仮面ライダーののV3

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591イデON

「あいちゃん。らいじょうぶですか?」
「ん?ののか…。どしたんや?」
亜依は希美にゆすられて目を覚ました。時計を見るために目を手の甲で
こすってみる。亜依の手の甲に冷たいものが触れた。
「あいちゃんうなされていたのれす。怖い夢でも見たんれすか?」
「いや…、別に怖くは無いけど…。なんか、悲しいような感じの夢やねん。」
「そうれすか…。ならいいのれす。怖い夢らったらいつれものののお布団で
 一緒に寝てもいいれすよ。」
「うん。ありがとうなのの。」
「てへてへ。あいちゃんお休みなさいれす。」
「ああ、お休み。」
希美は、亜依の隣にある自分の布団に入るとすぐに穏やかな寝息を立て始めた。
軽く一息つくと亜依は立ち上がりリビングへ向かう。
リビングにはバイトを終え帰宅した、ひとみと梨華の姿があった。
人造人間である彼女達は眠る必要は無い。そして、エンゲル係数が高い
中澤家の台所事情を支える柱であった。
「お帰りよっすぃー、梨華ちゃん。」
亜依はリビングに居る2人に声をかける。
「うん、ただいま。」
2人同時に挨拶が帰ってくる。亜依はテーブルのイスに座り、大きくあくびをする。
ひとみは亜依を見て微笑み、梨華は亜依にお茶を入れてきた。梨華に入れてもらった
お茶をすすると亜依は、ふぅ、と一息つく。
「どうしたの亜依ちゃん。こんな時間に起きてるなんて珍しいね。」
ひとみが、正面に座っている亜依に声をかける。亜依はお茶を両手で包み込むように
持ち、お茶をすすりながらひとみの質問に答える。
「んー。なんかののに起こされてん。なんか、うなされとったらしいんや。
 悲しい夢やったのは確かやねん…。」
そう言って亜依は夢の事を思い出す。
確か夢が覚める少し前の場面…。そうや、人造人間が真希っちゅうお姉ちゃんに、
姿形が同じになったあの場面。あれって確か…。この2人がチェンジする時と同じや
んか。もしかすると夢じゃなくて、爺ちゃんの過去なんか…。じゃあ、あの男の人は
多分つんく博士か。


質問に答えたまま黙ってしまった亜依を、ひとみと梨華は黙って見つめている。
「どうしたの亜依ちゃん。なんか飯田さんみたいだよ。」
そう言って梨華はくすっと笑う。ひとみも肩をすくめる。
しかし、亜依は答えない。答えないのだが、考えていた事が自然と口から
でてしまった。
「…やったら、あの真希って言う姉ちゃんは何もんなんや。…あかんな、
 爺ちゃんの記憶をついでも、思い出せんことはあるんか。」
いや、思い出せないのではないのかもしれない。いざという時、ゼティマに
つかまって、どんな仕打ちをうけても話さないように封印しているのかもしれない。
けして二人に聞こえるように口に出したわけではない。きっと、亜依の隣に希美が
居てもその、言葉には気がつかなかっただろう。しかし、この2人の耳だからこそ
届いたのだ。そしてこの2人には、思い当たる単語が含まれていたから反応した。
「亜依ちゃん、マキってもしかしてハカイダー・マキの事?」
ひとみが亜依に聞く。梨華もいつになく真剣な面持ちをしている。
「ハカイダー・マキ?ハカイダーって、何のことかは分からんけど
 真希っちゅうお姉ちゃんが、爺さんやつんく博士の昔の出来事に関係
 しとるみたいなんや…。よっすぃーは何か知らん?」
「私が知ってるのは、ハカイダー・マキって言う私の姉妹の事だけ。
 彼女の使命は私を破壊する事、確かそう言ってた。」
「そうか…。」
その時、ひとみと梨華の表情がとたんに険しくなった。
同時に亜依の頭に鈍い痛みが走った。
「どうしたん?2人とも怖い顔して。」
「亜依ちゃん。事件だ、銀行のATMが襲われてる。」
ひとみの耳は2km先のひそひそ話を聞く事が出来るのだ、中澤のマンションから
1km離れたATMが破壊されている音を聞き漏らすはずがない。
「行こう梨華ちゃん、ダークのアンドロイドマンが襲っている。」
「わかった。行こうよっしぃー。」
そう言って立ち上がった二人を、亜依も立ち上がり行動を制する。
「まちぃ。今回はうちに行かせてもらえんか。」
「だけど、亜依ちゃんは明日の夜間パトロールの当番じゃない。
 今寝ておかないと明日に響くよ。」
梨華が心配そうに異論を唱える。亜依はクビを横に振るとやんわりと
拒否する。
593白い名無し娘。:02/08/01 23:43 ID:ltsGP5Rf
「それもそうやけど、中途半端に起こされたから眠くならんねん。
 運動がてらに行かせて欲しいんや。」
「でも…。」
ひとみはそれでも、亜依の出動を拒否する。梨華は何も言わず亜依の瞳を見ている。
亜依の瞳は真剣だ。運動がてらに行く、などというのは建前である。その事を梨華は
見抜いていた。
「よっしぃー。行かせてあげよう。」
梨華がよっすぃーに提案する。
「私も一緒に行くから、よっすぃーはマンションで待ってて。ののちゃんと
 中澤さんや石黒さんを守ってて。」
梨華がひとみにここまでいうのは珍しいことであった。
ひとみも、梨華がここまで言うのだからよっぽどの事なのでは無いかと思った。
「わかったよ梨華ちゃん。亜依ちゃん、現場は大通りをしばらく行った
 銀行のATMだよ。詳しい事は梨華ちゃんに聞いて。」
「ありがとうな、よっすぃーに梨華ちゃん。」
「2人とも、気をつけてね。必ず帰ってきてよ。」
「うん。」
ひとみは出て行く二人の背中を見送った。ひとみは一つ言い忘れた事があった。
ハカイダー・マキの頭には、つんく博士の脳が入っているということを。