仮面ライダーののV3

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238名無し坊
どんな強固な繋がりを持つ組織にも、はみだし者、異端と呼ばれる者達はいる。

ゼティマ別働隊、特殊戦闘部隊『GWS』。
ゼティマにとっての異端はそれだった。

ゼティマの中でも、戦闘力、指揮力など、
何か一つの才能に特化した女性隊員のみで構成されているそのチームは、
同時に独断専行の常習者達の集まりでもあった。
それでも高い戦果をあげるので、周囲からは異端視されている。

それに加えもう一つ、彼女達が異端と呼ばれる理由がある。

全員が、ゼティマ所属の女性隊員の遺伝子から培養生成された、いわゆるクローン人間なのだ。


その出生故に彼女達は異端と蔑まれ、強力な部隊でありながらも、それに見合わぬ扱いを受けていた。

その待遇に彼女達を不満を抱き、いつしかそれは、ゼティマからの離反という形になって表れる事になる。
しかし、ただ離反しただけでは、ゼティマ本体の圧倒的な力によって、彼女達は一瞬のうちに抹殺されてしまうだろう。


ゼティマ本体と対等に渡り合える力を、彼女達は欲していた。
239名無し坊:02/04/06 01:20 ID:lDCjF29g
「力、か・・・・・・・」

GWSに与えられた基地内の一室で、彼女は呟いた。
部屋に明かりは無く、差し込む月光だけが、彼女の姿を映し出す。

アジア系の女性だ。
肩まで伸びた金髪に、白い肌。
蒼い目は、持ち前のものでなければ、カラーコンタクトであろう。
あまり若くは無いが、整った顔立ちだ。
だが、憂いを帯びた今の雰囲気は、彼女の見た目を更に老けたものにさせる。


「このまんまやったら、ウチらは一生、クローン人間として飼い殺しのままや。
 何とかせな。何とか・・・・・・・・・」


呟く彼女の部屋のドアから、コンコンと乾いた音がした。
ノック音だ。


「空いとるで。勝手に入ってきたらええよ」

そう応えると、ドアが開く。

「失礼するわ」

入ってきたのは、彼女より少し年下の、同じくアジア系の女性だ。
背中まである茶髪に、つり気味の目。
どこか落ち着いた雰囲気をもった女性だ。
240名無し坊:02/04/06 01:23 ID:lDCjF29g
「なんや、あんたか。何の用や」

「隊長。チャンスが巡って来たかもしれないわ」

そう言うと、茶髪の女性は、手に持っていた新聞を、彼女の前に放った。


「どういうことやねん、ちゃんと説明してほしいわ・・・・・・」

隊長と呼ばれた金髪の女は、ブツブツ言いながら、目の前の新聞を拡げる。
新聞は、ゴシップ紙等とは違う、世界情勢や政治経済を主に報じる、いわゆる一流の新聞だった。

「1面を見てみて」

「なんやっちゅーねん、まったく。ちゃんと口でせつめ・・・・・・」

言われたとおり、1面を見た隊長の動きが突然止まる。
彼女の目は、1面のある記事の見出しに注目していた。


『警視庁、対テロ用の特殊装甲服を導入』


「こ・・これは・・・・・・・・」

「いいから読んでみて」
241名無し坊:02/04/06 01:26 ID:lDCjF29g


『警視庁は2日、対テロ用として、MIT卒業の松浦亜弥警部補が製作した特殊装甲服、G3−Xを導入。
 ニューヨークのテロ事件を受け、日本でも頻発、凶悪化しつつあるテロ事件に対する防御策とするため、
 警視庁が試験的に1機の導入をしたと発表した。
 その姿は一見、TVマンガのロボットのようにも見られるが、機動隊などの装着する防護服等とは
 比べ物にならないほどの防護性を発揮し、松浦警部補謹製によるオートフィット機能により、全く動きづらさを
 感じさせない、誰にでも装着できる設計となっている。
 また、対テロ用ということもあり、専用の銃等の各種兵装を内蔵するなど、装備面も充実している。
 このG3−Xは、既に幾つかのテロ事件を未然に防止し、また、その最中に偶然に出くわした火事の現場でも、
 逃げ遅れた人々を救助するという、レスキュー隊員顔負けの活躍を見せている。
 警視庁では、後々このG3−Xの量産型を大量生産し、対テロはもちろん、人命救助の現場等でも、
 これを使用していきたいと話している。
 G3−Xの装着員である平家みちよ巡査長は、「これからもこのG3−Xで、市民の安全を守ってゆきたい」
 と話している』

