仮面ライダーののV3

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565名無しっぺ
仮面ライダーのの第21話 『悪』

日本某所に密かに存在するゼティマ本部。外界からの光を一切遮断した、
ゼティマの存在をそのものを表したかのような暗がりの中で、巨大なテーブルを
複数の人影が囲んでいた。その人影はいずれもバラエティに富んだ、異様とも
言えるほどの珍妙怪奇な服装をしていた。そして、その暗がりの中ではコツコツと
言う硬い靴音だけが響いていた。

眼帯をし、軍服を着ている男。どうやらこの男が靴音の犯人らしい。

『ゾル大佐』

それがこの男―ゼティマの幹部の一人―の名前だった。

「―――我々ゼティマが加護博士のデータを元に作り出した改造人間の
 プロトタイプである仮面ライダー1号、2号、更にはそれらと共に行動をしている、
 他の改造人間と人造人間。初期型の、ただのプロトタイプに過ぎぬきゃつらが、
 何故我々が送り出す最新の改造人間を打ち倒す事が出来るのか……
 改造手術の権威である死神博士、ご説明願えるかな?」

その『死神博士』と呼ばれた老人に対し、激しい苛立ちを露わにしながら
発した言葉は、しばらくの間暗がりの中で響き渡った。どうやらここは会議室らしい。
566名無しっぺ:02/07/24 02:24 ID:IIt4MjMj
「フン、実に簡単な事じゃ。『脳改造が施されておらん』から。それしか考えられん」

「ハッ! 何と!? 改造手術においては右に出るものはいないとまで言われた
 死神博士が、よりにもよってそんな世迷い言を抜かすとは! 笑い種にもならん!」

しばしの静寂の後、改造手術の権威から発せられた、投げやりともとれる説明に、
死神博士の隣に座っていた人影が勢いよく立ち上がった。

「脳改造を施されていないと言う事は、兵士としては使い物にならん! そんな
 『失敗作』のあやつらが、我らの最新科学の結晶とも言える怪人達をいとも
 たやすく倒す理屈、ワシには判らん……。死神博士、お主のその説明でもな」

彼―『地獄大使』と呼ばれている男―が博士の説明に納得出来ていないのは、
左手のムチをこれでもかと言わんばかりに曲げている事からも想像がつく。

明らかに不穏な空気が流れる中、死神博士はようやく、先程の説明に『付け足し』を始めた。

「つまりは、やつ等が『兵士』ではなく、あくまで『人』としての精神を持ち合わせている
 からじゃ。認めたくはないが…決して認めたくはないが…『正義』と言う『信念』があるかないか、
 それが理由じゃろう…」
567名無しっぺ:02/07/24 02:24 ID:IIt4MjMj
「!? おい、死神博士。まさかそのまま寒気がするようなヒューマニズムでも
 語りだすのではないだろうな!?」

ゾル大佐が語調を荒げながら博士に詰め寄った。

「それは事実だ」

ゾル大佐、死神博士、地獄大使の3人とは別の声が響き渡った。

「……貴様か…。アポロガイスト」

地獄大使が憎憎しげに言う。アポロガイストはゼティマの中では直接戦闘に
参加したり怪人を指揮したりするのではなく、怪人たちの動きを監視し、首領に
報告する役目を担っている。表立って作戦を指揮するタイプである地獄大使や
ゾル大佐にとっては、煙たがって当然の存在であった。

「『信念』無き者に勝利は無い。我々ゼティマにとって、怪人はあくまで『兵士』。
 それ以上でもそれ以下でもないのだ。」

威風堂々と語るアポロガイストの表情をうかがい知る事は誰にも出来ない。紅蓮の
炎よりもなお赤い鉄仮面が、全ての表情を隠しているのだった。
568名無しっぺ:02/07/24 02:26 ID:IIt4MjMj
「さすがはアポロガイスト、判っているようだな。」

また新たな声が響いた。と同時に、何も無い空虚の中、突如人間大のトランプが
現れた。今のその状況、またその場所を考えると、あまりにもシュールな光景たった。

「トランプフェードッ!!」

掛け声と共に現れたのは……透明なヘルメットを被り、白いマントに白いスーツ、
腰には細身の長剣……それだけならば『正義のヒーロー』と思われてもいいのだが…
その素顔はどの怪人よりもおぞましく、薄気味の悪いものだった。耳もとまで裂けたかと
思うほどに吊り上がっている赤い口。そして顔中に張り巡っているのは血管か。

「ジェネラルシャドウ…貴様まで…」

今度はゾル大佐が口を開いた。よほどこの二人同士はウマが合わないようだ。
ちなみに、死神博士はただその場を静観しているだけである。

「俺の占ったところによると……貴様ら三人、あまり良い未来は見えんなぁ…クククッ。
 手柄を取り合うというのには賛成だが、低次元な言い争いをしているようでは、
 いずれ首領に『消される』ぞ? 俺は邪魔が無くなって非常にすっきりする思いだが。」

「きっ、貴様ぁ! 言うに事欠いて…! 殺されたいのかぁっ!?」
569名無しっぺ:02/07/24 02:29 ID:IIt4MjMj
地獄大使がますます敵意を剥き出しにする。どうやらゼティマの中でも、地獄大使は
単細胞と呼ばれるにふさわしい部類の幹部らしい。

「ゴキブリは黙っていろ。…死神博士、貴公なら理解しているだろうが…首領自ら、
 脳改造は改造手術の最期にするように仰られている理由…」

「…脳改造寸前に『わざと』逃げ出させる為、か…?」

地獄大使を無視して放たれたアポロガイストの言葉の意味を、博士は理解しているようだった。

「その通り。事実、脳改造を施されていない彼奴らの方が、脳改造を施された怪人よりも
 強い。彼奴らが今現在のうのうと生きている事からも判る。『人』としての『信念』が
 仮面ライダーたちを日々強くしているのだ。もちろん、我々ゼティマにとって忌むべき
 感情も、あいつらは持ち合わせ、成長の糧としているがな…」

