仮面ライダーののV3

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125名無しX
では始めさせていただきます。

第16話 『 X、X、Xライダー誕生編 』





           〜プロローグ〜

「許してくれ、愛。こうするより他にお前を生かす方法が無いのだ・・・・。」

自らも瀕死の重傷を負いながらも男は力を振り絞り少女を手術台に寝かせた。

手術台に乗せられた少女の着ているセーターの淡い緑色は辛うじて肩口のあたりに
その存在を残すのみとなり赤黒い血が腹部の大部分を占めていた。
ショートパンツから伸びた細い足にも膝の辺りに痛々しい擦り傷。
幼さの残るその顔は苦悶の表情を纏ったまま固まり、生気の無い土色をしていた。

「私のしてきた研究の為にお前がこんな事になるなんて・・・しかもその研究しか
今のお前を救う事ができない。・・なんて皮肉な・・・それでも私はお前に生きて
欲しいのだ。」

ともすれば途切れそうになる意識のなか男は意を決したかのように
少女の体に白く光るメスを入れた。
126名無しX:02/03/22 23:12 ID:+N+nlnSk
            〜数時間前〜

「へぇ〜いい町だね。のどかそうで」
なつみはバイクのヘルメットを脱ぎ開口一番言った。

「そうですね。こんな所にゼティマの研究機関なんて
ホントに在るんでしょうか?」
あさみもヘルメットをバイクのバックミラーに掛ながら答えた。

北陸自動車道を降り海に向かって20分位走っただろうか、
小さな漁船が数隻みえる国道沿いのコンビニエンスストアで
二人はバイクを止めていた。

なつみとあさみ。

似たような背格好のちょっとぽっちゃりとした
何処にでも居そうな少女達であるがその正体は
仮面ライダーストロンガーと電波人間タックルである。

ふたりは在る情報を元にここ福井県三国町へとやって来ていた。

「ここってなっちの生まれた室蘭になんとなく似てるべさ。」

「同じ港町ですからね。ところで、とりあえずどうします?
あんな漠然とした情報だけでここまで来ちゃったけど・・・。」

「仕方ないべさ。あれしか糸口が無かったんだから。」

漠然とした情報・・・そう、ゼティマドーム爆発の後、
二人はゼティマの情報を入手すべく思いつく限りの活動をしていた。

しかしドーム爆発や遊覧船事件がもみ消された事からも解るように
その闇の組織はなつみやあさみの乏しい情報網では
名前すら聞く事は出来なかった。

そんな時思わぬところからその漠然とした情報は飛び込んできた。
127名無しX:02/03/22 23:15 ID:+N+nlnSk

あさみと一緒にマクドナルドで朝マックしていたなつみの
ケータイが『ふるさと』の着メロを奏でる。

「誰だべ?・・・はい安部ですが・・・。あ〜ひさぶり〜元気だべか?
え?うん・・・え〜ほんとに〜微妙だよ〜・・・・・」

どうやら大学に進学した友達からの様だったが
お蔭であさみはコーヒーを3杯もおかわりする破目になった。

「長いよ〜なっちぃ。」

「ごめんごめん。積もる話しに花が咲いちゃってね。
でもちょっと気になる話しを聞いたんだよ。」

「・・・新しいダイエットの方法でも聞いたんですか?」

温厚なあさみもさすがにちょっとむくれている様だ。
128名無しX:02/03/22 23:19 ID:+N+nlnSk

「そんなんじゃなくて、友達の通ってるゼミの教授に聞いたらしいんだけど
最近、人間工学やロボット工学の有名な教授達の行方不明が増えてるんだって。
まあ刑事事件かどうかまだ解らない事もあってあまり表沙汰にはなってないらしいけど。」

「・・・・それで?」
「それで?って・・なっちもあさみもゼティマの秘密基地で沢山の科学者達を
見てきたべさ。」
「行方不明の原因がゼティマだと?」
「ね。ちょっと気になるべさ。」
「だからって私達動き様無いじゃないですか。居なくなった人達の行方に心当たりも無いのに。」
「それがそうでもないんだよねぇ」
ちょと得意げになつみが鼻をならす。