242名無し坊:02/04/06 01:35 ID:lDCjF29g
「おい・・・・・・・ こいつは確かに、チャンスが巡ってきたかもしれへんな・・・・
 対テロ用なんてヌカしとるけど、こいつ、絶対に・・・・・」

「私達、ゼティマに対抗する為に作ったようね。
 もしも、私たちの存在には気付いていなくても、得体の知れない、
 人間の常識を越えた力を持つ者の存在には、気付いているはずよ」

「そうやな・・・・・・ これさえ・・・ このG3−Xさえ手に入れることができたら・・・・・・」

「そうね・・・・ でも、このG3−Xよりも、更に強力な装甲服があるといったら、あなたどうする?」

「! そんなもんがあるんか!?」

「ええ。信頼できる情報よ、間違いないわ。
 G3−Xをほとんど単独で開発したという松浦亜弥警部補は、G3−X、そしてその前身であるG3と共に、
 G4というシステムを開発しているわ」

「そんなシステムがあるなら、なんでG4を使わへんねん」

「・・・・・G4のテスト装着員が、過剰な負荷に耐え切れず、装着したまま死んだそうよ」

「・・・・・・・・・・・・・」

「G3とG3−Xには、それだけの負荷はかからないそうよ。
 私たちが欲するだけの力はあるけど、それだけに、このG4につくリスクも相当なものよ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
243名無し坊:02/04/06 01:36 ID:lDCjF29g
しばらくの沈黙のあと、隊長が言った。


「・・・・・・・・・面白いわ。そういうものこそ、あたし達に相応しいわ。
 G4を手に入れるで」

「・・・・あなたならそう言うと思ったわ」

「よっしゃ。早速そのG4の設計図を手に入れるんや。
 設計図は何処に?」

「彼らが根城としている万能移動基地、Gトレーラーの中よ。
 トレーラー内のコンピュータの中に、設計図が眠っているはずよ。
 入手には、私が行くわ」

「そうか、頼むわ」


そして隊長は、傍らにあった机の上の電気スタンドのスイッチを入れた。


「ついにあたし達は、ただの飼い殺しから抜け出す事ができる・・・・・・」

244名無し坊:02/04/06 01:38 ID:lDCjF29g
白熱灯の明かりが、月光よりも明確に、2人の姿を照らし出す。
 

「ゼティマ本体と対等に戦う力があれば・・・・・」

「ウチらはもう、クローン人間なんて呼ばれることも無い。
 一人の人間として、生きていくことができるんや・・・・・」


照らし出されたその顔は、あの2人そのものだった。


辻希美・・・仮面ライダーの近くにいるあの2人。





中澤裕子と、石黒彩の2人に。





仮面ライダーのの 番外編 『PROGECT G4』
245名無し坊:02/04/06 01:41 ID:lDCjF29g
〜3日後〜

「平家さん! 松浦さん! 見てくださいよ!!」

警視庁舎の地下にある、G3チーム専用のスペースの真ん中に駐車されたGトレーラーの中に、
G3−Xサブオペレーターである鈴音の声が響き渡る。


「あ〜も〜 あんたはいつもうるさいわねぇ!!」

「まぁまぁ、松浦さん落ちついて」
それに負けじと、メインオペレーターの松浦亜弥が声を荒げ、装着員の平家みちよが亜弥をなだめる。


G3−X活動班、通称G3チームは、装着員の平家みちよ、メインオペレーターの松浦亜弥、
サブオペレーターの鈴音の、計3人で成り立っている。


G3−Xとは、装着者の平家みちよのみによって運用されているわけではない。
開発者でもあり、メインオペレーターでもある松浦亜弥と、サブオペレーターの鈴音による
バックアップがあって初めて、G3−Xはその真価を発揮するのだ。

