仮面ライダーののV3

このエントリーをはてなブックマークに追加
629白い名無し娘。

「くっ…。」
手の甲を押さえて、仮面ライダーあいは唸る。
渾身の力をこめたライダーパンチを放ったはずであった。
あい自身が命中したと思った瞬間に、凄まじい衝撃を右手に感じた。
右手をさすりながら、あいは右手の指を一本ずつ動かしていく。
指は特に問題がなかった。次は手首を動かしてみる。手首にも異常は
なかった。
「一体なんやねん…。」
ハカイダー・マキは、左手に握っている銃の銃身を指でなぞると銃口を
仮面ライダーあいに向ける。
「ハカイダーショット…。」
先ほどの、仮面ライダーあいの呟きに答えるようにハカイダー・マキも呟く。
ハカイダー・マキはそのまま引き金を引く。重く低い銃声があたりに響いた。
しかし、弾は仮面ライダーあいの横を掠めると、地面に転がっているアンドロ
イドマンに命中した。弾はアンドロイドマンの体を貫くと、アスファルトにま
でめり込む。次の瞬間、衝撃波が地面をえぐり、アンドロイドマンは粉々に
砕け散った。眉間に刺さっていた十字剣が、爆風で舞い上がり地面に突き立った。
「あんなのまともに食らったら、さすがにやばいかもしれへんな…。」
亜依はマスクの下で苦笑いを浮かべた。さて、どうするか…。
「終わりにしようか…。」
ハカイダー・マキは仮面ライダーあいに向かい、再び引き金を引く。
「ちっ…。」
仮面ライダーあいは、全力で横に走った。いくら破壊力が凄まじくても、
所詮は銃である。攻撃は直線的である。もっとも、改造人間だからこその
反射神経と運動能力でかわせるのではあるが。
630白い名無し娘。:02/08/16 00:33 ID:iYGxP/R3

ハカイダー・マキの持つハカイダーショットはリボルバー式であったと、
仮面ライダーあいは記憶している。
だとしたら、残りは3発。先ほどから、仮面ライダーあいは動きっぱなしである。
照準をつけられないくらいのスピードを維持するのは、例え改造人間でも辛いのだ。
動きを止めたらやられるのは確実である。足を止めるわけにはいかない。
お互い隙は見せられない。ハカイダー・マキもそう感じている。
まだ何かある…。
ハカイダー・マキは、仮面ライダーあいの動きからそう感じていた。
だとしたら、隙を見せた方が負けなのだ。
その時、仮面ライダーあいは足を止めた。が、照準をつけるよりも早く
再び走り出した。さっきよりも早く。
ジグザグに走ったり、ハカイダー・マキの周りを走ったり。
しかし、距離は確実に詰めてきている。
(勝負にきたか…。)
ハカイダー・マキは自信があった。ライダーパンチをハカイダーショットで
止めた時。あのまま全弾打っていたら勝っていた。
そうしなかったのは、戦いを楽しむため。そして、勝利する事が出来る
と言う自信のため。
次の攻撃の瞬間が、仮面ライダーあいの最後。そう確信した。
仮面ライダーあいのスピードが再び落ちた。次の瞬間、凄まじいスピードで
何かがハカイダー・マキに向かってきた。あまりのスピードの為にハカイダー・マキ
にさえ認識できずにいる。
「ふっ。」
瞬間的に眉間に照準を合わせる。まっすぐ向かってくるのならば、当てるのは
あまりにも簡単すぎる。ハカイダー・マキは引き金を引いた。
弾は眉間に命中し、貫いたはずだがこちらに向かってくる。
形は確かに人型だが、いかんせん命がない。その人型がハカイダー・マキに
ぶつかる寸前、左手でそれを叩きつける。
金属がくだける音がした。
「これは、アンドロイドマン!?」
631白い名無し娘。:02/08/16 00:34 ID:iYGxP/R3
先ほど、仮面ライダーあいがスピードを落としたのは、アンドロイドマンを
投げつけるためだった。
「だとしたら…。空か!」
ハカイダー・マキは月が輝く夜空を仰ぐ。居た!!
月をバックに、こちらに向かってくる。
高高度からの、全体重をかけたジャンプキックだ。
ハカイダー・マキも勝負に出た。
ハカイダーショットは残り2発。リボルバーから、瞬間的に薬莢4つと弾を2発抜き
新たに6発装弾した。
照準は、仮面ライダーあいの足刀。
しかし、まだ距離がありすぎる。
勝負は至近距離!!
仮面ライダーあいのキックはすでに目の前まで迫っていた。
「ライダー卍キーック!!」
ハカイダー・マキは6回、引き金を引く。
あたりに低い銃声が響いた。

632白い名無し娘。:02/08/16 00:36 ID:iYGxP/R3

仮面ライダーあいのキックは止まっていた。
ハカイダーショットを6発受け、それでも止まらず弾がなくなった
銃で防御してやっと止まったのだ。
「まさか、止められるとは思わんかったわ…。」
「ふ。まさか仕留める事が出来なかったとは…。」
お互い、死力を尽くし満身創痍であった。
仮面ライダーあいには体力が。
ハカイダー・マキには決定打が。
仮面ライダーあいは、宙返りして着地すると地面に膝を着く。
ハカイダー・マキは銃身の曲ったハカイダーショットをしまう。
暗闇に二つのヘッドライトが浮かぶ。
一つは、ニューサイクロン。
もう一つは、ハカイダー・マキのマシン『白いカラス』。
ハカイダー・マキは何も言わずに白いカラスにまたがると、暗闇に消えていった。
仮面ライダーあいは変身をとき、立ち上がろうとするが立てない。
そんな亜依に、ビジンダーから姿を変えた石川梨華が駆け寄ってきた。
「大丈夫、あいちゃん?」
「ああ、大丈夫や…。あいつ、ものごっつぅ強いな。」
そう言って、亜依は微笑んだ。
「梨華ちゃん、後は頼んだで…。」
亜依は梨華におんぶされて、そのまま寝てしまった。
「うん。お休みなさい、あいちゃん。」
梨華は亜依を抱きかかえると、ニューサイクロンにまたがった。
自動運転に切り替わっているニューサイクロンは、一路皆が待つ中澤亭に向かって
走り出した。
633白い名無し娘。:02/08/16 00:37 ID:iYGxP/R3

明かりが届かない、地下の部屋にプロフェッサーギルの研究室がある。
応急的な延命措置を施している、溶液に漂いながらギルは笑っていた。
(ハカイダー・マキよ…。貴様の体は、あくまでもわしの物なのだ…。
 この体が終焉を迎えたとき、お前の体とわしの脳は一つにり、
 わしは永遠の命を得られるのだ…。ククク…。)
研究室のいたるところにあるモニターには、白いカラスにまたがり
闇夜を疾走するハカイダー・マキの姿が映し出されていた。

第22話『ハカイダー』  終わり。