なんでも行方不明になった教授のひとりがさっきの電話の教授と友達らしく行方不明後に
1度だけ電話をかけてきたそうだ。

「俺は故郷の福井で娘とふたり海を見ながら暮らしてるから心配するな」
とだけ告げて一方的に電話は切れたらしいが。


「問題無いじゃないですか。」
「自分の大事な研究をほったらかして急に居なくなって説明がそれだけだなんて変っしょ。」
「そうですか?何もかも投げ出して居なくなりたい事だって有るじゃないですか。」
「え〜変だよ〜。例えばお湯を入れたカップ麺をそのままにして外出する事なんて有る?
なっちはそんな事あり得ないべさ。」

「・・・・それで、なっちはどうしたいと?」
「いくべさ。福井に!」
129名無しX:02/03/22 23:30 ID:+N+nlnSk

コンビニエンスストアで買った豚まんを両手にもちながらなつみも言った。

「う〜ん。でも本当にこれからどうしようかなぁ。」
「・・・なっちって私が思ってた最初の印象とちょっと違ったみたい。」
「そう?どんなふうに?」
「なんて言うか・・もっと計画的な人かと・・・。」
「充分計画的だべさ。」

「どこがですか!ここに着いてからの事も何にも考えてないし、
そもそもその高橋教授って人が誘拐されて福井のゼティマ研究施設で働かされている
なんて私達の想像以外の何物でもないんですから。現にこの町の何処に
研究施設があるって言うんですか。海と船とおじいちゃん、おばあちゃんしか見当たらない
のどかそのものの町じゃないですか!」

「う〜ん、それを言われるとなっちも困っちゃうんだけどね。
それじゃ、とりあえず東尋坊でも行こうか。」
「東尋坊?」
「ほら、よくサスペンス劇場とかにも出てくるすごい断崖絶壁。観光名所なんだって。」
「・・・・・・・。」
「さ、そうと決まればとっとと行くべさ。」

あさみは思った。私はこの人と同行していて本当に良いのかと。
130名無しX:02/03/22 23:40 ID:+N+nlnSk

「うわ〜すごい!こんな所から落ちたらいくら改造人間っていっても只ではすまないべさ。」
「そ、そうですね、ちょ、ちょっとそんなに覗きこんだら危ないですよ。」

なつみとあさみはそそり立つ断崖絶壁の上に立ち、恐る恐る下を見下ろしていた。
遥か下方に黒と言っても良いような深い緑色をした日本海が白い波飛沫を壁面にぶつけては
小さな爆発を起こしていた。
その自然の特殊効果は生と死の境界線がたった1歩の足の踏み出しの間にある現実を
教えてくれる。
ともすれば自分の意思にかかわらず、吸い込まれて行きそうな気さえしてくる。


「ここって、観光名所であると同時に自殺の名所でもあるんだって」
「ひえ〜私・・た、高い所苦手なんです〜。」

激しく打ちつける波の音と海から崖を駆け上って来るような突風の轟音で
普通の人間なら隣にいる人との会話すらすんなりとはいかないであろう状況において
改造人間である二人の耳は遥か遠くで聞こえるその声を拾い上げた。

「!」
「聞こえた?なっち!」
「悲鳴だべさ。」
「何処から?」

断崖に立つ二人からは180度を超えるパノラマの視界が広がっている。
その悲鳴らしきものが聞こえた方向を目で追った。

「あさみ、あそこ!」
「!!」

なつみ達から左手の遥か先にみえる低い位置にある岩場に多数の人影らしきものが見える。
遠目で良く解らないが多勢の人達が二人の人間を追いかけている様だ。

「行こう、あさみ。」
「あそこまで廻りこんで行かなくちゃならないから結構時間かかりそうだよ。」
「急ごう」
二人は駐車場に停めてあるバイクへと駆け出した。