もともと、亜弥と鈴音は警視庁の兵装開発課に、みちよは大阪府警にいたのだが、
亜弥の提唱した『対テロ用の特殊装備』という案に上層部が賛成、彼女が製作したG3−Xとその前身であるG3を、
テストパイロットとして選ばれた大阪府警の平家みちよが運用し、予測された以上の検挙率を叩きだした事から、
G3−Xを警視庁の装備とする事が正式に決定され、今に至るのだ。

結成されたばかりのチームではあるが、亜弥と鈴音の的確なバックアップと、みちよの正確な運用で、G3チームは、警視庁の
切り札と呼ばれるほどに成長している。


しかし、開発者である亜弥は、G3−Xを、もっと別の目的に使用することを考えていた。
それは、昔の自分にとって保護者ともいうべき存在の女性から聞いた、ある言葉のためだった。
246名無し坊:02/04/06 01:43 ID:lDCjF29g
「亜弥、今人間はな、大きなピンチに晒されとるんや。
 人間以外の、大きく、強大な存在によってな。
 ウチは今、その存在の一部として動いてる。でもそれは、ヤツらに対して負けを認めたからとちゃう。
 そいつらの力を盗んで、そしてその力を使って、逆にヤツらを倒してやるんや。
 ウチは人間を守る。
 必ず、な」


それから亜弥は、以前から考えていた特殊装甲服・G3の製作に着手した。
護られるのは性に合わない。
例え力で敵わなくても、人間には、知恵と言うものがあるのだ。


そして亜弥は、G3、そして現在のG3−Xを生み出したのだ。
彼女の言葉が真実となった時、このG3−Xは、彼女が手に入れるであろう力と共に、人類にとって大きな切り札になる。

亜弥は、そう確信していた。
247名無し坊:02/04/06 01:47 ID:lDCjF29g
「いきなり怒らないでくださいよぉ。折角いいもの持ってきたんですから」

亜弥に怒鳴られ、少し怯みながらも、鈴音は手に持っていた新聞を2人に見せる。

「いいものって・・・・ あぁ! これ、この前取材された私たちの記事じゃないですかぁ!」

大阪から東京に移ってきたみちよは、東京に慣れようと、慣れない標準語を使っているが、どうにも不自然だ。

「そういえば、この間取材されたわね」

「見てくださいよ! 私たちの写真も載ってますよ!」

記事の横に載っている写真を、鈴音が嬉しそうに指差す。
そこには、Gトレーラーの前で亜弥、鈴音、G3−Xを装着したみちよが、並んで立っていた。

「あ、ちゃんと写ってますね」

「すごーい・・・ 私達、本当に新聞に出るまでにスゴくなっちゃいましたね」

「そうですね。それにしても、松浦さん」

「ん? 何、平家さん」

「何で突然、取材なんか受ける気になったんですか?
 G3の姿があまり注目されるのは良くないって、ずっと言ってたじゃないですか」

「そういえば、そんなこと言ってましたよね」

「そ、それは・・・・・・」

いきなりのみちよの質問に、亜弥は一瞬口篭るが、すぐに口を開く。

「そろそろ、G3−Xが世間の注目を集め始めたし、無理に探られてイヤな思いをするよりも、
 こちらから存在をアピールした方がいいと思ったのよ」

「あぁ・・・ なるほど」

「そういうことだったんですか」

2人は納得したようだった。


まさか、彼女の話の真偽を問うために、意図的に存在をアピールしたとは流石に言えない。
2人に真実を話すのは、彼女の言葉が現実のものとなった時でも、遅くは無いだろう。
それで逃げ出すようであれば、2人を選んだ自分の目が曇っていたのだ。
248名無し坊:02/04/06 01:50 ID:lDCjF29g
「さ、2時から会議室で話があるそうよ。
 なんでも陸上自衛隊から、うちに研修生がくるんだって」

