仮面ライダーののV3

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622白い名無し娘。

戦っている場所は、大通り沿いの銀行傍である。昼間ならば明るいのだが
今は深夜だ。街頭の明かりも無い。あるのは月の光だけである。
その月の明かりも、今は雲に隠れている。
もっとも、彼女達には関係の無い事であった。改造人間と人造人間の戦いは
続いている。果敢にも向かってくるアンドロイドマンの相手をしながら、亜依は
梨華の心配をしていた。梨華は人造人間である。今は、ビジンダーに姿を変えているが
いかんせん、アンドロイドマンクラスなら相手になるのだが、それ以上のクラスに
なると相手にはならない。現に、アンドロイドマンのほとんどはビジンダーに向か
ってきている。亜依は加勢したかったのだが、巧妙にアンドロイドマン達が行く手を
ふさいでいる。
「あかんな、このままやったら梨華ちゃんやられてまう。それに、どっかに
 黒幕が隠れてるはずや…。」
亜依がそう呟き、また一体アンドロイドマンを倒したその時である。
梨華のはるか後、梨華からは死角になって見えない暗闇の中に光が閃いたの
が見えた。
「梨華ちゃん、しゃがむんや!!」
亜依は何故かそう叫んだ。梨華は反射的にその場にしゃがみ込んだ。
次の瞬間、梨華に殴りかかろうとしたアンドロイドマンの額に、一本の
ナイフが突き刺さっていた。活動を停止したアンドロイドマンはその場に崩れ落
ちた。梨華に殴りかかろうとしたアンドロイドマンだけではない。この場にいる
全てのアンドロイドマン達が崩れ落ちた。同様に、額にナイフが突き刺さっている。
「これは一体…どういう事や。」
亜依が梨華に駆け寄って抱き起こす。
「梨華ちゃん、大丈夫か?」
梨華の体は、目立った外傷はないものの、所々傷付いている。
傷付くだけではたいした事ないのだが、戦闘向けではない梨華が戦闘をこなしたの
だ。エネルギーの消耗が激しく、動きがかなり鈍くなっている。
「ええ、エネルギーの消耗が激しくて…。ちょっと、ダメみたい。」
「わかった。それじゃ、ちょっと休んでてな。すぐ終るから。」
「うん。」
亜依は梨華に肩を貸して、梨華を安全そうな場所へ移動させた。
623白い名無し娘。:02/08/13 23:59 ID:WwRA6VOS

「そこの奴、出てこんかい。」
亜依は、暗闇に向かい叫んだ。ナイフが飛んできた方向である。
誰かがいるのは確かだ。その時、亜依の呼びかけに答えるように
再び光が閃いた。と、同時に亜依の腕も動いた。
亜依の眼前でナイフは止まっていた。亜依の手はナイフの刃を握っている。
しかし、ナイフというよりは刃が通常より長い。
「私は、十字剣と呼んでるけどね。」
暗闇から声がした。亜依の考えを読んでいるかのような台詞だ。
「誰や!!」
声の主が暗闇から姿を現わす。まるで、闇を全身に纏っているかの様な
黒いライダースーツに見を包んだ少女であった。
亜依はこの少女に良く似た人物を知っている。
「後藤真希…。」
「いいや、違う。私はハカイダー・マキ。
 そして、君は加護亜依だ…。」
マキは表情を変えずに喋っている。口元が微妙に微笑みを作っているのだが、
目が笑っていない。
「何でうちの名前を…。」
「簡単だ。私の頭にはつんくの脳が入っている。」
マキは自分の頭を指差して喋る。
(だとしたら、つんく博士を助けるのはこいつを倒して、体を取り戻すか
 うちみたいに再生させるかしかないんか…。)
そして亜依は思う。こいつは後藤真希ではない。姿は同じだけど雰囲気が違う。
祖父の記憶の後藤真希はもっと…。
「あんたは後藤真希やない。うちは思い出せへんかったけど、
 あんたは違う。それだけは分かる。」
「そう、本物の後藤真希…。プロトタイプのハカイダーは眠ってるわ。
 きっと、昔の夢を見ながらね。」
マキは、自分が何を言ったのか分かっていなかった。
それは、頭部に収められていつんくの言葉だったのかもしれない。
しかし、その場にいる誰ももその言葉に気がついていなかった。
「分かった。あんたは倒す。」
「ふっ…。」
亜依は右手を真横に水平に伸ばし、左手も水平に右方向へ伸ばす。
マキは、十字剣を自らの眼前にかざす。
2人はお互い対峙する形で立っている。生暖かい風が2人の間をかけていく。
その時、雲が切れ月明かりが辺りを照らし出す。
「変・身!!」
「チェンジ!!」
2人の声が同時に響く。
加護亜依は『仮面ライダーあい』へと。
マキは『ハカイダー・マキ』へと姿を変えるために。
624白い名無し娘。:02/08/14 00:01 ID:sw3r9Gjk

月明かりに照らされて、仮面ライダーあいとハカイダー・マキの戦いは
続いていた。互いにパンチとキックの応酬であるが、決定的な一撃が
決まらないまま続いていた。
(あかん、こいつ強い。)
(なかなか出来る。それでこそ。)
お互いがそう思っていた。
仮面ライダーあいは、ハカイダー・マキに中段蹴りを見舞うと、いったん間合いを
取った。
その光景を見ていた梨華にも理解できた。仮面ライダーあいは次の一撃に賭ける気
であると。
一度あけた間合いを仮面ライダーあいは、再び一気につめる。
ハカイダー・マキはそれに合わせるように、後ろへと下がるがあいは更にスピードを
上げて、ハカイダー・マキとの距離を約30cm位までつめた。
至近距離で仮面ライダーあいは、左のショートフックを放つ。
ハカイダー・マキの顔面に向かって繰り出されたのだが、すんでのところで
かわされてしまった。仮面ライダーあいはこれを待っていた。ショートフックを
打つために引き絞った右腕を、体全体を使って更に引き絞る。
仮面ライダーあいの両目は、目標をしっかりと見据えている。
極限まで引き絞った右腕を、解き放つタイミングは今だった。
「ライダーパンチ!!」
ありったけの力をこめた、パンチをハカイダー・マキに叩き込む。
その刹那、辺りに低く鈍い音が鳴り響いた。
仮面ライダーあいとハカイダー・マキは再び間合いを取った。
仮面ライダーあいは右手の甲を押さえ、ハカイダー・マキの左手には
鈍く輝く銀色の銃が握られていた。