326 :
名無し坊:
G3−Xとの共闘を、希美は誰にも話さぬまま、3日が経った。
(あの姿は、一体・・・・・・・)
あの激しい頭痛の時。あの時、一瞬だけ脳裏に映った自分の姿。
あれは一体何だったのか。
ベッドの中で、希美は一人、天井を見つめていた。
327 :
名無し坊:02/05/12 23:31 ID:qrRPuk3/
『・・・・・・・・・・・・・アギト・・・・・・・・・・・』
誰かが呼んでいる。
自分の名を。
『炎・・・風・・・そして太陽の力を内包せし、最強の存在、アギト・・・・・・・・・・・・・・』
何故、アギトというのが自分の名とわかっているのかはわからない。
だが、それは確実に自分の名であり、自分は呼ばれているのだ。
『その力は、何の為にある・・・・・・・・・・・・・・』
大切な人たちを護る為。
『何の為に、戦う・・・・・・・・・・・・』
何の為かを知る為。
328 :
名無し坊:02/05/12 23:32 ID:qrRPuk3/
『もうすぐ、その力は解放される・・・・・』
自分に今語りかけているこの声。
女の声だ。
それも、よく聞き覚えのある声。
『力の意味だけでは不十分・・・・・・・・・・
戦う意味を知らなければならない・・・・・・・・・・・
力が開放される時、それは、戦う意味を知る時・・・・・・・・・・・・』
やっとわかった。
これは、自分の声だ。
やっとわかって、すっきりしたのれす。
329 :
名無し坊:02/05/12 23:33 ID:qrRPuk3/
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
希美は目を覚ました。
どうやら、いつの間にか眠っていたらしい。
ぼやける視界に、豆電球で薄暗く照らされた天井が目に写る。
「なんか、すっきりしない気分れす・・・・・・・・・」
呟き、希美はベッドから抜け出すと、そばに置いてあった上着を引っ掛け、外に出た。
330 :
名無し坊:02/05/12 23:35 ID:qrRPuk3/
夜の冷えた空気が、ベッドの中で暖められた体に心地いい。
「・・・・・・・・気持ちいいのれす」
空を見ると、星が輝いていた。
「・・・・・・星が、綺麗ですね」
「!? ・・・・・梨華ちゃん・・・・」
突然、自分以外の声がしたので、後ろを振り返れば、そこには梨華が立っていた。
「どうしたんですか? こんな時間に」
「ちょっと、気分がスッキリしなくて・・・・・・・ 梨華ちゃんは?」
「私は、内部メカの点検と調整に、時間がかかっちゃったんです。
今も調整してる最中の部分があって、パワーが出せないんですよ」
「そうなのれすか」
「はい。今の私は、普通の人間の女の子と同じくらいの力しか出せません」
「いつか、それでも不自由しない日が、くるといいれすね」
「そうですね・・・・・ ゼティマを倒して・・・ それからですね」
2人は顔を見合わせると、クスクスと笑いあった。
331 :
名無し坊:02/05/12 23:36 ID:qrRPuk3/
ギュゥゥゥゥゥゥゥン キィィィィィッ!!!
そんな静寂を破って、二人の前に、突然、黒塗りの車が現れた。
ドアをあけて現れたのは、車と同じ黒のスーツに身を包んだ、女達だった。
「石川梨華だな」
女の一人が、梨華の名を呼ぶ
「な・・・・・・ 何ですか・・・・・・」
それに、警戒しながら梨華はこたえる。
「命令だ。悪く思うな」
それだけ言うと、女達を梨華の腕を掴み、無理矢理車の中に引きずり込む。
332 :
名無し坊:02/05/12 23:38 ID:qrRPuk3/
「キャァァァァァァァァッ!」
「梨華ちゃん!!」
梨華を車に押し込もうとする女達に、希美は飛びかかる。
「やめるのれす!! 梨華ちゃんを出すのれす!!!」
希美は力一杯、女達を引き剥がそうとするが、全く敵わず、弾き飛ばされる。
梨華も必死に抵抗するが、パワーを抑えられているため、歯が立たない。
「梨華ちゃん! 梨華ちゃん!!」
抵抗空しく、希美の目の前でドアが閉められると、梨華を乗せた車は、走り去って行った。
「出してください!! 今すぐに出してください!!」
車中で必死にもがく梨華に対し、スーツの女の一人が拳銃のようなものを取り出すと、
それを梨華の首筋にあてがい、引き金を引いた。
333 :
名無し坊:02/05/12 23:40 ID:qrRPuk3/
プシュ、という空気の抜ける音と共に、梨華の全身から力が抜けていき、その瞳が閉じられる。
「対アンドロイド用の麻酔弾だ。死にはしない」
意識の途絶えた梨華にそう告げると、女は麻酔銃をしまった。
「こちら実行部隊。
石川梨華の捕獲に成功。これより本部に帰還します」
「了解、よくやったわ」
別の女が無線連絡した相手の声。
それは、石黒絢のものだった。
334 :
名無し坊:02/05/12 23:41 ID:qrRPuk3/
「中澤さん! 大変なのれす!!」
希美は、上着に入っていた携帯電話で裕子に連絡を取ると、事の顛末を話した。
『何やって・・・・・ わかった。すぐに調べるから、あんたはサイクロン乗って待っとけ!』
「わかったのれす!」
電話を切ると、裕子は側にいた吉澤ひとみに言った。
「吉澤、梨華の電子頭脳から発してる電波を探知して欲しいねんけど、できるか?」
キカイダー・・・吉澤ひとみは力強く頷く。
「大丈夫です。少し時間がかかるけど、探知できます」
「よっしゃ、それやったらええわ・・・・・
ケイ! ケイ!!」
裕子は、その場にいないアマゾンことケイの名を呼ぶ。
335 :
名無し坊:02/05/12 23:43 ID:qrRPuk3/
「なに・・・・・・・ 眠いんだけど・・・・・」
すぐに、寝ぼけ眼のケイが姿を現す。
「寝てる場合ちゃうで。
石川が誰かに連れ去られたんや」
「何ですって・・・・・」
裕子の言葉に、ケイの目が見開かれる。
「今のあの子は、人間と同じくらいの力しか出んようになってる。
ののが一緒におったから、あんた、あの子がムチャせぇへんように、あの子の所に行ってくれ」
早口でまくし立てられたが、ケイはすぐに理解し
「わかった!!」
それだけ言うと、その場から去った。
数秒後、ガレージの方から爆音が響き渡った。
ケイの乗るジャングラーのエンジン音だった。