-中澤家-
このところ、ゼティマの動きもなく数週間が経っていた。
しかし、全員が安心しきっているわけではない。
ゼティマがいかに恐ろしくしぶとい組織であるかという事を、
全員がよく知っていたからである。
だから、こういう時もパトロールはかかさない。全員がそれぞれの担当区域に
出向いていた。
そして、家の中には、中澤と石黒だけが残っていた。
「ゆうちゃん、正直思うんだけどさ・・・」
「うん?なんやの彩っぺ」
中澤と石黒はキッチンで全員分の食事の準備をしていた。
この食事が1番の中澤家での頭の痛いところであった。
メンバーが増えてから、エンゲル係数はうなぎ登りだったからだ。
だが、加護博士の遺産や、自分達の蓄えでなんとかやりくりはしていた。
また、真里やひとみ、梨華は時間を見つけてはバイトに出てくれてもいた。
さらに、稲葉のおかげでFBIから資金援助の許可も申請中ではあるが。
「あのさ・・・正直、最近私嫌な予感がしてるんだよね」
「嫌な予感?なんやのいったい?」
「辻を改造したのは加護博士だよね?確か」
「ああ、そうや。それがどないかしたんか?」
「・・・ということは、仮面ライダーを造る技術って大分前からあったって
ことでしょう?」
「そういう事になるやろな。おそらくゼティマにおる頃に理論や技術は完成
しとったやろ、きっと。」
「それでね、ゆうちゃん。私が言った嫌な予感っていうのはね・・・」
「・・・ゼティマが完璧な仮面ライダーを造れたら・・・どうなるんだろうって。」
石黒は真っ直ぐに中澤の目を見詰めた。
その目には明らかに不安の色が映っていた。
「ゼティマがか?まぁ、そんな事はあらへんやろう。」
「でも・・・」
「だって、考えてもみい。そんなん造れるんやったらとっくの昔に
出てこなおかしいやん。つまりは、造れんいうこっちゃ。」
「そうかなぁ?」
「そうやて、心配しすぎやで彩っぺ。まだ時間あるさかいちょっと
休んだらどうや?疲れとるからいろいろと考えてしまうんやで。」
「・・・分かった。少し休んでくるよ。」
石黒はキッチンを出て、自室へとあがっていった。
1人キッチンに残った中澤は、冷蔵庫からビールを出すと一口、
口をつけた。
(確かに、彩っぺのいうとおりや。今は造ることがでけへんでも、
あれだけの技術があるんや。ゼティマが本気になれば、できるやろう)
「せやけど・・・そんな事になったら・・・お終いや。」
「ライダークラスの改造人間が何人も出てきたら、いくら今ライダーや
人造人間が数人おるいうてももたん。
「希望はある。せやけど、それはオリジナルのあの2人をもっと苦痛に
追いこむ事になるやもしれへん・・・」
中澤は、自室に戻った。そして、パソコンを起動させ、DVDをセットする。
そしてパスワードを入力し、データを呼び出す。
「加護博士がうちに最後に残してくれたもんやけども。
まさか、これが現実になっていくんやろうか?」
そこには・・・・SN計画、UM計画といった文面が並ぶ。
さらには・・・ZX計画の文字。
「加護博士とつんく博士がもう1つの方法として考えてあったもんや。
人造人間の技術を改造人間に応用する。最強の兵士を作る方法や。」
「これだけが・・・100%記録消去できんかった・・・。」
「ゼティマがもし、これを完成させとったら・・・その時は・・・」
中澤は拳を握り締めた。
「仮面ライダーが殺される時や・・・。」