アポロガイストは満足そうに語った。そして更にジェネラルシャドウが話を続けた。

「あちらもなかなかに『手駒』が揃ってきた頃…。ここらで一つ、全ての駒をこちらのもの
 とする時が来たのではないか…そう首領は言っている。あいつらのそこまで入れ込む
 首領の考えが、俺には判らんがな。」
570名無しっぺ:02/07/24 02:30 ID:IIt4MjMj
「なるほど…彼奴らの居場所を知っていながら決定打を加えなかったのも、彼奴らを
 『育てる』為…? だが今のままではこちらの思い通りのものとするのは不可能ではないのか?」

地獄大使に比べれば遥かに理知的なゾル大佐が二人に尋ねた。

「まさか今のままで何とかなるはずがなかろう? 当然、然るべき処置、まぁ最終的な
 脳改造を施し、幹部として向かえるのだ。素体に関しては不満があるがな…。」

「ふむ、機が熟すまで待ち、美味しい所を持っていくというワケか! 確かに素体が
 ただの女子供というのはには不満だが…。ようやく納得がいったわ!」

ついさっきまで怒り心頭だった地獄大使、スイッチを切り換えたかのごとく喜色満面になっている。
なんとも喜怒哀楽の激しい男である。

「まぁ、その日まではもうしばらく待て。他の幹部にもそう伝えてある。何せ今は
 非常に大事な『成長期』の途中だからな……」

いささか興奮気味の地獄大使を諭すかのように、アポロガイストは『待て』という
アクションを見せた。そして大きなテーブルの、自分の手元にあるスイッチを押した。

「見てみろ。これが彼奴らに与えた『宿題』だ。仮面ライダーたちが我らの求めるものに
 成長するのに、欠かせない『課題』とも言える。」

会議室の暗闇の中に、ダブルライダーと、新たな改造人間が対峙している
映像が浮かび上がった。
571名無しっぺ:02/07/24 02:32 ID:IIt4MjMj
( ´ Д `)<はい終了〜。これでまた余計な大風呂敷広げて、他の作者さんに
       迷惑かける事になったかな〜? 
572白い名無し娘。:02/07/24 22:30 ID:p+Xbb03i
それは行かせていただきます。更新は不定期ですが許してください。
その上長くなるかもしれません。面白くないかもしれないですがお付き合いください。
573白い名無し娘。:02/07/24 22:34 ID:p+Xbb03i
仮面ライダーのの第22話 『ハカイダー』

今を遡ること数年前。ゼティマがまだ台頭する前の話。
ある田舎のとある場所で一つの研究が行われていた。
研究のテーマは『人と機械の融合』。 来るべき人類の
宇宙進出のための一環であった。

「もうすぐ,身体が完成しますね博士。」
そう言って若い男はイスに腰を下ろす。
若いといっても30代前半くらいではあるが
「そうじゃな。システムの方は完成しておる。後は
 身体を完成させて,起動実験をすますだけじゃ。」
博士と呼ばれた初老の男も手近なイスに腰を下ろし
髪を掻き上げる。二人がいるのは手術室の様な部屋であった。
元は病院であったのだが,経営難によって潰れたのを二人が
買い取って研究施設にしたのだ。そして,部屋の中央に置か
れている手術台の上に,一人の人間が横たわっていた。正確に
言うと人間ではない。人の形をした機械の塊である。

「しかしなあ………。起動実験と言っても問題が残っておる。」
初老の男は再び立ち上がると,手術台の近くに歩み寄る。
「ええ,ほんまですわ。どうやって手に入れるかが問題です………。」
ふうっとため息をつくと,若い男は自分の膝の上で頬杖を付く。
そして,何かを考えるかの様に目を閉じる。初老の男も手術台に横た
わっている人型の機械に目を移す。 暗闇色の身体に,血の色をした目,
顔には稲妻を模したマーキングがされている。初老の男は,誰に言うでも
なく呟いた。
「この人造人間の完成は,人類にとっては大きな一歩かもしれん。
 しかし,その道は血塗られた茨の道かもしれんな………。」


574白い名無し娘。:02/07/24 22:35 ID:p+Xbb03i
何かを考えるようにしていた若い男は,おもむろに立ち上がると初老の
男に向き直った。
「まあ,難しいことはこいつの身体が完成してからにしませんか?
 完成せんことには話にならへんですやん。」
そう言ってほほえむと,初老の男もほほえみ返す。
「そうじゃの。いらぬ心配じゃったかもしれん。完成まで後一歩じゃ
 早々に仕上げるとしようか。」
「後は、各部品の接合と稼動チェックです。それでこいつは99%完成です。
 頑張りましょう、博士。」
若い男も、手術台のそばに歩み寄る。
「何を言うとるか、そういうおぬしも博士じゃろうに。」
初老の男はそうぼやくと手術台の脇にあるモニターに目を移した。
モニターには手術台の上の人造人間が映し出されている。
そしてモニターの右上段に一枚の写真が貼り付けられてあった。
その写真には、髪の毛をお団子にまとめた女の子が微笑んでいる。
女の子から、初老の男あてであろうメッセージも添えられている。
女の子の直筆であろう、初老の男には読めなかったが満足であった。
初老の男が写真を見つめる眼差しは限りなく優しかった。
しかし、その眼差しは数年後果てしない憎悪の炎に狂う事になる。
少女の親友を巻き込んで………。