-パトロール中の辻と加護-
「あいちゃん、はやいのれす。このバイク」
「当たり前やろ、これがじいちゃんの技術を結集して作ったニューサイクロンに
に変形するんやから。」
辻と加護は夜の道をバイクで並んで走る。
スーパーマシンニューサイクロンに変形するバイクは、通常の状態でも
ほかのバイクとは比べ物にならない走行能力を発揮する。
夜パトロールするには理由がある。
1つは2人がジュニアライセンスのライダーであること。
いくらジュニアライセンスがあってもおおぴらに公道を昼間走ることはできない。
そして、もう1つは・・・2人がすでに公には「死んでいる」存在だからだ。
改造人間として蘇った2人には、それはあまりにも重い事だろう。
加護は天涯孤独になった。辻はもう家族に会うことすらかなわないのだから・・・。
しかし、2人にはそれでもよかった。
自分の事を誰よりも信頼し、思ってくれる親友が傍にいる・・・。
それだけでも、心強かった。
それに今は多くの仲間がいる。
そして、守られねばならないものがある。
それだけで充分だった。
そんなバイクに乗り走る2人の前に1つの人影が現われた。
思わず辻と加護は、急ブレーキをかける。
「なにしてんねん、引かれたいんかい!」
「そうれすよ、走ってるバイクの前に飛び出したら、危ないのれす」
そこには、真っ黒な皮のスーツに身をつつんだ少女が立っていた。
「なんかおばちゃんに似てる女の子がいるれすよ。あいちゃん。」
「ほんまに、何考えてんねんやろ。アホとちゃうか、道のど真ん中やで」
2人は怪訝そうに少女を見つめながら話す。
しかし、いつまでたってもその場を動こうとしない少女に加護がきれた。
「道の真中に突っ立てなにしてんねん!邪魔やからどいてや!」
加護が怒鳴る。
しかし、少女は無表情な様子を崩さず、ジッと2人を見つめる。
そして・・・
「辻希美に加護亜依だな・・・いや、仮面ライダー1号、2号というべきか」
「・・・違うれすよ、仮面ライダーののに仮面ライダーあいれすよ。」
「あほ、のの。何言うてんねん。正体ばらしてどないすんねん!」
「・・・やはり、そうか。便宜上ゼティマではお前建ちの事を1号、2号と
分類しているのだ」
「なんやて!?お前ゼティマなんか!」
「なんかでも、あいちゃん・・・あの子今までのゼティマとちょっと
違う感じがするのれす。」
辻の言葉に加護もはっと気づく。
「・・・せや、こいつ人の姿しとる。怪人やないんか?」
2人は戸惑う。
そんな2人をまるで無視するかのように、その場に1人たたずむ
ショートカットの少女は、そのうつろな狂気に満ちた目を2人に向ける。
「人間?私はなにも覚えてはいない。人間など下等な生き物。」
「我等、ゼティマの怪人こそが地球を治めるに相応しい。」
「・・・ゼティマに刃向かう愚か者め。・・・ここで、死ぬがいい。」
そして、両手を右斜め上と下に構える。
そして、その両手でZとXの字を描くように腕を動かす。
その瞬間、光が少女を包む。
それがおさまった時、そこには異形の者が立っていた。
カミキリムシを思わせる赤いマスクに、緑の眼。
赤い人工皮膚に、シルバーの装甲を纏う者・・・。
「・・・我が名は、ZX。ゼティマのパーフェクトサイボーグ」
「・・・そして、仮面ライダーを殺す者・・・」
「あいちゃん・・・どうしましょう?のの達みたいに変身したのれす」
「・・・まさか、完成しとったとは・・・ZX計画が」
「・・・ゼティマめ、じいちゃんの研究をまたこんな事に・・・」
「・・・罪のない女の子を化けもんにするやなんて」
加護が呟いた。
「あいちゃん、戦いたくないのれす。さっきの女の子れすよ。あの怪人」
「・・・のの達と同い年ぐらいだったのれす。どう見ても・・・。」
「のの・・・無理や。お前も知っとるやろ?脳改造されてしもたんや。」
「あの子は・・・敵なんや。うちらの。・・・元には戻れへん。」
「・・・戦うしかないんや!」
2人が戸惑っているうちに、ZXは2人に近づく。
「どうした・・・そちらからこないならこちらから行くぞ!」
2人に向かってパンチや蹴りを繰り出してくる。
そのスピードは・・・今まで見たどの怪人よりも速かった。
2人はジリジリと追い込まれていく。
「のの、このままではやられてしまう。変身するんや!」
「・・・わかったれす、あいちゃん。行くれすよ!」
2人は変身ポーズをとり、2人同時に叫ぶ。
「ラァァイダァァァー、変身!」
「変身!」
そして、2人同時に空に跳びあがる。ベルトの風車が高速回転し、2人を眩ゆい
ばかりの光りが包む。
そして、地に降り立つ2人は、その姿を変えていた。
「仮面ライダー、のの!」
「仮面ライダー、あい!」
「お前がパーフェクトサイボーグでも、この姿なら負けへんで!」
「・・・本当は戦いたくないのれす。でも、ゼティマはゆるせないのれす!」
2人は口々に叫ぶ。
そんな2人のライダーに向き直るZX。
「・・・愚かな。ライダーに変身しようと同じ事だ。」
「旧式のお前達に私を倒すすべなどない。」
「・・・彼の世へ行くがいい。このZXの手によって・・・。」
対峙する、ダブルライダーと記憶を消された改造人間。
・・・運命の戦いの火蓋は切っておとされた・・・
第 20話完