。・・・・辻のお父さんお母さんも優しかった?」
「宿題やれだの早く寝ろだのうるさかったのれす。・・・でも美味しい餃子作ってくれたり
・・・・とっても優しかったのれす。」
「・・・そう。」

659名無しX:02/08/19 22:22 ID:+3WWui9Q
二人ともそれ以上は何も言わなかった。

『仮面ライダー』になってしまった者にとってそれは胸の一番深いところに
しまっておかなければならない気持ちだとまだ幼くみえる辻ですら認識しているのだ。
それは・・・とても寂しい事だった。とても悲しい事だった。


その親子に一人の少女が近づいてきて何か一言二言話しかけたように見えた。
その途端顔色の変わった親子は公園からそそくさと出て行った。

「?どうしたんれすかね?」
「あれ、あの娘こっちに来るみたいよ。」

茶色の髪をふたつに束ね、胸のポケットに赤い花を挿した小柄な少女が開口一番二人にこう尋ねた。


「あなた達がライダーののなの?」
660名無しX:02/08/19 22:25 ID:+3WWui9Q
「!!あ、あなた・・なぜそれを・・」
「違うのれす。ののはののだけでいいらさんはスーパー1なのれす。」
「ば、バカ!辻何言ってるのよ。」


「スーパー1・・・それは好都合だわ。あなた達に聞きたい事があるの。」

「なんれすか?」
「バカ!辻。こいつが何者かも解らないのよ。」


「ライダーのの。あなた『クモ男』って知ってる?」

「『クモ男』れすか?・・・え〜っと、あぁ、ののがやっつけた怪人れすね。」

質問をする少女の顔が見る見るうちに真っ赤になっていく。


「やっぱり・・本当なんだ・・その『クモ男』・・何か言ってなかった?
・・・例えば・・・誰かの名前とか・・・」

少女の声は明らかに震えている。
661名無しX:02/08/19 22:26 ID:+3WWui9Q
辻希美は決して記憶力の良いほうではない。いやむしろ悪い部類に入るといっても良いだろう。
しかし『クモ男』が最後に発したその言葉は明確に覚えていた。
それほど鮮烈な出来事であり辻にとっても重たい言葉だったのだ。


「・・・あさみ、父さん先に逝くよ、ごめんな。・・・・れすか。」


その辻の言葉を聴いた途端少女は弾かれたかのようにすばやく後ろに飛び
二人との距離を空けた。

「やっぱり!みんな本当だったのね。リンネを殺したのもスーパー1、あなたなのね!
許さない。おまえら絶対許さない。」


「リンネ?あ、あなた一体誰なの?」

飯田は少女の予想もしなかった言葉にわけも解らず言葉を失った。
『リンネ』それは自分の命と引き換えに飯田を救ってくれた『E&S』のスタッフであり
飯田の親友の名だった。


「私はあさみ。あなた達は私のお父さんと親友を殺した。私から何もかも奪ったのよ。」