141 :
名無しX:
「セタップ!!」
ベルトの風車が回りレッドアイザーがマスクを形作る。
パーフェクターが仮面にはめ込まれた時少女は『仮面ライダー』となった。
「仮面ライダーX」
「な、なっち・・・」
「うん。・・・仮面ライダーX」
その姿は輝く銀のマスクに額のVマーク、赤い胸板に黒いマフラー。
もちろんなつみのそれとは姿は異なるが紛れも無く仮面ライダーを名乗るにふさわしいと言えた。
「仮面ライダーXだと?そうか高橋の奴ゼティマの深海開発用カイゾーグの技術を
自分の娘に使ったか。小娘が、勝てると思うな!」
ネプチューンは口から泡のようなものを噴出し攻撃してきた。
Xは瞬時にその攻撃に反応しバック転で軽やかにかわす。
「X、その泡は危険よ、当たったら体が溶けてしまうべさ!」
なつみが叫んだ。
「ライドルスティック!」
142 :
名無しX:02/03/24 11:19 ID:B24ohqSC
Xはベルトの風車の脇から棒のような物を取りだしまるでバトントワリングの様に
体の前面で回し始めた。
「な、何?」
ネプチューンの噴出した泡がライドルスティックの起こす風によって
空気中に拡散してゆく。
「上手い。」
あさみは驚きの声をあげた。
「バカな」
動揺を隠しきれないネプチューンに対し今が好機とみたXは
ライドルスティックを天高く放り投げた。
「とぅ!!」
ライドルスティックを追う様に高くジャンプしたXは
そのままスティックを掴み、あろうことかそのスティックを軸に鉄棒の
ように回転した。そしてそれを反動にし更に高く舞い上がった。
ネプチューンは見た。太陽を背にしたX型の黒い影を。
そしてそれが彼のこの世で見た最後の物となった。
「Xキーック!!」
黒い影がネプチューン目掛けて凄まじい勢いで飛んでくる。
Xライダーの必殺キックが炸裂しネプチューンの首が飛んだ。
そして大爆発を起こした。
「すごい!すごいよXライダー」
「お二人のお蔭です。こうして父の仇を討つことが出来ました。」
「仇・・・。」
「はい。明け方亡くなりました。私に全てを話して・・・・。」
「そうだったの・・・・。」
「あのぉ、実はお二人にお願いがあるんですが・・・・」
「ん?なんだべ」
143 :
名無しX:02/03/24 11:21 ID:B24ohqSC
〜エピローグ〜
「どの位時間かかるのかな、加護生化学研究所までって。」
「こらこら、まだ福井県を出てもいないよ。でも良かったね、なっち。
高橋教授が亡くなる前に愛ちゃんに加護博士の事を教えてくれてて。」
「加護博士はお父さんの恩師らしいのできっと安部さんの腕も直してもらえますよ。」
今はもうその加護博士も亡くなってしまっているのだが高橋教授はそれを
知らなかったようだ。そしてその後を孫娘とその仲間達が受け継いでいる事も・・・。
ここは高速道路のサービスエリアレストラン。
3人の少女がテーブルに三つのヘルメットを置いて注文した料理を待っていた。
144 :
名無しX:02/03/24 11:22 ID:B24ohqSC
なつみとあさみ。そして高橋愛の3人だ。
ネプチューンを倒したXライダー高橋愛からのお願いとは
二人の旅に同行させて欲しいと言うことだった。
この申し出は変身能力を失っていたなつみにとっては願っても無いものだった。
二つ返事でOKしたなつみとあさみは高橋教授が残してくれた住所を
頼りに加護生化学研究所を目指すことにしたのだ。
しかし二人には高橋愛の申し出の理由が解らなかった。
二人と同行することは否応無く戦いの渦中へその身を投げ出す事に他ならないのだ。
愛はまだ幼く、両親は居なくなってしまったが(母親は愛を生んですぐに亡くなっている)
父と共に匿ってもらっていた福井の親戚ではとても可愛がられていた様で
福井弁が体に染みついてしまったほどだ。
父の仇であるネプチューンを倒した事で彼女の戦いは終わっているのではないのだろうか?
そんな幼い少女を自分達の都合で戦いに巻き込んで良いのだろうか。
思いきってなつみが愛に尋ねた。
145 :
名無しX:02/03/24 11:24 ID:B24ohqSC
「ねぇ、高橋ちゃん。本当にいいの?私達と一緒に居る以上またあんな怪人達
と戦わなくちゃならなくなるんだよ。お父さんの仇も取ったんだし福井の親戚の家で
暮らした方がきっと幸せだと思うけど。」
あさみも小さく頷きながら愛の方を見ている。
「・・・私、もう人間じゃ無いんですよ。」
なつみもあさみもハッとした。
愛のその言葉は自分たちが何度も何度も悩み苦しんだ言葉そのものではないか。
愛のその幼い容姿とは関係無く二人と同じ現実が彼女の体には詰まっている。
その事を誰よりも知っているのは自分達ではないか。
「ごめん・・なっちったら、バカな事きいちゃったべさ。」
「そうよね、愛ちゃんを狙っていつ悪者が来るかもしれない。親戚の人達に
迷惑をかけられない。・・・そういう事だよね。」
「でも、それだけじゃないんですよ。亡くなる前お父さんがこう言ったんです。
あさみさんの瞳は生きる事に後悔をしていない瞳だったって。
だからお父さんも私を生かす決心がついたって。」
「・・・・・・。」
「正直言うと怖いんです、私。でもお二人と一緒なら後悔しない生き方が
出きるような、そんな気がしたんです。」
「高橋ちゃん・・・」
「愛ちゃん・・・」
もう迷う必要は何処にも無かった。この娘は私達の仲間だ。
「うん。解ったよ高橋ちゃん。これから仲良くやっていこう。」
「そうだね。あ、頼んでた料理が来たよ。いっぱい食べて元気だして行こう。」
「・・・はい。」
146 :
名無しX:02/03/24 11:26 ID:B24ohqSC
テーブルは3人が頼んだ料理でいっぱいになった。
なつみは目の前の丼のふたを開けた。
「いただきまーす!・・・って何これ。なっちこんなの頼んでないべさ。」
「え?だって安部さんカツ丼頼んでませんでした?」
「そうだべさ。なっちはカツ丼が食べたいんだよ!こんな真っ黒な物が乗った丼じゃなくて。」
「?それカツ丼ですよ。」
「へ?違うべさ。カツ丼っていうのはもっとフワーっとした卵がかかって・・・」
今度は愛が驚いた。
「それじゃ、卵カツ丼って頼まないと。」
福井県では『カツ丼』と言えば『ソースカツ丼』の事を指すのだと愛は言う。
「納得いかないべさ、納得いかないべさ。こんなのカツ丼じゃないっしょ。」
「何言ってるんですか。これこそがカツ丼です。」
「あ〜あ、先が思いやられるよ。」
あさみはひとりため息をついた。
第16話 「X、X、Xライダー誕生編」完