誰か娘。の2ちゃん小説書いて。

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44まちゅり
歩きやすく作られた一本道を通り、
海辺の集合地点へやってきた吉澤。
もう眠りについているだろうと考えていたが
加護の願いを聞き入れないわけにはいかなかった。
吉澤自身いつまでも体力がある訳ではない。
どうせ死ぬなら4人で、と、吉澤も例外ではなかったのも
事実だった。

砂浜に足を踏み入れた時、そこには辻と石川の姿は
なかった。あるのは燃え残った枝の灰ばかり。
何度かあたりを見回した後、声を出して仲間の名前を
呼ぼうとしたが、吉澤にはそれすらできる体力が残っていなかった。
「ああ、情けな」と、人一倍負けず嫌いの吉澤は
もと来た道を引き返そうとした。

「よ〜〜〜っすぃ〜〜〜」

明かりすらない一本道の向こうに、一人の少女が
こちらへやってくる。両手には「光」を持っていた。

「よっすぃ!これ・・・食べて!おいしいれすよ!」

45まちゅり:02/02/12 15:43 ID:9fQzZoTv
「光」に見えたその物の正体は、赤い果実であった。
こんな島に食べ物がある事を頭の中で完全否定していた
吉澤には、そこで何が起きているのかわからない。

「つじ・・・どしたの・・・・これ・・・・・・?」
「いいから、食べて食べて!」

テヘテヘ顔の天使は、赤い果実をまず1つ手渡した。
一口、また一口と、果実をほおばる。
例えるなら「生き返っている」。その言葉がまさにぴったりだった。
そして死を予感した後に、このような幸せが訪れるとは。

「・・・・・・い・・・いたいのれす、よっすぃ・・・・・」
「・・・・・・辻・・・・・・ありがと・・・・・・」

力いっぱい辻を抱きしめる。
吉澤には、この「テヘテヘ顔」が天使に見えてしょうがなかった。

辻の手から離れたもう一つの赤い果実は、2人にほほ笑むように
きらきらと月明かりを照り返していた。

46まちゅり:02/02/12 16:07 ID:up5h6oIx
辻から同じようにこの「お菓子」を与えられていた石川が
加護のもとへ行っている事を聞いた。
吉澤と辻は一本道を歩いている。

気になっていた加護には、石川が「お菓子」を与えに行ったし
走ろうと思えば十分に走れるのだが、吉澤は少しでも長く
命の恩人「辻 希美」と一緒にいたかった。

横目でちらちら見ていると、その視線に気づいた辻が
テヘテヘと笑う。
ボートが流されてから「あたしが3人を守るんだ」と
決めた吉澤は、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
何度も礼を言う吉澤に、辻はただ頬を染めるだけだった。

ゆっくり、ゆっくりと、辻との時間を楽しむように
雑木林を通り抜け、2人は石川達のところへ戻った。

「のの〜!」
「あいぼぉ〜〜ん!」
47まちゅり:02/02/12 16:08 ID:up5h6oIx
待ってましたと言わんばかりに、辻は加護のもとへかけよった。
うっすらと予想していたが、吉澤にはそれがやはりおもしろくなかった。
だが「死」という最悪の結末よりは何億倍も良いじゃん、と
吉澤は横に居た石川梨華と共に、苦笑を浮かべていた。

しかし吉澤には、この集合地点に「あるはずの無い物体」を見つけ
目を丸くしていた。
吉澤「お気に」の海の家の「貸しボート」が、まさに
「おかえりなさい」と言わんばかりに、吉澤の方を向いている。

「・・・・え!?・・・・な・・・・なんでぇ!?」

海辺で加護とじゃれあっていた辻も、開いた口がふさがってない。
「驚いたでしょ?あたし達もね、びっくりしたんだから」
と、石川の言葉にますます困惑する2人。
48まちゅり:02/02/12 16:09 ID:up5h6oIx
「さっき梨華ちゃんがなぁ、うちにあの赤い果実のやつくれて、
加護がそれ食べてた時にな〜、なんかとぅお〜くの方から
ボートが、どんぶらこぉ〜、どんぶらこぉ〜、って、流れてきてん」
辻の目の前でボートを漕ぐしぐさをして見せる加護。
石川がつけ足す。

「どんぶらこぉは余計だけど、そのボートにちっちゃい
女の人が乗ってて、この島におりてきたの。
最初あたし達も本当びっくりして、2人で逃げようかって
思ってたら、急に「やっっほぉ〜〜〜い!!」って。ね、加護ちゃん」

「そう。でなぁ、加護が「どちらさまですか?」って
思い切って聞いたらなぁ、「うっふ〜〜ん」とか「あ〜ん」言うてなぁ、
名前言わへんかって、で、あんまりアホな事言うから
うちら無視やってん」
49まちゅり:02/02/12 16:10 ID:up5h6oIx
横で石川がくすくす笑い出す。

「そ。そしたらその人、今度あせり出して
「や、矢口です!矢口真里!!」って急に、ね」

この島に誰か訪問者が来ていたのだ。
吉澤も辻も少しずつ事を理解してきたのか
笑みがこぼれてきた。帰れんじゃん!
「で!?その人は!?何処行ったの!?」
吉澤が石川に問いただす。

「それが〜、なんか「やる事がある」とか言って
あっちの林に入っていったの」