なかよしのフィギュア全種

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85品川 34

つながったままの電話をポケットに入れて、なっちの今日の予定を見ておおよその位置を掴む。
知らない間に、チューンされ、もっとレーシーになったオレのセブン。。アイドリングの音が頼もしい。
警察に追われても振り切れる。 パンチのあるクルマになってた。

なっちが今どこにいるか、ぶっちゃけわからない。 けど引き合うなにかがある気がする。
いや、引き合わせて欲しい。

予測をつけた場所はこの交差点を左折、信号は青、かなりギリギリのスピードで曲がりに入った。
気持ちいいくらいキレイに限界を超え、クルマがまわった。 テールから地下道入り口にぶつけた。
同時にマフラーがつぶれて、もう走れない。 心の中が青くなって、痛いくらい冷たい風が胸を突き抜けた。
もうダメだと思ったから。 なっちを助けられない。 街は知らん顔。 クルマがクラッシュしても、誰も関心を持たない。
ここまで冷たかったか? ふと電話のことを思い出した。 ポケットから取り出すと[通話中]と出てる。
まだなっちの電話につながっている、それがまだなっちの命が消えてないと同じに思えた。 走り出した。自分の足で。
86品川 34:02/03/05 09:51 ID:+pjFGKyK

と、5歩も走らないうちに急ブレーキをかけた。
無意識に見た地下道の中に、見慣れた服の着こなしで、うずくまってる人が見えた。
「なっち!」
血が、あたりに広がって、それを避けて人が通る。 誰も助けようともしない。
冷たい目で見るか、完全無視か。 まだ、わりと冷静なうちに救急車を呼んだ。

なっちに近寄ると、血液で足をすくわれそうになった。 信じられないほど血が出てる。
「なっち、なっち!!」
「・・・・・・はぁ〜、、、もぉ・・・来なくていいって言ったのにぃ・・・」
顔を見せてくれた。 青ざめて、目もうつろ、血も吐いたらしい。 
後ろから抱きかかえるように起こす。お腹刺されたんだ・・・黒ずんだ血が溢れてる。 
救急車はまだ来ない。

涙が止まらなかった。ふたりとも。でもなっちは笑顔をつくった。とても綺麗な笑顔。
「ねぇ・・・触ってもいい・・・?」
手袋をはずしながらなっちが言う。 えらく苦労している。 もう力が残ってないのかな・・・。
もう時間も残ってないのかな・・・。



87品川 34:02/03/05 10:17 ID:+pjFGKyK

オレの頬に氷のような手を触れた。 その手をすぐ包んで、暖めようとした。
「はぁ・・・あったかぁ〜い、、、」
キスをした。 すべてが最期。
「泣かないでよぉ・・・」
逆にオレの方が喋れない。
「なっち・・・ごめんな・・・オレ、なっちを護るって決めてたのに・・・」
なっちは何も言わない。 ただ口元を緩めて・・・やさしい顔。

もう何も言葉が見つからない。 きっと言いたいことはたくさんある。 言葉にならない。
どうしようもない悲しさがこみ上げてくる。 今、自分の一番大切な人の命が腕の中で
消えようとしてる。

「ゴメンね・・・なっち・・・多分死んじゃう・・・」
こういう時、きっと喋らせないほうがいい。 けど、声を聞きたい。気持ちを知りたい。
いつからか壊れたふたりの関係。 どう思ってたんだろう・・・。
「なっち、ゴメンは、オレの台詞。いっぱい謝りたいことがあるよ・・・。」
「ん〜ん・・もぉ・・いーよ・・・」
なんでこんなに優しいんだよ。

「なっちぃ・・・なれるかなぁ・・・?このまま死んじゃったら・・・」
宙を仰いで言った。
「・・ん? 何に・・・なるの・・?」