仮面ライダーののV3

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190.
第17話 『夢みる機械』

薄暗い洞窟のような場所。
冷たく淀んだ空気を満たした陰湿な場所。
そこは秘密組織『ゼティマ』の支部のひとつである『ダーク』の秘密基地。
部屋の中には、見ているものに不快感を誘う、青白い照明に照らされた一人の老人。

「プロフェッサー・ギル!」
大きな声を出して入ってきたのは、黒いライダースーツを着た長い髪の少女。
「ハカイダー・マキか。どうした」
老人──『ダーク』の指導者、プロフェッサー・ギルは対照的に静かに応えた。
「一体いつになったらキカイダーを殺させてくれるんだ!」
「しばらく待つのだ。今ヤツラのところには多くの力が集まってきている。
 仮面ライダーと呼ばれる改造人間たちがな。
 いくらおまえが最強の能力を持っていようと、一人で勝てるはずは無い」
「何だって! それならばなおさら急いでキカイダーを殺す必要があるじゃないか!」
「いや、ヤツラの力は一つに集まったほうが好都合だ」
「……どういうことだ?」
その言葉にマキは目を細める。

「キカイダーとともに行動する人造人間を知っているな」
「ああ、ビジンダーのことか」
「そうだ。実はつんく博士たちの助手にこちらのスパイがいてな。
 そいつはあの人造人間に一つ細工をしていたのだ」
「細工?」
「あいつの体の中には……高性能の爆薬が埋め込まれているのだ」
191.:02/03/29 22:53 ID:hUhZd+1D
「梨華ちゃん、お風呂空いたで」
所変わってここは楽しい中澤一家。
世界の平和を守る戦士たちが集う、お気楽極楽な場所。
「あ、わたしはいいよ」
「ええって……おふろ入らへんのかいな」
あきれたような加護の声。
「そういえば、おふろはいるの見たことないれすね」
辻も不審そうに梨華を見る。
「わたし達は人造人間だから、お風呂に入る必要が無いの」
「でも、よっすぃーはおふろ入ってるれすよ」
「あ…あれはよっすぃーの趣味で」
「あかんあかん! ちゃんとお風呂には入らんと!
 そんなんやから肌が黒くなんねんで!」
「いや……それは関係な……」
「ええから。のの! そっち持って!」
「へい」
両手をつかまれ、お風呂場に連行される梨華。
ずるずると引きずられながら、心の中でこっそりとつぶやく。

(うー、お風呂ってなんか錆びちゃいそうで嫌いなんだけどなぁ……)
192.:02/03/29 22:56 ID:hUhZd+1D
「爆弾!? そんなものが……」
「そうだ。
 やつの着ている服、その上から三番目のボタンが起爆スイッチになっている。
 もしボタンを外せば……。
 ククク、あの爆弾は小型だが強力だ。半径10kmは壊滅状態になる。いかに奴らとて……」
「馬鹿な! そんなものが爆発したらキカイダーまで!」
「ふん、奴はそのくらいでくたばりはせんよ。
 邪魔者がいなくなってから、ゆっくりと決着をつけるがいい」
不適に笑うギルをマキは目を細めて睨む。
「……やはりおまえは信用できない。
 もういい! やつはあたしが倒す! 今すぐにでも!」
言い捨てて飛び出そうとするハカイダー・マキ。
プロフェッサー・ギルは手にした杖を口元に運ぶ。

鳴り響く悪魔の笛。
「うわあぁぁぁ!」
頭を押さえ、苦痛の表情を見せるマキ。
「フフフ、おまえの体に埋め込まれた服従回路。
 それがある限り、おまえはワシに逆らう事はできん。
 おとなしく自分の出番を待っているが良い」
「はい……分かりました……ギル様……」
うつろな表情を見せるマキを、ギルは不気味な笑みを浮かべて眺めた。
193.:02/03/29 22:58 ID:hUhZd+1D
(イヤだなぁ、お風呂キライ……)
憂鬱な気持ちになりながら、梨華は脱衣所のドアを開けた。
人造人間であるひとみと梨華は代謝物を出すことがない。
加えて彼女達の肌の表面は、ナノマシンにより自動的に浄化される。
そのため基本的に体を洗う必要はない。
「さ、早いとこ服脱いで」
「ねぇ、なんでそこにいるの? 見られてると恥ずかしいよ」
「じんぞーにんげんだからはずかしがることないれす」
「だってぇ……」
「つべこべ言わんと、とっとと脱がんかい!」
「ふぇぇん……」
八の字に眉毛を下げた梨華は、観念したのか青い上着を脱いだ。
首に巻いていたスカーフを外し、華奢な体を包むブラウスに手を伸ばす。
細い指先が小さなボタンを外してゆく。
ひとつ目……ふたつ目……そして。
194.:02/03/29 22:58 ID:hUhZd+1D
ドカン!!

突然聞こえる爆発音。
「な、なんや!」
「おふろの中ならきこえたれす!」

お風呂側の扉が開き、湧き上がる煙とともに現れたのは……。
「げほげほ」
「何してんねん! おばちゃん!」
「失礼ね! あたしはおばちゃんじゃないわよ! う、げほげほ」
つい最近共に戦うメンバーに加わったばかりの仲間、
仮面ライダーアマゾンことケイは苦しそうに咳き込んだ。
195.:02/03/29 22:59 ID:hUhZd+1D
「ちょっと! 何、今の音!?」
飛び込んできた長い髪。
ケイとともに仲間に加わった飯田圭織──仮面ライダースーパー1は、
中の惨状を見て目を丸くした。
「何これ!? 信じらんない。一体どうやったらこんなふうにお風呂壊せんの!」
「う、うるさいわね。あたしはこんなもの使ったこと無いのよ!」
「どうでもええけど、おばちゃん服ぐらい着たほうがええで」
「こ、こわいれす……おばちゃんのはだか、こわいれす……」
全裸のまま仁王立ちのケイを見て、辻はなぜか怯え、加護は冷静に突っ込みをいれる。

「わ、わたしパトロールに行ってきますね」
「あ、梨華ちゃん、待ちーな!」
大騒ぎになった風呂場から、これ幸いとばかりに梨華はこっそり抜け出した。