仮面ライダーののV3

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343名無し坊
「私がいながら・・・・・ 何もできなかったのれす・・・・・」

裕子への連絡を終えた後、希美はその場にへたり込んだ。

自分がいながら、梨華を車から出す事はできなかった。
大切な人たちを護る為にあるこの力は、結局肝心な時に何の役にも立たなかった。


(戦う意味を、知らなければならない・・・・・・・)


夢の中で聞いた、あの言葉が甦る。

手にした力を、何の為に使うのか、ということだけではなく、
手にした力を、何と戦うために使うのか。
それを、自分は知らなくてはならない。

(私の・・・・ 闘う・・・・・ 意味・・・・・・・・)


自分の手にした力と、本気で向き合わなくてはならない。

希美は、心を決めた。
344名無し坊:02/05/19 01:45 ID:NPFu8WvN
『ケイ! ケイ! 聞こえてるか!?』

ジャングラーに取り付けられた通信機から、裕子の声が聞こえる。

「聞こえてるよ!」

闇の中を猛スピードで疾走する愛機・ジャングラーの上で、ケイは答える。

「梨華の捕らえられてる場所がわかったんや。
 のののいる場所からそんなに遠くない所や!
 すぐに他の連中も向かわすから・・・・」

「いや、それはやめて!!」

「!? 何やて!?」

裕子の言葉を、ケイは遮る。


「梨華を助けに行くの、あたしとののに任せて欲しいんだ」

「アホか! そんなこと許せるか!!」

「頼むよ! 今あの子、大切な事に気付き始めてるんだ」

「・・・・・・・・・・・・・・」

「それに気が付けば、あの子はもっと進化できる・・・」

「進化・・・・・・・・・・・」


ケイの『進化』という言葉に、裕子は反応する。
希美の進化、即ち仮面ライダーののの成長進化は、裕子も懸念していたことだった。

今、ここで全員向かっても、希美が進化できるかどうかはわからない。

裕子は、ケイの言葉に懸けることにした。


「・・・・・・・ わかったわ。
 そしたら、ののの面倒しっかり見て、朝までには帰ってくるんやで!」

「・・・・・ ありがとう!!」

ケイはジャングラーのスピードをあげた。
目指す少女のいる場所までは、すぐだ。
345名無し坊:02/05/19 01:47 ID:NPFu8WvN
「G4を奪取します」

ケイが希美の元に向かっていたその時、Gトレーラー内で、亜弥は言った。

「だ、奪取って・・・・・ それって強盗じゃないですかぁ!」

突然の亜弥の発現に、鈴音はうろたえる。

「大丈夫よ。
 元々G4の設計図は、このトレーラー内のコンピュータに隠してあるのを、
 あの石黒絢が無断でコピーして作ったものよ。
 つまり、あれを持つ権利は私にあるの。
 正義は私達にあるのよ」

それに対し亜弥は、少々無茶なことを平気で言ってのける。

「ですが松浦さん、彼女達がG4を素直に渡すわけがないでしょうし、
 奪取と言っても、基地内に厳重に保管されているでしょうから、多分不可能だと思いますよ」

そして、至極もっともな意見を吐くみちよに対して

「大丈夫よ。
 その時はGトレーラーで基地内に突っ込むから」

と、完全に無茶苦茶な意見を亜弥は吐く。

「石黒絢・・・ 彼女の危険な思想を叶える手段に、G4を使わせるわけにはいかないわ。
 あんな棺桶同然の兵器・・・ 存在させてはいけないのよ。
 それとも、2人にはそのことに何か反論があるの?」

「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」

みちよ、鈴音にも、亜弥の言う事に異論は無かった。

そして、その2人の沈黙が、G4奪取決行の、合図となった。
346名無し坊:02/05/19 01:47 ID:NPFu8WvN
「ここ・・・・・ なのれすか・・・・・?」

「そうよ。しっかし、デッカい建物ねぇ。
 こんなに金網でガード敷いちゃって、警備も厳重そうだし」

希美とケイが合流し、裕子から送られたデータで向かった先は、GWSの基地だった。
勿論、2人がその事を知る由もない。

「どうやって梨華ちゃんを取り返すのれすか?」

「そりゃぁ・・・ まぁとりあえずは、この金網越えていくしかないけど、
 正面からはさすがに無謀だし、裏に回ろう」

「そうれすね」

2人は、乗っていたマシンから降りると、裏手の森に入って行った。


しばらく歩くと、不意に2人の周囲が明るくなった。

「何!?」

「何なのれすか!?」

さらに2人の上空から、大きな音が響き渡った。
ヘリのローター音だ。
2人の周囲が明るくなったのは、ヘリのライトで照らし出されたせいだったのだ。


「見つかったみたいね!」

そして、2人に近づいていく一つの姿。


「あんたは・・・・・・」

「この間の・・・・・ 黒いヤツれす!!」

G4だった。
347名無し坊:02/05/19 01:49 ID:NPFu8WvN
GトレーラーがGWS基地前に到着すると、不意にヘリが現れ、近くの森が照らし出された。

「まさか・・・・ バレたの!?」

モニターで外を見ていた亜弥が叫ぶ。

「いや・・・・ 違うみたいですよ。
 あのヘリ、ずっと森で停まってますし、あそこに誰かいるのかも・・・」

みちよが言うと、亜弥は隣にいる鈴音に指示を出す。

「鈴音、カメラズーム。
 ヘリのライトが照らしてる辺りを映して」

「わかりました!」

鈴音の操作で、トレーラーに取り付けられたカメラがズームされ、森の様子が映し出される。
木や草が邪魔でよく見えないが、その影から映る人影に、3人は心当たりがあった。

「G4・・・・・・・」

その人影の正体に、亜弥はうめく。


「でも、どうしてG4が?」

「何かのテストかも・・・・・・」

みちよと鈴音の言葉をよそに、亜弥はモニター横のスイッチを入れる。
G3−Xの格納庫を開けるスイッチだ。

「松浦さん・・・・・」

「平家さん。
 どんな状況であろうと、今、G4が基地の外に出ていることは、私達にとって格好のチャンスなのよ。
 今を逃す手は無いわ。
 G3−X、出動よ!」

「・・・・はい。わかりました!」
348名無し坊:02/05/19 01:50 ID:NPFu8WvN
『警告! 基地周辺ニ侵入者アリ!』

GWS基地周辺を監視するカメラのAIからその情報が告げられると、
基地内のコンピュータが、すぐに侵入者を映し出しているカメラの映像を出す。

「侵入者発見! 2名です! データベースと照合します」

隊員がそう告げると、すぐさま、侵入者の映像は、ゼティマ内のデータベースと照合され、
侵入者の情報を提示する。

「侵入者の身元判明!
 辻希美と保田圭。2名とも仮面ライダーです!!」

「成程・・・ あの石川梨華を連れ戻しにきたのね」

侵入者の情報を確認した絢はそう呟くと、すぐに傍らにいた隊員に指示を出す。


「G4システムを出動させなさい。
 それと、プロジェクションの準備はできた?」

「はい。すでにマシン、そして素体である石川梨華の調整は完了しています。
 あとは、彼女をマシンに組み込んで最終調整をすれば、プロジェクション可能です」

「わかったわ。すぐにプロジェクションできるように、できるだけ急がせなさい」

「了解しました」

隊員がその場を離れると、絢は、希美とケイの映し出されたモニターに目をやる。

「石川梨華、そしてG4は、私達とって必要な存在なのよ。
 渡すわけにはいかないわ・・・・・・・・・・・・・」