「はぁ・・ これも新聞の効果ですかね?」

「さぁ。どっちにしろ、何しに来るかわかったものじゃないわ。
 ひょっとしたら、G3−Xの設計図を盗みに来たのかもしれないし」

「それは無いと思いますけど・・・・・・」

言葉を交わしながら、3人はトレーラーは出て行った。



亜弥の予想は間違ってはいなかった。
ただ、盗まれるものが違っただけで。



会議室での顔合わせは、短いものだった。

3人の上司の

「陸上自衛隊から、G3−Xの性能研修という形で、しばらく君達と行動をともにすることになった、
 石黒絢君だ」

という言葉に、隣にいた彼女は

「陸上自衛隊1等陸尉、石黒絢です。
 ご指導、ご鞭撻のほどを、よろしくお願い致します」

と、自己紹介をした。



緑色の陸自の軍服に、同じ色のベレー帽をした彼女の顔は、あの、石黒彩と同じだった。



しかし、そのことに気が付く者は勿論誰もおらず、
みちよは、新しい仲間との出会いを喜び、鈴音は、自分に後輩が出来た事を喜んだ。

しかし亜弥だけは、彼女にどうにも気が許せない感じがした。


彼女には注意しなければ。
亜弥はそう思った。

そして実際に、その注意は彼女にずっと向いていた。
会議室での自己紹介の後、Gトレーラーでのミーティングを終えるまで。
249名無し坊:02/04/06 01:55 ID:lDCjF29g
予定外だったのは、その後に行われた『石黒絢さん歓迎会』と称されて行われた焼肉屋でのドンチャン騒ぎで、
未成年の上、下戸にも関わらず酒を飲んでしまった亜弥は激しく酩酊し、前後不覚に陥ってしまった。

さらに、鈴音も亜弥に負けず悪酔いしてしまい、日頃溜まった亜弥への鬱憤を酒にまかせて

「松浦亜弥のバッキャロー!!!」

「G3−Xはなぁ、あたしがいなきゃ動かないんだぁぁ」

などと暴露し、さらにはみちよにも

「へーけさん、なんでGK−06使わずにガードアクセラーばっかり使うんですかぁぁ。
 あたしいっつもあれ磨いてるのにぃぃ。
 けーぼうなんかよりナイフの方がいいじゃないですかぁ!
 いっつも磨いてるから、出した時にきれいにシャキーンって刃が伸びるんですよ、シャキーンて!!」

などと叫び、更には鈴音の叫びを聞いた亜弥が激昂したため、事態は増々泥沼に陥り、
みちよは、それぞれのフォローに回ることで精一杯だった。

そのため、絢だけがひとり、酔わない程度に酒を飲み、いつのまにか姿を消した事に、誰も気付かなかった。

そして、姿を消した絢が向かった先は、警視庁舎内、Gトレーラーだった。


トレーラー内に入るには専用のIDカードが必要だが、彼女にはすでに支給されている。
トレーラーに入ると、彼女は迷わずパソコンの前に腰を下ろす。

起動スイッチを入れ、素早い手つきでキーボードを操作し、次々とファイルを開いていく。
3つほどファイルを開いた所で、彼女の指が止まる。
250名無し坊:02/04/06 01:58 ID:lDCjF29g
「これね・・・・・・」

そう呟く彼女の目が、モニター上のある一点を凝視する。


『seal(封印)』と書かれたファイル。


無駄とは思いつつも、そのファイルをクリックする。
思ったとおり、パスワードの入力画面が現れる。


「でも、私には通用しないわ・・・・」

彼女は、上着の内ポケットから1枚のCD−ROMを取り出す。
CDには『Zetima unlock passward system』と書かれている。
それをモニター横のCDドライブに挿入する。

すると、パスワード入力画面に、自動的にパスワードが入力されていく。
数秒の後、入力が完了し、ファイルが開かれる。


ファイルにはたった一つ、『G4』と書かれたファイルが存在していた。
それをクリックする。


画面一杯に、設計図が現れる。
左上には、『G4設計図』と記されていた。


それこそ、彼女の探し求めていたものだった。

「見つけたわ・・・・・・・・・・・・」

そう呟く彼女の顔には、自然と笑みが浮かんでいた。